「総括・水戸黄門 第29部」(1)作品編

 こちらのBBSでも、一部の方の間で大いに盛り上がった 「石坂版・水戸黄門」。
せっかく鑑賞推進委員まで(勝手に) 設立しながら、新シリーズまで何の音沙汰も無く待っているだけ、 というのはあまりに寂しすぎるという事で、この空白時期を利用して総括などというものをやってみたいと思います。

 コラム形式っぽくえらい長い文章なりますので何度かに分けて 掲載していきますが、せっかくBBSという場所を使わせて頂く訳ですから、当然途中突っ込みOK!
 皆さん気が向いた時にレス入れていただいて結構です!
 バシバシご意見を聞かせてください!


 さて今回のシリーズですが、よく言われる通りこれまでのパターンを否定したという意味で、「意欲作」という見方をしている方も多いと思います。
 印籠披露の「恒例シーン」の見せ方、八・弥七等のお馴染みキャラの廃止、ついでに由美様の入浴シーンの回数減少(やっぱ、これが一番イタイやね) と、それまで視聴者がもっていたイメージを破壊していくことを目的としているのは間違いないでしょう。

 実はこの「パターンの排除」の根回しは、前28作で既に行われていたようです。
 印籠披露の時間をお馴染みの「8時45分」」からあえてずらしてみたり、 その見せ方も、ちゃんばらの後に格さんが 「この紋所が目に入らぬかぁ〜!」とドスの聞いた声でかざすというお馴染みのパターンでなく、むしろ第一部の時のようにさりげなく正体をあかす、といったタイプの話も何度かあったらしく、こういったことを踏まえて考えると、すっかり定着した佐野黄門の時から製作サイドは「新しい水戸黄門」というのを考えていたのかも しれません。

 では何故スタッフは、作品の「売り」でもあるパターン化の排除を始めたのでしょうか?
 色々皆さん思うところあるかと思いますが、私としては

1.新しい視聴者の獲得
2.キャラと俳優のイメージ同一化の防止


の2点が大きかったのでは、と考えています。

  1.についてですが、これは何も「若い年齢層」を狙っての事だけではありません。
 水戸黄門という番組を最もよく鑑賞していると思われる、お年寄り層 にも向けられています。
 当然の事ですが、一口にお年寄り層と言っても年月が経てば、その層に入れ替わりが発生します。
 ずばり言って「水戸黄門=年寄り番組=ワンパターン」 というイメージが定着している以上、例えば現在「水戸黄門」を観ていない世代が年寄りになったからといって、「さあ、俺もそろそろ水戸黄門観はじめなきゃ」 などと自発的に番組鑑賞を始めるでしょうか?
 年齢層という枠は変わらなくても該当する人間が 年月と共に代わっていく以上、番組としても新しいターゲットを捕らえるための変貌が必要となったわけです。


2.キャラと俳優のイメージ同一化の防止

 「この役はこの人しかいない」というイメージが固まってしまうと、水戸黄門のようなワンパターン作品は劇中では 「サザエさん時間(何年放送しつづけても 劇中の時間は同じ一年間をぐるぐる回っているだけで 当然、キャラは年をとらない)」を採用しており、長期シリーズになればなるほどキャラと役者の年齢にギャップが生まれてきます。
 しかし、「パターンの美徳」ともいえる黄門シリーズにおいて、一度キャラを定着させたキャスティングを容易に変える事は出来ません。
 特に、本来架空の人物でありそのキャラクターを一から番組内で作っていった弥七(中谷一郎)八(風間元太郎)は、前作まで一貫して同じ役者が演じる事となり、中谷さんに至ってはいつのまにか黄門様役の佐野浅夫さんと同い年になってしまうという事態を引き起こしております。
 実際に中谷さんは過去三度ほど降板を申し出ており、その度にスタッフに「助・格と違いフィクションの人物である弥七だけは役者が代わるわけには行かない」と説得されたそうです。

 過去に何度か交代した助・格・黄門に至ってもその交代スパンは非常に長く(最短で初代助さんの杉良太郎の2年)、 また近年コテコテの時代劇を演じられる役者がいなくなった今、 これまでの既成キャラのイメージ払拭を考えた時にパターンドラマの排除に向かわざるを得なかった…
  そもそもワンパターンというのは、存在感や説得力のある役者が演じてこそ初めて面白くなるのであり、キャラになじんでない役者がやっても白けるだけです…
 いわば「必然的な処置」であったとも言えるでしょう。
  まあ、実際には他にも様々な理由(単にスタッフの冒険心)とかあったのかもしれませんが、こんなこといろいろ考えさせられるくらい、今回のシリーズは今までに比べてあまりにもギャップが大きかったんですよね。

 そういや、数年前に「3匹が斬る!」のスタッフは近藤真彦を次期時代劇スターに育てる事を狙って作品にレギュラー出演させましたが 結果はトホホ…だったようですね。


 んでは、次回はさっそくこの「パターンの排除がもたらしたもの」 について書いてみようと思います。


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