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更新日:2004年5月16日 | |||||||||||||
アリエナイザーに対しては、スペシャルポリスの要請に応じて、遥か銀河の彼方にある宇宙最高裁判所から判決が下される 毎回、「ジャッジメント!」の要請からわずか60秒で「デリート許可・不許可」の判決を下す宇宙最高裁判所。 宇宙の彼方とリアルタイムで通信できるのは、惑星間通信が存在する以上問題ないわけですが、要請から判決までの時間が異様に短いという点は、それだけでは説明できません。 世間的にも、“こんなに短時間で死刑を決めちゃっていいのか!?”という意見があるのも事実です。 まぁ実際『未来戦隊タイムレンジャー』では、圧縮冷凍という“殺さずに倒す”方式を採っていたわけですから、似たような捕獲方法を使って捕り物として特化させるという手法も選べたわけですね。 『デカレンジャー』は刑事ドラマ風の作劇が特徴ですが、大抵の刑事ドラマでは犯人は逮捕されて終わるのが一般的ですから。 犯人に自殺されて終わってばかりでは、無能な警察に見えるということもあるでしょうし、日本の法制度上、警察官が犯人を射殺するということはほとんどありえませんからね。 もちろん、デリート許可の「×」、不許可の「○」を表示するSPライセンスやデカレンジャーロボといった商品展開上の要請でもあるのですが、それを言っちゃあ野暮ってもんです。 そこで、今回は、どうやってこのような迅速な裁判が行われているのかについて考えてみましょう。 まず、日本における捜査・裁判について考えてみます。 日本における捜査や刑事裁判の手続は、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)という法律に基づいて行われています。 捜査について。 捜査には強制捜査と任意捜査がありまして、分かりやすく言うと強制捜査というのは、逮捕状や捜索差押令状といった令状を必要とする手続、任意捜査はそれ以外の手続ということになります。 刑訴法では逮捕は、現行犯逮捕、逮捕状による通常逮捕、逮捕状が間に合わない場合の緊急逮捕の3種類と規定されています。 『半落ち』のような例外もありますが、一般的に刑事ドラマは逮捕するまでの物語です。 そして、逮捕された容疑者は48時間以内に検察庁に身柄を引き渡され、そこで取調を受けて21日以内に起訴され、その後裁判を受けることになるわけですが、『女検事〜』といった検事が主人公のドラマはこの部分を描きます。 次に裁判ですが、刑訴法では、裁判が3審制(一審、控訴審、上告審)であること、3年以上の懲役刑が含まれる罪(例:窃盗…10年以下の懲役)には弁護人が付かなければならないこと、最低懲役1年以上と規定されている罪(例:傷害致死…2年以上15年以下の懲役)の裁判は3人の裁判官で行うことなどが決まっています。 また、「疑わしきは被告人の利益に」という制度であるため、裁判官にクロだ(犯人に間違いない)と思わせるだけの証拠がなければ無罪の判決が下されます。 犯罪の証明は検察側の仕事で、被害者・目撃者の証言や指紋の鑑定結果などの証拠を、まず弁護人に見せ、被告側は、それら証拠について裁判の日までに「これは認める、これは認めない」という返事をします。 裁判官は、先入観を持つことのないよう、裁判が始まるまでは証拠を見ることができず、被告側が「これは認める」という意思表示をした物だけが裁判所に提出され、裁判官の目に入ることになります。 これは、例えば供述調書などで、被害者に対して「こことここの供述が矛盾している」などと突っ込みを入れるチャンスを、被告側に与える必要があるためです。 これは、理屈に合わない供述をする被害者や、被告を陥れようとして嘘の供述をする目撃者がいて警察が見抜けない場合や、警察による証拠ねつ造などの可能性を考慮した制度と言えます。 被告側が認めなかった証拠書類については、弁護士系のドラマでよく見る証人尋問をして、検察側が証人から聞いた供述について、内容を弁護人が突っ込みを入れ、そのやりとりを聞いた裁判官が“この人の証言は信用できる”と思うかどうかという勝負になります。 うまく揚げ足取りすると、たとえ本当のことだったとしても、印象としては嘘臭くなりますから。 例えば「右手で殴りました」と言っている目撃者に対して、弁護人が「拳が当たった瞬間を見ましたか? グーでしたかパーでしたか? あなたの視力でその場所から本当に見えたんですか?」などと問いつめて、目撃者が「私は目が悪いけど、でも被害者は吹き飛んだので、多分当たったと思います」と答え、それに対して弁護人が「つまり、はっきり見てはいないんですね?」と追い込んだら、なんとなく目撃者の話は信用できなくなってきますね。 『仮面ライダー龍騎』で黒を白にする弁護士の北岡が「裁判なんてゲームみたいなもんさ」と言っているのは、この反対尋問の技術、悪い言い方をすれば舌先三寸で無罪を勝ち取れるという自信の表れです。 もっとも、日本の刑事裁判では、無罪判決は欧米に比して非常に少ないそうです。 まぁ、北岡も浅倉を無罪にはできませんでしたね。 この場合、北岡は到底無罪にはできないと判断して、“被害者側にも非があった”という方向で攻めて情状酌量を狙ったのでしょう。 話を戻しましょう。 証人尋問というのは、なにせ喋ってやりとりするわけですから、非常に手間が掛かります。 和歌山で夏祭りのカレー鍋に砒素を混ぜ、それを食べた人が砒素中毒を起こしたという和歌山砒素カレー事件は'98年7月に起きましたが、一審の判決が出たのが2002年12月と、実に事件発生から4年以上経っており、しかも控訴審は2004年の4月に始まったばかりです。 この後、まだ上告審が控えていることを考えると、まだまだ時間がかかるでしょう。 しかも、死刑が確定しても、法務大臣が死刑執行の書類にサインするまでは生きていられるそうです。 大臣によってはサインしたがらない人もいて、任期中1人も死刑執行させない人もいるとか。 では、『デカレンジャー』の場合はどうでしょう。 スペシャルポリスは警察官でありながらジャッジメント要請、つまり起訴までやってのけ、弁護士も証人もいない中での超迅速裁判が行われます。 しかも、デリート許可(死刑判決)が出れば、数秒後には死刑執行まで終わってしまうのです。 日本と法制度が違うにしても、凄すぎですね。 宇宙最高裁判所の裁判官は、どうやってデリート許可の判断をしているのでしょう? まず言えるのは、証拠関係のデータは、ジャッジメントの要請前に裁判官が見ているはずだということです。 いくらなんでも、要請の後で資料を読んでいたのでは、60秒で判決を出すことは無理でしょう。 とすると、スペシャルポリスや組織スタッフは、かなりこまめに各犯罪者に対するデータを宇宙最高裁判所に送っているということになります。 ところが、ここで1つ疑問があります。 6話『グリーンミステリー』では、女性斬殺犯としてバンがジャッジメント要請したブライディに対し、デリート不許可の判決が出ているのです。 この時点で、ブライディが犯人ではないと思っているのは、デカレンジャーの中でセンちゃんだけのはず。 つまり、
いくらなんでも4のパターンは無茶ですから除くとして、ほかの3パターンでは、いずれも事前に捜査情報を送っていなければならないことになります。 となると、捜査に当たっているスペシャルポリスの持っている情報は逐一吟味・整理されていて、宇宙最高裁判所の裁判官は、事実関係が一目瞭然な証拠を見ることができるということなのでしょう。 日本の法律とは随分違いますが、その差はどこからくるのでしょう? まず第一に、処罰対象となるのがアリエナイザーという特殊な能力を持つ異星人犯罪者であることが挙げられます。 刑訴法は、“万が一にも無実の者を罰してはならない”ことを念頭に色々な手続を定めており、先に挙げた3審制も手続を重ねることで慎重を期しているわけです。 これは主に犯人は人間で、しかも一旦捕まってしまえば、公権力の前には無力な存在であるという現実を踏まえていると思われます。 その点アリエナイザーは、武装したスペシャルポリスがやっと取り押さえるような強力な特殊能力者であり、出身星以外では個体数が多くないという条件が、“こんなことができるのは○○星人しかいない”→“地球に来ている○○星人は×と□だけだ”という図式を生み、“犯人はこいつしかいない”という結論を導きやすいため、真犯人以外の者を間違って処罰してしまう危険性が少ないと言えます。 また、特殊能力を持つが故に、捕らえた後で逃げられないよう見張るのも大変であり、宇宙の墓場に護送する途中で凶悪怪獣に逃げられた某銀色の宇宙人みたいな不祥事を起こさないよう、捕らえたその場で処罰してしまおうという制度を作ったのでしょう。 次に、捜査状況についてです。 刑訴法では、正しい証拠に基づいて裁判を行うのが前提です。 「正しい証拠」とは、正当な手続に基づいて得られた証拠で、なおかつそれが真実に基づくものであることが要求されます。 盗聴で録音した会話のテープなどは「違法収集証拠」と呼ばれ、薬物密売など特殊な犯罪以外は裁判で使えません。 また、被害者の供述調書などは、意識的に嘘を言う可能性を除外しても、被害者の勘違いや思い込みなどで、真実と違う話がなされている恐れはあるわけです。 3発しか殴られていないのに「4〜5発殴られた」ような気がすることは、よくあることだと思います。 刑訴法では、そのために“被告側から聞き返して確認する”反対尋問を規定しているわけですが、ジャッジメントにおいてはそのチャンスは与えられません。 となると、まずネックになるのは、スペシャルポリスが集めた証拠が信用できるかどうかということです。 一番いいのは、彼らの行動を全てモニターしておいて、それらの情報を宇宙最高裁判所に送ることですが、それでは情報量が膨大すぎます。 また、24時間行動をモニターすると、トイレやお風呂にもおちおち入れませんから、モニターするのは彼らの捜査活動中の言動、聞き込みの応答、それらに対する彼らの判断などに限定しなければならないでしょう。 そこで役に立ちそうなのが、スペシャルポリスの身分証兼変身アイテムのSPライセンスです。 12話『プライド・スナイパー』で、デカベースの惑星間通信システムが使えなくなった際、誰もSPライセンスで通信しようと試さなかったことからすると、SPライセンスが単独で惑星間通信できるわけではなさそうです。 おそらくデカベースの通信機器とリンクすることで惑星間通信が可能になり、宇宙最高裁判所にジャッジメント要請のシグナルを送っているのでしょう。 まさかSPライセンスが宇宙最高裁判所との直通回線だけを持っているなんてことはないと思います。 もし、SPライセンスがモニターと電子手帳のような機能を併せ持ち、彼らが証拠を入手した状況及びそれらに対する考察を自動または手動で入力できるとしたらどうでしょう。 入力されたデータは、デカベースでモニターされ、スタッフの手で必要部分をピックアップして宇宙最高裁判所に送られる、と。 これなら、事前にアリエナイザーのデータベースが蓄積されていることになりますから、裁判官はそのデータを見ながら短時間で判決を決めることができます。 あるいは、このデータベースはスペシャルポリスの本部で持っていて、ジャッジメント要請と同時に宇宙最高裁判所に送るのかもしれません。 本部で持っているデータベースは、捜査を始める際に見ているものと同じで、逐一情報が付け加えられているのかも。 上記の12話では、ボスの口から「既にデリート許可が下りている」という言葉が出ています。 ということは、デカベース内の通信機器を使って、事前にジャッジメント要請が可能ということですから、目の前にアリエナイザー本人がいなくても、データだけでジャッジメントできるんでしょう。 そして、このシステムだとスペシャルポリスが意識的に証拠をねつ造できる可能性があるわけですが、捜査活動中の行動をモニターしていれば、ねつ造自体は防げます。 また、本部でのチェックスタッフが、宇宙警察の職員でなく、宇宙最高裁判所からの派遣職員などのような中立性を保てる者ならば、スペシャルポリスの捜査による情報の真偽をその時点で吟味することができるでしょう。 逆に言えば、3話『パーフェクトブルー』のように、捜査で誤った情報(ヘルヘヴンの単独犯行)を得て自信たっぷりに送ってしまうと、自動的に判決も間違ったものになってしまう恐れがあります。 今にして思えば、ヘルヘヴンがよその星で多くの殺人を行っていなかったら、本来デリート不許可になっている可能性もあったわけです。 もしそうなら大問題でしたね。 スペシャルポリスの捜査には、それほどの信頼と重責がかかっています。 ホージーのプライドの高さも納得! でしょうか。 でも、せっかく本部から事前のジャッジメント要請ができるんだから、デカレンジャーが戦闘中に、さっさとボスが要請を済ませて、「デリート許可が下りた!」とか指示する方が格好いいような気がしますね。 今のままだと、短時間とはいえおろおろしているアリエナイザーがマヌケに見えてしまいますから。 → NEXT COLUM |
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