G3-X・ピンク
第3話『榎田ひかり ・哀切』
「このままG3演習ルームに行って良いんですか? 家に居たほうが…」
覆面車を運転しながら問う一条。
一条 薫…仮面ライダークウガ(五代雄介)と共に未確認生命体と死闘を繰り広げた、熱き心の刑事。
戦いの終結後は長野県警に戻っていたのだが…
「心配だけど…家にはジャンが居てくれるし…
」
一条の問いに絞り出すような声で答える助手席の榎田。
榎田ひかる…対未確認生命体装備の開発を行った科学警察研究所の主任。
離婚後も子育てと仕事の両立に頑張っていたが…
「それに、今回の事件…小沢警部と氷川君が襲われ、そして…」
一瞬、言葉に詰まる榎田。
「………」
厳しい表情で次の言葉を待つ一条。
「冴(さゆる)が誘拐された事…この三つは繋がっていると思うの…」
瞳を潤ませながら話す榎田。
(だけど…今回の事件にどう対応すべきか、整理はついていないけど…)
無言で考え込む榎田。
「………」
一条も榎田の辛さを受けとめ、また今回の事件の対応策に考え込む。
榎田ひかりの息子『冴』の誘拐…それは彼女の母、篤子の目の前で行われた。
未確認生命体が出現していた頃。学校では毎朝、当番の母親達と一緒の通学が決められていた。
しかし冴の場合は、ひかりが仕事の都合上、行けない為「おばあちゃん」である篤子が付き添っていた。
未確認生命体関連事件終結後は、付き添いの当番制は無くなったのだが、習慣になってしまったのか、篤子は毎朝、マンションの表まで冴を見送りに行っていたのだった。
今朝もいつもの様に冴を見送り、自宅に戻ろうとした時…車の急停車の音と同時に聞こえた冴の叫び声!
慌てて声の方向に駆け出す篤子の目に映ったのは、走り去る黒い車と、脱げ落ちた冴の右足の靴であった。
●警視庁・廊下
「小沢さん!」
呼び止められ、振り向く澄子。
北條 透が歩み寄ってくる。
「最初にあなたが襲われたと聞いた時には一瞬、アンノウンかと思いましたが…」
北條、少し間をあけ…
「あなたが超能力者である筈が…」
「あなたの戯言を聞いている暇は無いの。私は急いでいるの!行くわよ!」
傍らにいる尾室を促し、立ち去ろうとする澄子。
「あなたと氷川さんを襲ったのは『仮面ライダー』というのは事実なんですか?」
北條の言葉に再び振り向く澄子。
「本当の事よ。映像にも記録されているし…」
北條の目を見据え、答える澄子。
「その様子だと手がかりは掴んでいる様ですね」
北條も視線をそらさず、問いかける。
澄子「だったら、どうだと言うの?」
「あなた達二人で立ち向かうというのですか? あなたの報告によると仮面ライダーは七人いるという事ですが…」
真剣な眼差しで話す北條。
「心配は無用よ。私がG3-Xを装着し、尾室君にもG3マイルドを装着してもらうから」
軽くいなそうとする澄子だが。
北條「私も行きますよ。」
澄子「!?」
北條「あなた達に壊されたV-1システム。…あれから修理されて、まだ保存されています」
澄子「あなた!それを装着するつもり?!」
北條「一人でも戦力がある方が良いと思いますが」
北條の緊張した表情を見て、暫し考える澄子。
澄子「…分かったわ。一緒に来てもらうわ」
「!」
意外な澄子の言葉に驚く尾室。