オリジナルもつらいよ 後藤夕貴
更新日:2004年5月4日
 筆者は、このサイト内で今のところ唯一オリジナル作品を執筆してたりします。
 元々オリジナル畑の人間なので、こういう創作モノをよく作ります。

 「ORIGINAL-NOVELS」のコーナー唯一の掲載作品「美神戦隊(びしんせんたい)アンナセイヴァー」という、カット付きの小説ですね。

 よく「びんせんたい」と呼ばれてしまいますが、「び“し”ん〜」ですので念の為(笑)。

 こんなもののどこが小説だっていう話もありますが(笑)、そちらについてはどうかお許しください。


 今のところ、自分にとって一番多くの人目に晒されている形になっているオリジナル作品なので、かなり気合い入れて製作していますが…まあ、ここで作品内容の紹介をしても仕方ないので、今回はこちらの製作事情・舞台裏なんかを書いてみたいと思います。


 ご存知の方も多いと思いますが、この「ORIGINAL-NOVELS」というコンテンツは、更新がめったやたら遅いんです。
 2000年から連載開始し、今年で4年目だというのに年の平均更新回数はせいぜい2〜3回。
 しかも、夏と冬中心という間の開き方。
 これでは、更新回数命のWEBサイトとしては失格です。

 いただくアンケートでも「とっとと更新してくれ」という催促がかなり来ております。
 なので、筆者も大変気にしているのですが…これには、泣くに泣けない事情が多数ありまして、どうしても間が開いてしまいます。
 今年こそは、なんとしても改善したいんですけどね。


 この作品の場合、「本文作成」の後に「カット作成」というおおまかな工程があるのですが、それぞれでかなりの手間と時間がかかっています。

 まず「本文」を書く前に、ストーリープロットを作成します。
 これは、次のエピソードやそこから起因する次々回との関連や、提示情報・描写の組み込みを検討し、目的を明確にするため必要な工程です。
 毎回これを2回くらい作り直して、それからそれに従った内容を構築していきます。
 例えば、「今回の話でアレがああなって、コレがこうだという事が判明して…」といった方向性を決めるのです。
 マンガで例えるなら、企画からコンテ書きに相当する作業でしょうか。

 個人的には、ここが一番楽しい作業です。

 前回、鷹羽氏が「評論製作の工程の説明」を書いておりましたが、この作品も同様のプロセスを踏むわけで、まずこの時点で一度スタッフ各位に検分を依頼します。
 ここで、展開に無理があったり粗があったりした場合、ツッコミを入れてもらうわけです。
 そして、やりたい事が長くなりすぎたりした場合は、切り分けを検討します。
 当然、事と次第によっては丸ごと没になる事だってあります。

 さらに、作品中で出てくる「現実世界とリンクしている」情報の精査も行います。
 例えば「今回の舞台は、東京のどの辺で行うべきか。どこが相応しいか」というのを検討し、地理や地図、路線図などに詳しい梨瀬の知恵を借ります。
 敵がある場所からある場所まで進行すると仮定した場合、どういうルートを選択する可能性があるかとか、今回の戦闘の舞台のイメージとよく似た場所はどこにあるか、等です。
 また現在は、航空方面についての情報も必要なため、そちらに詳しいきっか氏の意見なども参考にさせてもらっています。

 また、この作品の中では警察の描写も結構出てくるのですが、これまたかなりややこしいです。
 こんな事件が仮に発生したとしたら、警察はどういう動きを見せ、どういう事を考えるか…といったシミュレーションをするわけですが、これは「習慣鷹羽」の平成ライダーページで深い考察力を発揮していた、鷹羽氏の意見を参考に練りこんでいきます。
 無論ある程度の粗はあるかもしれませんが、「こういう事もありうるんじゃないの?」的なレベルで検討していく訳です。
 いずれは「自衛隊出動とそれに関係する事情の考察」なども考慮に入れていかなければならないのですが、その際は、またそちらに詳しい人の意見を借りていく事になります。
 こういう工程を経て、ようやくプロットが完成に近づきます。


 そして本文製作ですが、実はここだけはかなりのスピードで進みます。
 筆者のクセで毎回かなりの長文になってしまうのですが、一度筆が乗れば一気に書き進める事が可能になります。
 ただ、ここでまたまた粗が生じたり、展開に無理が出て来たりする可能性もあるので、暫定完成後再び検分にかけてもらいます。
 ここで校正をしていただき、あらためて修正をします。

 ここまでで他のスタッフの力を相当借りている訳ですが、なにせ他の原稿に比べて確認事項が多い物である上、更新にどうしても時間がかかるという事情もありますから、他のスタッフの原稿構成依頼とぶつかるとどうしても作業が後回しになってしまい、結果的に完成が遅くなってしまいます。
 これを書いている現在も、すでに暫定完成版の本文が5本くらいあったりします。
 これらはこれから検分にかかっていくわけですが、ヘタに出すと他のスタッフの生活時間を圧迫しかねないので、うまくタイミングを見計らわなければなりません。


ペン画をスキャナで取り込んだ直後の無加工状態。実際はもっときったないです。
線をすべて綺麗に整え、カーブ曲線を別の画像ツールで正確なものに整えた状態。線そのものにもすでに着色されています。
それぞれのパーツの基本色を乗せた状態。ここに至るまでにもかなりの難儀な行程を踏んでます。
パーツに影を付けた状態。なんとなく「らしく」なってきています。この時点で、瞳の中だけで5階層レイヤー分けしてあったりします。
三段階目のもっとも濃い影を入れ、髪にハイライトが加わりました。…あんまり違いがわからないかな?
各部にハイライトを入れ、ようやくキャラクターが完成。で、ここから背景効果の処理を始めますから、先はまだまだ長いわけです(笑)。
 次に、カットです。

 検分依頼をかけたのと同時に、「どういう場面のカットが見たいと思うか?」という質問を他のスタッフに投げておきます。
 それにより、必要と思われる場面を見繕っていくのですが、1回のエピソードに掲載できる画像数には限界があるため、なんでもかんでも描くわけにはいかず、結果的に参考意見として承り、数を絞って行きます。
 時々、「こんな場面描けないよぉ」という泣き言を入れてしまう事もありますが、そういう時はいつも「なんでこんな場面にしたんだよまったく! こちらの苦労も知らないで。書いた奴の顔が見てみたいもんだよ」と、つい考えてしまいます。
 …もちろん、その後鏡を見に行くわけではありませんが。

 カット製作は、全工程の中で一番時間がかかります。
 まず、ノートに大雑把なラフを書いて、アングルや構図を決定します。
 ここも、マンガのコンテみたいな感じですね。
 すでに別のノートに絵の設定をまとめてありますので、それを開きながらケント紙に向かって下書きをサラサラと…はいかず、何度も描き直したりして完成させます。

 カットの原稿サイズは、実はかなり小さいです。
 せいぜい10センチ四方くらいの大きさで、大型カットの場合でもA5サイズが限度。
 これ以上大きくなると、加工にさらなる時間がかかってしまうため、やむをえません。
 そのため描き込む情報量が減りますが、元々CGの原画はマンガのように映像情報を詰めこむ事ができず、ある程度簡略化しなくてはならないため、必然的に大雑把になっていきます。
 もちろん、これは人によって違うんですけどね。
 パソコン上で一から背景効果を描き加える前提で製作したりするので、この時点での原画は、異様にあっさりしていたりします。

 その後、畳み掛けるようにペン入れを施し、ゴムかけ…この辺の作業は、私自身の絵の練習も兼ねているので、どうしても時間を必要としてしまいます。
 ただ、あまりに時間がない場合には、そのしわ寄せが背景などに出てしまう事も多く…結果的に手抜きになってしまうのですが、これは今後の反省点です。

 ペン入れが完成すると、今度は筆者用のマシンとは別のパソコンに接続されたスキャナを使い、線画を取り込みます(→ペン入れ画スキャン直後参照)。
 それを筆者のマシンに転送し、画像加工ツールを起動。
 ペン入れされた原稿は、そのままで見るとそこそこ綺麗に思えても、モニター上で拡大するとものすごい粗ばかり。
 なので、これを丁寧に整えて綺麗な線に直していきます。

 私の場合、トーンカーブやレベル補正を多用し、その上で手作業修正を行ってほぼ100%すべての線を補正してから、演算処理で主線をアルファチャンネル化、レイヤーに投影させるスタイルを用います。
 髪の長いキャラクターの髪型とか、変身後の主人公の頭から伸びているリボンなど、正確な曲線を必要とする絵の場合は、一度別なソフトを立ち上げ、そこでベジェ曲線を描きこむ必要があります(→線画補正処理後参照)。

 以前はスペックの低いマシンで画像作成作業をしていたため、わざわざ一度別なマシン(スペックが高い方)に転送してからベジェ曲線組み込みとその結果を反映させる処理を行い、またそれを元のマシンに戻すという、複雑な工程を踏んでました。
 つまり「別なマシンからデータを持ってきて作業して、また別なマシンに移し、また戻して…」というわやくちゃな事をやっていた訳なんですが、昨年末この作業の簡潔化のためにマシンを新しくしたので、今では一台のマシンで作業できるようになりました。
 実は、この工程をさらに簡略化しようと思い立ち、マシン間の直接データ転送を実現させる目的で無線LAN環境を組んだのですが、インフラストラクチャモード(アクセスポイント利用のみのモード)でしか設定が出来なかったためにそれも叶わず、結局今までと同様マシンの間を行ったり来たりするハメになっています。
 世の中うまく行かないものです。
 
 筆者の場合、ここまでで二週間近くかかってしまいます。
 ええ、もちろんカットだけで…全然ダメですね。
 

 次に、彩色です。
 線画まで起こしたファイルに色を塗る部分をすべてアルファチャンネルで切り分け、いわゆる「色塗り部分の型紙」みたいなものを大量に生産します。
 たとえば「肌色彩色部分」とか「髪の毛部分」とか。
 主人公達の変身後の姿、髪の色と服の色が共通なのが多い理由は、実はこの辺に密接に関わっていたりします(笑)。

 筆者はなるべくアニメーション調の色を塗っていこうと思うタイプでして、それぞれの色に三段階の明暗をつけて行きます。
 キャラクターごとに肌色や髪の色を三色ずつ選択して、浅い色から塗り重ねていきます(→彩色第一〜三段階参照)。

 一通り塗ったら、今度は画面全体を統一させるための処理をしたり、ハイライトなどの効果を入れたり…いろいろやりますが、筆者の遅い作業スピードでは、一日に一枚か二枚しか完成させられません(→キャラクター彩色完了参照)。

 ここまでで合計三週間程度…カットが一通り完成する頃には、精も根も尽き果てている場合がほとんどです。
 一時間たらずでさささっと塗ってしまえる人達が、本当に羨ましいです。
 もっとも、筆者の場合塗りと修正・やり直しにすっごい手間をかけすぎてしまう事に原因があるのですが。



 最後に、小説ページ全体のHTML化の作業です。
 これはさすがに慣れているので、それなりに素早くできるものと自分では思っていますが、それでも色々な個所をいじった上にチェック作業もあるため、気がつくと丸一日くらい経過してしまいます。
 その後も結構誤字脱字が発見されるので、これの修正も行います。
 また、時々「カットでは右手なのに本文では左手と表記」されているケースもあるので、これも修正します。
 ここに達する頃には、最初のプロット作成の段階がずいぶんと昔の事のように思われて来ます。


 こうして、ようやく「美神戦隊アンナセイヴァー」は完成します。
 そして、完成直後にもう次のプロットの作成を始めてしまいます。
 さもないと、他のコンテンツの作業や個人的な忙しさにかまけてしまって、いつまでも先に進まなくなってしまうためです。
 あまり明確な反響のない寂しいコーナーなんですが、今後も可能な限り力を注いで、細々とやっていきたいと思います(笑)。


 予定では、これまでであらかた世界観やバックボーンの設定を提示したつもりなので、ここからはハードなバトルを主体とした展開にしていく事になっています。
 はてさて、どこまでうまくやっていけるものか、不安ではありますが<おいおい
 「パッと見のイメージからは絶対予想できないようなハードでシリアスな物語」というテーマは、一応今後も継続させていくつもりであります。


 という訳で、今年から大幅にパワーアップ(予定)の「美神戦隊アンナセイヴァー」…よかったら、見に来てやってくださいね♪(笑)


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