ネーミングの話 第4回 身の回りのあれこれ
鷹羽飛鳥
更新日:2005年2月27日
 今回は、ちょっと身近なネーミングの話を少々。
 マンガのキャラクターの名前などが、何かに拘って付けられていることは結構多いです。
 かの『ドラゴンボール』に登場するサブキャラクターは、連載開始当初は烏龍、飲茶などの中華料理系が多く、後にレッドリボン軍編では色、ピッコロ大魔王編では楽器といった具合に、あるジャンルを元ネタに統一していました。
 このうち、ブルマの家族は下着類で統一されていたため、彼女の息子は、美形キャラであるにもかかわらず凄い名前になっていました。
 妙齢のファンの女性達が「トランクス可愛い〜!」などと盛り上がっているのを見ると、一般人から変な目で見られはしないかと、他人事ながら心配になったものです。
 
 もちろん、こういった傾向は、『ドラゴンボール』に限ったものではありません。
 同じジャンプマンガの『るろうに剣心』で、キャラクターの一部に新潟県内の地名が使われていたのは有名ですね。
 明神弥彦、乙羽瓢湖など、色々な地名が使われていましたが、鷹羽は、後に、鉄甲マダラヤロウ:三浦番神というキャラも地名から来ていたことを知りました。
 去年、柏崎港で冷蔵庫詰めの死体が見付かるという事件がありましたが、その柏崎港のある場所は柏崎市番神でした。
 これを新聞で見付けたときに「番神って地名だったの!?」と、新潟県民らしくない発見をしたことはここだけの秘密です。
 
 少々レベルの違う話になりますが、現実の建物などでも、地名にちなんで付けられることがあるようです。
 道路や鉄道は、始点と終点の地名を繋げたものが結構ありますよね。
 先日の元締の文章中に出てきた「新新バイパス」は、新潟市と新発田市を結ぶバイパスであり、「新潟」と「新発田」の頭の一文字を取って付けられています。
 だからこそ、同じ字が重なっているにもかかわらず「新々バイパス」とはならないのです。
 
 新潟のトイザらスが入っているビルはデッキィ401というかなり変な名前で、鷹羽はずっと不思議に思っていたのですが、あるとき、ふとしたことから、所在地が新潟市出来島(できじま)401番地だということを知って、いきなり謎が解けてしまいました。
 がっくりです。
 世の中には、しょうもないことで名前が決まってしまうことが結構あるのだと、またひとつ大人になりました。



 世間には、身内の中だけで通じる愛称なんてものもありますが、そんなのも大概しょうもない理由から付けられるもののようです。
 鷹羽の家には、「ボク」「タヌキ」「おおぅ」なんてものがあります。

 「ボク」というのは、生ゴミ用ペールの裏蓋に貼るタイプの消臭剤です。
 柑橘系の無茶苦茶強い臭い(既に香とは呼べない)がするのですが、鷹羽の家では、当初、このペールを室内に置いていたため、生ゴミを捨てるたびに凄い臭いが室内に漂いました。
 辟易した相方との会話の中で、臭いが強烈な理由は、消臭剤が「ボクの方が(生ゴミより臭いが)強いんだぞ〜〜〜っ!」と生ゴミの臭いを打ち負かしているからだという結論に達し、以後、この消臭剤は「ボク」と呼ばれるようになりました。
 生ゴミを捨てるときには、「ボク、出ま〜す」と言ってからペールを開けます。
 「今、消臭剤の臭いがするから覚悟してね」という予告をしてから開けるわけです。
 消臭剤の話とは思えませんね。
 その後も、「最近、やっとボクが臭わなくなってきたね」「そうだね」なんて会話が交わされていました。
 よその人にはさっぱり分からない内容です。
 
 
 「タヌキ」というのは、マヨネーズです。
 「なんでマヨネーズがタヌキ!?」と思われるでしょうが、実はこれ、テレビがきっかけだったりします。

 以前、TBS系の『噂の! 東京マガジン』という番組の中で、自然材料のみを使ったために「マヨネーズ」と表示できなくなってしまった悲劇の商品を取り上げたことがありました。
 そのとき取り上げられていたのは、『松田のマヨネーズ』という商品で、厚生省辺りからクレームを付けられてドレッシング扱いになってしまったという話題でした。
 『松田のマヨネーズ』は、甘味を自然にするため、砂糖を使わず蜂蜜を使っています。
 ところが、JAS規格で“マヨネーズとは、卵と油と酢と柑橘系果汁と砂糖類で作ったもの”と定義されており、蜂蜜は畜産品に分類され、糖類とは認められないのだそうです。
 決して成分的に問題があるとかいうわけではないのですが、規定に外れるため、“マヨネーズではない”とされたんですね。
 こうした規定外の材料を使ったものは「マヨネーズ」ではなく「半固形状ドレッシング」という範疇に入るので、商品にはそのように表示しなければならないのです。
 本来、こういった規定は、怪しげな材料を使われることを防ぐためにあるのですが、杓子定規にできているので、こういったジレンマに陥ることがままあるそうです。
 ただし、「マヨネーズ」と表示しなければよく、「マヨネーズタイプドレッシング」なら問題はないというなんだか中途半端なことになっています。
 そのため『松田のマヨネーズ』は、材料を変えるのを潔しとせず、『松田のマヨネーズタイプ』と名前の方を変えました。
 パッケージデザインは変えず、これまでの「松田のマヨネーズ」というロゴ部分を「松田のマヨネーズタイプ」に変更するだけにとどめていますが、パッケージ裏面の商品表示には「半固形状ドレッシング」と表示してあります。
 そういえば、エコナのマヨネーズも、「マヨネーズタイプドレッシング」という表示になっていますね。
 
 その番組中で、『松田のマヨネーズ』愛用者へのインタビューがありました。
 要するに、“いい材料を使っているがために名称を変えさせられた矛盾”をどう思うかという質問です。
 このときインタビューを受けたおばさんの1人が、「全然気付かなかった。いつもこれ買ってるから、名前まで見てないのよ。きっと『マヨネーズタヌキ』になっていても気付かなかったわ」なんて答えて、インタビュアーを面食らわせていました。
 このおばさんは、普段、パッケージの絵や『松田の〜』というロゴだけを見て識別して買っていたから、「マヨネーズ」以降のロゴがちょっと変わっていることに気付かなかったと言っているわけです。
 変わったもの好きな鷹羽は、「タイプ」と引っかけて「タヌキ」と言ったおばさんのセンスにすっかり痺れてしまい、この『松田のマヨネーズタヌキ』を使ってみることにしました。
 マイルド過ぎて、鷹羽としては、正直、もうちょっと酸味などのインパクトが欲しかったです。
 ともあれ、鷹羽の家では、この後しばらく他社のマヨネーズとこの『松田のマヨネーズ』を併用しており、サラダなどの際には、「どっちにする?」「うーん、今日はタヌキにしよう」などという、これまた他人には意味不明な言葉が飛び交っていました。


 「おおぅ」は、もう少し一般的かもしれません。
 「ハーバルエッセンス」というシャンプーとコンディショナーのペアです。
 テレビCMで、飛行機の中でスチュワーデスが洗髪し、「おおぅ♪ おおぅ♪」と感激していたアレです。
 例によって、鷹羽は、早速買い込んできました。
 使ってみてどうかというと…これも個人的な感想ですが、髪がバサバサになるようで、あまりよろしくありません。
 手櫛をすると、指が髪の毛に引っかかりますので、相当髪の滑りが悪くなっているのでしょう。
 いつもの鷹羽なら、ここで「誇大広告だ!」とか「嘘つき!」とか言うのですが、これについてはそういう気にはなりませんでした。

 実はこのシャンプー、別な意味で「おおぅ」と声が出てしまうからです。

 これのボトルは、旅行用携帯シャンプーなどでよく使われている“ボトルを逆さにしてちょっと力を込めると、キャップの穴から液が出てくる”タイプなのですが、シャンプー自体の粘度が低いせいか、ちょっと押しただけでどばっと出てしまうのです。
 あまりの出方に、思わず「おおぅ!」と叫んでしまうほどです。
 なるほど、これが「おおぅ」の真実だったのか…というわけで、これは「おおぅ」と呼ぶことに決定しました。
 ある意味、真実を突いたCMだったのですね。
 鷹羽は、髪が痛みそうな気がするので、普段は別のシャンプーを使っていますが、それだと一向に「おおぅ」が減らないので、3〜4日に1回くらいはこっちを使うようにしています。


 時々、バカなことやってるなあと思わなくもありませんが、それはそれで生活の潤いということで。
 案外、夫婦の会話の種になったりするもんです♪
 きっと、世間の意味不明な言葉も、こんなきっかけで名前が決まっているんでしょうね。


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