辛いのは苦手だと何度言えば
後藤夕貴
更新日:2005年11月6日
 ある日、酒の肴のつもりで「暴君ハバネロ」を買ってきた。
 その時、我が家に泊りがけで遊びに来ていた友人と飲むため、コンビニで買ってきたのだ。
暴君ハバネロ・パッケージ。

 ところが、筆者はうっかり、その友人が「辛い物が苦手」だという事を失念していた。

 すでに、筆者にとって「暴君ハバネロ」は辛い部類に入っていないため、ついつい普通のスナックの感覚で買ってしまったのだ。
 うーむ、もったいない事をした。
 そういえば以前、良く冷えたビールと一緒にハバネロをつまんでいたら、ヒリヒリ状態の口の中に炭酸が染み渡り、窓の向こうにヴァルハラが覗いたという人物が居た事も思い出した。

 なんでぇなんでぇ、って事は、ビールのつまみにハバネロはいけないってのかよ?!
 …筆者は好きなんだけどね、うん。

 さて、なんやかやで、翌日になっても手付かずのままだった「暴君ハバネロ」。
 友人が帰ってから一人で消費すれば良かったんだが、筆者はふと、ある「良からぬ考え」にとり憑かれてしまった。


なんとかして、友人にハバネロを食わせる事は出来ないだろうか?


 とはいえ、嫌がる相手を無理矢理押さえつけて、口の中に流し込む、などという暴力的な行為に走ってはいけない。
 あくまで、友人自らが手を伸ばしてくるような状況を作るのだ。
 筆者の、チブル星人の一億分の一に匹敵する頭脳が、電光石火の如く駆け巡り、砕け散る。

 バニーガールの胸元に、ハバネロ。
 メイドさんの膝枕で、ハバネロ。
 零式戦闘機からハバネロを投下。
 ガシャポンカプセルの中に、ハバネロ。

 いずれも、些細な問題がつきまとい実践には至らず、また友人への牽引力に欠ける。
 さて、どうするべきか。
 もっと現実的で、かつ確実性の高い手段を考案せねばなるまい。
 崩壊しかけの脳細胞をフル活用し、筆者は、ついにある方法に辿り着いた。

【用意するもの】
左上・自家製トウガラシ油、左下・自家製だし(濃縮)、真ん中・ハバネロ、右・たまご。

左・三つ葉、右・刻んだタマネギ。

  • どんぶり鍋
  • ごま油(可能なら、トウガラシを漬けたオリーブオイル)
  • 白ご飯
  • 生卵(あらかじめといておく)
  • スライスした玉ねぎ少量
  • 三つ葉少量
  • だし汁(醤油・酒・みりんベースで先に作っておく。なければだしつゆでも可)
  • 暴君ハバネロ
薄くスライスした玉ねぎを鍋に落とし、火が通るまで炒める。

玉ねぎがしんなりしてきたら、鍋の中に砕いたハバネロを投入。

すぐにだし汁を流し込み、さらに、間髪入れずにとき卵を流す。

鍋に蓋をして、火を弱火にして、しばらく火を通す。

【簡単だから、さぁみんなで作ってみよう!!】
  1. まず、ハバネロを器に少量取り、包丁の柄などで軽く叩き、砕いておく。
  2. どんぶり鍋に少量.ごま油(またはトウガラシ油)を張り、熱する。
    はね返りに注意!。
  3. 薄くスライスした玉ねぎを鍋に落とし、火が通るまで炒める。
  4. 玉ねぎがしんなりしてきたら、鍋の中に砕いたハバネロを投入。
  5. すぐにだし汁を流し込み、さらに、間髪入れずにとき卵を流す。
  6. 鍋に蓋をして、火を弱火にして、しばらく火を通す(だいたい15秒程度でOK)。
  7. 器に盛っておいた白ご飯の上に、鍋の中の具を乗せ、刻んだ三つ葉を置く
  8. 凶悪!暴君ハバネロ丼の完成!!
コツは、ハバネロにあまり水分を通さないこと。
ふやけすぎると、途端に食感が悪くなっておいしくない上、辛味が感じられなくなります。
玉ねぎ以外は、さらっと火を通す感覚でいきましょう。
三つ葉は、辛い物がダメな人にとって、唯一の救いの手です。
普通の丼物より、ちょっと多めに入れてあげましょう。


 …とんでもないものを作ってしまった…。

完成! ハバネロ丼。レシピは筆者オリジナルです。…わざわざ主張するほどのものでもないけど。

 出来上がった料理は、水分を吸ってしんなりしたハバネロがアクセントになる、ちょっと粋な丼飯。
 だし汁には、醤油と酒、みりんと鰹節・昆布を長時間煮込んで作った、とっておきのものを使用。
 これなら、ちょっと変わった風味の「麩」を具にした丼として、出せる筈!

 …と思ったら、友人がなんとも言えない複雑な表情でこちらを見ていた。
 しまった、どうやらだし汁の割り方と、ハバネロへの火の通し方が悪かったようだ。
 改良のため、即座に第二弾作成(←要するに自分の分)。
 友人の犠牲を無駄にしないよう、慎重に調整を加えつつ、形作っていく。
 ようやく完成した第二弾「ハバネロ丼」は、なーんとなくトウガラシの風味漂う、歯ごたえなどはまったく無縁の、まずいんだかおいしくないんだかよくわからない物に仕上がっていた。

 ――なんつって。
 一応、火を通す時間を見誤らなければ、多少サクサク感の残る、変わった食感の具が作れる様子。
 なるほど、これを応用すれば、余ったスナック菓子で立派なおかずが作れますな!
 カロリー無駄に高そうだけど。

 という事で、普通の人間ならこんな事はやらないだろうという調理ネタに目覚めた筆者は、次の犠牲者が訪れるのを、今か今かと待ち続けるのであった。


 次は…さしあたって「カール」を材料に…
 ううっ、すぐに水分吸って、ふにゃふにゃになっちまいそうだのう。


 なお、友人がその後、ハバネロが好きになったとか、辛い物が平気になったとかいう話は聞かない。
 最後に、その友人からいただいたコメントを、原文のまま掲載しておこう。


「充分実用ニ堪ウル サラナル改良ヲ祈ル」

 ハバネロの食感がチキンラーメンの茹でかけみたいな感じですねー。
 もっとシナシナした方がいいのかパリパリした方がいいのかはわからない。
 姉妹食としてコンビニの酒のつまみコーナーにあるイカフライスナック(商品名:カライーカ)なんか使ってイカ丼なんてのも面白いかもしれないですー。

(きりしまきっか・談)

 

カライーカのパッケージ。 もうヤケ、ホントに作った(笑)。味は、ハバネロ丼よりも辛くて、かなり通向けな味わい。どちらかというと、筆者はこっちのが好き。

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