風と大地のページェント

大切なものを失わないように、彼は戦う。
1.メーカー名:ザウス
2.ジャンル:シミュレーション
3.ストーリー完成度:D
4.H度:D
5.攻略難易度:C
6.オススメ度:B(二回目以降:E)
7.その他:ファイヤーエムブレム? いや、ラングリッサー? いや、とりあえず少し違うものらしい。

(ストーリー)
 燃えさかる炎と、そこに打ち捨てられた亡骸を目の前に、涙を流す少年がいた。
 流した涙を糧にして数年、いつしかその少年=レミエル・デッターヴォルフは、リレファンド連合王国で最強といわれるまでの騎士となっていた。
 ある時、かねてより王国を巻き込んで小競り合いを続けていたガルメキア帝國と神聖ゼノン教国のうち、ガルメキアが本格的な侵略の旗印を揚げ、乱戦状態となる。
 量で劣るリレファンドは、古来中立を維持してきたヴァレリアと同盟を結びこの脅威を退けようと考え、レミエルはその使者として名乗りをあげた。
お供には幼馴染のミズキ、そして道中でモンスターに襲われている所を助けたエルフのカミュを加え、さらに説得に成功したヴァレリアでは、パステルとキリィを仲間に迎えたレミエルは、遊撃隊としてガルメキアとゼノンの戦いの中心へと飛び込んでいくのだった。


 「Hゲーでは避けられる傾向にあるのでは」と思われた、ノルマクリア型シミュレーションを採用した珍しいゲーム。
 ターン毎に味方と敵を交互に動かし、敵の全滅や目的地まで移動といった条件を満たすことでステージをクリアする。
 そのステージの間にストーリーが展開し、女の子の好感度を上げる選択肢やHシーンがある。
 出てくる女の子は味方のミズキ、カミュ、パステルと、敵方のリリアとレイチェルの五人で、それぞれにHシーンがあり、味方の三人には個別にエンディングが用意されている。
 単純にアドベンチャーでの移動や謎解きがシミュレーションに置き換わったと考えればいいので、プレイヤーに対する敷居はそんなに高くないだろう。
 そのシミュレーション部分はなかなかバランスがよくて、突っ込んでいってもそれなりに勝てるし、しぶとく粘ってレベルを上げることもできる。
 途中にいくつかある多少難度の高い面は全体がダレることを防いでいるし、ラスボスはCGも戦闘も迫力があり、初プレイで味わった緊張感は「ファイナルファンタジーX」のオメガのような感じ。
 女の子の同時攻略は途中までしかできないが、三人という少なさ、シミュレーションのバランスや全16面というステージの数は、CG100%等の完全クリアをするための複数回プレイに対する苦労を一切感じさせない。
 遊びやすさは、時間のかかるシミュレーションにしては抜群だと思う。

 さて、ほめられるのはそれだけで、問題は山積み。
 まずインターフェイス。
 マウスでプレイすることを前提にしている割には画面上での操作が大雑把だし、アイテムを買うときや装備・交換が煩わしいと、細かい部分が気になる。
 コンシューマーゲームに見られるスタイルとの差別化を計ったのだとしたら、残念ながらあまり成功しているとはいえず、むしろ見習ったほうが快適にプレイできた事だろう
 セーブに関しても同様で、戦闘中のどのターンでもセーブ可能というこの手のゲームでは有効な方法を取っているのに、その前後やアドベンチャーパートでのセーブがない等、細かいところで不親切。
 それに、時間のかかるシミュレーションを繰り返しプレイするのだから、一度クリアしたら次はクリアしたレベルのままで最初からプレイできる等、ストーリーに集中できる配慮が欲しい。

 そして使い回しが多い。
 キャラのアップのCGは、何処かで見たなと思ったらセリフの横に出てくる小さいCGと同じ顔だし、BGMは話が盛り上がっても悲しくても同じ音楽が使われていたりする
 他にも後半の太古の出来事を語るシーンで、いくら遺跡の守人とSEXをすることで記憶が伝わるからといっても、語るセリフと共にBGM的に喘ぎ声を流し続けるため話に集中できないとか、マルチエンディングではあっても、女の子達のエピソードはストーリー的に比重が小さいため、エンディングに文章が集中してしまって過程の盛り上がりに欠けたりする。
 また同時攻略が途中までしか出来ないのに、ある程度条件を満たすと誰とでもHシーンになる上に、レミエルはまるでその子しか見えてないようなセリフを言うのでただの浮気者にしか見えないとか、とにかく本当にこれでOKが出たのか? と思われる部分が多い。

 ストーリーにも同じ事が言えて、ストーリーの本筋の、「国を守る戦い」がいつの間にか「世界を救う戦い」へ、というお決まりのパターンにシナリオがついていってない
 たとえば、ストーリー中盤でレミエルは自分に憎悪の念を向けるリリアから、実は自分とレミエルは兄妹で、元ガルメキアの将軍の息子だと告げられ落ち込む場面があるが、養父のグライフから「お前は私の息子だ、それ以外何がある」と言われて自分を取り戻すシーンがある。
 普通に考えればそんな事になればあれこれと考えそうなものだが、彼はリリアに騙されているかも…という疑念も持たなければ、当時何があったか教えてくれともいわない。
 その後は、後半に回想が一度あるのみで、レミエルは何の疑問も持たずに戦いを続ける。
 多くを聞かず、信じる道を行くのは美徳かもしれないが、女の子との会話以外大事なところで「これ以上大切なものを失いたくない」しか言わないのでは、プレイヤーにとってはただの単細胞にしか映らない。
 他のキャラも同様で、幼馴染のミズキはともかく、カミュやパステルが、レミエルのどこに惹かれたのかさっぱり解らない
 前記した通りエンディングで語られる部分が多すぎるので、キャラクターに魅力を感じる暇がない。
 いいかもと思う頃には、ゲームは終わっているのだ

 更によく解らないのが、レミエルの騎士になるきっかけとなった出来事・レント村大虐殺と、そこで犠牲になったソフィアという女性のこと。
 オープニングと、ゲーム前半でレミエルが戦う理由を問われたときに出てくるだけで、いつどうしてこうなったのか誰も教えてくれない
 そこを舞台にしたステージも用意されていないし、ゲームをクリアする頃には回想すらない。
 シナリオ的に、彼女はプレイヤーごと置き去りにされたままになってしまう。
 それと入れ替わるように、今度は終盤にレミエルの両親の話が浮上、彼の父親は母親を敵方の将軍の嫉妬から守ろうとしていたという横恋慕話にすべてが集中してしまい、レミエルの戦う理由などお構いなしになってしまう
 ラスボスはラスボスで、「人間の苦しみや恨みの心が我を復活させた」と太古の遺跡で聞いた話にしか繋がりがない。

 とにかく話の中心がばらばらで、プレイを繰り返せば繰り返すほどシナリオに頭を捻ってしまう。

 他にも、
・父親にとどまらず、レミエルにまで嫉妬の炎を向けさせてしまうほど敵の将軍の心をつかんで離さなかった彼の母親・ニーナはどれほど美人だったのか(名前のみでCGが一切ない)?
・ガルメキアの将軍だったレミエルの父親は、何が原因で裏切り、どうやってレミエルの養父となるグライフと知り合ったのか?
・ミズキのエンディングで、レミエルは、彼をかばって死んだミズキを蘇らせるために神様から試練を受けるのだが、試練に向かう前にどうして彼女が生き返っているのか?
・リレファンド最強の騎士で、国王から「わしの後を継ぐのはお前だ」と言わしめるほどの人物であるはずのレミエルが、パステルのエンディングを盛り上げるためだけに「奴を殺せば俺が最強の男だ」とほざく、訳の解らない暴漢に刺されなければならないのか?
…等々、とにかく突っ込める所があまりに多い。
 ミュレーションのバランスに気をとられすぎて全体のバランスに手が回らなかった、そんな印象の強いゲームだ。


(総評)
 「アドベンチャーばかりでどうも」と思う人へ、いかがですかと薦めるために作られたようなゲーム。

 「シャングリラ」「ドラゴンナイト4」「妖獣戦記」等など、CGを見るために努力するゲームは、以前からそれなりにある。
 しかし、この「ページェント」は、コンシューマーゲーム寄りという印象を受けた。
 ステージごとにグラフィックをはさんで話を盛り上げる構成や、マルチエンディングは「ラングリッサー」で、キャラ一人が1部隊ではなく単体で戦闘を行うのは「ファイヤーエムブレム」だと説明すると判り易いか。
 しかし、Hを加えていいトコ取りを目指したのに、当り障りもなく終わったと言う感じがする。
 感情移入の度合いが薄いのは、戦闘中の会話がないからとか、やられた時のリアクションが何もないからだとか、考えられる原因は色々あるが、やはり個々のキャラクターが弱かったのが原因だろう。
 特にサブキャラのインパクトが弱い。
 中でもプレイヤーが扱うレミエルのパーティーで、彼を除いた唯一の男・キリィはもう一歩描き込みの足りないキャラだった。
 彼の立場なら、場合によってはレミエルと女の子を取り合ったっていいのに、中途半端にプレイヤーを笑わせるだけの、ただのチョイ役でしかない。
 そして、妹のリリアもそう。
 彼女はレミエルだけでなく、プレイヤーにも「なぜ恨むのか」という疑問を投げかけなければならない筈なのに、口を開けば「殺す」の一点張り。
 サブキャラがよくないとゲームは盛り上がらない、と私は考えているが、このゲームはそれをよく表しているといっていいだろう。
 まあそれでもカミュのエンディングと、エンディングに流れる歌がよかったので、個人的にはそれだけでもプレイした価値はあったと思う。

 正直なところ、私以外のライターなら“中途半端”の一言で、選ばれなかったソフトの群れに回してしまっていたかもしれない。
 それほどシステム以外はインパクトの薄いゲームだった。

 もっと練りこむべきだと思うが、さすがに上記のゲーム並に開発に時間をかける訳にもいかないのがHゲーの宿命。
 とはいえ、もっと話のつながりには気をつけた方がいい。
 そうでないと、せっかくバランスの整ったシミュレーション部分が浮かばれない。

 できれば続編でなくていいから、このシミュレーションのスタイルで、今度はストーリーをちゃんと融合させた“完成”した作品を作って欲しい。

(Mr.BOO)


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