第20回 ■ タカラ 勇者エクスカイザー「マスターピース キングエクスカイザー」2

2006年1月22日 更新

●キングエクスカイザー

 全高22メートル、重量86.8トン。
 変形したキングローダーに、エクスカイザーが合体(フォームアップ)した姿。
 「闘士ゴーディアン」を元祖とする内部収納合体タイプで、外観は100%キングローダーの変型によるもの。
 これは、元々エクスカイザーは何かと合体させる予定がなく、単独で活躍するロボット物として設定されていたところに、急遽合体性能を付加する事になったための影響だ。
 だから、後に登場するドラゴンカイザーも含め、エクスカイザーに直接何かが合体したり、エクスカイザー自体がロボの一部分を構成するようなシークエンスは、一つも存在していない。
 後に、「勇者指令ダグオン」のファイヤーダグオン&パワーダグオンがこれと似たようなシチュエーションの合体を行うが、これは巨大ロボの一部分の空間に“収納”する意味合いの方が強く、「ゴーディアン合体タイプ」とは言えない。
 結果的に、エクスカイザーのような合体シークエンスを正当継承した勇者ロボは、その後出てこなかったという事になる。

 キングエクスカイザーは第二話からの登場で、本編の戦闘シーンの要となる存在。
 番組中、一度ガイスターによって大破させられ、ドラゴンジェットに引き継がれるものの、グレートエクスカイザー誕生時からは再びメインに返り咲く。
 基本戦闘は、エクスカイザー同様細かな武装で敵を翻弄・攻撃し、カイザーフレイムでガイスターロボの動きを封じ、カイザーソードでトドメを刺すのが基本パターン。
 この時の「サンダーフラッシュ」は、先の説明の通り“本人はその場から動かない剣技”で、映像インパクトはかなり斬新。
 その他「真空桜吹雪」なんて技も使ったけど、あんまり覚えてない…。

 本商品では、「内部に小型ロボを収納しながら、どこまで関節可動を可能ならしめるか」という部分に、最大の工夫が盛り込まれている。
 これまでの「ゴーディアン系」玩具最大の問題点として、“脚部関節の可動処理”というものがある。
 これは、外側ロボの股関節部分が、内側ロボの関節に対して逆方向にまがってしまう構造になるために発生する難題だ。
 また、内側ロボの収納位置によっては、関節の無い部分に(外側ロボの)股関節が位置する事になってしまう。
 かといって、収納サイズの都合から「内部ロボの股関節と膝関節を、外側ロボのそれと同一位置にする」事も不可能になる。
 果たして、実物はどのようになっていたか…?

 なお、旧版はそんな難しい考察などせず、キングエクスカイザーの中にエクスカイザーを放り込むだけ、という至極単純なスタイルを取っていた。
 
 旧版との比較。

・サイズ(ウイング含まず)
旧:高さ約29センチ×肩幅約19.2センチ
新:高さ約21センチ×肩幅約15.5センチ
・関節可動
旧:肘が曲がるのみ。その他、股が若干左右に開く。
それ以外は一切の関節が動かない。
新:首・肩・上腕・肘・手首・指(四本)・股関節・膝・足首・かかとが可動。
首と上腕の回転以外の可動範囲はそんなに大きくない。
首と手首がボールジョイント(上向き可)。上腕にロール軸。
両肩ブロックが前後にスイング可能。
変型の都合で、腕をあらぬ方向に曲げる事も可能。
・頭部
旧:エクスカイザーを収納すると、連動して顔面部が露出。
頭部形状は、本編とはあまり似ていない。
新:頭部は合体に連動していない。
本編に酷似した形状の上、勇者ロボ特有のフェイスガードと眼部の段差も再現されている。
フェイスガードを取り外し、キングエクスカイザーの素顔? を露出可能。
頭部全体を取り外す事も可能(グレートとの差し替えのため)。
・合体準備(エクスカイザー側)
旧:エクスカイザーには、特別な動作が求められない。
新:エクスカイザーの腕を特殊な形(後述)にする必要があり、つま先も折りたたむ必要がある。
・合体準備(キングローダー側)
旧:ほぼ設定通りにハッチが開くが、脚部ハッチが一枚板状になっている。
胴体部分ハッチの固定ジョイントが、太腿部分にある。
キング側に、エクスカイザーを固定するためのジョイント類はなし。
新:肩ハッチ開閉が独自解釈でアレンジされており、二段階で展開する。
肩を含む腕全体を、少し斜め前方に向けなければならない(素立ち状態では合体不可)。
脚部ハッチが、設定通り腿・脛と二段階に展開する。
胴体部分が伸縮する。
内側に、エクスカイザーを収納固定するためのジョイントや受け皿状パーツが設定されている。
・胸のライオン
旧:ハッチを閉じた後、横のレバースイッチを入れると前面に飛び出る。
新:ハッチを閉じる前に、裏側から指で押す。
※新は、顔を押し出すためのギミックがないため、本編と少しだけ変型行程が異なってしまう。
・バックパック・ブースター
旧:バックパック型になっていない(頭部を隠す目的優先のため、裏返し状態になってしまっている)。
バーニア部分はステッカーで再現。
新:立体のブースター形状になっている。
バーニア部分は立体成形。
・カイザーソード収納
旧:右脚側の赤い装甲内に、刃を折りたたんだカイザーソードを収納可。
新:両脚側面部装甲がそれぞれ開き、右脚側に剣の柄側、左脚側に剣の先端部を分離収納できる。
また、スタイル重視の大型カイザーソードが別途付属する。
・その他
旧:スカートアーマー類は完全固定。
新:フロントスカート部分が前後方向に可動(左右個別)。
また、新は両肩末端部のバーニア状パーツを収納するギミックや、膝装甲の一部を開閉するギミックがある(カイザーミサイルの再現)。

 当初、胴体が短く寸胴でスマートではないため、スタイリング追及主義の人達から敬遠されまくっていた新版キングエクスカイザーだが、現物の完成度は大変高いものになっており、プロポーションにも意外に違和感がない。
 第一印象はかなり“もっさり”している上に、成型色の関係で安っぽく見えてしまうが、これも手に取ると「化けるアイテム」である事が実感できる筈だ。

 新版は、合体ギミックに独自のアレンジが加えられている。
 これは、エクスカイザーが合体時にさりげに巨大化している(カーモード時との対比で見ると、明らかにロボット時は体積が膨らんでいる)という、劇中表現の矛盾を回避しつつ、合体後のプレイバリューを想定したためだ。
 旧版と比較してみると、キングエクスカイザーに対するエクスカイザーの占有体積が、かなり小さくなっている事に気付かされる。

 合体行程を見てみよう。

 まず、キングローダー。
 まず、先端上部の赤いカタパルト部分を折りたたむ。
 前輪部分を回転させ、車輪を収納する。
 フロント部を回転させ、足首の形状に整えておく。

 ウイングを開き、ウイング先端部を固定していたジョイントを押し縮める。

 さらにブースター部分を持ち上げ、キングエクスカイザー頭部を露出させる。
 その後、ブースターフードの裏側に回りこんでいた板状のパーツを引き上げ、ブースター全体を膨らませるように折り曲げる。

 ブースターを背面にロックし、後ろ向きになっている頭部を180度回転。
 両脚を開き、接続ジョイントを回転収納
 後輪部分を引き伸ばし、キングの腕を解放する。
 拳を回転させる。
 前面部を上方向に大きく展開させ、内側に折り込まれている肩ブロックを左右に開く。
 両肩末端部のバーニア? を引き起こす。
 前面部ハッチごと、背中部分を押し縮める。
 肩ハッチと、脚部ハッチを開放する。

 合体準備は完了。
 いよいよ合体!

 気合を入れて「フォームアップ!」と叫ぶ。
 エクスカイザーの両前腕を、肩部の前に揃える。
 この時の形状は、上腕部を前に、前腕部を真横に揃えるという「人間には絶対不可能な動き」になっている。
 本編のように、ただ腕を横に伸ばすだけではダメなのだ。
 次に、つま先を畳み、カーモード時の位置状態にしておく。
 手首が、デフォルトの拳になっている事を確認。
 これで、エクスカイザー側の準備は完了。

 キングの腕を、肩ごと少し前方に回す。

 肩ブロック内側に設置されているトレイ状のパーツ内にエクスカイザーの肩と腕がはまるように、少し斜め方向から差し込む。
(この時、エクスカイザー肩後ろに伸びている棒状パーツを、キングローダー内側の溝にはめ込むようにする)
 エクスカイザーの背中にあるジョイントと、キングローダー側のジョイントを接続させる。
 エクスカイザーの股と膝の中間にあるオリジナル関節を、やや前方に膨らむように曲げておく。
 上半身がロックされているのを確認したら、キングの太腿内側に、エクスカイザーの脚部を押し込んでいく(ここでラチェット感を感じるくらい差し込まないと、脚部ハッチが閉まらない)。

 エクスカイザーがしっかり収納されている事を確認したら、脚部と肩部のハッチを閉じる。

 前面部ハッチの裏側から、ライオンの顔を押し出しておく。
 前面ハッチを閉じる。
 「巨大合体! キイィィング、エクスカイザーっ!!」と、大きく叫ぶ。
 その際、近くに家族や隣の住人が居たら、騒がしくしたお詫びをしておくこと。

 脳内でキングローダー召喚・合体のテーマを流していた人は、ここできっちり曲が終わるように、脳内編集しておくこと。

 新版キングエクスカイザーは、とにかく「弄る楽しさ」に満ちているアイテムだ。
 重量、造形、ギミック、関節強度、いずれも大変満足度が高い。
 ただし、成型色のせいで第一印象が悪いため、店頭でスルーした人も多いのではないかと考える。
 だけど、それではいけないのだ。
 ファンなら買わねば! 買えばわかる!
 そう言いたくなるアイテムなのだ。

 ただし、品質自体は決して褒められたものではない
 成型色の件を度外視しても、処理し切れていないバリが部分的に目立ったり、(キングローダーの項でも触れた)一部パーツの異様な汚れ方など、難点が多い。
 また、妙に塗装が雑な部分も見て取れる。
 原型自体は大変しっかり造られている事がわかる分、この仕上げは残念だ。

 だが、最大の問題点は「胸の周りの塗装」だろう。

 なんと新版キングエクスカイザーの胸ハッチ部分は、金メッキの上に塗装を施したという、訳のわからない処理が成されている。
 しかも、その塗装面積が妙に広い。
 ライオンブレスト、鬣以外の部分のみならず、首の軸とその周辺、そしてハッチの裏側から蝶番部分、ハッチ内側の背中側中央部分(宇宙警察のマークがモールドされている、キングローダー時に引き伸ばす部分)まで、すべてメッキ上の塗装なのだ。
 言うまでもなく、この処理は塗装皮膜の結着が最悪で、ある程度弄っているとすぐに塗装剥げを起こす。
 塗装そのものは、他の部分に比べてかなり丁寧に塗られているため、注意してみていないとメッキ上塗装だと気付かない部分もあるが、保存性・耐久性を考慮すると、やはり褒められたものではない。
 まして、ライオンブレスト自体は、ハッチ部分と別パーツ構成なのにメッキ塗装されているのだ。
 なんと、ライオンブレスト全体で、メッキ部分が素で露出している所は、まったくない。
 正確には、ライオンの目の部分がメッキなのだが、よく見ると金メッキの上から、クリアグリーンを塗装してあるのがわかる。
 これなら、ライオンブレストは白成型色&塗装の方が良かったのではないか。
 たとえ目の部分のメッキがなくなったとしても、その方が安心だし。
 実際、筆者の手持ちの物は、買ったその日にライオンの横顔に塗装剥げ出来ちゃったし。

 塗装面では、さらに難点がある。
 内部にもフラットブラックとシルバーで塗装が施されており、良い雰囲気を作っているのだが、エクスカイザーの合体がものすごくタイトなため、パーツ接触面の塗装がすぐに剥げてしまう。
 もちろん、大面積にわたってベロンと剥げるわけではないが、所々下地の覗いている内部構造というのは、あまり嬉しくない。
 上半身部分の内側は(前面ハッチとの連動部分を除いて)成型色そのままのパーツ構成だが、脚部内側はフラットブラックによる塗装が施されている。
 ここが、エクスカイザーとの合体を繰り返すと擦れる擦れる…。

 ただし、内装モールドそのものは大変丁寧に作られているので、これはこれでとてもありがたい。

 さて、キングエクスカイザーを合体させてみると、その行程が大変複雑なのに驚かされる。
 まして、旧版はエクスカイザーを収めて蓋をするだけという手軽さなので、その印象を引き摺っている人には益々難易度が高く感じられるだろう。
 先にも触れたが、エクスカイザーの収納スペースはかなりギリギリのため、合体はかなり気を遣ってやらなければならない。
 慣れればそんなに苦ではないが、初回はまず間違いなく手こずるだろう。
 説明書内でも、この合体については随分と丁寧に触れられている。
 どうやら、合体が難しいというのは、メーカー側も原型製作段階ですでにわかっていた様子だ。

 具体的には、

  • (エクスカイザーの)肩の収納
  • 背面部の固定
  • 両脚の固定

 の順に、壁にぶち当たる。
 キングの肩内部に設けられた横長のトレイ状パーツの内側に、エクスカイザーの肩と腕を収めるのだが、実はこれ、背中側に伸びている棒状パーツを先に固定しておかないと入れられないようになっており、なかなか難しい。
 一応、入れやすいやり方としては、前腕を真上に向けた状態にして、まず先に肩をトレイに入れて、最後に前腕を横に回してトレイの中に収めるというものがある。
 肩を収納したら、次は背面。
 エクスカイザーの背中には、目立たないが凸ジョイントが設置されており、これがキングローダー内側の凹ジョイントにはまる事でロックされる。
 ロックと言っても、実際は位置を定める程度でそんなに強い拘束にはならない。
 だが、これがはまっていないとその後のプロセスに大きな影響が出てくるため、確実に成さなければならない。

 最後に両脚の接続だが、キングエクスカイザーの太腿内側のロックジョイント部分は大変わかりづらい構造で、慣れていないと、どこに何をはめればいいのか見当がつかない。
 実際は、キング腿内側のやや出っ張った部分と、エクスカイザー脛裏側の段差を接合させるわけなのだが、実はこの時、エクスカイザー側で微妙な段差調整を行っておかなければならない。
 ここで、股関節と膝の間にあるオリジナル関節が活きる。
 この関節を、合体前に前方に膨らむように曲げておき、エクスカイザーの両脚が本来より若干縮んだ状態にさせなければならないのだ。
 そうしないと、真っ直ぐに伸びたエクスカイザーの脛裏とキング腿内側の段差は永久にズレ続け、いつまでたっても合体できない。
 どうしても、肩・背中接合後に脚の位置を調整したいなら、一つ方法がある。
 それは、キングエクスカイザー自体の股関節を後ろ側に反らしてから、エクスカイザーの脚を合体させるのだ。
 こうすると、キング股関節から腿内側の段差までの距離が少し伸び、エクスカイザーの接合部に当たりやすくなる。
 この反った状態で脚を固定し、それから元に戻せば、結果的にエクスカイザーのオリジナル関節部分は前方に膨らむ形になる。
 エクスカイザーの脚部収納は、意外に奥まで押し込まないといけないようになっている(そうでないと、ハッチが閉じない)ので、確実にラチェット感を感じるまでしっかり固定させなければならない。
 だいたいこんなところでいいだろう…と妥協すると必ず泣きを見るので、くれぐれも注意。

 合体させたはいいが、取り外す時はまた別の手順を踏まなくてはならない。
 まず脚を外し、背中と肩・腕を外すわけだが、なにせ一度合体させるとシッカリ結合してしまうので、気をつけないとエクスカイザーを破損してしまう。
 また、肩部のトレイに収まった腕一式は、取り外すのがとても困難だ。
 取り外すための取っ掛かりがほとんどないため、どうしても前腕の拘束から外そうとしてしまうのだが、その際、エクスカイザーの前腕がスポーンと飛んでいってしまう事がある。
 いや、これが本当によく起こるのだ。
 決して笑い話ではない。
 どうやらトレイ収納は、思った以上にエクスカイザーの肘部分に負担をかけているようだ。
 そのため、何度も繰り返していると肘のボールジョイントが外れやすくなったり、プラプラになったりする。
 筆者の物も、左肘がすでにプラプラ(よく外れるのは右肘なのだが)になっており、先日両面テープを内側に貼って難をしのいでいる。
 ここは、ボールジョイント受け部分を微妙に湾曲させての関節強度回復が行えない部分なので、緩くなったら、素直に両面テープの切れ端を挟む事を勧める。
 多分だが、瞬間接着剤で太らせたとしたら、いずれ磨耗してまた同じような結果になるだろう。 

 とにかく、エクスカイザーを取り外す際は、逆上がりをさせるように下から丁寧に取り外していくべきだ。

 バックパックの変型は、かなりのアイデア物だ。
 といっても、どうやらこれは先に発売された「スタジオハーフアイ版」と同じギミックらしいが。
 旧版では、キングローダー時に頭部を隠す蓋程度の役目しかなかったため、背中に回すと、ただの板にしかならなかった。
 今回は、バックパック内側にさらにもう一枚の板を設置し、そちらにバーニアパーツを接続する事で、キングローダー時にもロボット時にも、厚みが確保されるようになった。
 新造された板の基部に付いている二つの蝶番を動かし、背中に回った時に新しい蓋にするわけだ。
 バーニア部分は、両面に同じモールドが施されているため、どちらの形態の時も、末端部に位置するようになっている。
 グレート時には、ここにドラゴンジェットの機首が来る筈なので、その際はバックパックの蓋を潰し、ペシャンコにする事で対応させる事が可能になるだろう。
 キングの頭部を完全収納できないのは個人的に残念だが、このミラクルかっこいい工夫は褒めておきたい。

 合体に難儀するだけあって、キングエクスカイザー自体のプレイバリューは大変大きい。
 まず付属の拳パーツだが、定番の開き手はわざわざ指を反らしており、それ単体でしっかり表情が付けられている。
 また、エクスカイザー同様指差しポーズの右手もあり、これも指が反っている。
 よくわかってらっしゃる。

 また、デフォルトの指関節可動手首とよく似た右手が付いているが、これは何かと思えば、なんと! 微妙に手首の角度が違う!!
 つまりこれを付ければ、ソードをやや傾けた持ち方が可能になるのだ。
 これが妙に使い勝手が良くて、付け替える事でグンと表情付けが変わる。
 こういうさりげなくおいしいパーツ付加は、大歓迎したい。

 両手の袖?部分には、エフェクトパーツ付きのカイザーショットが接続出来る。

 こちらはエクスカイザーのスパイクカッターと違い、武器部分が別パーツ構成になっているため、回転させる事が可能。
 ただし、エフェクトパーツから取り外す事は出来ない。

 カイザーソードは、オリジナル解釈で両脚側面部に分離収納されている。

 右脚側面部を開き、身体を横にずらして「カイザー、ソ――ドっ!!」と取り出す場面を再現できる。
 この時、先の開き手が映えるんだわこれが!
 分納カイザーソードは、刀身の真ん中辺りで合体させ、手に持たせる事が出来るが、さすがに小さいので短刀のようにしか見えない。

 なので、スタイリング重視のカイザーソードが別添えになっており、こちらを用いてカッコイイポージングが楽しめる。

 ただし、分納カイザーソードは、劇中のように鍔部分が展開するギミックがあり、なかなか馬鹿に出来ない。

 至れり尽くせりのカイザーソードだが、残念ながら拳の保持力が弱いせいで、手の中でしっかり固定できないという難点がある。
 実際は、大型の方には柄部分に回転・脱落を防ぐための凸ジョイントがあり、これを手の平側の凹ジョイントにはめるのだが、凸ジョイントの軸が短すぎるためか充分な保持に至れないのだ。
 ここだけが、唯一残念なところだ。
 とはいえ、それでも充分ありがたいんだけどね。

 フェイスガードが外せるというのは、さりげにとても嬉しいギミック。

 これは、単に素顔を露出させるだけでなく、眼孔部分に奥行きを与える効果もある。

 勇者シリーズのロボを見ていると、眼孔部分がかなり奥に引っ込んでいるのがわかるが、今までそれを再現した玩具は皆無に近かった。
 今回、フェイスガードを別パーツ化させた事で、さらにもう一つの魅力が生まれた。
 それは、後に発売される「MPドラゴンカイザー」との合体で誕生するグレートエクスカイザーで、“最終回バージョン”が作れるからだ。
 最終回の対ダイノガイスト戦で、グレートエクスカイザーはマスク(というか頭部)全体を破壊された上、中に収納されているキングエクスカイザー頭部のフェイスガードまで失ってしまう。
 ところが、最後のサンダーフラッシュは、そのダメージバージョンのままで強行され、必殺技のバンクシーンにまで、わざわざ手が加えられた。
 要するに「頭はキング素顔、身体はグレート」になるわけだ。
 今のところの情報を見る限り、グレートエクスカイザー時は頭部差し替えになるようなので、グレートの頭とキング素顔頭を取り替えれば、容易にこれが再現できる事になる。
 なお、説明書では、フェイスガードを取り外す際はまず頭を取り外せ、とあるが、ちょっとコツを掴めば、頭を外さなくてもフェイスガードの脱着が可能になる。

 膝の金メッキパーツを開放すると、下からミサイルのモールドが出現。
 これが、本編でたった一回だけ使用された隠し武器「カイザーミサイル」。
 忘れてたよ、こんなマイナー武器!
 でも、そういう部分もしっかり押さえてくれる所は、やっぱり嬉しいのだ。

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●総評:

 何度も書いたとおり、これは「弄って楽しいアイテム」だ。
 税抜きで9000円もする価格帯の商品を弄り倒す、という事に抵抗があるコレクターさんもおられるかもしれないが、とにかくこれは、弄らないでその魅力を語るわけには絶対いかない。
 また、「勇者エクスカイザー」の洗礼を受けているファンにも、充分オススメできる。

 ただし、いじり倒して楽しむ事がメインという事は、逆を返すと、保存性について大きな疑問点が存在している事と、イコールでもあるのだ。

 今回の商品は、精度がかなり悪いだけでなく、欠陥品も多かったそうだ。
 部分的にひび割れている物や、ツノが折れている物、パーツが足りなかったり同じ物が複数入っていたり、無視できない傷があったり。
 また、塗りの粗さの度合いまで考慮にいれると、「欠陥」のバリエーションは異常なほど多岐にわたる。
 これはもう、タカラの製品管理に関わる大きな問題で、今後改善されていくものなのかどうか、大変不安である。

 最近のタカラは、精密性が売りである筈の「バイナルテック」でも多くの不具合問題を多発させるようになってきて、かなり不安度が高まっている。
 中国の工場問題とか、作業員の技術・管理レベルの維持と管理が、(メーカーを問わず)年々難しくなりつつあると言われているが、こういう諸問題も、そんな部分に関わるものなのだろうか?
 この辺はあまり詳しくないので、これ以上深くは触れないが、いずれにしても「パッケージから出してみないとわからない不具合」というものが多すぎるため、この新版キングエクスカイザーは、買ってそのまま未開封保存、とするのに大変向かないアイテムだと、ここで断言しておこう。
 さらに言えば、拳などの細かなパーツの収納方式が、バンダイのS.I.Cシリーズ等のように「ブリスターに蓋を設け、それをセロテープで固定」というものになっている。
 言うまでも無いが、これはセロテープの劣化を考慮すると、とても利口な方法とは言えない。
 出来るなら、ブリスターのセロテープをすべて剥がし、ブリスター同士の圧迫のみでパーツを固定収納させるべきだろう。
 さもないと、セロテープの糊が変色して、硬化して、環境によっては溶け出して…うわわわ、えらい事になりそうだ!
 今回は、セロテープがこれでもか! というくらい使用されているので、本当に注意したい。
 筆者も、保存用をもう一つ買いたいのだが、再販(あるかどうかわからないが)で改修される事を祈り、今はひたすら待ち続けたい気分だ。

 この商品の説明書は、かなり豪華な作りになっていて面白い。
 合体変型プロセスも一つひとつ丁寧に記されており、合体時のパーツの状態までも図入りで説明してある。
 しかも、解説に用いられている写真はフルカラーだ。
 その上、あらゆるパターンの行程をすべて説明しているため、とても親切だ。
 エクスカイザーなどは、ロボ→車と車→ロボへの行程をそれぞれ別に説明しているのだ。
 バイナルテックでよくありがちな、「戻す時は、手順を逆にしてください」という表記一つで済ませている箇所がないのだ。
 あまりに丁寧すぎて、今どの行程にあるのかたまに混乱するが、筆者はこんなに手取り足取り説明してくれる解説書を見た事がない。
 これで、エクスカイザー合体時のコツについても説明してくれていれば…。

 合体変型プロセスの説明以外にも見所がある。
 マスターピース化にあたって新規で起こされた設定画の掲載や、「勇者エクスカイザー」の作品解説も嬉しい。
 ただし、作品解説部分からは、きっちりドラゴンカイザー関連の情報が抜き取られている。
 これで、脚部の剣収納についての補足説明が別紙になっていなければ完璧だったのに。

 最後に。
 キングエクスカイザーの脚部は、実はものすごく微妙な接続になっている。

 上の写真の丸部分を見てもらえるとわかるが、脚部はそれぞれ、このネジで止められている板状パーツたった一枚でのみ支えられている。
 脚部にはダイキャストが使われている上、動かすと結構負担がかかるようなので、注意しておく必要があるだろう。
 ま、丈夫そうなパーツだから、すぐに破損って事はないと思うけどちょっと不安。

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