『仮面ホウジョーV-1スペシャル 新たなる変心』
(今回長過ぎてすみません後編)

 パトカーの中。
 助手席に翔一が乗せられている。

 翔一「ちょっと待ってくださいよ。オレマジで急ぐんですけど」
 北條「静かに。
  君が『ホウジョー』だと分かった以上、当然君は仲間に歓迎されます」
 翔一「ハッハハハハハハ! そんな俺が『ホウジョー』なんて、やだなあもう、本気…」

 北條と目が合う(真剣)。

 翔一「…みたいですね」

 北條「まさかあなたも『ホウジョー』の持ち主だったとは思いませんでしたよ。
  (ニヤケながら)私のような人間が世の中に増えていくのは実に素晴らしいことです。
  是非ともアンノウンの魔の手からあなたを守らなければ」
 翔一「…え!?
  ひょっとして…『ホウジョー』の持ち主って…今に北條さんみたいになってしまうんですか?」
 北條「私の推理が正しければ、そういうことになります。
  (満面の笑みで翔一を見つめ)あなたも私のような人間になれて嬉しいでしょう?

 翔一「(顔面蒼白)……!!

 突然、助手席のドアをガチャガチャ揺さぶって脱出しようとする翔一(必死の形相)。

 北條「(驚いて)どうしました?何をそんなに脅えているんです」


 バイクに乗っている涼が、翔一と北條の乗っているパトカーとすれ違う。

 涼「…津上?」

 Uターンしてパトカーを追う涼。


『警視庁から各局。アンノウン出現』

 小沢「氷川君、G3-X、出動よ」
 氷川「はい!」
 尾室「V-1マイルド、出動します!」
 小沢「あなたもがんばってね、尾室君」

 ガードチェイサーで出動するG3-Xと、徒歩でてくてく出動するV-1マイルド。

 氷川「尾室さん、先に行きます!」

 あっという間に見えなくなるG3-X。
 ガシャンガシャン足音を立てながら、汗だくでG3-Xを追うV-1マイルド。

 尾室「…なんで歩いて行かなきゃならないんだ?」


 北條のパトカーを追っている涼。
 助手席の翔一の必死の形相から事態を察し、パトカーの前にバイクを突っ込ませて強引に停車させる。

 北條「うわっ!」

 パトカーから転げ落ちる北條。
 その北條を踏み台にして車から降りる翔一。

 翔一「(北條の上で)葦原さん!」
 涼「行け!」
 翔一「(北條の上で)はい、すいません!」
 
 全力疾走で逃げ出す翔一。
 後を追おうとする北條を、タックルして止める涼。

 北條「何だお前は!?自分が何をしてるか分かってるのか!?」
 涼「…お前か…一度お前を殴りたいと思ってたんだ」
 北條「なに?」

 バキッ!!!

 地面に倒れる北條。

 頬を押さえながらふと気づくと、何故かGトレーラーにいるはずの小沢が目の前に立っている。

 北條「お、小沢さん? 何故こんな所に?」
 小沢「…私も…一度あなたを殴りたいと思っていたのよ」

 バキボキ拳を鳴らす小沢。

 北條「な、何を言うんです!」

 ドギャッ!!!

 地面に倒れる北條。

 ふと気づくと、何故かG3-XとV-1マイルドが目の前に。

 北條「氷川さん!こんな時に何をしているんです!」
 氷川「はあ、僕も久しぶりに北條さんを殴りたいと思いまして」
 尾室「いやあ、僕もこんな機会はめったにないから、ついでに殴っちゃおうかなあと思って」
 北條「……」

 よく見ると、G3-X&V-1マイルドの後ろには、河野の姿が。

 北條「こ、河野さんまで!」
 河野「なに、いつもラーメンをバカにしているお前を、たまには殴ってやろうと思ってな」
 北條「………」

 さらによく見ると、河野の後ろには、いつの間にか番組にこれまで出てきた登場人物(アンノウンも含む)&スタッフ一同が、仲良く行列を作ってズラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと一列に並んでいる
(はるか地平線の彼方に小さく「ただいま60分待ち」の看板が…)。

 北條「(慌てて)…ちょ、ちょっと待ちなさい!!


 暴れているフォルティス。
 そこへ到着するG3-X。
 攻撃を開始するが、GM-01もGG-02も、ガードアクセラーも効き目がない。

 氷川「…よし!」

 GX-05を取りに行くため、ガードチェイサーの所へ戻ろうとするG3-X。
 が、フォルティスの猛攻を受け、逆方向へ吹き飛ばされる。

 小沢「氷川君!」

 GX-05がなければG3-Xに勝ち目はない。

 小沢「尾室君! 氷川君を援護して!」

 尾室に連絡を入れる小沢。
 が、応答はない。
 モニターを見ると「V-1マイルド バッテリー切れのため行動不能」の表示が。

 小沢「!? …何よそれ!?」


 とある街中。
 歩いて現場に向かう途中でバッテリーが完全に空になり、行き倒れになっている尾室。


 フォルティスとG3-Xが戦っている現場へ向かうGトレーラー。
 小沢「…なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ」
 ブツブツ言いながらGトレーラーのハンドルを握っている小沢。


 アンノウン出現の連絡を受け、パトカーで現場に向かう北條。
 途中で偶然Gトレーラーと合流する。

 2台並走しながら現場へ向かう、小沢のGトレーラーと北條のパトカー。
 途中、道路の中央を譲るまいとして、何度もガンガンぶつかり合いながら走っていく2台。


 現場へ到着する小沢と北條。
 G3-Xサポート用の携帯端末を持って、Gトレーラーから降り立つ小沢。

 氷川「小沢さん! 北條さん!」

 二人の下へ向かおうとするが、またもフォルティスの攻撃で吹き飛ばされるG3-X。

 小沢「氷川君! 今これを持って行ってあげるわ!」

 GX-05をG3-Xの元へ運ぼうとする小沢。
 それに気づいて、小沢に襲いかかろうとするフォルティス!

 小沢「!」

 その時、フォルティスの前に立ちふさがる北條!

 小沢「北條君!」

 フォルティスを睨みつける北條。
 両手を顔の前でクロスし、ポーズを取って叫ぶ!


 北條…『変心』!!


 小沢「…?」

 何も起こらない。
 フォルティスの前で回れ右をして、ダッシュでパトカーに走って行く北條。

 小沢「…な、なんなのよ一体!?」

 そそくさとパトカーに乗り込み、現場を走り去る北條。

 小沢「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!
  これ運ぶの手伝いなさい!!」

 小沢に襲いかかろうとするフォルティス。
 が、G3-Xが必死に食い止める。

 携帯端末でガードチェイサーのロックを解除し、GX-05を運ぼうとする小沢。
 が、人一人の力ではとても持ち上げられない。

 小沢「やっぱり無理か…
  (振り向いてGトレーラーを見ながら)…こうなったら…」

 Gトレーラー内に引き返す小沢。

 封印されていた予備パーツ用ハンガーのキーロックを急いで解除する。


 フォルティスの攻撃で何度も吹き飛ばされるG3-X。

 氷川「(苦しげに)…GX-05さえあれば…」

 と、その時!

 小沢「氷川君!!」
 声のした方向を振り向くG3-X。
 そこには、旧G3を装着してGX-05を運んできた小沢が立っている。

 氷川「…小沢さん!?
  小沢さんがG3を!?

 小沢「氷川君!GX-05を持ってきたわ!
    これを使いなさい!」
 G3-XにGX-05を手渡すG3。

 と、そこへ「ガシャン ガシャン」と響いてくる足音。
 地平線の彼方から、赤いバーニングV-1を装着した北條がやってくる。

 氷川「北條さん!」


 フォルティスに向かって、横一列に並ぶ氷川のG3-X、小沢のG3、北條のV-1。
 (BGM:「BELIEVE YOURSELF」)

 小沢「…いくわよ!
  みんな、気張りなさい!」
 氷川「はい!」
 小沢「北條君はアンノウンに近接攻撃!
  氷川君は北條君を援護して!
  (携帯端末を操作し)GM-01、アクティブ!」
 氷川「(GM-01を構えて)了解!」
 北條「ちょっと待ってください。
  どうして小沢さんが命令を出すんです。
  あなたの命令に従う義務はない。私は勝手にやらせてもらいますよ」
 小沢「…いいわ。勝手にしなさい」
 氷川「北條さん!小沢さん!」
 小沢「(氷川を見ながら、小声で)いいのよ。
  そう言った方が、あの男も実力を発揮するでしょう」

 北條「…いきます!」

 独断行動でアンノウンに近接攻撃を仕掛けるV-1。
 氷川「…それって…結局命令通りなんじゃ…」

 GM-01でV-1を援護するG3-X。
 北條「これでも喰らいなさい!」
 渾身の力を込めたパンチがフォルティスにヒット!
 が、フォルティスは微動だにしない。
 北條「なに!? 効かない!?」

 フォルティスの一撃を喰らい、扉をブチ破って工場の外へ飛び出すV-1(摩擦熱で全身の塗料が燃え上がり、火ダルマ状態)。
 氷川「北條さん!!」


 外はもう深夜になっている。
 北條「……」
 月明かりさえない真っ暗闇の中で、起き上がって空を見上げるV-1。
 さっき物陰で聞いていた、国枝の言葉が脳裏によみがえる。

 (国枝「(空を見上げて)空はいつだって空だ!
    晴れてても曇ってても、雲の上は変わらん。ホントはな。
    …だけど、おんなじ空だったら、晴れてる方がいい」)

 真っ黒な空。どこまでもどこまでも真っ黒な空。
 それを見つめているうちに、戦いによって燃え始めたV-1の装甲がひび割れていく。
 砕け散る装甲!

 そして、その中から現れたのは…
 真っ黒なV-1のアンダースーツであった。
 バーニングフォームの炎で顔も真っ黒になり、全身黒一色のダークな姿に変わる北條。

 「仮面ホウジョーV-1 ダーキングフォーム」の字幕。

 新たな闘志を胸に秘め、戦闘ポーズをビシッと決めるダーキングV-1(あたり一面暗闇なのでまったく見えないが)。


 フォルティスに押され気味の氷川と小沢。
 そこへダッシュで飛び込んでくるダーキングV-1!(ストップモーション)
 でも暗闇なので、フォルティスも氷川も小沢も「モジモジ君状態」の真っ黒な北條に気がつかない。

 フォルティス目掛けて突進してくるダーキングV-1(まったく見えないが)。
 フォルティスの背後からパンチをかます。

 フォルティス「?」

 さらにパンチやキックを必死に連打するダーキングV-1。
 が、まるで効かない。

 フォルティス「???」
 背中に蚊に刺されたようなかすかなショックを感じ、思わず後ろを振り返るフォルティス。

 小沢「今よ! 氷川君!」
 携帯端末を操作するG3。
 小沢「ランチャーモード、アクティブ!」
 氷川「はい!!」

 GXランチャーを組み立てて、フォルティスに狙いをつけるG3-X。
 発射!
 フォルティスに向かって飛んでいくランチャーの弾丸。
 が、気配を感じて振り向いたフォルティスは、間一髪で弾丸をかわす!!
 氷川「外れた!?」

 外れた弾丸は、後ろにいた北條の顔面にクリーンヒット!

 カーン!!!

 北條の分厚いツラの皮に当たったランチャーの弾丸が、ビリヤードの球のように跳ね返ってフォルティスに命中!

 大爆発するフォルティス(と見えない北條)!!


 戦いは終わった。
 ヘルメットを外す氷川と小沢。

 氷川「小沢さん! やりました!」
 微笑む小沢。

 氷川「…それにしても、何故アンノウンは爆発したんでしょう?
  弾丸は外れたはずなのに…」
 小沢「さあ…何故かしらね」
 氷川「(北條がブチ破った扉を眺めながら)…北條さん、大丈夫でしょうか」
 小沢「上手くいけば…いえ、下手をすれば、あの男も今頃あっちの世界で安らかに眠っているでしょうね」

 ブスブスと燃えているフォルティス(と北條)の残骸。


 …翌朝。
 現場検証&事後処理作業中の小沢&氷川。

 地平線の彼方から「ガシャン ガシャン」と響いてくる足音。

 尾室「こ…こちらV-1マイルド…。
  ただいま現場に到着しました…」

 小沢「尾室君!」
 氷川「尾室さん!」

 バッテリーが切れて重くなった機体を引きずりながら、ようやく徒歩で現場にたどり着いた尾室。
 疲れ切って、黒く変色した工場の床に勢いよくガシャンとへたり込む。

 尾室「…?」

 自分の座り込んだ床が、何故か柔らかく盛り上がっている。
 よく見てみると、黒一色の床の中で、北條が白目をむいて気絶している。

 尾室「あれ? 北條さん、こんな所で何寝てるんですか?」
 北條を下敷きにしながら話しかける尾室(←総重量200kg以上)。


 数日後。
 Gトレーラーの中。

 尾室「…すいません。やっぱり僕、ダメでした。
  僕なりに一所懸命やったんですけど…。
  これでV-1マイルド計画も、おじゃんてことですよね…」
 氷川「落ち込まないでくださいよ。
  尾室さんのおかげで、北條さんは発見されたんですから」
 小沢「そうね。よくやったわ。
  …(小声で)余計なことだったけど
 氷川「………」
 尾室「…はあ…。
  でも小沢さん、アンノウンは、ますます強くなっていますよ。
  G3-Xでも対抗できないぐらいです。
  もしかしたら、もっと強いシステムが、必要になるんじゃ…」
 小沢「それは…そうかもしれないけど…」


 とある街中。
 道端に立っている老婆の前に、国枝のバイクが停まる。

 国枝「おばあちゃん…また道に迷ってるんですか?」
 老婆「…あなたですか」
 国枝「…送りましょうか?」
 老婆「しかし、今日はあいにく羊羹を切らしていまして」
 国枝「大丈夫ですよ〜。大ざっぱに言ってね…」

 ウエストポーチから芋羊羹を取り出す国枝。

 国枝「今度は僕が、おごります」
 老婆「それは素晴らしいですね」

 芋羊羹を一口食べる老婆。

 老婆「…なんですかこの安物の芋羊羹は!?
  私は老舗の超一級品以外は口にしないのです!
  ただちに買い直して来てください!」

 クドクド文句を言う老婆を乗せて、走って行く国枝。
 国枝「ただちにじゃありませんよ…
  どこなんですか家は…もう…」

 老婆の背後に、わずかに浮かび上がる幽鬼体。
 が、国枝は気づかない…。


 深夜。
 高村教授の研究室。

 高村「…V-1以上のシステム…」
 モニターに映る、V-1に似た緑色の謎のシステム。
 高村「…だが、これを世に出すわけにはいかん」

 モニターを消し、研究室から出て行く高村。
 ………

 …何者かが研究室に入ってきて、モニターを起動する。
 再びモニターに映る謎のシステム。

 システムが映っているモニターに触れる謎の人物の手。


 そのわずかに震える右手首には、腕時計が光っている…。


(おわり)


−BONUS TRACK−

替え歌『仮面ホウジョーFIGHT! 〜24.7Version』(フルコーラス)
(元歌『仮面ライダーAGITO 〜24.7Version』)


 「君が見た 夢の中… 北條の…求むべき未来が眠る」
 ただ、総出でほめちぎられていた むなしい…強さを…

  ※セリフの ファン ゼロ! 仮面ホウジョー FIGHT!
   叫んでいる 心のグチを
   ムカつい て ファン ゼロ! 仮面ホウジョー FIGHT!
   今、君がイヤミを…絶・叫!


 「ライダーには 及ばない… 僕らには…相応しい役があるだろう」
 まだ、届かない理想と現実 それでも、イヤに目立つ

   セリフの ファン ゼロ! 仮面ホウジョー FIGHT!
   くどくしゃべる 理由がある
   ムカつい て ファン ゼロ! 仮面ホウジョー FIGHT!
   悪気(わるぎ)ない ヤジと…説・教!
  ※くり返し

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