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更新日:2003年11月27日 | ||||||
今回は、珍しくここで一般コンシューマーゲームのレビューをやってみたいと思う。 タイトルは…今月の27日に新作が発売されるプレイステーション2ソフト『零 〜zero〜』。 古いタイトルだけど、新作にこじつけて一発かましちゃう♪ いつものゲームレビュー形式で書いているため、かなり長くなっているけど、どうかお付き合いを… 零 〜zero〜 発売は、2001年12月13日。 しかぁし!! 2002年の段階で、恐らく最強の「怖さ」を内包していた事は間違いない作品だ! 「バイオハザード」シリーズの恐怖なんか、これに比べたら単なる“エンターテイメント”に過ぎない(断言)! この、精神に直接響くような究極の「恐怖」を体感せよ! 1.メーカー名:TECMO(PLAYSTATION2ソフト) 2.ジャンル:移動型アクションADV(B-HAZARDタイプと同じと考えてまあOK) 3.ストーリー完成度:意外やD。ただし… 4.H度:深紅に萌えたらA(おい)。システムの「いやらしさ」ならばB 5.オススメ度:S 6.攻略難易度:A 7.その他:購入直後の初プレイで、ヘッドホン使用、室内真っ暗、しかも深夜…これを成し遂げた勇者はいるか?! (ストーリー) 1986年… ジャーナリスト・雛咲真冬 は、自分の恩師であり、メジャー作家の高峰準星が“取材中に行方不明”になった事を知り、その消息を追っていた。 そして、辿りついたのは…とある田舎の奥地にある「氷室邸」という廃墟。 ここはかつて地主の邸宅だったようだが、数十年間人が住んでおらず周辺の住民からは恐れ敬われており、今でも近付こうとする者はいないという。 真冬は、高峰と彼に同行した編集者の緒方浩二、秘書の平坂巴の行方を追い求め、自身もその屋敷に足を踏み込んでいった。 そして、真冬もその消息を絶ってしまった… 2週間も真冬の消息が途絶えている事を心配し、妹の深紅(本編主人公)も、この「氷室邸」にやってきた。 今となっては、たった一人の家族となってしまった兄を求めて… 屋敷の中で、彼女に降りかかる不思議な現象は、ここに「目に見えない何かが潜んでいる」事を告げている。 そして、深紅は屋敷の廊下で、ある物を発見する。 「これは…兄さんの“射影機”!」 かつてプレイステーションで話題になった新機軸アクションゲーム「影牢」「蒼魔灯」のスタッフが、2年ぶりに発表したタイトル。 そんな背景もあり、いやがうえにも注目されていた作品。 とはいえ、前作のようなトラップバトルではなく、まったく新しいシチュエーションと戦闘方法を持ってきて、我々ファンの期待を良い意味で裏切ってくれた(もっとも、トラップバトルを期待しすぎた人には不評だったという説もあるが…)。 これは、タイトルの宣伝に付加されている文章説明だけではまったく理解できない新システムで、頭の切り替えは必要であるものの大変面白く、また世界観から遊離していないという素晴らしいものだった。 また、基本的なシチュエーションが「恐怖」というものに定められているが、これがなかなかにとんでもない。 これまで「恐怖」というものを売りにしてきたゲームのほとんどは、「バイオハザード」や「クロックタワー」シリーズのように“異形の存在や物体が襲いかかってくる”という部分だけが「恐怖」の対象となっていた。 もっと噛み砕いていうと、点在するゾンビや、突然壁をぶち破って現れる追跡者(ネメシス)は確かに怖いけど、彼らがいる環境そのものは「彼らがいる事がわかっているからこそ感じる恐怖」に支配されているに過ぎない。 だから、以前に配置されていたゾンビなどをすべて駆逐したエリアを通過する場合は、ほとんど恐怖を感じずに済む。 しかし、本作はそうはいかない。 安全だろうとわかっているエリアの移動にも、なぜか恐怖を感じてしまう。 対戦すべきモンスターがいようがいまいが、そのステージに「恐怖」がこびりついているからだ。 どんな感じか…筆者のつたない文章で伝わるか不安だが、ちょっとだけその「恐怖感」を説明してみよう。 “入り口の開かなくなった廃屋”に入りこむ主人公…画面のほとんどは“暗闇”で、基本的には主人公の持つ「懐中電灯」しか光源がなく、しかもそれが向けられた方向にしか明確な視界が確保できない。 もちろん実際には、他の光源もあるにはある。 しかしそれはごく僅かなレベルのものなので、結果的に画面の中では異常に明暗の差が生まれる事になる。 そんな中を、たった一人で動き回っていると、突然…本当に突然、コントローラーが震える。 それも、「ブルブルブルブル〜」といった連続的なものではなく、「ブルッ………ブルッ……ブルッ……」と、心臓の鼓動のような感じだったり、たった一回だけ…しかもごく僅かに振動するだけだったりと色々で、ただでさえ張り詰めている神経がさらに逆撫でされる。 そして、しばらく進んでいると…突然、どこかから「声」や「音」が聞こえてくる。 それに反応して辺りを見まわすと、画面の一角が微妙にぼやけていたりする。 そして、その「ぼやけ」が、じわりじわりと接近してくるのだ…。 画面右下にあるフィラメントが鈍い赤色に発光し、敵が…“幽霊”が接近している事をやっと自覚する。 そこから先は、パニック状態の中の戦い。 “戦い”と言っても他のゲームとは大きく異なり、こちらに冷静さはない。 まるでプレイヤーの生理的恐怖感を直接刺激するかのような、“姿形もはっきりしない”存在が寄って来るのである。 彼らには、それぞれに「死んだ理由」が設定されており、それにまつわる恨み言や強い想いを口にしながら迫ってくる。 唐突に驚かされるような恐怖ではない。 「逃げたくても逃げることが出来ない」死の恐怖が、そのままの形でそこにあるのだ。 そんな敵をかわし、封印し、さらに別な恐怖へと進んでいく…それが「零〜ZERO〜」というゲームだ。 本作は、以下のような手順でゲームを進める。 主人公・深紅は、複雑な構造の氷室邸を移動し、このテのADVによくある「おつかい型イベント」をこなしていく。 その過程で様々な“幽霊”が登場し、手にした射影機(以下、カメラと表記)を使ってこれを撃退していく事になる。 戦闘方法は、「敵を写真撮影する」事によってダメージを与えるというもの。 「写真を撮ると魂を取られる」という迷信があるが、その概念がそのまま適用されたものと思っていい。 だから、最終的には幽霊達はすべてカメラに吸収(本編内では「封印」と呼称)される事になり、それに至った幽霊は2度と登場しない。 後は、撮影の際の様々な条件を満たすことによって上昇する「ポイント」を蓄積する事により、射影機自体の秘められた能力を解放していく(これがパワーアップになる)。 だが、この「様々な条件」というのが曲者で、そう簡単に高いポイントは稼がせてもらえない。 撮影条件の中でもっとも大事なのは、「被写体を中央に置き、なるべく近くで撮影する」という姿勢だ。 つまり、わざと自分は移動せず、相手にできる限り引き寄せて撮影しなければならない。 さらに、射影機には「霊力蓄積」というものがあり、ファインダーに相手をとらえたまましばらく時間を置いていると、パワー貯めが始まる。 これをマックスまで貯めた上で接近かつ中心にとらえて撮影すれば理想的なのだが、一度カメラから目を離す(ファインダーモードを解除)と、貯めが解除されてしまうため、なかなかに大変である。 当然、一歩間違えれば自分は捕らえられてダメージを受けるわけだから、かなりシビアな見切りが求められるのは言うまでもない。 高速移動する上、壁も障害物も無視して迫ってくる敵なんてのもいるので、なかなかに条件を満たすのは難しく、同時に、それが醍醐味となっている。 また、両者の距離に関係なく「シャッターチャンス」というものがあり、時折ファインダーが赤く輝く時がある。この時に撮影すると、痛撃&高得点になるという仕組みになっている。 文章で書くととても簡単な理屈に思えるが、これを実際に行うとなると、結構焦ってしまってなかなかうまくいかない。 幽霊がどんなに迫ってこようとも、まったく焦らなくなるには、相当数の戦闘を経験しない限りまず無理だ。 霊の出現と同時に、ゲームの中の雰囲気も一転するが、これは最初の頃はまったくわからない。 それがわかるようになると、まだ相手の姿が見えていないにも関わらず反応して、(見えない)相手の方向にあたりをつけてカメラを構えられるようになる。 初めて姿が見えた瞬間には、もういつでもシャッターが押せる心の準備が出来ている…ここまでに至って、やっと「戦闘に慣れた」と言いきれるだろう。 しかし初プレイの時点では、そこまでの道程は限りなく遠く感じられてしまう筈だ。 バイオハザードなどでは、初プレイの半ば辺りで達することが出来るだろうこの境地も、私は2周目後半でやっと辿りつけたような気がする。 だけど、それは決して難しいからなのではない…月並みな言葉だが「自分自身に勝つ」事が出来なければ、このゲームの中では冷静になれないのだ。 そんな“自身の感覚との戦い”が実感できる作品を、筆者は他に知らない。 本作は、ここまで語ってきた通り「システムを楽しむ」ゲームに分類される。 言ってしまえば、ストーリーそのものは大して面白くはない。 だが、ゲーム自体のストーリーとは別に存在する「氷室家の悲劇」というバックボーンがあり、こちらは大変秀逸である。 本筋は、「女子高生、廃墟に入って撮影会 兄貴探して謎解き脱出」というありふれたものだ。 ところが、舞台の「氷室邸」では“裂き縄の儀式”というものがあり、その凄惨極まる内容が、ゲーム進行に併せてだんだんと表面化していく行程は、凄まじく怖く、面白く、そして悲しい。 “黄泉の門”…すなわち「この世とあの世の境界」の上に建築された氷室邸では、代々門を封じるため、特殊な儀式を行っていた。 特定の日に親族全体の中から7歳の娘を集め、その者達で「鬼遊び」という鬼ごっこを模した儀式を行い、最後まで逃げ延びた一人を「巫女」とする。 そしてそれから十年間、その子は俗世間から隔離され、座敷牢の中で生活する。 そして17歳になった年に、黄泉の門を閉じる“縄”をつくるために、その命を絶たれるのだ。 その縄の作り方が、壮絶だ。 巫女の首・腕・脚に計5本の縄を巻きつけ、それぞれを巻取り型の手動機械で引っ張り続け、そのまま…引き千切る。 結果、巫女は凄まじい苦しみを味わいながら、五肢をバラバラにされて死んでいくのだ。 また「鬼遊び」の時の鬼役の女性は、一つ前の儀式の際に一番最初に捕まった者が任ぜられるが、鬼になる年になると、儀式の前にその両目を潰される。 完全盲目になった鬼に最後まで捕まらなかった「霊感の持ち主」が、巫女に相応しい…といった設定のようだ。 そして、どうもその巫女や鬼、儀式を執り行う氷室家当主や神官達は、すべてこの儀式の必然性を理解しており、決して「猟奇的な嗜好によって行われている」訳ではないという厳格な雰囲気が漂っている。 可哀相だとわかっていても、辛い事を理解していても、それでも縄を引くのだ。 なぜか? そうしなければ黄泉の門は開いてしまい、中から大量の瘴気が溢れ、地上を汚すためだ。 これは「禍刻(まがとき)」と呼ばれ、絶対に起こしてはならない事態なのだ。 氷室家は、生贄の儀式を行う事によって、この最悪の事態を封じ続ける存在だったのだ。 そして本作は、この「禍刻」が起こってしまった後の氷室邸を舞台にしている。 最後に行われた儀式が失敗してしまったために発生した「禍刻」…その瘴気に当てられ、悪霊化した霊達がとり憑いた廃墟での攻防が、本作のメインなのだ。 ベースの物語が非常にしっかり組みたてられているため、世界観の安定が感じられ、まさしく“仮想世界の中”で活動している感覚に浸れる。 プレイヤーは、この狂った…しかし、確固たる意思の元に施行されたこの儀式の関係者達にも感情移入していく事だろう。 巫女達の悲運を憂いながらも、それらと戦うためにカメラを構え、恐怖に震える。 この違和感が堪らないのだ。 恐らく、本作に登場する敵にまったく設定がなく、単なるワンダリングゴーストとしてしまったなら、こんな深みは感じられなかっただろう。 いちいち幽霊すべてに設定を設けているというのにも、意味がある。 それぞれが生前どういう被害にあって死んでしまったかという設定を作る事により、いわば“日本風”幽霊奇談にあるような情念を込めようとしたらしい。 実際のものはよくわからないが、なんとなく「西洋の幽霊」と「日本の幽霊」では、雰囲気というかバックボーンみたいなものが違う印象がある。 ドロドロした感情、怨念、いつまでたっても尽きることのない恨みとか…そういったものが背後に込められてこそ、独特の雰囲気がでるのではないかと思うが、本作もそういった部分を充分に理解した上で、“仮想の情念”を生み出した。 その上での怪奇演出である。怖くないわけがない。 バイオハザードに登場するゾンビやリッカー、Tウイルスによって肥大化したモンスター等には感情がないため、表面的な迫力が恐怖の全てをになっている。 それも悪くはないし怖い事には変わりないが、日本人なら怪談などで古くから馴染みのある恐怖感は、まるで遺伝子に直接作用するかのように(笑)迫るものがある…気がする。 今回はネタバレをする気がないので多くは触れないが、現在の氷室邸の状況の根源となった最後の巫女「霧絵」についても、なかなかに悲しく衝撃的な設定が施されており、最終ボスでありながらも同情の念を抱いてしまう。 各章の終わり際で襲われる度に怖い思いはさせられるが、やはり悲しい存在なのだ。 そういう「表面的なものだけでは語り尽くせない」存在が多く、物語の世界観をさらに膨らませているのは素晴らしい。 主人公の母にまつわる話なども、なかなか悲劇的だ。 (なお、以上の要素はマニュアルや攻略本冒頭部に表記されている程度の情報なので、核心ではない) ちなみに、どうして舞台が86年なのか…というと、どうやら「携帯電話が使えないようにするため」らしい。 なるほど、そういうものがあれば確かに状況は一変しかねないわけで、あると困るわけだ。 もっとも、どうやら現実に幽霊が出てくると「金縛り」とか「電機器具停止」などの現象が発生するようだから、あっても使えないってシチュエーションでもよかったかも。もちろん、それよりははじめから無い方がリアルだけど。 そういえば、どんな奴が出現しても全然途切れる事のなかった懐中電灯…あれってすごい気が。 ある意味最強のアイテムなのかもしれない(笑)。 特殊攻撃以外ほとんど金縛りに遭わない深紅もすごいといえばすごいけどね(爆)。 さて、では次に問題点を見てみよう。 このゲーム、実は操作性が「最悪」。 少なくとも、デフォルトの設定でやり続けるのは至難の業だ。 一応コンフィグでバイオ方式(もっと古く言うならバンゲリングベイ方式)に切りかえることも出来るが、それでも細かな動作がままならなかったりする。 だが、これがプレイに支障を及ぼすかというとそういうわけではなく、むしろ「動きたいように動けない」事が焦りを生み、結果的に“より怖さを演出する”材料にもなってしまうんだからうまいものだ。 多分瓢箪から駒的なものだろうが…もしもそれを計算して設定したものだとしたら、筆者は呆然だ。 …でも、入り口の側の階段をいつまでも行ったり来たりしてしまうのだけは勘弁して欲しかった(笑)。 時々“止まる”というのもまずい。 本作はよく途中で止まってしまうようで、セーブ画面での停止(しかもその後データが破壊されたという報告あり)や画面切替の途中でのフリーズなどはしょっちゅうらしい。 らしい…というのは、筆者にはこれがたった一回しか発生していないためなのだが。 どうも外部情報では、ラストの戦闘が終わった直後にフリーズするケースがかなりあるらしく、この時点での最後のセーブポイントからかなり離れた場所で発生するため、かなりへこんでしまうらしい。 操作上の欠点や物語進行の単純さなどを別にして見てみると、意外にシステムに問題が集中している事に気付かされる。 しかも、一周目では気付きにくいものである上、無理に使わなくてもいい機能に集中している分だけ、ある意味でたちが悪い。 言い換えれば「普通に一回プレイするだけならほとんど問題らしいものは感じない」とも言えるが、ちょっと重箱の隅を突ついてみよう。 本作は、二周目以降になると様々なオマケ要素が展開し、主人公のコスチュームチェンジ(ほとんど色替え程度でちと残念だが)やひたすら戦うだけのバトルモード、カメラ機能のアップなどが選択可能になるが、真骨頂は「ナイトメアモード」だろう。 これは通常のゲーム内容をさらにハードにしたもので、
こういう条件下で、あの内容に再挑戦という形になる。 もちろん、この地獄の難易度そのものが問題なのではない。 実は結構救済措置が多く、人によっては、最初のプレイよりは簡単に感じられてしまう。 最初はハードに感じるものの、途中から「これくらいでなければ物足りない」という感じになってくるから不思議だ。 そう感じるようになる理由・カメラ機能については後ほど触れるとして、この「ナイトメアモード」の問題に触れてみる。 ナイトメアモードは、「通常版とは違うエンディングが見れる」という興味深い要素があり、これの攻略を目指す人にとっては最大の牽引力になるのはほぼ間違いないだろう。 通常エンディングがかなり悲劇的なものだったので、それとはまた異なる激動の展開を夢見て挑む人も多いだろうが…実際に見てみると、あまり大した違いが感じられない拍子抜けなものであった。 一応ネタバレは避けておくが、個人的にはこちらのエンディングを通常のものとして、普通のエンディングをこちらに持ってきた方が衝撃が大きかったように感じられてならない。 内容の好みについては人それぞれなので断定評価は避けたいが、「あれだけ苦労させといてこれだけ?」という感覚を味わった人は多かったのではないか。 ましてやこのエンディングは、序章から最後までやらないと見られない。 クリア後は好きな章からスタートできるようになるが、序章をオミットして第一夜からスタートさせてしまうと、もう絶対見る事は叶わない。 実際これは筆者がやってしまった失敗なのだが…その分も合わせ、別エンドを見た時は…腰が砕けた。 もしこれから挑むという方がおられるようなら、是非忘れないでおいていただきたいものだ。 「ナイトメアモード」の殺人的(?!)難易度に対抗する要素として、「カメラの特殊機能解放」と「バトルモードクリア」がある。 前者は、最初のプレイでは決して使用できない特別な能力で、便利すぎるものからまったく役に立たないものまで様々だが、あるとないとではかなり違う。 その中でも「追」の便利さはゲームバランスそのものを揺るがしかねない程で、R2ボタン押しっぱなしで敵を完全追尾してくれるため、よほど自分を追いこまない限りは苦戦する事は無いと言い切って良い。 ところが、他の機能には首を傾げるものも結構あって困る。 たとえば「感」。 これはファインダー中央のサークル(実質的に被写体を捉える中央部分)に小さな4方向矢印が出現し、敵のいる方向にチカチカ点滅するというものだが、上下左右のみなので反応があまりに大雑把すぎて、ほとんど使えない。 もっとも、逆に考えればあえてこちらだけを使い、便利すぎる「追」を封じて適度な難易度を確保するという考えもあるだろうから、なくてもいいとは思わない。 ただ、「追」と共存する理由だけはよくわからなかったりする。 「拡」も意味不明だが、どうしても小さくしか取れない被写体を大きく撮影するための一種のお遊び的なものと割りきれば、まだいいと思う。 最大の問題は「無」と「零」ではないだろうか。 前者は「装備したフィルム使い放題」、後者は「常時ZEROチャージMAX維持」という大変便利なもの…の筈なのだが、実は一番使えない。 この機能自体に問題があるのではなく、使用可能になるまでの条件やシステムに問題があると言い換えるべきかもしれないが。 前提として、特殊機能は“1種類しか装備できない”という条件がある。 つまり「追」と「無」といった併用は不可能なのだ。 さりげにナイトメアより難しいのではないかと思う時もある「バトルモード」、そのクリア後の特典「無」は、はっきり行って“あれだけ苦労した結果に見合わない特典”と言ってもいい。 実は「零〜zero〜」というゲームは、各章でアイテムを取得してそのデータを保存すると、以降それがどういう条件でも反映するため、各章プレイで欲しいだけアイテムをかき集め、保存する事でいくらでも有利に出来る…つまり、フィルムもチャージし放題になるのだ。 もちろんシナリオ進行中には不可能という事になるが、ナイトメアをはじめる前にすべてのフィルムや万葉丸をMAX状態にしておく事も可能で、それをやってしまうと「無」の出番は完全になくなる。 フィルム不足に悩むのは戦闘に慣れていない初回プレイだけで、2周目以降慣れてくると、ほとんど無駄な浪費がなくなっていく。 ましてやセーブポイントでの補充もあるわけだから、欠乏に悩む事はほとんどない。 そんな状況で、「追」などと引き換えに「無」を装備する必然性があるのだろうか… あえて利用価値を見出すなら、霊撮影の高ポイント取得を狙う時だけだろう。 最強の九十九式で、数を気にする事なく乱写する事が出来るというシチュエーションそのものは魅力的だから、そういう用途なら意味があるだろう。 だが、それは相当の極めプレイヤー志望者のみに限られた用途という気もしなくはない。 「零」もたしかに便利だし、「追」と入れ替えてでも使う価値のある素晴らしいものだが…これの入手条件に首を傾げてしまう。 実は初回クリア後に展開する追加要素として、「ゴーストリスト」展開というものもある。 ゲーム内に登場する全ての霊(正確には、2つほど欠けている)を撮影しきれるかどうかというチェックリストなのだが、これが全部埋まることで手に入るのが「零」なのだ。 このゴーストリストは2周目以降に出現するわけだが、実は初回プレイでは絶対に全部の霊を撮影する事ができない。 そのため、最低あと1周くらいは再プレイが必要になるわけだが、これが埋まる頃には、恐らくほとんどの目的を果たし切ってしまっている可能性が高く、せっかくの便利機能を活躍させる舞台がなくなってしまうのだ。 例えば、2周目以降のプレイをすべてノーマルで行い、ゴーストリストを完全制覇してから「バトルモード」に挑み、万全の状態にしてから「ナイトメアモード」に挑むという手段もなくはない。 しかし、残念ながら「ナイトメアモード」では「追」の方が圧倒的に有利のため、どうしてもそっちの方に気が向いてしまう。 特に第三夜の「僧の霊」相手では、「零」の有効性はほとんど発揮されず仕舞いと思っていい。 そうなると、わざわざ自分自身に枷を施すような真似でもしない限り、「零」は使われないという事にもなりかねない。 バイオハザードシリーズにとっての「ロケットランチャー」に匹敵する筈の「零」は、そういった理由から、思う存分振われる機会がないまま埋没してしまう危険をはらんでいるわけだ。 筆者も…せいぜいテスト的に数回撮影しただけで使用をやめてしまった。 こういう風に、本作は「苦労に見合わない付加特典」や「継続プレイの結果得られる要素」があまりに乏しい。 補助機能、特殊機能などを解放していくのに必要な霊ポイントも、途中から過剰気味になってしまい無意味な数値と化してしまう。 とくに「バトルモードの繰り返し」で得られるポイントがクセモノで、これによって一気に底上げされてしまう。 さらに「追」「零」によって取得できる平均ポイントも数倍に跳ねあがり、一回の戦闘で数千〜万単位などという事が珍しくなくなると、蓄積の仕方も尋常ではなく、当初は高価すぎて手が出ないと思われていた特殊機能も、あっという間にすべて揃ってしまう。 うまく立ちまわっていれば、このポイントデフレは2周目初盤から発生してしまう。 そうなると、いくら高ポイントを稼いでも自慢の種にしかならなくなってしまう。…が、実は第二夜の“UFOキャッチャーの化身”八重や第三夜の“鋼鉄○ーグ”神官などを相手に「追」を使用して挑めば簡単に9000ポイント台を取得できてしまうため、あまり自慢にもならないような気がしてならない(使わないでそこまで行けばたしかに大したものなのだが)。 特殊機能だけでなく、初回プレイから使用できる「補助機能」にも、変なのが多い。 敵を遠ざける「圧」、敵を金縛りにする「痺」、透明化している敵が見えるようになる「視」、敵を遅くする「遅」、敵の位置を捕捉する「探」と5種類あるが、いずれも一回能力を使用する度に“霊石”というアイテムを消費する。 つまり本編中に使用できる回数が限られているという面白い性能で、しかもうまく使う事によってポイントをさらに多く稼ぐ事が出来る(減るものもある)という効能もあり、非常にテクニカルな使い方が出来る…のだが、アイテムを犠牲にしてまで使用する価値があるのかというと、正直かなり疑問だ。 これについてはプレイヤーごとに感覚が違うだろうから断定は避けるが、少なくとも筆者には「もっともリスクに見合わない機能」だと思っている。 霊石の分布バランスはかなり良いものの、やはりそんなに多くは集まらないという事もあり、プレイヤーもかなり使い渋る傾向が出ると思うが、使ったにしても一時的なものに過ぎず、戦闘が有利になるものはほとんどなく、だいたいが「その場しのぎ」に過ぎない。 「圧」は一度相手を押すたけで、テレポート可能な者には大した効果はなく(後ずさっている最中に撮影するというハイテクニックもあるが…)、「探」に至っては、一回だけ敵の方向にカメラが向く…ホントそれだけだ。 「視」「痺」「遅」はそこそこ使えるし便利だが、「痺」はポイントが下がるし、他もそんなに効果時間が長くない。 使い方を無駄に考察させられるような傾向のあるこの機能、せめてもう少し零石が多く手に入るか、アイテム式ではなく何かしらの数値減少型の能力にすれば、もう少し楽しめたのではないかと考える。 「探」以外は、そんなに悪くないエッセンスとなっているだけに残念だ。 (総評) 「零〜zero〜」は、語るべき部分が多い秀作と言える。 ゲームというジャンルで初めて表現したと言って良い「幽霊の怖さ」…過去にもそういうものを狙ったタイトルは数多くあったが、本作がダントツに最強クラスだというのは間違いないだろう。 実際、そういう雰囲気を作るために非常に細かな部分にまで気を配っており、その影響として、プレイヤーは深紅を通じてリアルな恐怖感を味わい、そしてそれに慣れていく… 深紅が実在して、本当にこんな廃屋にやってきたとしたら、こんな恐怖感を味わっているのではないか…? そんな感覚を忠実にプレイヤーに与えてくれる本作は、やっぱり面白いのだ。 そして、同時に…シャレにならない。 あくまで噂話だが、どうも本作はこういう内容であるにもかかわらず“あえてお祓いの類はやっていない”らしく、怪現象報告も結構あるようだ。 筆者は「プレイ中に突然金縛りにあった」という話を聞いてビビりまくっていたものだが、中には「いない筈の人の声(ゲームの音声とは別)が聞こえる」とか、色々あるらしい。 幸い筆者にはそういうものはなかったが、最初の頃は一人でプレイするのが本当に辛く、音楽を流したりインターネットを見ながらコントローラーを握っていた。 どうやらギャラリーにも相当な恐怖感があるようだが、例のコントローラー振動がある分、やはりプレイヤー自身への負荷は尋常じゃない。 はっきり言って、ホラー映画何本観たってこれには遠く及ばない。 「恐怖を楽しみたい」という人なら、迷わず購入の価値がある。 それは筆者だけでなく、ほとんどのプレイ経験者が保証してくれるだろう。 最後に、主人公・深紅についてちょっと触れよう。 この“かよわいヒロインが主人公”というのも、ゲームの恐怖感を煽る最高の演出になっている。 仮に主人公が軍人だったり、ザンギエフやギースのような屈強なキャラだったとしたら(幽霊投げるんかよ、オイ)、それに頼り甲斐が生じてしまって、怖さは半減だっただろう。 プレイヤーよりも弱そうに感じるキャラが、尋常じゃない恐怖演出の中に入りこんでいく…このシチュエーションは素晴らしいもので、単なる「スクリームヒロイン」的な要素に堕していない。 どこか芯の強さも感じさせ、その微妙なミスマッチが良い味を出しているのだ。 そして、深紅には…驚くほどファンが多い。 おとなしそうで控えめな性格、華奢な身体、かわいらしい童顔と声、そしてなぜかミニスカート…これらにツボを突かれまくった人達は多かったようで、筆者も例外ではない。<ぉぃ また、テクモの技術で作られた3Dの表情は非常に美麗で、「DOA」シリーズの霞やあやめとはまた違ったタイプの美女に仕上がっている。 それらは特定のムービーシーンだけでなく、通常のプレイ画面でもしっかり再現されており、特定個所で顔がアップになった時にじっくり見てみると、ホントに丁寧に作っているなと感心させられる。 もちろんPS2の映像再現能力あっての事ではあるが。 どうもコスチュームチェンジ2の「アイシャドウにオーバーニー、髪の毛紫」バージョンが大変な人気らしい。 あのおとなしい顔が引き締まり、それだけで妖艶な表情に変化したような錯覚に陥り、大変趣き深い。 各所掲示板でもすごい話題になっていたものだが…これは、当のスタッフ達には予想外の反応だったというから笑える。 新たなタイプの「萌えキャラ」という事で、ここに挙げておきたい(まて)。 「零〜zero〜」は、発売後半年程度でいきなり「THE・ベスト」版が出てしまったため、今では新品でも3000円程度で容易に入手できる。 実はそんなに売れていないタイトルらしいのだが、ホント惜しい気がする。 筆者にとっては、実は2002年度のプレイタイトルの中でダントツ上位に食い込む名作だったと本気で考えている。 …で、さて。 2003年11月27日に発売される新作は『零 紅い蝶』。 今度はヒロインが双子の姉妹になり、そのうち片方は憑依体質ってんだから恐いっっ!! 恐らく筆者は、これをプレイし、あまりの恐怖にガマンできなくなったら「仮面ライダー 正義の系譜」に逃げて、また戻って来て、恐くなったら又…というのを繰り返すに違いない(笑)。 その前に、同じ日に発売の両タイトルをゲットできる予算が出来るかどうかなのだが。 このタイトルで年越しプレイ、なんて事になると…ちょっと心境は複雑かな。う〜む(笑)。 「零〜紅い蝶」のレビューはこちら → NEXT COLUM |
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