第40回 ■ バンダイ 魂ネイション2008会場限定 聖闘士聖衣神話「アリエスシオン(冥衣)/教皇シオン」

2008年4月8日 更新

 2008年3月20日から23日まで、秋葉原UDX内AKIBA SQUAREで開催されたトイイベント「魂ネイション」。
 これは、バンダイの新部門「コレクターズ事業部」設立のお披露目のために開催されたそうで、今までのようなS.I.C.限定ではなく、「超合金魂」や「聖闘士聖衣神話」をはじめとする複数の商品カテゴリを合わせた、大変豪華なイベントになりました。

 その会場限定販売品として、三種類の商品がありましたが、今回はそのうちの一つ「聖闘士聖衣神話 アリエスシオン(冥衣)/教皇シオン」をレビュー。
 残念ながら、限定品の中では最も人気がなかった物らしいですが、実は商品としてのボリュームはダントツでした。

 それでは、一般販売版などとも比較しながら、行ってみましょう。
 尚、「S.I.C.ワイルドカリス」のレビューは諸事情により行いませんので、あしからずです。

●「魂ネイション2008」限定版  聖闘士聖衣神話 アリエスシオン(冥衣)/教皇シオン
 会場販売価格\8,000(税込)

  • 冥闘士シオン素体(3rd)
  • 冥闘士シオン・マスク装着時用髪パーツ
  • 牡羊座冥衣マスク
  • 牡羊座冥衣肩アーマー×2
  • 牡羊座冥衣肩部ツノ・固定タイプ×2
  • 牡羊座冥衣肩部ツノ・可動タイプ×2
  • 牡羊座冥衣胴体アーマー
    (全5パーツ構成・牡羊顔を含む)
  • 牡羊座冥衣腰アーマー(全6パーツ構成)
  • 牡羊座冥衣上腕アーマー×2
  • 牡羊座冥衣前腕アーマー×2
  • 牡羊座冥衣手甲パーツ×4(予備含む)
  • 牡羊座冥衣太腿アーマー×2
  • 牡羊座冥衣膝アーマー×2
  • 牡羊座冥衣脛アーマー×2
  • 牡羊座冥衣オブジェ素体
    (全7パーツ構成・牡羊顔は除く)
  • 牡羊座冥衣・交換用手首×10
    (握り×2/平手×2/爪立て(SR用?)×2
    /掴み×2/開き手×2)
  • 教皇シオン素体(1st)
  • 教皇シオン・マスク装着時用髪パーツ
  • 教皇マスク
  • 教皇肩部アーマー
  • 教皇法衣(全2パーツ構成)
  • 教皇ロザリオ
  • 教皇マスク装着時用黒頭部パーツ
  • 取扱説明書
  • シール×2

 「聖闘士聖衣神話 アリエスシオン(冥衣)/教皇シオン」(以下シオンセットと呼称)。
  一人一限購入で、表示価格とは別に入場料\600円(当日券)が必要。
 もっとも、展示ブースに入場すると来場記念品として「S.I.C.匠魂 仮面ライダー」のクリアバージョン(2種のうちいずれか)がもらえる。

 本商品は、既に販売されている「聖闘士聖衣神話・冥闘士シオン」と、初期キャンペーンで購入可能だった「(原作版)教皇シオンセット」の一部をまとめたセットで、以下の部分が変更されている。

  • 牡羊座の冥衣(アリエスのサープリス)が、紫メタリック→黒メタリックに変更
  • 冥闘士シオンの髪の色が濃いものに変更
  • 冥闘士シオンの素体カラーが明るい紫からグレーに変更
  • 教皇シオンの法衣が、通常時の黒いものから原作初期登場時の白いものに変更(新造)
    (注:筆者はキャンペーン版教皇を持っていないため、髪の色などの細かな差異は未確認)

 また、教皇は本体関連のみで、キャンペーン時に同梱されていた「ディスプレイスタンドセット」や「一部黄金聖闘士用のマント」などは付属していない。

●冥闘士(スペクター)シオン:

 「聖闘士星矢」本編第一部・聖域(黄金十二宮)編において、双子座の黄金聖闘士サガに殺された先代?教皇本人。
 劇中にて正式な教皇の引継ぎ等は行われておらず空位のため、本来は先代という表現は正しくない(注:近年チャンピオン他で連載されている関連作品は、原典と比較すると多数の矛盾や食い違いがあるため、筆者は同一世界作品とは認知していない。もしそちらに言及があったとしても、ここでは触れないことにする)。
 243年前の聖戦の生き残りでもあり、天秤座の童虎と共に次の聖戦に備えていたが、志半ばにして散ってしまう。
 だが、女神の封印を破って復活した冥王ハーデスの力を受け、一日限りのかりそめの命を与えられ、冥衣(サープリス)をまとった「刺客」の一人として聖域十二宮へ姿を現す。
 本商品は、この時の姿を立体化したもの。

 かつて身にまとっていた黄金聖衣の“邪悪バージョン”とも言える、トゲトゲした冥衣をまとった姿は、他の冥闘士や聖闘士とは違う独特の格好良さ・魅力があり、一部では大変に人気が高かった。
 「聖闘士聖衣神話・冥闘士シオン」自体は、シリーズ第35弾として2007年6月に一般販売されているが、そちらはアーマーの色が原作のカラーイラスト準拠の「メタリックパープル」になっており、原作の絵を見て「冥衣=漆黒」というイメージを持っていたファンに若干の違和感を与えていた。

●牡羊座の冥衣(アリエスのサープリス):

 まずは、オブジェ形態から。
 尚、以下の記述は一般販売版「冥闘士シオン」でも同様。

 オブジェ素体は、各部装甲を接続しやすくする都合上、首・脚付け根などがある程度可動。
 前脚・後ろ脚は足首部分が外れる構造になっており、人素体同様下からアーマーを差し込んで止めるようになっている。
 ただし、牡羊座の聖衣の場合は脛アーマーが前脚に来る。
 尚、後ろ足首の接続が異常に甘く、しょっちゅうポロポロと外れてしまう難点あり。
 これは一般版でも気になった点だが、残念ながら限定版でも改善されることはなかった。

 基本形は原作版「牡羊座の黄金聖衣」で(アニメ版では牡羊の顔が腰アーマーの前垂れになっている)、角や四肢等のデザインが大幅に変更されている。
 ただ、この状態で見ると大まかなデザインラインは変化しておらず、じっくり見るとようやく色々な違いが見えてくるという、大変面白い造りになっている。
 それなのに、素体に装着させるとガラリと様相を変えてしまうというのは、さすがの一言。
 加えて、単に牡羊座の黄金聖衣を暗黒聖衣化させたわけではないという点も見逃せない。

 基本的な組み立て方とパーツ配置は、黄金聖衣と同様。
 ただし、冥衣オリジナルの手甲パーツだけは例外で、これは各後ろ脚の上部に固定。
 更にその上から腰横アーマーを接続するため、パッと見はわからなくなる。

 腰アーマー前垂れ部分は胴体アーマー背面部に固定。
 そのため、牡羊座黄金聖衣・原作版再現時のように余剰パーツになってしまう事はない。

 オブジェ素体の前脚を取り外してから、各部装甲を接続・取り外しする必要がある。
 これは、前脚パーツ上部が胴体アーマーのロックを兼ねる構造になっているため。
 脚を外さないまま処理しようとするとえらいことになるので、注意。

 オブジェ素体に胴体アーマーを接続する時は、前面部を開いて羊の胴体? の背中側に滑り込ませる。
 このため、メッキが擦れやすくなってしまうので注意が必要。
 筆者の一般版冥衣はこれで結構メッキが剥がれてしまった。

 羊の角は、大型の無可動タイプとやや細身の可動タイプが付属。
 どちらでもオブジェに接続できるが、やっぱり迫力的には無可動式がベスト?

 黄金聖衣の分解図では羊の胴体内部に収納され、アニメ本放送当時の玩具「聖闘士聖衣大系」版では背中の上に乗っかっていたマスクパーツは、聖衣神話シリーズでは尻尾になるように処理されている。
 これは黄金聖衣版も同様。
 ただしマスクの形状が形状なせいか、どうしても浮いて見えるかも。
 愛で補え、愛で(笑)!

 牡羊座の黄金聖衣との比較。
 冥衣の方に形を近づけるため、黄金聖衣は「アニメ版の角」と「原作版フェイス」を混合で使用。
 牡羊座の聖衣は、全体のバランスがとても良いもののアニメ版と原作版の両方を再現可能とするため、羊の顔に相当するパーツが余ったり余らなかったりするという、大変に困った仕様にされていた。
 原作版では腰アーマーの前垂れパーツ、アニメ版だと羊の顔そのものの行き場がなくなってしまうのだ。
 だけど、原作・アニメ版問わず「ムウ素体に装着させた場合はどちらのパーツも必要」になってしまうため、大変な矛盾が生じる。

 冥衣版は、この問題を「バージョンチェンジなし」とすることで解決。
 また、黄金聖衣版では今ひとつ足りなかった各部接続保持力を高めている。
 いわば改良版とも言える造りになっているわけだ。

 ただ、(後述するが)残念ながら羊の顔パーツの保持力だけは、冥衣版でもポロポロと外れやすくなってしまっている。

 牡羊座の冥衣・パーツ一覧。
 手前の方から奥へ向かって頭部〜尻部の配置。
 一番奥にあるのは、すべてのパーツを取り去ったオブジェ台座。

 原作初期から「漆黒のバージョン違い聖衣」として、暗黒聖衣(ブラッククロス)というものが登場したが、この冥衣はそれらとは違い、かつてそれを身に付けていた者が黄泉の国より蘇った時に副産的に生まれた(厳密な設定があるわけではないが、そう解釈出来そうではある)、似て非なる物だ。
 劇中では、牡羊座の他に双子座・水瓶座・山羊座・蟹座・魚座の冥衣が登場しているが、そのいずれも「悪の聖衣」ともいうべき鋭角的なデザインとカラーリングに変更されており、なおかつ格好良さを失っておらず、それどころか黄金聖衣にはなかった独自の魅力すら発揮するに至っていた。

 原作登場時は「とても良いものなのに、商品化などまずありえないだろう」と誰もが考えていたものだが、約十数年を経て、このような形で実現した。
 今回の限定版は、原作のイメージをある意味もっとも忠実に再現したカラーリングであり※、そういう意味でとても貴重なものだろう。

 尚、冥衣版黄金聖衣自体は、一般版より前に香港バンダイから「聖闘士聖衣大系」として発売されている。

※原作では、冥衣の照り返しを「大きめのベタ+青銅聖衣と同じグラデーショントーン+削り」で再現しており、また全冥闘士が同じ処理を施されていた事もあり、漆黒のヨロイというイメージを持っているファンも多く、赤みがかったサイクロプスや黄色系統の混じったパピヨン等の冥衣に大しては違和感があるという意見も多い。
(尚、冥衣のトーンは後年IC SCREENやDELETER等から発売された“かなり暗めのグラデーショントーン”を利用していると勘違いし、同人誌などでもこれらを冥衣の表現に用いている人も多いが、実際は青銅聖衣のものと同じく、レトラセット製のグラデーション・スクリーントーンが使用されている)

●冥闘士(スペクター)シオン:

 まずは、シオン素体。
 3rd素体が使用されており、関節可動率は高いものの関節保持力に若干の難がある。
 もっとも、極端なポーズで長期間飾ってさえいなければ、さほど大きな影響はなさそう(ただし筆者の経験測による)。

 後述するが、顔は教皇シオンのものとはまったくの別物で、表情だけでなく髪の毛の構造まで違っている。
 目付きは、冥闘士らしく鋭いものになっている。
 もっとも、本当は彼は敵ではなかったのだが……。

 シオンの髪は、二重・三パーツ構成。
 ボリュームある後ろ髪と、2パーツ構成の頭頂部を分離させる。
 マスク装着時用の前髪が別途付属するが、これが教皇用の同種前髪と良く似ている(しかし別物)ため、保管の仕方によってはどっちがどっちか判りにくくなるかもしれない。

 胴体アーマーは前面展開式で、胸と腹の装甲をそれぞれ接続して蓋を封じる方式。
 牡羊座黄金聖衣では、これらが一体式になっている。

 冥衣装着。
 基本的な構造は牡羊座の黄金聖衣とほとんど同じ。
 そのため、黄金牡羊座聖衣を弄った経験があれば、一応説明書なしでも組み立てられる。
 違っている点は、胸部と腹部アーマーが一体化していない事と、手甲パーツがあるくらい。
 手甲パーツという概念は、この商品(正しくは一般版)から始まっている。

 原作ではついになかった(OVAはまだ見てないので)、マスク装着姿。
 専用の前髪パーツに付け替えてから、ヘルメットを被せるいつものパターン。
 全体のラインは確かに牡羊座の黄金聖衣のままなんだけど、なんだかとても攻撃的でスタイリッシュな形状にまとまっている。
 よく見ると、フェイス部分のカッティングラインの角度なども変わっており、そのアレンジの秀逸さが窺える。
 特にエンブレムパーツの形状が素晴らしく格好良い。

 背面部。
 わかりやすくするため、後ろ髪は除去。
 角を支える基部は黄金聖衣のものとかなり構造が違っており、保持力が圧倒的に高い。
 黄金聖衣は、角基部の凹パーツ内に軟質樹脂パーツがめり込んでしまうトラブルが多発したが、今回はそのような事は起こらず、かなり安心できる。

▲ 無可動版ツノ▲ 可動版ツノ

 角2タイプ比較。
 写真では可動角の先端部がやや下がっているが、これよりもう少しつり上げる事は当然可能。
 可動角は、ポージングを楽しむ際に役立つが細いためやや迫力に欠ける。
 対して固定角は、ボリュームがあってなかなかかっこいい。
 ただし、その体積の関係上首がほぼ完全にロックされてしまうため、横を向くどころか角度をつける事すら難しくなる。

 一般版では、角の接続に特に大きな問題がなかったが、限定版はなぜか若干ぐらつきがあるようで、左側の角の固定がやや甘い。
 それとも、これは個体差?

 マスクを手に持たせる時は、スターダスト・レボリューション用(なのではないかと勝手に推測)の手首をはめ、下側の縁を支えるようにしつつ、マスクのサイド部分を角または胸パーツの隙間に差し込むようにすると、ポロリ落下がなくなり安定しやすい。

 一般版冥闘士シオンとの比較。
 色味がこんなに違う。
 一言にリペと云っても、これだけ印象が変わるなら充分別物と呼べそうな気がするが、それは筆者だけ?

 よく見ると、髪の色も違っていたりする。

 牡羊座の黄金聖闘士ムウとの比較。
 劇中10番目に登場した師匠と弟子関係にして、唯一の黄金聖闘士同士の師弟。
 冥衣単独ではわからなかったアレンジ具合が、よくわかる。
 比較的おとなしめな印象のある牡羊座の黄金聖衣が、実はとても戦闘的なスタイルを持っている事が、冥衣との比較でよくわかる。
 色から来るイメージもあるかもしれないが、この差異はとても心地良い。

 素体の関係で結構な身長差。

 必殺技「うろたえるな小僧ども」も問題なく再現可能。
 牡羊座の聖闘士の代表的な技であり、シオンといえばこの技でもある。
 わざわざこれ用の手首まで付いているところが、本当によくわかってらっしゃる。

 いや、実際は肩の干渉がえらいことになるので、結構めんどくさいんだけど。
 ……え、別にそういうつもりじゃないんじゃないかって?
 実は筆者もそう思うんだけど、でも、マイスは時々とんでもないものを同梱して来たりするからなあ。

●教皇シオン:

 「双子座の黄金聖衣」に付属していたアーレス一式と違い、こちらは原作準拠の教皇。
 先の通り、星矢に聖衣を与えた頃のデザインになっている。

  教皇パーツ一式。
 コスチュームは本商品完全オリジナルの形状。
 1st素体が使用されているため、牡羊座の黄金聖衣を難なく装備できるのも嬉しい。
 袖に隠れてほとんど露出しないせいか、拳などの交換パーツはなし。
 また、双子座の黄金聖衣付属の「教皇アーレス」のような、玉座もない。

  ロザリオはビーズアクセサリー的な造りになっている。
 芯に使われているテグスの太さが大きすぎるのか、或いは張りが強すぎるのか、残念ながらフィット感はイマイチ。
 個体差の可能性もあるが、少なくとも筆者の手元にあるものは、どうしても浮き上がってしまい落ち着きがない。
 教皇アーレス用のロザリオも結構そんな感じだったナー。

 頭部は、教皇のデフォともいえる黒いものと、穏やかな表情のシオンが付属。
 シオンは、冥衣版のものとは完全な別物で、髪は三分割式。
 一見すると、頭頂部パーツだけ取り外せば聖衣のマスクパーツを装着できそうに見えるが、横に伸びている毛(アホ毛モドキ?)があるため、別なパーツと差し替えなければならない。

 法衣着脱は、他の布服タイプ同様、下からスポッと被せて背中のマジックテープで閉じる方式。
 前面部の飾りも、裏側にマジックテープがあって固定できるようになっている。

 当然、素顔&教皇マスクの組み合わせも可能。
 この場合は、前髪パーツは完全除去。
 それにしても、本当に女顔。

 素体靴は、牡羊座の黄金聖衣と同形状の色違い。
 冥衣のものとは、完全な別物。

 教皇シオン頭部は、そのままムウと差し替えが可能。
 これにより、前聖戦時の先代牡羊座の黄金聖闘士バージョンも再現できる。
 素体の肌の色もムウと同一なので、違和感はほとんどない。
 髪の形状は、どう見ても牡羊座の黄金聖衣に合わせている事もよくわかる。

 ただし、前髪をマスクパーツ装着用のものに差し替えても、ヘルメットがやや浮いてしまう感があり、ジャストフィットとはお世辞にも言えそうにない。
 気になる人は、やっぱり右手で抱えさせた方がいいのかも?

 ありし日の黄金聖闘士シオンと、冥闘士シオンの揃い踏み。
 こうしてみると、どちらも製品化したのが奇跡なんだなーと実感させられたり。
 大系全盛時代では、まずありえなかった取り合わせなわけだし。

 後ろ髪が足りなくなるが、ムウ素体を借りれば一応シオン三体揃い踏みも可能に。
 これを書いている現在、神話牡羊座はかなり安く販売されているので、本商品を買われた方は購入を検討されてみては。

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 付属マニュアルは、記述内容こそ既出商品と同じだが、他の二大限定商品と違いしっかりと作られている。
 このシオンセット、箱の作りも他の二つと違ってカラー印刷&PP加工だったり、デフォでロゴまで入ってたりするところをみると、もしかして三大限定品の主力候補だったとか…?

【買ってみて一言】

 冥闘士シオン。
 劇中での印象深い活躍と、その洗練されたデザイン、新解釈を交えた新しいスタイルの立体化と、大変旨味の多い商品の筈なのに、なぜか一般版の人気は低く、各所で叩き売りの対象になってしまっている。
 その煽りなのかどうかわからないが、本商品も三大限定版の中では比較的入手が容易で、同時にあまり高い評価を得ていない。

 本商品は、マイスが色替え&キャンペーン品の中では入手が容易な教皇との抱き合わせプラスアルファの価格のせいなのか、既商品を持っている人には不要視される傾向があるように感じられ、それが最大のマイナスポイントなってしまっている。
 ただ、教皇を持っていない人、冥衣シオンを持っていない人、両方持っていない人にとってはこの上ないほどおいしいアイテムである事は変わりなく、また、一般版シオンと比べても存在感・迫力は圧倒的な違いがあるし、単なるリペには留まっていない。

 残念ながら、3月27日付でイベント後の通信販売受付も終了してしまい、今後はオークションや中古業者からの購入に頼るしかなくなってしまうが、もし納得の行く範囲で購入できるチャンスがあり、多少興味があるようなら、購入するだけの価値は充分にあると思われる。

 とにかく、本商品が三大限定商品内でもっともボリュームがあり、またプレイバリューが高かった事だけは、間違いがない。
 個人的には、もっと高い評価が得られるべきアイテムではないかと真剣に思っている。

 いや単に筆者が世界で五指に入るくらい(脳内基準)シオンが好きだから、そう思うだけなのかもしれないけど(笑)。

●追記:

 「S.I.C.ワイルドカリス」のレビュー予定がない(筆者がS.I.C.に造詣が深くないためです)ので、ここで軽く、Wカリスを含めた「魂ネイション」限定版のその後の状況についてまとめを。
 これは商品レビューではなく、所謂「販売当時の覚え書き」とお考えいただければ幸い。
 こういうのは、数年後に読み返すとあらためて驚けたりするから、覚えているうちにまとめておくのが良いのですよ。

 3月20〜23日秋葉原で開催されたイベント「魂ネイション」では、「魂マジンガーZ10周年記念バージョン」「S.I.C.ワイルドカリス」「シオンセット」の順で人気及び需要があったようで、最初の三日間はZ、最終日のみWカリスが最初に完売、シオンセットはどの日も最後まで残るという状況になった(少なくともWEB上の目立つ報告によれば、付くが)。
 現場での購入経緯については「超合金魂マジンガーZ 10周年記念バージョン」の後書きに詳しく記したが、特筆すべきことはその後にも発生している。

 バンダイは、イベント開催前から「各限定品をWEB上で若干数通信販売する」旨を発表しており、これはファンの間にそれなりに広く伝わっていた。
 イベントが関東限定のため、地方の人は参加が難しくなってしまうし、また都内でも色々な都合で参加できない人も居た筈だから、これはファンには嬉しい配慮だった。
 こうなると当然、わざわざ会場まで行かなくてもいいやと楽観視してしまう人も出て来るし、タイトなスケジュールのために会場行きが微妙で、悩んでいたという人も安堵出来ただろう。
 とにかくこの時点では、最悪の場合でも通販に頼れる、という考えを持っている人達がそれなりに居たという様子は、なんとなく窺い知ることが出来た。

 だが、過去こういったWEB上通販予約が、熾烈な争奪戦になるという事を経験で理解している人達(筆者含む)は、この報が何の補助にも配慮にもならない事を感覚的に理解しており、やはり会場に出向いて購入するのが賢明だと判断していた。

 ここで、両者間に決定的な温度差が生じていたように、筆者は思う。
 そして慎重派の予想通り、前者「通販に安堵した人達」の多くは、その後恐るべき地獄を味わわされる事になった。

 限定商品の通販は3月25・26・27日の三日間行われ、一日に一商品ずつ午後7時からの受付となった。br>  まず一日目、バンダイ公式ショッピングサイト「B☆SHOP」にてマジンガーZの通販予約開始。
 これはなんと、たったの二分間で瞬殺してしまうという、恐ろしい展開になった。
 しかし、通販申し込みの流れそのものは大変スムーズだったとの話で、多数アクセスによるサーバ負荷及びそれに伴うシステムトラブルは、ほとんど発生しなかった。
 つまり、単に間に合うか間に合わないかという、それだけの問題だった。

 翌日のワイルドカリスの予約合戦は、前日のZの状況から、相当な苦戦になるだろうと予想され、なんとしても手に入れたいと願う人達の多くは、予約開始時間前から商品該当ページを展開しておき、時間と同時にリロード→購入と持っていこうと考えていたようだ。
 実際、これはかなり有効な手段の一つで、瞬殺が予想される商品予約に対してはスタンダードな対策でもある。

 さて、ここで東映ヒーローネット(以下THNと表記)の通販について、軽く触れておきたい。
 THNは、これまで会員登録が有料制で、そのためTHN限定販売品を購入する際は商品代金に加えて相当な支出を強いられてきた。
 会費は半年プランで7,350円、一年プランで14,700円(半年毎に特典が送られるが、内容はあまり評判の良くないグッズが数点程度とのこと)と、ちょっと驚きの価格だった。
 しかしこの度、THNは会員登録を無料化。
 これにより、かなり気軽に商品購入を行えるようになった。

 ――と思ったのは、恐らくそれまでTHNを利用した事のない人達だったのではないだろうか。

 過去、THNの通販を利用した事のある人達は、この改訂を「善策」とは解釈しておらず、逆に益々状況を悪化させるだけなのではと懸念していた。
 ネット通販最大のネックは、実はライバルの数ではなく「サーバ負荷」だ。
 今までは有料制だったため、THN通販時のアクセスはさほど多くはならなかった。
 加えて、通販商品の多くが受注生産品という事もあり、ほとんど競争にはなっていなかった。
 だが今回は、既に大人気を博し入手困難であると判り切っているアイテムな上に、同数販売された(とされる)別商品が分単位の瞬殺を引き起こすいう異常事態が起きている。
 この上で、競争率が激化するわけだ。
 THNのサーバにかかる負荷を懸念する声が上がるのは、至極当然の結果だった。

 さて、3月26日当日。
 午後6時台後半には、既に相当数の人がスタンバイしていたようで、某所では開始時間を前に各参戦者(あえてこう表現する)の心境報告などが相次いでいた。
 時間が近付くにつれて増えていく書き込み。
 やはり、前日のマジンガーZの状況を考慮している向きの人達が多かったように感じる。

 ――結果的に。
 ワイルドカリスは、瞬殺はしなかった。
 代わりに、誰もが予想しえなかった、とてつもない異常事態が発生してしまった(ちょっともったいぶってます)。

 最初の異常報告が入ったのは、通販開始数分前だった。
 この時点で、既にワイルドカリスの通販受付ページが展開しなくなった。
 (一応説明すると、だいたいのWEB通販は受付開始前に商品ページを展開しておいて、時間になったと同時にカートボタンを表示しなおすというパターンを行う)
 この時点で、参戦希望者のほとんどは「まったく、こんな時間から焦り過ぎだぜ」と苦笑していたのだが、後にこの笑いは凍りつく。br>
 通販ページの表示不能状態は、通販開始時刻を過ぎても継続した。
 各環境や回線速度の問題では、もはやない。
 どうやらこの時点で、各参戦者による「F5(リロード)」が多発し、その結果サーバがほぼ完全に沈黙状態に陥ってしまったらしい。
 結果、何度も何度もリロードを繰り返し、ほんの一瞬繋がった隙に商品をカートに放り込み、そのまま購入手続きまでためらわず移動するという行為を強要される事になるが、これだけなら、他のWEB通販でも日常的にありうる光景だ。

 問題なのは、「カートボタンを押すと画面がエラーになる」「カートに入れた筈の商品がなくなっている」「画面を切り替えるだけで止まってしまう」という事態が続出したという点だった。

 中には、こんな酷い状況でもかろうじて購入に成功した人達が居たようだが、成功報告が出始めたのは、開始時間から何十分も経ってから。
 しかも、受付番号がもし通し番号だとしたら、購入成功者はまだ数百人程度しかいないと判断できた。
 200番台の報告、500番台の報告が相次いだが、後者報告が出始めたのは、なんと開始時刻から数時間後のこと。
 この「表示エラー→リロード」のリピート地獄は、日付が変わってもまだ落ち着かず、それどころか明け方になっても尚継続するというありえない状況へと発展してしまった。

 午前7時まで粘って購入に成功したという人達までいたくらいだから、本当に、夜通しリロードし続けた人達が居たのだろう。
 THNはトップページすらまともに表示できないというほどの負荷に悩まされ、だいたい12時間以上もの間、限りなく閲覧不可に近い状態へと追いやられてしまった。

 ――要は、楽観派の予想も、慎重派の懸念も超越したナナメ上展開に発展したわけだ。

 ところが、事態はこれだけでは終わらなかった
 ある時刻、突然表示が軽快になったTHNに、更に予想を覆すとんでもない告知が掲示されてしまった。

 ワイルドカリスの通販は予想を遥かに超える負荷をかけてしまったため、通販を取りやめ、抽選方式に変更すると……

 つまり、これまで半日に渡ってリロードし続けてきた参戦者達を、一気に奈落の底へ叩き落すような決断を突き付けたのだ。

 抽選受付期間は、3月28日正午から4月3日正午までで、販売数は500個のみ。
 4月8日午後3時の時点で送信された当選メールを受け取れた人のみ購入可能というスタイルで、この通販に限り代引手数料は東映ヒーローネット側負担になるとのこと。

 どうやら、THNのサーバは慎重派の想定以上に負荷に弱かったようで、今回のような膨大なアクセスが集中する事を十分に予測し切れていなかったらしい。
 或いは、過去の(THNに限る範囲での)経験測から、たぶん大丈夫だろうと甘く考えていたのかもしれない。
 運営側からすれば、いくら人気の限定品だとしても、たかが一商品の通販程度でサイト全体が閲覧不可にされてしまう事は、脅威どころか憤慨の種だったのかもしれない。
 少なくとも、ただビックリしただけでは済まされないほどのものだった筈だ。
 だからこその抽選通信販売という選択肢だったのだろうが、当然のように、これは各方面で大きな波紋を呼んでしまった。
 この時のために、わざわざ時間を割いていた人達の苦労や、翌日の仕事の悪影響を覚悟していた人達の気持ちを、土足で踏み躙る行為以外の何物でしかないのだし。
 一部の噂によると、どうも「通販をやめたなら(今まで通り)受注生産に切り替えればいいだろう」と主張するファンに対し、THN運営側は「こんなになるんなら、もう限定品の通販なんかやらないようにしようかな」と思い始めているそうで、もし後者が本当であるなら相当な温度差が発生していた事になる。
 「わざわざ通販をしてやったのに、迷惑をかけられた」と運営側が考えているなら、この思考も当然だろうが、状況判断が甘かったという点は否定出来ず、そこに参戦者達の指摘が加えられるのは当然の流れだろうと筆者は思う。
 結局、この件は「本来“会員無料化”で印象好転を目論んだ」THNの思惑から大きく外れ、逆に更に悪印象を生み出すというオチになってしまったようだ。

 この一連の「事件」は、その後、一時価格が落ち着いた感のあったワイルドカリスの相場を過剰に跳ね上げるという副次的効果を生んでしまった点も、無視できない。
 通販前はせいぜい8000円前後だったのに、この件以降は15000円以上でも入札が入るようになり、中には18000〜20000円という価格で落札された礼もあった。
 皮肉にも、転売屋対策になりうる筈の事後通販が、逆に転売屋を活気付ける効果を生み出してしまったわけだ。
 参戦者達は、その後僅かな可能性にかけて抽選に応募するか、ないしは涙を呑んで超高額化したヤフオク出品物を落札しなければならなくなった。

 尚、更に翌日に行われた「シオンセット」の通販は、特に何の問題もなく終了。
 会場で余り気味だった商品だったが、無事完売に到ったらしい。
(その後ワイルドカリス以上のプレ値になったのはご愛敬)

 ワイルドカリスをはじめ、通販品が届くのは五月以降だと言われているが、その頃には今回のこの「怨恨」と、オークションの相場はどれくらい落ち着いているだろうか?
 そしてまた、来年のバンダイイベント及びその限定品は、どのような恐ろしい状況を生み出してしまうのだろうか。

 今から怖い考えに陥ってしまいそうな、そんな“地獄”が「魂ネイション」だったのだ。

 尚、2010年10月に開催された「魂ネイション2010」では、会場限定品の一つとしてワイルドカリスが復活。
 またこちらは、2010年11月12日より魂ウェブにて受注予約が開始され(2011年4月お届け)、ようやく解決を見ることになった。

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