G3-X・ピンク 第27話『本郷 猛・変身不可能』
道路C
オオオオオオオオオ!!!
スピード全開で走るハリケーン。
V3『本郷さん! 一文字さん! 意識を取り戻して下さい! 脳波を切り替えて!』
26の秘密の一つである【超触覚アンテナ】を使うV3。
ダブルライダーにテレパシーで働きかけ、正気に戻そうとするが…。
道路E
赤い複眼が激しく点滅。
頭を押さえ、苦しんでいる2号ライダー。
2号「グッ……」
全身を小刻みに震わせ、新サイクロンに近付いて行く。
Gトレーラー・OPルーム
榎田「GX-05! アクティブ! 今がチャンスよ!」
GX-05を構えたまま、発砲しようとしないG3-Xに指示をする榎田。
道路E
氷川「……」
その気になれば、隙をさらけ出している2号ライダーに特殊鉄甲弾の集中砲火を浴びせるのは容易い事だった。
だが…氷川は引き金を引かなかった。
2号「トオッ!」
絞り出すように声を出し、2号ライダーがジャンプ。
新サイクロンに飛び乗ると、すぐさま急発進!
ヴオオオオオオオ――ン!!
車輪が唸りを上げ、新サイクロンが走り去っていった。
氷川「………」
その姿を無言で見送る氷川。
榎田「どうして見逃したの? …」
仮面の耳元で榎田の声が響く。
氷川「『O・M』に急行します」
榎田の問いに答えず、ガードチェイサーに戻る氷川【G3-X】。
GX-05をガトリングモードからアタッシュモードへ変形させ、後部トランクに収納。
ヴオン! ヴオン! ブロオオオオオオォォ!!
アクセルを握り、ガードチェイサーを発進させるG3-X。
海岸付近の道路F
頭を抱えて苦しげな様子を見せる1号ライダー。
その姿に一瞬、戸惑う一条。
1号「グウウゥゥ!」
V3のテレパシーを振り切るように頭を振り、拳を握り締め…パンチを放つべく突進してくる1号ライダー。
一条「!」
ライダーパンチを阻止する為、1号の右肩に照準を合わせてGM-01改を発射するレッド!
ドウッ!!
狙い通り1号の右肩にヒット!
ブシュッ!!!
貫通する弾丸!
飛び散る鮮血!
吹っ飛ぶ1号!
1号「くっ!…」
血を滴らせながらも、レッドに攻撃を仕掛けようと立ち上がる1号ライダー。
だが…。
1号「ううっ…」
V3のテレパシーに再び頭を抱えて苦しみ、膝を着く。
レッド、今度は胸部のコンバーターラングにGM-01改を連射!
ドウッ! ドウッ! ドウッ! ドウッ!!
弾雨にさらされ、倒れる1号。
凄まじいガンスモークに一瞬、かき消される1号の姿。
一条「!」
スモークが晴れて、そこに倒れているのは…。
変身が解除された本郷 猛!
本郷「くっ…」
よろめきながら立ちあがる本郷。
銃を構えたまま、その姿を見つめる一条【G3-X・レッド】。
一条(……)
人の姿に戻った本郷に対し、引き金を引く事が出来ない。
それに…
一条(殺気が消えている…)
本郷の表情、気配から、その事を一条は感じ取っていた。
一条(どうする?…)
無防備状態の本郷を前にして逡巡する一条。
道路U
ブオオオオオオオオオオッ!!!
ホンダVTRファイヤーストームを駆り、疾走している男。
「変身!」
厳しい表情で男が叫ぶと、体内に分子レベルで拡散配置されていたベルトが物質化。
ベルトから発生するエネルギーで身体とバイクが光に包まれる……。
海岸付近の道路F
本郷と一条。
暫し…二人の間に息苦しい程の時間が流れていたが…。
本郷「行け!」
不意に、左手で遥か彼方を指差す本郷。
その先には『黒い雲』が!
そして時折、炎が空に舞い上がっていくのが見えている。
一条「!」
本郷「俺も直ぐに…」
本郷の声が騒音に掻き消された。
バババババババババババババ!!!
音は直上から聞こえてきている。
上空を見上げるレッド。
一条「!」
白い機体の中型ヘリが旋回しているのを視認。
一条(この付近一帯は報道管制が敷かれている筈だが…)
機体には朱色で『新生新聞社』と書かれている。
●『新生新聞』
過去にクウガと未確認生命体第13号(ヤモリ種怪人・ズ・ジャモル・レ)の戦いを『日宣新聞』と共にスクープした事がある。
2紙のスクープによって警視庁は、その事実を公式に発表したが、その対応の遅れ(1999年2月23日第13号死亡、公式発表は25日)に各方面から批判の声が上がる事となった。
他にも『金色に強化された第4号』『紫色4号が金色に』を見出しに、未確認生命体第36号(カマキリ種怪人・メ・ガリマ・バ)との戦いでライジングタイタンに超変身したクウガをスクープした事もあり、更に『金の力を得た赤色4号』(クウガ・ライジングマイティ)が未確認生命体第39号(カメ種怪人・ゴ・ガメゴ・レ)をライジングマイティキックで葬った際の爆発で起こった被害に対して『爆発激化は4号強化に連動?』『問われる警察の対応』等の見出しを掲げ、バッシングとも思える報道で捜査に多大な悪影響を及ぼしたと言われている。
スクープをものにするために報道管制を破り、フライング?
(新生新聞なら、やりかねない…!)
一条がそう思った瞬間、モーター音が更に大きくなった。
ババババババババババババババッ!!!!
降下してくる『新生新聞社』のヘリ。
「本郷 猛…仮面ライダー1号…今、正気ニ戻ラレタラ困ル」
ヘリの機内…苦虫を噛み潰したような表情で男が呟く。
カアッ!!
突如! ヘリの下部に取り付けられている二連装の照明装置が本郷の顔を照らし出す。
そして…。
チカッ! チカッ! チカッ!
間髪入れず、照明装置が激しく点滅!
本郷「!」
本郷に光が降り注がれる。
イエローからブルー。そしてレッド、グリーンと、色を変えながら不規則に点滅をしている。
深海理沙装着のG4が発したモノと同じ種類の光である。
本郷(この光は…………… )
光から目を逸らす事が出来ない本郷。
本郷( ………… ………… ………… )
ヘリの凄まじいモーター音が遠ざかっていく。
そして意識も…。
催眠状態に陥れるように計算された光に、本郷は自我を奪われそうになる。
その時!
ドウッ! ドウッ!!
GM-01改が火を噴いた。
本郷の異常な様子とヘリの不可思議な行動に、躊躇無く引き金を引くレッド。
瞬く間に撃ち抜かれる二連装の照明装置。
ヘリ・機内
「チッ!」
舌打ちをし、鬼のような形相でレッドを見下ろす男。
男「兜。ドウスル?」
兜「ソウダナ…」
男に問われ、先程から黙って戦況を見つめていた兜がおもむろに口を開く。
兜「催眠装置ガ破壊サレタカラニハ、仕方ガ無イ…奴ラヲ『捕獲』スル」
最後の言葉に力を込め、兜は答えた。
男「応援ヲ要請スルカ?」
兜「ウム」
本郷とレッドから目を離さず、返事をする兜。
海岸付近の道路F
上空のヘリを警戒しつつ、本郷に近付こうとするレッド。
本郷は片膝を着いたままの状態で動かないでいる。
洗脳状態が長く続いていたせいなのか、それとも謎のヘリによる催眠光のせいなのか、本郷の意識は、まだハッキリとは戻っていないようだ。
ゆっくりと距離を縮める一条。
本郷「気をつけろ! 奴らが来る」
突然、本郷が注意を促した。
一条「!」
バババババババババババ!!
謎のヘリが降下してきている。
着陸態勢に入ったヘリに緊張する二人。
本郷「………」
立ち上がり、ヘリを見据える本郷。
全感覚を最高レベルに引き上げ、機内の様子を探ろうとするが…。
ババババババババババババババババ!!!!
本郷「!…」
ヘリの轟音が聴覚を麻痺させ、ローターの回転で巻き起こる粉塵が視野を狭める。
本郷「!!」
粉塵の中から長身の男が二人、忽然と現れた。
二人共、迷彩服に黒の皮手袋を着用し、無表情に佇んでいる。
兜「蛇牙。オ前ハ『本郷』ヲ…俺ハ『レッド』ヲ捕獲スル」
抑揚のない声で兜が言った。
蛇牙「分カッタ」
一瞬だが、口元に冷酷な笑みを浮かべ、返事をする蛇牙。
本郷「貴様ら! 何者だ!」
「ガアッ!」
返事の代わりに奇声を発し、兜と蛇牙が二手に分かれて躍りかかる。
一条「!」
本郷「!」
GM-01改を右腿のホルスターに納め、身構えるレッド。
拳を引いて迎撃体勢をとる本郷。
兜「ハアッ!」
空中高く、跳躍する兜。
不動の体勢のレッドに対して跳び蹴りを放つ!
ドコオッ!
胸部を激しく蹴り込まれたレッドが地面に叩きつけられる。
一条「!?」
予想を遥かに越えた衝撃に仮面の下、一条は顔を歪めた。
―― 人間の力では、硬度・防御力:12の数値を誇る特殊強化装甲服を吹っ飛ばす程のダメージを与える事は不可能 ――
一条(未確認生命体?)
かつて、クウガ(五代雄介)と共に一条が死闘を繰り広げた古代の殺戮集団【グロンギ】の事が頭をかすめる。
一条「くっ!」
素早く立ち上がり、右腿のホルスターからGM-01改を抜くレッド。
―― この男達…人間では無い ――
今まで幾多の修羅場を潜り抜けて来た本郷の第六感が、それを告げていた。
本郷「トウッ!」
迫り来る蛇牙に左の拳を見舞おうとする本郷。
だが…
蛇牙「フン!」
突きを軽く受け流し、蛇牙が本郷の背後に回る。
本郷「ぐァッ!」
両肩を掴んだ蛇牙のクロー攻撃に本郷が悲鳴を上げる。
ズブッ! ……
右肩の被弾箇所に指が食い込んでいく…。
本郷「フンッ!」
激痛に耐えながら、本郷が反撃!
前方に頭を振って反動をつけ、振り子の要領で後頭部を背後にいる蛇牙の顔面に叩き込む!
蛇牙「グワッ!」
予期せぬ本郷の攻撃に思わず両手を離し、バランスを崩す蛇牙。
本郷「トオッ!」
続けざまに追撃の蹴りを放ち、距離をとる本郷。
本郷(奴の握力…そして…攻撃した際に感じた皮膚感…やはり、人では無い…改造人間か? …)
本郷は全身を緊張させた。
相手は戦闘員レベルの力を遥かに超えている。
本郷(ライダーに変身しなければ…)
―― 勝機は無い ――
注意深く距離を保ちながら、変身ポーズの初動作に入る本郷。
本郷「ふん! …ライダァ…!! (右腕が動かない! …)」
蛇牙のショルダー・クローで更に悪化した傷口から鮮血が滴り落ちる。
蛇牙「ククッ……」
ポーズが取れないため、変身スイッチが入らない本郷に迫り、不敵な笑みを浮かべる蛇牙。