第30回 ■ メーカー不詳「超電磁マシーン ボルテスV天空剣(総金属製)」

更新日:2006年8月7日 更新

それは、剣というにはあまりにも重すぎた。
大きく、分厚く、重く、そして高額すぎた。

それはまさに鉄塊だった――

 今回紹介するのは、海外商品です。
 メーカー名不明で、輸入ルートで日本国内に出回っているというものです。
 以前レビューした「超合金魂 超電磁マシーン・ボルテスV」には、リアルプロポーション版の天空剣が付属していましたが、今回紹介するのは、それを総金属製にしてしまった物です。

 はい、当然ながら、これはバンダイの正規品ではありません。
 残念ながら具体的な事はわかりませんが、出来が良い上に魂ボルテスとの組み合わせも面白く、また奇妙な高級感もあり、しかもちゃんとした流通ルートで販売されている物ですから、どうも単純なコピー品・パチ物とは違うように思えます。

 てなわけで、今回はこんなものを簡単にご紹介してみましょう。

メーカー不詳 天空剣(総金属製)

 上の画像の、右手で持っている(奥)方が総金属天空剣。
 左手(手前)のが、魂付属版の正規品。
 これだけ見ると、全然区別がつきません。

 輸入品のため、値段は定まっていません。
 筆者は通販で、約3000円で購入しました。
 ただ、某大型店舗では2000円台で売っていたという情報もありましたし、かと思うと、4000円近い価格を提示して販売しているところもあります。

 いずれも、商品サイズから考えると、かなり割高に感じられる値段ですね。

 こちらがパッケージ。
 縦24.3×横7.7×奥行2.7センチの大きさの合わせ箱。
 紙製だけど、かなりガッチリした造りの箱で、耐久性は充分。
 箱の裏側には、印字はありません。

 で、この「魂」と「GX-31」という字から、どう考えても魂ボルテスの関連商品のようにしか思えないわけですが(GX-31は魂ボルテスVの製品ナンバー)、だからと言って正規品であるかどうかは別な話になります。
 正規品なら、必ずバンダイのロゴか、関連商品名の表記があるはずですからね、普通なら。
 まあ、とはいえ、製品内容からして、どう見ても魂ボルテスと絡めさせる目的のものなんですけどね。

 実際は、この箱はさらにビニールに包まれて封をされています。
 ビニールも、アクセサリー用品梱包用の、固くて触るとパリパリ音のするアレです。
 とにかく、高級感だけはてんこ盛り。
 

 蓋を取った状態。
 中身は、スポンジを二重に敷き詰めて、その中に天空剣を収めるスタイルです。
 写真ではわかりませんが、天空剣の下に、さらにスポンジが敷いてあるのです。
 天空剣の形に切り抜かれたスポンジが、剣本体を優しくしっかりガード。
 さらに、(写真にはありませんが)この上に薄い和紙?が敷かれています。

 なんだか、すごい出来の良い「剣の模型」を買ったような心境にさせられ、この時点では、3000円もそんなに高くないかなーと感じます。

 魂同梱版(正規品)の天空剣との比較です。
 ああっ、なんか高級感がちょっと減った!

 魂同梱版と比較すると、ほとんど違いがありません。
 まあ、当然といえば当然なんですけど。
 材質が違うのに、刃のメッキの質感までそのまんまというのは、かなり凄いかも。
 あまりに違いがないので、せっかく開封時に感じた高級感も、なんとなく薄れてしまったり?!

 一応、この時点でも見分けはつきます。
 金属版の方は、鍔も柄もすべて金属製の上、塗装皮膜の感じが違うので、高質感があります。
 同梱版の方は、柄がプラそのものなので、すぐに判別つきますね。
 一番てっとり早い見分け方は、持ってみる事なんですが。

 さて、総金属製というからには、その重量もかなり変わっている筈です。
 まず、魂同梱版の重量を量ってみましょう。

 だいたい、8〜9グラムというところですね。
 予想以上に軽い。

 では、金属版はどうでしょうか?

 なんか、目盛りがかなり動いているような気が。
 ズームしてみましょう。

 ぐぎゃっ! 約45グラム!!
 五倍も重さが違いましたっ!!

 参考までに、魂ボルテスのボルトクルーザーを量ってみました。
 約25グラム。
 これだけでも、同梱天空剣の3倍弱。
 つまり金属板天空剣は、ボルトクルーザーの約2倍弱という、トンデモない重さだということです!
(ちなみに他のボルトマシンは、さすがにいずれも100グラムを軽く越えました)

 さて、天空剣がそんなに重いということは……

 これを、ボルテスVに実際に持たせてみたら、どうなっちゃうんでしょう?

 まず前提として、標準の指可動手首では、保持は完全に不可能です。
 オプションの握り用手首を使用しますが、はっきり言って、それでもかなりきつい!
 写真では、両手持ち&剣水平状態にしていますが、これでギリギリ。
 両肘と手首に想像以上の負担がかかるため、このような持ち方はまったく向きません。
 実際には、写真よりも剣先を上に向けられるのですが、それでも厳しいことには変わりないです。

 さっきのポーズから、ちょっとボルテスの角度を変えようとした途端、手首が落ちました。
 肘に負担がかからないように調製すると、手首が悲鳴を上げるわけです。

 この写真は、剣道の上段の構えみたいのをやらせようとしたら、剣の重さに負けて刃先がへにゃんと落ちてしまった状態。
 とにかく、手首のボールジョイントの保持限界力を遙かに超えやがってるんですよこいつは!!
 もーすこし考えて作れよな、バンダ………イじゃなかったんでしたね、ごめんなさい。

 重心を調べてみたところ、どうやら刃先から計って約13〜13.5センチの辺り(鍔側から計って約1.5センチの付近)で、刃側と柄側の重さが釣り合います。
 剣自体は約20.5センチなので、いかに柄から先が重いかが、おわかりいただけると思います。
 というか、ボルテスVは、この剣の一番軽い末端部分だけを持って全体を支えようとしているわけですね。
 それじゃ、手首が負けるのも当然だわ。

 なんとか剣を構える方法を検討。
 要は、剣の重量が手首のボールジョイントの外れる向きに行かなければいいわけですから、写真のように、剣そのものを垂直にして全重が一点にかかるようにすれば良いと。

 ま、実際はこれでも手首への負担は変わらないのですが、剣を寝かせるよりは格段に保持力が高まります。

 上段斬り。
 写真のように、頭の上まで振り上げるのも可。
 これだと、手首ボールジョイントにかかる負担がかなり軽減します。
 もっとも、剣先を極端に寝かせてしまうと、その限りではありませんけどね。

 その応用で、手首ボールジョイントに横向きの力がかかりにくいようにすれば、一応写真のように、片手保持も可能になります。

 でも実はこれ、今度は肘に負担をかけてしまうんですよね。
 写真のポーズは、あともうちょっと上腕が下がると、一気に手全体が下がってしまいます。
 肘の保持力自体剣の重さに勝てないので、あっという間に前腕が落ちてしまうんです。

 それでも、なんとかこいつを片手で、しかも長時間持たせたいというなら、写真のように剣を下げてしまって、刃先を地に付けるのがよろしいかと(この写真では付いてませんけど)。
 とにかく、シャレで扱わせるつもりでなければ、無理をこれを使用せず、素直に同梱版の天空剣を持たせた方が、遙かに無難です。
 そんなの当たり前の事ではあるんですけど、とにかく、この総金属版天空剣は、これだけとてつもないシロモノなんです。

 念のため。
 総金属製天空剣は、マジでシャレにならないほどの凶器に化けます。
 多分、ヘタすれば人体にも刺さるかもしれません。
 さすがに本当の刃のように鋭くはありませんが、本当に危険な上、その気になれば身体に刺せるほどの強度もあるため、決して子供には手を触れさせないべきです。
 ホント、油断すると大怪我させかねない危険な物なので、保管には充分ご注意を。
 特に、お子さんがおられるご家庭では。

【買ってみて一言】

 無駄に良く出来た商品です。
 海外産であるという事に対する偏見など、簡単に払拭できてしまうほど、しっかりした造りなのも好感が持てます。
 物としては、文句なしの逸品だと思われます。

 ――ですが。
 はっきり言って、これは魂ボルテスVのためのアイテムではないと思います。
 確かに形は同じですが、この重量とバランスの悪さは、シャレになってません。
 ヘタに無理矢理持たせて飾っていて、突然ポロッと落下したりしたら、環境次第でどういう悪影響を及ぼすかわかったものじゃありません。
 バンダイの正規品でないという事は、そういう点についての懸念・配慮が何もないということからも判別がつきます。

 これはむしろ、「天空剣型の単体モデル」として愛でるのが、正しいスタイルなのかもしれません。

 そう割り切ってしまえば、この重さも、硬度も、価格もなんとなく納得できそうです。
 魂の天空剣の形を模した、一種のシャレ的存在アイテム…それが、この総金属製天空剣。
 今回、この商品を入手して感じたことは、そんなものでした。
 材質が違うだけなのに不思議に高級感が溢れる総金属版は、一風変わったシャレアイテムとしての価値は、とても高いです。
 ペーパーナイフとして使えれば最高だったんですが。
 魂ボルテスVは持っているけど、ちょっと変わったアイテムも所有してみたい…という好事家な人には、最適かもしれませんね。
 とにかく、色々な意味でこれは「バカアイテム」の一種ではないかと考えます。

 ちなみにこの総金属製天空剣は、2006年7月初旬頃には、すでに国内流通しておりました。
 一部のマニアの方はすぐにネット通販検索をしたようですが、7月中旬前後にはすでにどこも完売状態だったそうです。
 かと思うと、先述の通り大型玩具店舗で普通に売っていたり、特定のマニアショップに入荷していたりという不意打ちもあったようで、なかなか油断ならない流通だったみたいです。
 筆者は、7月中旬頃にネットで注文しましたが、商品輸入業者がサボっていたようで(←取引店舗に確認を入れて判明した事実)、そのため入手までに一ヶ月近い時間をかけられてしまいました。
 ひょっとしたら、筆者と同じような目に遭った人も居たかもしれませんね。
 海外流通品ということもあり、日本での入荷のタイミングは、ごく一部の業者しか判断がつかない。
 また、すでに絶版なのか、いまだ生産しているのかも、わかりません。

 2006年8月現在、この商品についての情報は、相当不明瞭になっています。

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