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更新日:2005年10月5日 | ||
なんか、このページがやたらと色々なところに紹介されているようで、驚いています。 ですが、必ずと言って良いほど「無駄に文章が長過ぎる」という指摘も… う〜ん、このサイトは元々長文批評やコラム掲載の読み物サイトなんで、そんな事言われても困るんだけどなあ。 元々主旨が違うんだから、実質本意ばっか求められても、よわってしまうんですが。 とはいえ、確かに余計な部分が多いのも事実でして。 よって例外的ではありますが、このページだけ「簡略版」を設置しました。 文章量は、約半分に削っています。 ノーマル版はこちら。 説明不足と思われる部分がありましたら、ノーマル版も覗いてみてください。 では☆ 近年、玩具製品の完成度が全体的に高まり、以前では考えられなかったハイレベルな商品が増えてきた。 だが、製品のグレードが高まる事に反比例するかのように、目に見えて低下している部分がある。 それが「保存性」。 より細かく言えば、「製品を安心して保管または飾る事が困難になった」というものだ。 という訳で、今回はこの「保存性」の障害となっている“癒着”と“硬化”について。 最近の玩具には、ABSやPVCなどがよく使われている。 ABSとは、 ACRYLONITRILE(アクロル二トリル) BUTADIENE(ブタジエン) STYRENE(スチレン) の略で、材質寿命が長く、リサイクル性の高いプラスチックのような樹脂で、変形に強く硬質。 PVCとは「ポリビニル・クロライド(ポリ塩化ビニール)」の事で、絶縁体などによく使用されるポピュラーな素材。 ガシャポンフィギュアなどは、だいたいこれが使用されている。 これらは最近よく玩具の素材に用いられているが、ABSはともかくPVCの方は、色移りや癒着が起こりやすく、一部のユーザーを悩ませている。 このPVC、玩具によく使われている材質と、とことん相性が悪い。 その「相性が悪い」中には、PVC自体も含まれる。 癒着するのは、PVCだけでなく塗料によるものもある。 厚塗りされた塗料の皮膜がくっつき、同化して固まってしまうのである。 ずっと飾りっ放しにしておいたPVC製のミニフィギュアのパーツが、異常に外しづらくなった経験はないだろうか? それが癒着の始まりだ。 現在次々に新作が発売されている「聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)」でも、似たような問題が発生している。 これは、各聖闘士の髪の毛の一部分を取り外し、そこにマスクパーツをはめ込んで装備させるという新解釈が売りなのだが、この状態で放置すると髪パーツとマスクパーツが干渉し始め、色移りや癒着が発生する。 また、アイオリアやカミュ、シャカなどは付属のマントに髪の毛の色が移る。 さらに各種拳パーツもPVC製のため、本体や他のパーツとの癒着が心配されている。 しかも、すでに被害報告が各所で多く見受けられるようになっている。 まだ発売されてから何年も経過したわけではない「聖闘士聖衣神話」にして、ここまでの問題が出ているというのはまずいだろう。 しかし、こう書くと神話ファンの方の中から「パーツの間にセロテープなどを挟んで癒着防止すればいいだろう」と述べる人が出てくると思うが、それはより事態を悪化させてしまうだけだ。 そもそも、セロテープを使うという発想自体がまずい。 セロテープは短期間の接着には確かに役立つが、時間が経つと糊とフィルムがそれぞれ激しく劣化し、付着した部分に悪影響を与え始める。 糊は周囲に茶色いシミ状の変色を発生させ、フィルムは部分的に癒着し始める。 あまりに長期間放置するとパリパリになるが、それでも糊は硬化してこびりつき、剥がれる事はなくなる。 こんな危険なものを使うくらいなら、そのままパーツを癒着させた方がマシなのだ。 というか、長期保存を目的とするものには、絶対に使用してはいけない。 何年も経ったガシャポンのフィギュアをもう一度組もうとした時、やたらと固くなっているような気がした事はないだろうか? これは、素材のPVCから「可塑剤(かそざい)」が気化してしまい、その結果“硬度を取り戻した”ために発生する現象だ。 可塑剤とは、塩化ビニールなどの素材に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質のこと。 色々種類があるらしいが、PVCなどに用いられるのはフタル酸エステル。 結構誤解されやすいが、塩ビは元々固い材料で、この可塑剤が添加される事で柔らかくなる。 つまり可塑剤が抜けて固くなってしまった後の方が、塩ビ本来の姿なのだ。 決して、元々柔らかい塩ビが、経年劣化で固くなるという訳ではない。 もっとも、ユーザーにとって「硬化」である事には変わりないから、そう呼んでも間違いではないとも思う。 とにかく、この可塑剤は時間経過によってどうしても抜け出てしまうものらしいので、硬化はある程度やむをえないだろう。 だが本当にまずいのは、この可塑剤が抜け出る過程で「一部の塗装を溶かしたり」する場合がある事だ。 最近のユージンのフィギュアは、これを避けるためにスカート裏面はまったくの無着色状態にするという工夫を行っている。 また、カプセル封入時には各パーツごとにビニールをはさみ、直接の干渉を避けるようになっている。 バンダイやタカラなどのDX玩具系のいたるところにビニールが挟まれているのも、これと同じ理由だったりする。 色移りさえしなければ、固くなってもまだ組み立てられる可能性はあるわけで。 こういう工夫をしてくれるのは、限界が見えているとはいえ大変ありがたいものだと思う。 ――が、実はPVC製品以外にも癒着・硬化しやすいので有名なものがある。 それが「ソフトビニール」だ。 これについては、思い当たる人も多いだろう。 ソフビことソフトビニールも、可塑剤によって弾力を保っているのだが、抜け出てしまうと硬化した上に割れやすくなり、大変扱いに困るようになる。 (また、可塑剤が抜ける頃には表面がベタベタしてくる事もあるそうだ) ブルマァクの怪獣ソフビで、ゴメスのシッポが取れやすいと言われるのもこれが原因で、同様にキングギドラも、あの細い角が破損しやすいという。 癒着については、とにかくビニール系ととことん相性が悪い。 癒着は、圧力がかかる事で発生しやすいというので、パーツごとにそれなりにゆとりのあるスペースが確保されると、くっ付きにくいとも言われている。 だがその癒着に必要とされる「圧力」というのは、どれくらいの強さのものなのか。 これがなんと、商品の梱包程度の強さで充分条件を満たしてしまう。 例えば、ソフビとビニールパーツをくっ付けたものが、最近流行の針金梱包によってくくりつけられているとしたら、もうそこに癒着の条件は整ってしまう。 つまり「圧力と意識するほどでもない力で、充分くっついてしまう」という事だ。 これは本当に怖い。 PVCやソフトビニールのように、適度な弾力を持った用途の広い別素材が安価で登場すれば問題は緩和されるのかもしれないが、なかなか難しい気がする。 → NEXT COLUM |
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