仮面ライダー響鬼のお仕事 第8回
引き継がれたもの、引き継がれなかったもの
鷹羽飛鳥
更新日:2005年10月30日
 白倉プロデューサー・井上脚本が導入されてから約2か月が経ちました。
 鷹羽的には、まだ善し悪しの最終判断は下すつもりはありませんが、番組の感じが以前と変わったことは間違いなく、それにより、いいところも悪いところも出てきました。

 もっとも、世間で言われている“悪くなった点”は、必ずしもスタッフ交代後に始まったとは言えません。
 例えば、魔化魍を探索するためにディスクアニマルを放ち、潜伏場所を絞り込んで戦いに赴くといった“前体制下の美点”はかなり薄れ、鬼の行くところ魔化魍ありといった様相を呈しています。
 帰ってきたディスクアニマルをチェックして、「それが、意外と近いみたいで…」と言った直後に背後から現れるような安直な出現や、今誰が稼働期間なのか、誰が現場近くにいるのかを全く検討するシーンがないまま、何かというとヒビキ、イブキ、トドロキに声が掛かるというのは、やはり興醒めします。
 特別遊撃班であるヒビキに毎回声が掛かるのはともかくとしても、イブキとトドロキがそんなにいつもいつも稼働中ってのは、ローテーションとしてどうなんでしょうか。
 また、変身すれば必ず着替えが必要になるというのに、下手すると着替えも持たず車にもバイクにも乗らずに走って出ていって、あまつさえ顔だけ変身解除しているという…。
 もし、身一つで走っていって変身した場合、財布もなくなってしまいますから、バスにも電車にも乗れないわけで…首から下があの状態で、歩いて家まで帰るんでしょうか?
 と思ったら、既に、25話『走る紺碧』では、着替えを積んでもいないバイクに乗って出撃した挙げ句、戦闘終了後には服着てますね。
 まさかバイクに財布を残していって、首から下響鬼の状態で買ってきたとか?
 …これは以前とあまり変わらない粗の部分だったんですね。

 また、キャラクターによるドタバタ劇も繰り広げられることになり、鰹がウインクしたり、ハートマークを飛ばしながらイブキと日菜佳がちゅっちゅちゅっちゅしているシーンなどに頭を抱える視聴者も多かったと聞きます。
 それも明日夢ともっちーが勢地カを無意味に尾行したのと、五十歩百歩のような気もします。
 ともあれ、ほとんどのキャラが多かれ少なかれこれまでとは違う描かれ方をしているわけですが、中には少々逸脱しすぎた感のあるキャラクターも出ています。

 その最たるものがイブキでしょう。

 やられ役になったこともさることながら、木暮開発局長に「今風だな」と言われたときの“えへっ?”という顔には、若き正統派エリートの面影は微塵もありませんでした。
 確かに以前から軽い面(明日夢をヒビキの弟子と早合点して秘密を話しちゃったり)や優柔不断な面(何か決める時は香須実に任せるとか)はありましたが、いざ鬼の仕事となれば、“やるときはやる”凛々しい男でした。
 オオナマズのときなんか、あきらを無駄に走らせて戦力を整えないまま戦おうとしたというおバカな面もあった反面、鬼爪1本で戦い抜こうという決意と使命感を見せていましたし。
 イブキの場合、状況に応じてうまく作戦を立てるという指揮官的能力には欠けているものの、戦士としては一流だという描写だったように思うのですが、35話『惑わす天使』では、香須実のことが気になってラッパが吹けなくなるというていたらくを演じてしまいました。

 え? トドロキ?
 いやあ、彼は元々あれくらいがさつで駄目駄目な人でしょう♪
 プールの時といい、太鼓特訓の時といい、彼の言動には、悪い意味での脳筋体育会系ノリが見えてましたし。


 逆に、キャラ描写の変化により、すっきりした面も一部出ています。
 31話『超える父』において、響鬼が落とした音撃棒を明日夢が拾って渡したことについては、29話『輝く少年』放送の後、“そういうことをしていれば、明日夢の成長が描けただろうに”と惜しまれていた部分でもあり、これまでの延長として、少し成長した明日夢の描写だったと評価する向きが多いようです。

 また、これまで曖昧なまま進展のほとんど見られなかった香須実とイブキ、日菜佳とトドロキの関係、もっちー・あきら・明日夢の三角関係などは、かなり明快になりました。
 明日夢がもっちーにヤキモチを焼くという展開は、直ちにあきらに対する恋愛感情の発生を否定するものではありませんが、“もう三角関係は描かないよ”という制作者側の意思表示とも感じられ、鷹羽としては、もっちー・明日夢のカップルで決着したものと考えています。
 多分、そう思った人は多いんじゃないでしょうか。
 日菜佳とトドロキに関しても、これまでは日菜佳が一方的にアプローチしている場面がほとんどで、トドロキの方から何かしたのは、せいぜい23話『鍛える夏』において、日菜佳に愚痴の電話をかけていたくらいでしたが、一応相思相愛の上で付き合っているという描写に変わっています。


 また、一部では都心部に魔化魍が出現していること、等身大魔化魍が太鼓以外でも倒せてしまうことなどに不満が出ているようですが、それについても、鷹羽は、問題がないとは言いませんが、必ずしも大問題ではないと考えています。
 というのは、今画面に登場しているのは、新種の魔化魍だからです。
 30話『鍛える予感』において、洋館の男が「新しい魔化魍も完成したことだし…」と言いながらスーパー童子とスーパー姫を生み出す研究をしています。
 少なくとも“新しい魔化魍”1号が生まれないうちにこういう台詞は言えませんから、この時点で既に誕生していることは間違いありません。
 となると、この話で登場したカシャが新しいタイプの魔化魍1号であると考えるのが自然でしょう。
 一応、次回登場のカマイタチが1号である可能性もありますが、カシャに旧来の童子と姫がついていないことからして、カシャは童子らに育成されたわけではなさそうですし、また、この時点では、スーパー童子とスーパー姫は、まだいませんから、カシャを育成することはできません。
 こう考えてくると、童子と姫がついていないカシャは、ほぼ間違いなく“新しい魔化魍”と言えます。
 スーパー童子などのようにビーカーから直接生まれるのか、クグツを介して生み出しているのかは分かりませんが、少なくともこれまでの“夏の魔化魍”でないと断言していいでしょう。
 なお、これはあくまで画面情報だけからの考察であり、公式サイトなどの記述は考慮に入れていません。
 公式サイトにおいて、“カシャが新しい魔化魍である”と明記されていることは勿論知っていますが、敢えてそれ抜きにして考察しても、同じ結論に達したということです。
 
 これまで太鼓でないと倒せないとされてきたのは、白いクグツに生み出される夏の魔化魍です。
 新型は、たとえ分裂するなど夏の魔化魍に似た能力を持っている奴がいるとしても、夏の魔化魍とは別種の等身大タイプでしかないのです。
 もっとも、ノーマルの威吹鬼と轟鬼でも倒せる新型魔化魍を相手に、アームド響鬼で立ち向かう必要があるのかという疑問は残るんですけどね。

 なお、その後に登場したカマイタチのような巨大魔化魍も、旧来の童子と姫がいないことから新型と思われますが、どうやって山に潜んでいたのかは描かれていません。
 洋館の男が直接生み出したのなら、洋館から山にわざわざ籠もりに行ったことになりますし、スーパー童子とスーパー姫に運ばせたにせよ、クグツに山で作らせたにせよ、少々意味不明です。
 もしかしたら、テレポートで山に籠もりに行っちゃったんでしょうか。
 これらについては、明らかに描写不足…というより、ぶっちゃけた話、単に旧来の童子と姫を省略するために新型扱いしているだけだと思いますけど。

 で、上で挙げた「問題がないとは言わない」というのは、魔化魍側の組織改編に対する猛士側の対応について、描写がまるでないことです。
 まさか、スーパー童子・姫と戦ったくせに、あれがこれまでとまるで違う存在であることに気が付いてないってことはないでしょう。
 もしかしたら、何かこっそり対抗策を講じているのかもしれませんが、画面に出さない(=視聴者に伝えようとしない)のでは意味がありません。
 敢えて視聴者に隠しておく理由があるとも思えませんし、やはり猛士側では何もしていないのでしょう。
 アームドセイバーにしても、スーパー童子・姫登場以前に完成しているわけで、単なる新開発の武器でしかなく、新型の魔化魍に対抗するために作られたものではありません。

 イブキが遭遇した洋館の男女について、その後捜索している様子もまるでありませんし、明らかにこれまでとは様子の違う新型魔化魍やスーパー童子・姫に対して疑問を口にする者もいません。
 怪人体にならずに鬼を翻弄するスーパー童子・姫は言うまでもありませんが、新型魔化魍だってこれまでの魔化魍とは性質が異なっています。
 巨大・等身大を問わず、これまでのように同種の童子と姫と一緒に(例:ウブメは、ウブメの童子と姫と一緒に)出現せず、単体で出現しているというのは、これまでの出現パターンから見て、明らかに異常です。
 また、等身大の魔化魍を太鼓以外で倒そうとしている鬼も妙です。
 一応断っておきますが、「等身大の魔化魍を太鼓以外で倒せる」のが悪いわけではなく、誰も疑問を抱かずに弦や管で音撃を仕掛けていることがまずいのです。
 カシャのときは、どうやら「カシャだ」と分かっていたようですから、細かい部分(童子と姫がいないとか)を除けば、これまでのカシャとあまり変わっていないのかもしれません。
 けれど、だとしたらなおのこと、威吹鬼はまず太鼓を使うべきです。
 鬼としてある程度経験を積んだ者なら、等身大の魔化魍を見たら、普通、太鼓以外効かない、場合によっては逆効果になると思うはず。
 そして、外見からしてこれまでのカシャと違うなら、逆に威吹鬼が何らかの反応を見せるべきでしょう。
 初めてオトロシを見た時は、かなり驚いていたじゃありませんか。
 もっとも、彼は、28話『絶えぬ悪意』でも平気な顔でテングを射ってましたから、これも今に始まった粗でもありませんけどね。

 更に、クグツが人員整理されたということは、これまで全国規模でクグツが行ってきた魔化魍育成が止まった、或いは大幅に減少したということです。
 もし、クグツが全て廃棄されているのなら、現在魔化魍は、少数の天然モノ以外は、関東地域限定で、しかも一度に1匹しか出現しません。
 関東支部所属の他の8人の鬼や、他の支部所属の鬼達は、相当暇なのではないでしょうか。
 それとも、全てのクグツが人員整理されたわけではなく、夏が終わって用なしになった白クグツと、だぶつき気味の黒クグツが整理されただけで、実はまだ黒クグツは数体残っており、今でもあちこちで巨大な魔化魍を発生させ続けているのでしょうか。
 また、もし、洋館の男女が、関東方面以外にもスーパー童子・姫と新型魔化魍を送り込んでいるのなら、吉野の猛士本部でも問題にされる(シーンがある)べきです。
 一応、新型魔化魍はこれまでの音撃装備で、それも太鼓でも管でも弦でも種類を問わずに倒せるようなので、猛士側としてはそう大掛かりな対処の必要はないかもしれませんが、新型魔化魍とスーパー童子・姫が揃って出現すれば、1人の鬼では対処に困るのは明白ですから、ローテーションを変えてチーム制にするなどの対策が必要ですし、なによりそれを画面で見せる必要があるのです。
 どう考えても、関東以外、もっと言えば響鬼周辺以外が、今どうなってるかを想定して作っているとは思えません。
 前体制のように「…だと思っている」などとあからさまに隠されるのと、新体制のように全然考えていないのと、果たしてどちらが視聴者にとって幸せなのでしょう。
 …鷹羽的には、新体制の方がストレスになるんですけど。


 一応、ザンキの師匠として朱鬼が出てきたことについては、まず朱鬼に師事した後、朱鬼の追放に伴い先代の斬鬼を師匠としたと解釈するゆとりが残っています。
 とはいえ、10年前にノツゴが現れた時点で、斬鬼に既に変身能力があるどころか、「斬鬼」という鬼名があり、音撃武器まで持っているというのは、どうしたものでしょう?
 ザンキが独立する前に追放されたなら、「ザンキ」じゃなくて「財津原」と呼べよ、と。
 しかも、どう考えても10年前には鬼じゃなかった威吹鬼の名前まで知っているとは…。
 追放後に情報リークしてたの、誰よ…。


 とりあえず、細かいところをつつけばほころびが出るようなフォローも多いですが、それなりに前体制の流れを受け継ごうという気持ちは持っているようです。
 路線変更された以上、体制が変わろうが変わるまいが、以前の設定や描写をそのまま続けられないのは当然ですから、新体制は、これでも精一杯、以前の名残を留めようとしているのでしょう。
 鷹羽としては、展開の雑さには頭を抱えていますが、桐矢以外については、もう少し目を瞑っていようかと思っています。
 桐矢は、口ばっかで、しかもそれが問題提起だけはするけど実質的に展開に絡んでいかないという投げっぱなしキャラなので…。
 あの無駄な怪しさを出すために時間を使うのはもったいないよ〜〜〜。
 鬼の弟子になるつもりだなんて言うなら、体育くらい出ろよ〜〜〜〜〜。
 …でも、もうすぐ鬼になれるという段階のあきらが、走って転けて怪我するくらいだから、鬼になるには運動能力いらないのかなぁ?

 まぁ、展開も雑でない方が絶対嬉しいんですけど…。
 ていうか、一応、鷹羽はニュートラルな立場でものを見るようにしているつもりですが、やはりうっかりミスではない粗というのがかなり表面化してきているのは間違いありません。

 さすがに、36、37話の無理矢理ぶりには閉口しているので、もうこういうのは勘弁願いたい…。




 → NEXT COLUM
→「気分屋な記聞」トップページへ