|
||
更新日:2004年12月2日 | ||
自慢じゃないが、筆者は記憶力に自信がない。
もちろん、頭脳がアホだという根源的要因は除いて考えても、どうやら元々集中力や観察力がないらしい。 そのため、覚えているつもりでも見落としが多いようで、何かの記録について書く場合も、映像を何度も確認する必要があったり、ソース探しに苦労したりする。 自分の記憶に従って何かを書いても、「あれ、これってホントにそうだっけ?」という猜疑心に襲われる。 そんな訳で、筆者は、いつも半痴呆症状態で自らの記憶と戦っているのだ。 これと同じ事、以前にも一度書いたような気がするんだが、きっと気のせいだろう。 さて、前回は「とんでもない記憶違いをしていた」ものという事で、特撮・アニメの映像作品に関してバカをさらしてみた。 だが、筆者のバカさ加減がこんな程度だと思われては困る。 なので、今回は「普通じゃねーだろ、その勘違いはよ!」という物を集めてみた。 こうやってネタ集めをするたびに、脳細胞が枯渇していくのがわかる。 記憶違いというより、トンデモない思い込みの話だが、しばしお付き合いを。 かなり小さい時。 ニンジンが怖かった。 いや、別に食べるのが嫌だったとか、見るのが嫌とかそういうものではない。 あの形に、恐ろしさを感じていた。 昔…多分幼稚園に上がったかどうかという頃だと思うのだが、筆者は、すべての野菜と果物は木の上に生るものだと思い込んでいた。 そう、リンゴやオレンジのような感じで、キャベツもピーマンもできるものだと思っていた。 ナスやいちご、あるいはジャガイモや落花生のように、木に生らない種類も存在するという事実を、どこか受け入れ難かったのかもしれない。 というか、植物の実というものはすべてそういう風に生るものと思い込んでいたからなのだが。 ともかく、ニンジンもあの形で木からブラ下がっていると信じていた。 だが、ある時、ニンジンを掘り出すという機会があった。 多分、親戚筋の農家に遊びに行った時ではないかと思うが、さすがにそれ以上はっきりとは覚えていない。 そこでは、ニンジンだけでなく芋類もあり、大根なども(掘り出しはしなかったが)見る事が出来た。 言うまでもないが、これらはすべて地面の中に埋まっている。 最初は難しい事を考えず、純粋に掘り出すのを楽しんでいた筆者だったが、ある事に気付いた途端、激しい恐怖に襲われた。 「ニンジンは、木の上で生る筈。 それが今、地面に埋まっているという事は、木の上から落下し、地面に食い込んだという事だ! 人間が力一杯引き抜かなければならぬほどの力で、地面に食い込むニンジンの恐ろしさ! そうか、あの下向きの円錐形は、ドリルのように地深く潜り込むためのものだったのか! おのれ、一杯食わせおったな!!」 ニンジンよりも大型の大根も地面の中なのだが、こちらはニンジン以上のパワーで落下してめり込んだのだろうと考えた。 小さい子供の脳裏には、ギュイ〜ンドリドリと唸りを上げつつ地に突き立ち潜リ込む、ニンジンや大根の姿が明確に浮かび上がった。 芋などは、地面がめくれ上がり、舞い上がった土が再び覆い隠すほどの勢いで激突したのではなかろうか。 以来、「もし木の下を歩いていて、落下するニンジンドリルが当たったら、ひとたまりもないのだな」などと考え、一年にどれくらいの犠牲者が出るのだろうと、いらぬ妄想を膨らませていった。 もちろん、筆者がニンジンや芋を掘った畑の真上に、木の類などまったく存在していなかった事、そしてそれに本人がまったく気付いていなかったという事は、言うまでもない。 あ、ほうれん草などの葉野菜がどういう風に木に生るのかは、まだ勉強中なのでつっこまない事! バニラアイス。 もちろん、吸血鬼化したスタンド使いの事ではない。 コンビニやスーパー、駄菓子屋などで普通に売っているアレだ。 小さい頃、自分は「これをどうして“バニラ”と呼ぶのだろう?」と疑問に思っていた。 そこで誰かに尋ねた所、「バニラエッセンスという“植物が材料の香料”を使用しているからだよ」と言われた。 調べた所によると、ラン科バニラ属の植物の種子鞘から抽出した香料という事だ。 しかし、筆者はこれを見事に捉え違えてしまい、どーいう事か「バニラアイスすべてが植物から採れる」ものだと解釈してしまった。 さあ、そこからの思考実験は凄まじいものだった。 冷たいバニラアイスは、いったいどういう形態・状態で、植物の実の中(←すでにわかってない)に収まっているのか? ひょっとして、実は寒冷地に生息している植物で、実の時点ですでに冷たいのでは?! 世の中には「ココナッツミルク」のように、はじめから白い液体状で実の中に詰まっているものもある。 そのような植物があっても、おかしくはない!(←すでに話が繋がっていない) 当然、小学校に上がる前の筆者は、ココナッツミルクが「ココナッツの果汁と果肉を混ぜ合わせて作った加工品」である事など知る筈もない。 「なんかよくわからないが、実の中の物を固めるとバニラアイスになるんだ」と、勝手な結論を出した筆者は、ふとある記述に目が止まり、雷に打たれたような衝撃を受けた。 ――乳製品。 えっ、なんで? どうして植物の実が原料(笑)の筈のバニラアイスに、牛の乳が! ぶっちゃけ、ありえな〜いっ!! …いや、ホントはありえなくないんだけどさ。 とにかく、筆者はあらたに提示された情報を受け、再び思考実験を開始。 どうやったら、実の中の果汁に乳分が含まれるのかを考察した。 すでに大きく間違っているような気もするが、そこはそれ、まだコンバトラーVすら見た事もない幼稚園児の考える事。 大目に見ていただきたい。 結果、筆者の考えはとてつもなく恐ろしい領域に達してしまった。
いくらか納得いかない部分もあったが、植物だと言われて信じてしまったのだから仕方ない。 まだ知識の確認という方法を知らなかった筆者は、そうして結論を出そうとして……再び凍りついた。 原材料:(中略) 卵黄・砂糖 な、なんじゃとてえぇぇぇ!! おのれ、バニラめっ! 牛のみならず、鶏にまで寄生しおるかっ! それに砂糖という事は、サトウキビにまで以下同文。 もはや、筆者の頭の中では恐ろしいバケモノと化している「バニラ植物」は、ウルトラマンに登場した怪獣「バニラ」のデザインまで加わって、とても口では言い表せないげっちょんげっちょんの想像図になって、脳裏に刻み付けられた。 その後、バニラアイスの正しい製法の知識…材料や、何度も冷蔵庫から取り出してかき混ぜ空気を適度に混入させるとか、完成から三時間置く必要があったりとか、そういう事を知るのは「ミスター味っ子」の原作を読んでからだ。 まったくもって、人騒がせな植物である。 もちろん、恐ろしい考えにとり憑かれている最中も、決してバニラアイスが嫌いにならなかった事は言うまでもない。 蟻の巣。 自慢じゃないが、筆者は世界中のすべての蟻の巣が、地下で繋がっていると信じていた事がある。 日本だけではない。 海の向こう、別大陸に生息する別種の蟻の巣もすべて、海底のさらに下に敷かれたネットワークによって繋がっているのではないかと考えた。 理由は簡単。 あれだけ世界中に広く散らばっている生物が、習性とはいえ、いずれも似たような社会・地位構造・主従概念を持っているというのが信じられなかったからだ。 もちろん、今ではそういう物ではないという事は知っているが、当時の筆者にとって、蟻というものは虫のくせして王国を築いているとんでもなく発達した生物だったのだ。 蟻塚という、巨大な要塞状の巣を構築する種類がいる。 サイズも色も、習性も違う者がいる。 違う巣の者同士で争う事もある。 なんだかわからないが、これらについても「蟻は人間より小さいので育成に必要な時間が短く、海の底を渡る間に何代も進化する」「土地の影響によって大型化する事がある」「人間同士で戦争するように、蟻にも蟻の事情がある」と思い込み、勝手に納得しようとしていた。 後に、昆虫図鑑を見て、蟻には色々な種類がいるという事をあらためて知る。 しかし、どーしても納得がいかなかったのが「ではなぜ巣は繋がっているのか」という部分だった。 もちろん、そんな事どこにも書いてはいない。 色々な蟻がいる事はわかっても、相変わらず巣はすべて繋がっていると思い込んでいたため、アンポンタンな考え違いに至っていたのだ。 そんな時、世の中には「空き瓶の中に土を詰め、その中に複数の蟻を放して巣作りを観察する」という遊びがある事を知った。 なんという事だ! 瓶という極小の隔離空間の中でも、蟻はその世界を構築する事が出来る! その事実は、筆者に雷のような衝撃(こればっか)を与えた。 …もちろん、これによって「蟻の巣は別に全部繋がっとりゃせんよ」という事実を受け入れたのであるが… 蟻は、世代が変わると巣を放棄し、羽蟻となって旅立っていく。 これは筆者も最初から知っていたが、それは「巣になんらかの異常が発生し、これ以上住めなくなったから」の引越しだと信じ込んでいた。 巣穴に、水でも流れ込んだんじゃないかな。 そう思い、蟻の巣から羽蟻が出てくる所を見たくて、わざと水を流し込むという残虐極まりない事をやった事もあった。 もちろん、そんな事が理由でないと気付くのはもっともっと後の事だが(笑)。 その理屈だったら、雨降るたびに羽蟻が大量発生するという事に気付いていなかった筆者… 生命の神秘に感動し、昆虫学者になりたいと思わなかった、小学校に上がる直前の頃の恥ずかしい思い出話である。 ああ、なんだか、書いているうちに恥ずかしくなってきた! 穴があったら水流したい!! → NEXT COLUM |
→「気分屋な記聞」トップページへ |