第65回 バンダイ S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーアクセルトライアル」

2010年12月8日 更新

「すべて――振り切るぜ!」

 魂ウェブ限定商品・11月配送分商品の一つとして、「仮面ライダーアクセルトライアル」が発売されました。
 一般販売だった「仮面ライダーアクセル」同様、様々な物議を醸し出した一品で、大変に話題性溢れるものです。
 というわけで、今回は「アクセル」も交えつつレビューしてみたいと思います。

 

 尚、このページでは「仮面ライダーアクセル」も撮影に多く使用していますが、こちらは購入直後に手を加えてしまったため、レビューは行いません。
 一部例外はありますが、「人生に玩具あり2式」は、基本的に改造・追加塗装を施した商品はレビューしない方針なので、何卒ご理解ください。
 (と言っても、バイザー奥の目に銀色塗っただけなんですが)

■ S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーアクセルトライアル

 

 2010年7月30日〜9月13日まで、「魂ウェブ」上にて受注受付。
 2010年11月29日配送開始(30日頃到着)。
 同時配送物は、「マシンディケイダー」。
 2010年11月の販売ラインナップは、以下の通り。

  • 11/20 「仮面ライダーキバ・エンペラーフォーム」
  • 11/27 「仮面ライダーダークキバ」「キュアブラック(ふたりはプリキュア!)」「キュアホワイト(同)」

 全高は約14.2センチ(ツノ含まず)
 合計6種10個の手首付き。
 トライアルメモリ付属。
 アクセルドライバー(アクセルメモリ挿入)付属。
 エンジンブレード付属。
 台座などのオプションはなし。
 価格は税込3,360円+送料・手数料。

 

 仮面ライダーアクセルトライアル。
 風都警察超常犯罪捜査課々長(警視)・照井竜が、アクセルドライバーと「加速の記憶」アクセルメモリ(ガイアメモリの一つ)を使用して変身した「仮面ライダーアクセル」が、「挑戦の記憶」トライアルメモリの力を用いて二段変身した姿。
 それまで赤色だったボディが黄色に変色→装甲のパージを経て、全身青色の姿に変わる。
 これまでの仮面ライダーの二段変身とは大きく異なり、防御性能・攻撃力が低下する特徴があるが、代わりに音速を超えるスピードを発揮出来る。
 これを活かし、一度に無数の攻撃を加えて相手を倒すという、アクセル時とは全く異なる戦法を用いる必要がある。
 反面、アクセル時の必殺技やバイクフォームへの変形などの機能は使えなくなっているのも特徴の一つである。
 変身方法は、アクセル時に一旦メモリをドライバーから引き抜き、変形させたトライアルメモリを挿入。
 その後、ドライバーの右ハンドルを捻ることで、メモリに付いている3つのランプが順番に点灯し、完了。
 必殺技は、超高速連続攻撃「マシンガンスパイク」と、エンジンブレードでT字型に相手を斬る「マシンガンスラッシャー」。
 「マシンガンスパイク」は、トライアルメモリを引き抜き変形させ(最初の形状に戻す)、空中に投げ上げてからキャッチするまでの間に、相手にしこたま殴る・蹴るの攻撃を加えるという独特のスタイル。
 対ウェザードーパント戦で初使用し、見事これを打ち破ることに成功した。

 従来の強化フォームと大きく異なり、単なる上位形態ではなく、ヘタをするとアクセル時よりも大きなダメージを受けてしまう危険も伴うため、奇しくも照井は、Wと同じ臨機応変的な能力変更を強いられる結果となった。

 

 というわけで、アクセルトライアルです。
 まずは、本商品発売前に巻き起こったトラブル? についてご紹介します。

 アクセルトライアルの発売情報は、7月22日頃にネット上に広まりました。
 それ以前からも、トライアルを待つファンの声は大変多かったのですが、いつものように「早く出てくれ」だけではなく、更なるプラスアルファの要望も囁かれていました。
 それは何かと言うと、「通常アクセルの修正ヘッドパーツを付けて欲しい」というもの。
 なんでそんな意見が出ていたかというと、通常版アクセルに対する不満の声がとても大きかったためです。

 

 通常アクセルは、「似てない顔」「(身体に対して)デカ過ぎる頭」「細すぎる腰回り」と問題が多く、既に太めのプロポーションに移行しつつあったフィギュアーツにおいて大きく退化したかのような出来でした。
 発売前の不満の声は相当なもので、とにかくどこの掲示板でも罵倒されまくっていました。
 (後に、この指摘が製作スタッフにも届いていたことが、イベントでの商品説明文やツイッターで証明されました)

 実際の商品はそんなに極端に悪くはなく、少しだけ手を加えれば化けるものだったのですが、それでもユーザーにある程度の妥協を求める出来だったことに変わりはありません。
 そのため、「せめてアクセルの頭は作り直せ!」という意見が多く出るのも納得出来る状況ではありました。
 折しも「SHF仮面ライダーディケイド激情態」という、事実上の修正ヘッドパーツを同梱した商品が出たこともあり、“不可能ではない筈”という認識を持ってしまった人達も多かったようですね。
 10月に開催された「魂ネイション」の展示品・アクセルガンナーの頭の出来が割と良かったこともあり、より確信を深めてしまった人達もおられたようです。

 

 ところが、そんなアクセルよりも更に強烈な批判が、トライアルに炸裂しました。
 魂ウェブや各玩具雑誌に掲載されたトライアルのサンプル写真は、異常にエラの張った「似ても似付かない」ものでした。
 トライアルの頬を走っているブレード状のパーツが異常に肥大化しており、まるで「ターンエーガンダム」の如く。
 具体的にはこんなものやこんな感じですが、これでは、割と細顔のトライアルとはとても言えません。
 これは相当な反発を招き、後にイベントでスタッフが「大変なショックを受けた」とコメントするほどでした。
 フィギュアーツは発売直前で改悪されこそすれ、改善されるケースはとても少ないという現実、加えてトライアルの人気がとても高かった事も加わり、フィギュアーツ史上でも一二を争う? ほどの大批判に発展しました。

 

 そんな激ヤバな前評判の中で開催された「魂ネイション」。
 そこで展示されたトライアルのサンプルは、頬のパーツが小型化されており、悪くないバランスになっていました。
 これで一部のファンはホッとさせられたようですが、イベントに出かけていない、またはWEB上で画像しか見ていないという人達は、“サンプル自体の写真写りの悪さ”もあってか改善されているようには思えなかったようです。
 確かに、現物が手元に届いた現在も、頬部分は間違いなくコンパクトに修正されているとわかるものの、ある角度で撮影した写真を見ると、やっぱりブレード状パーツが肥大化して見えてしまいます。
 ともあれ、通常アクセルからずっと続いた、顔に対する不満は一応の解決を見たとはいえ、その後発売予定のアーツ商品に対するファンの評価眼が益々高まるという、予想外の影響まで引き起こしてしまいました。
 (後にこれは、同月発売のキバ・エンペラーフォームやダークキバ発売で更に際立つことになります)

 

 とまあ、イヤンな話はここまでにして、商品を見ていきたいと思います。
 まずは、恒例の前面・背面比較。
 やや肩が張っている感がありますが、第一印象に反してプロポーションは割とまとも。
 フィギュアーツテイストの体型丸出しではありますが、アクセルより上半身が薄くコンパクトなためか、下半身が細く見えないのが嬉しいものです。
 基本的な構造はアクセルと同様なので、関節可動範囲もほぼ同じと考えて問題ありません。

 

 側面部。
 タイヤのドレッドパターンを模した模様が、横に走っています。
 これのせいで、一見共通に見える四肢と腹部・腰部がアクセルと別物になっているわけです。
 飛び出たトライアルメモリの迫力が凄いです。

 

 通常アクセルとの比較。
 一見、アクセルとの共通部分が多いように見えますが、実はほとんど別形状です。
 なんとビックリ、関節パーツを別にすれば、共通部分は首部と腰部前面、手足首だけです。
 四肢、背面、腹部、腰部背面などはパッと見同じように見えますが、完全な別物。
 どのパーツも比較的地味な違いばかりだけど、なかなかに頑張っていると思います。
 尚、よくフィギュアーツで素体がどうのという話を聞きますが、フィギュアーツは装着変身とは違い素体の概念はありません。
 共通形状パーツの有無のみです。 

 

 アクセルとトライアルではタイヤ状パーツのホイールモールドが異なっており、トライアルの方はスポークホイール型なんですが、本商品はしっかり再現されてます。
 個人的に、この辺は適当に共通パーツかまされるんじゃないかと警戒してたので、さりげに嬉しかったものです。

 

 背面のホイールも同様です。
 先に触れた、背面と腹部、腰部の形状違いがよくわかると思います。

 

 続けて頭部アップ比較。
 こうしてみると、とても同じライダーとは思えません。

 アクセルはともかく、トライアルも(修正されたとはいえ)現物とかなり違う形状になっています。
 特に、口周り。
 バイザー下の目はしっかりモールドが浮き立っているので、アクセルの時みたいに銀色を下塗りする必要は全くありません。
 その他、襟パーツがないため首周りがスッキリしているのも特徴です。
 んで、さっき触れた頬のパーツですが、この角度だとすっきりしていますが……

 

 頬が最も太ましく見える角度?
 こうして見ると、頬を大幅修正したなら口周りも見直して欲しかったかなとも思えてきますね。

 

 頭部側面。
 確かに庇が長めですが、そんなに極端におかしな形状ではない気がします。
 玩具アレンジとしては、充分許容範囲かと。
 それはともかく、首軸がちょっと回しにくい……

 

 首の可動範囲ですが、トライアルは若干癖があります。
 上の写真は、左から正面向き→顎引き→顔上げです。
 真ん中と右端は、首軸は動かさずに限界まで動かした状態です。
 このように、下方向にはあまり目立った変化がないという、残念な可動範囲。
 何故こうなったのかというと、どうやら首軸の根元接続に問題があるようです。
 トライアルの首の付け根は、なぜか後方に少し傾いた形で接続されています。
 どうもこれがまずいようで、首軸がもう少し前に傾けられれば、より深く顎が引けそうです。
 ちなみに、首軸はそれ自体後方にスイング可能なので、実際は上右の状態より更に顔を上げられます。
 この場合、目測40度?前後くらいの目線になります。

 

 エンジンブレードが付属しますが、こちらはアクセル付属の物と全く同じ。
 特に塗装が追加されてるとか、オミットされているという事もなし。
 保持するための手首も健在。

 

 当然、エンジンメモリ差し込みギミックやそのための親指伸ばし右手首もあります。
 って写ってねーし。

 

 トライアルがエンジンブレードを使う場面は少なめでしたが、とても印象的でした。
 当初は付属するかどうか大変不安でしたが、とにかく一安心。
 アクセルとはまた違ったアクションポーズが映えそうです。

 

 適当にポーズ付けていてふと気付いたんですが、トライアルメモリが腹部に干渉するため、上体の前方屈伸に難が発生します。
 もっとも、トライアルは元々そんなに屈伸しない方なので、実際は僅かな差に過ぎませんけど。
 一応念のため。

 

 たまたま近くに飾られていた「仮面ライダーダークキバ」を絡ませて。
 本当なら、ウェザードーパントかナスカドーパントRと組ませたいところですが。

 

 今回、アクセルドライバーが2つ付属していますが、そのうち一つはアクセルメモリが刺さった状態のもの。
 これは、通常アクセルに付属するものと同じです。
 ご存じの通り、アクセルはトライアル化している際にはアクセルメモリを引き抜いているため、このパーツには何の意味もありません。
 幸い、これとは別にちゃんと使えるアクセルドライバーがあるので何の支障もないわけですが、そもそも何故これを付ける必要があったのか、理解に苦しみます。
 ネット上でも、これの存在意義について様々な憶測が流れていましたが、結局はただのボーナスパーツ?

 

 こちらが、トライアル用のアクセルドライバー。
 ドライバーとトライアルメモリが分離出来るようになっており、凸ジョイントはドライバー側にあります。
 ここは、メモリ側に凸を付けて欲しかった所ですが、アクセルメモリ付を使用させられるよりはマシかと。

 

 トライアルメモリをアップで。
 なんとビックリ、三連シグナル部分がしっかり個別に塗装されています!
 向かって左から、青・黄・赤とハッキリ判別出来ます。
 さすが限定品、塗装の細やかさは大したものです。
 これ、一般販売だったら絶対オミットされそう。

 

 トライアルメモリを別角度で。
 若干対比が大きいかな? とも思えますが、そんなに悪くないバランスです。
 ちなみに、アクセルメモリが外れやすいという事はありませんので、安心です。

 

 トライアル用のアクセルドライバーは、当然アクセルにも使用可能。
 このように、トライアルメモリを接続した瞬間を再現可能です。

 

 そして色を変えてみる。
 劇中ほんの僅かの出番で、しかもCGによる変色なので、このモードの商品化はまずないだろうと思いますが、魂ネイションでサンプルが飾られていたり、いまだにW系フィギュアーツがじわじわと出続けている状況を考えると、いつか出てしまいそうでとても怖いです。
 なんせ、サイクロンアクセルエクストリームまで出すくらいだからねえ……出たってなんの不思議もねぇな。

 

 アクセルドライバー接続用とは別に、「投げ捨て用(変形前)」トライアルメモリが付属します。
 これを手に持たせることで、マキシマムドライブ後の決めポーズが作れます。
 ただし、手首の形状の都合で若干固定させ辛かったり。
 それでも、とても嬉しい配慮です。

 

 やっつけで「マシンガンスパイク」!
 本当は顔面連打なんだけどね。

 

 「9.8秒――それが、お前の絶望までのタイムだ」
 やられ中のエフェクトは再現がめんどいのでパス。

 まあとにかく、こんな感じでやらせたい事はきっちり一通りやれるわけです。

 

 代行やられ役で使用した「仮面ライダーダークキバ」。
 こちらも、アクセル同様顔の出来について色々文句を言われた商品でした。
 顔が縦に潰れているようにも見えるため――しかし、一週間前に発売された「仮面ライダーキバ・エンペラーフォーム」という更なる酷い出来の顔があったせいか、こちらの風当たりはさほど強くなかったように感じられました(相対評価?)。
 確かに劇中のマスクには似てないですが、それでもこれはこれで充分かっこいい、素敵な出来です。
 出回っている数は少ないようですが、見かけたら是非押さえて欲しい逸品です。
 マントのパーツ構成に、ちょっと癖があるけどね。

 

 「仮面ライダーWサイクロンジョーカーエクストリーム」と共に。
 番組後半の組み合わせですが、この組み合わせでの共闘は意外に少なくて残念でした。
 しかし、番組知らない人が見たら「何このロボット達?」と言いそうなスタイリング。
 Wライダーのパワーアップフォームって、メカっぽい意匠が多かったんですね。
 あらためて理解したぜ。

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【買ってみて一言】

 当初の不安を払拭するのに充分な完成度と、プレイバリューを持っていると思われます。
 確かに、部分的に不満点や難点が見え隠れしてはいますが、総合点はとても高いと判断して良いでしょう。
 かつてのネガキャンもなんとやら、頭部パーツ改善がここまで商品の印象を好転させるとは思いませんでした。
 フィギュアーツは、いまだに顔の出来に難がある物が多く、ライダー系のみならずプリキュアやワンピース系でも多くの難点が指摘されていたにも関わらず、改善されるどころかむしろ悪化して発売されてしまうケースも多々あります。
 そんな中、素直に改善されたトライアルは、ある意味でとても貴重です。
 今回は、それだけ批判が多かったという事かもしれませんが、このように、今後もまずい部分は素直に作り直していただきたいところです。
 Wみたいに出来の悪い頭部に妥協したり、或いは(TV版とは別物と無理矢理納得して)独自の魅力を見出したりする必要のない、「これだけやってくれれば充分だよ」と言いたくなるような商品を、ユーザーの多くは求めていると思います。
 このトライアルを巡る流れが、今後のフィギュアーツにも適応され、より出来の良い商品が生まれてくれる事を祈りたい心境です。

 このトライアル、先でも触れた通りシグナル部分の細かな塗装がビックリポイントですが、他にも手首の塗装に驚かされます。
 うまく撮れなかったので写真は掲載していませんが、手の甲の親指側にある三角形の部分に、金色の点塗装がビッシリ施されています。
 最初はタンポ印刷かと思ったんですが、よく見るとそれぞれ細かく違っていて、大変な手間がかかっているのがわかります。
 それで手首10個ですから、これはもうちょっとした驚異。
 よくまあここまでやってくれたものです。
 こういうのも限定だからこそなんでしょうが、すぐには気付かないような部分にも細やかな処理が施されているというのには、ユーザーはとても喜びます。
 こちらも、是非今後も続けて欲しいものであります。

 

 トライアルの本領は、12月下旬配送予定の魂ウェブ限定「ウェザードーパント」到着後に発揮されるのではないでしょうか。
 そちらも注文した人は、年末年始にかけて思う存分マキシマムドライブしまくってくださいな。

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