コラム 柏木悠里の徒然ビュー

Y:ヒーロー番組は誰のために? 〜女性と特撮ヒーロー〜

 のっけから答えを書いてしまうと、もちろん子供のためです。
 最近は、昔からのファンを取り込むために“大人も子供も楽しめる”とか、深夜番組などに“大人しか楽しめない”特撮ヒーロー番組(以降ヒーロー番組と略)もある訳ですが、基本的には、ヒーロー番組=子供向けと言っていいでしょう。
 なにしろあの『仮面ライダークウガ』(以降『クウガ』と略)でさえ、一般的な認識は「子供番組だが、大人も楽しめるらしい」というモノだったのですから。
 さて、子供や特撮ファンのみならず、今までヒーロー番組に興味が無かった視聴者層をも取り込み、色々な意味で議論を巻き起こしながら、最終回を迎えた『クウガ』。
 当『九拾八式工房』でも鷹羽飛鳥・後藤夕貴両氏が総括を書いております。
 この『クウガ』、登場人物の描き方が従来のヒーロー番組とかなり異なり、かなりの女性ファンを惹きつけた事は今更言うまでもない事。
 いい機会なので、前々から考えていた、“女性視聴者とヒーロー番組”について自分なりに考察してみたいと思います。

 基本的にヒーロー番組はマーチャンダイジングの関係上、男の子向けに作られています。
 そのため、“大きなお友達”でも男性ならあまり違和感を感じない方も多いハズ。
 けれども、大きなお友達年齢の女性となると、力いっぱいターゲットから外れた存在です。
 まだ小さい頃は女の子も、男女の性差を意識する事があまりなく、また「お友達が観ているから」という理由などでヒーロー番組を観ている事が多いようです。
 特に戦隊シリーズはたいがい女性が一人ないし二人いるので、感情移入&親しみを持ちやすく、けっこう観た記憶のある女性も多い事でしょう。
 …とは言え、一般論になりますが女の子は早熟なので、幼稚園の頃にはもう「さくら組のたかゆき君、アタシの事好きかな〜?」(そろそろやめないと、本当に殺されるな)なんて事を考えている子も出始めていたりする訳で。
 そうなってくると、今までは観ていたヒーロー番組なんてシロモノがチャチく見えて、もう観なくなるハズですね…。

 多分…
 いえ、本来なら…
 いや、フツーは…

 …しかし世の中には例外とゆー物が存在します。
 いや、ここにいます(爆)。
 何のためらいもなく、ヒーロー番組が好きで、ずっと観ていた女児が…。
しかも、「ただただヒーローが好きだから」という理由で…。

 …(自分に呆れた所)。
 それは置いといて、いい年をした女性がヒーロー番組を観る場合、男性以上にその人の置かれている環境下において、ハッキリしたスタンス(楽しみ方)の違いが出てきます。
 まずはそれを立場・環境別に分類してみましょう。

@ お母様

 それまでヒーロー番組に全く興味が無かったとしても、子供ができればつい子供と一緒に観るようになるのではないでしょうか。
 まして、自分の子供の観ている物ならば、チェックしたくなるのも道理。
 家計を任せられている事も多いため、スポンサーにとっては一番重要な女性視聴者でしょう。
 そのせいで、「お母様(お父様の事もある)のクレームで番組が路線変更したらしい」等と言われ、あまり良く思われていないフシもありますが、明らかなイチャモンはともかく、子供の事を考えた上でのクレームならば、「一緒に番組も観ず、問題のある部分があっても全く気にしない」親よりよほど偉いと思います。
 子供とコミュニケーションを取るのに便利なツールなのは確かですし。
 ただ個人的には、「そのキャラクターは子供が好きだから殺さないで」というのは微妙な線のクレームではないかと思いますが…。
 昨今の安易なキャラクターが死ぬ演出の乱立には私も疑問を抱いていますが、“生きている以上、いずれ死という物が待っている”という事への理解のために、“大好きなキャラクターが死んでしまう”演出も見せておいた方がいいのでは…と思っています。
 私には子供がいませんので、強く言う権利はありませんが、かの有名な“ミッフィー(うさこちゃん。鼻と口がばってんで描写されている白ウサギキャラ)”の絵本にも、近年“おばあちゃんの死”を描いた物が発表されました。
 作者のディック=ブルーナ氏は、「子供にはこういう話も必要だと思う」旨の発言をされています。

A父親もしくは男兄弟が特撮ファン
 何分、好きなヒーローがヒーローなだけに、私もこのタイプと思われがちですが…(微笑)。
 先述の通り、戦隊シリーズは比較的女性ファンの多いシリーズですが、単体ヒーロー物は主人公が男性一人である事から、徹底的に男の子対象であると言えるでしょう。
 特に、東映作品はその傾向が顕著です。
 その分、小さな女の子ですら単体ヒーローにはまるきっかけがあまり無く、観ていた場合は男親か兄弟と一緒のパターンが多いようです。
 しかも、世間的にもそう捉えられがち。
 例えば、『宇宙刑事ギャバン』のオープニング、イントロ部分を皆様は覚えているでしょうか? 
 まあ、このサイトへ来て下さる方には言うまでもない事と思いますが、「男なんだろ?」です。

 ごめんなさい、私、違います…。

 ああっと、誤解のないように先に書きますけど、私このオープニング曲溺愛してます!
 だからこそ放映当時、「何で自分は男じゃないんだ!」などと真剣に悔しがったのです(マジ)。
 
さらにちょっとだけ悔しかった話・その1
 「へえ、ヒーロー好きなんだ〜。どういったやつ?」と聞かれて、馬鹿正直に「一番は『宇宙刑事ギャバン』です!」と答えると、たいがいこう聞き返されます。
 「男の兄弟いたっけ?」すみません、まぁったくいません…。
 私が『ギャバン』を見始めたきっかけ…それはそれまで観ていた『ハロー! サンディベル』の後番だったから(激爆)。
 ボンヤリした子供だった上に、まだ『大戦隊ゴーグルV』なども観続けていたので、何の疑問も差し挟まず、新しい番組をそのまま見始めました。
 あまりのショックに、『サンディベル』の感動的だった(らしい)最終回をキレイさっぱり忘れました。
 どうも“衝撃的なカッコ良さ”だったらしく、翌日から頭の中がマクー空間に引きずり込まれていたみたいです。

 閑話休題。

 ただ、このタイプで、「一緒に観ていて面白かった」人は、その後簡単に特撮ファンにシフトします。
 ま、当然っちゃ、当然ね。

B彼氏もしくは夫が特撮ファン
 何分、夫が夫なだけに、私もこのタイプと思われがちですが…(苦笑)。
 ようするにこれはAの別バージョンです。
 男兄弟がいなくても、自分の彼氏・夫が特撮ファンなら、大好きな趣味を理解しようとか、一緒に楽しもうとかで、影響を受ける可能性大。
 え?「彼女、特撮なんてバカにしちゃって新しい『ゴジラ』すら観ようとしてくれないんだ。SFだって言ってるのに…」ですって?
 そうですか…。
 特撮ファンの男性はよほどの事がない限り、特撮をバカにしている女性とは最初からつきあわないでしょうから、よほどその人の事が好きなんですね。
 でも、心底特撮を馬鹿にしている人とは付き合っても、長続きしない傾向が…(汗)。
 だって、極端に馬鹿にしてる女性は、「私とどっちが大事なの? あなたを大人にしてあげるわ!」とか言いながら、あなたの『怪奇大作戦』LDコレクションを勝手にヤフオクる事もあるようですが、OKですか(半実例)?

 …失礼しました。

 も“今まではバカにしてたけど、理解しよう”と思ってくれるタイプの方なら、元々そういうのが好きでは無い人でも、一緒に観続けるうちにハマってくる事があります。
 ハマらないまでも、観続ける事によって、それなりに楽しみ方が見出せるようになる人も多いのでは…?

 さらにちょっとだけ悔しかった話その2:当サイトの特撮班班長・鷹羽飛鳥氏と最初に話した時には、特撮関係の話は柏木個人の趣味ではなく彼氏(現・夫)の影響だと思われていました。
 ただその時、「『電子戦隊デンジマン』のヘドリアン女王は美しい物を嫌っているはずなのに、なぜか美しい“忠義”を重んじてますよね」なんて話ではなく、「『鳥人戦隊ジェットマン』からファンになったんです(はぁと)」とでも答えていれば、女性ファンの多かった作品だけに、ストレートに納得してもらえたのかも。


C特撮ファン
 親兄弟の影響も少なからずあれど、いつの間にか自分で気になるヒーロー番組をチェックするようになり、ついでに面白くなさそうなヒーロー番組でも何があるかわからないから…ととりあえず押え、さらに来年の戦隊ヒーローはどんなかと毎年楽しみにし、後楽園のショーに出かけて興奮し、「ヒーローは動いてみるまでカッコいいかどうかわかんないよ!」と力説し始めれば、もうそろそろ特撮ファンと言えるのではないでしょうか?
 自分もここに分類されるファンのはしくれでありたいと思っていますが、まだまだ“マニア”の領域にはほど遠いため、残念ながら、さらにコアといえる“女性のマニア”については語れません…。
 修行と精進が進んだら、いずれ改めて考えてみたいと思います。
 ま、しかし、ファンクラスの人も男性に比べて少数派なのは事実。
 でも少数派だからといって、楽しみ方が男性と違うかというと、そうでもない気が…。
 女性のファンだからといって、必ずしも「このヒーローが私を助けてくれないかしら(はぁと)」とか思っている訳ではないし(そういうのも楽しいけど)、「このヒーローになって闘いたい!」と思っていない訳ではないと思います。
 少なくとも自分はシャンゼリオンには助けてもらいたくないし、デンジマンの一員(アイシーでもいいや)として闘ってみたいです。
 もちろん、「ミラーになって女王サマの鏡になりたい」なんてのもアリでしょう。
 でもケラーは痛そうだからイヤ。
 女性特有のように言われがちな“キャラ惚れ&役者惚れ”ですが、宮内洋氏となら心中してもいいと思っている男性ファンは絶対いるはず。
 また千葉麗子社長や、佐藤珠緒っちのブレイクを見れば、男性諸氏だって、女性の“キャラ惚れ&役者惚れ”を馬鹿にはできないのでは…?
 “キャラ惚れ&役者惚れ”する・しないに関わらず、同好の志である人と意見を交わし、同じ意見の人がいれば喜び、反対意見があれば議論する…。
 ただでさえ議論好きが多い(と思われる)特撮ファン。
 なまじハンパな惚れ込みようでは自分の好きな作品について語る事はできないでしょう。
 もっとも、キャラクター&役者惚れしているタイプの人は、あまり反対意見を聞きたくないものだから仲間内で固まりがち。
 確かにこの傾向は女性の方が強いです。
 しかも、仲間内以外で反対意見を攻撃するようになると、特撮業界では“腐女子”呼ばわりにレベルアップまっしぐら…。
 「賛成できない意見」はどんな事でも当然出てくる物ですが、ただ何の根拠もなく、「自分の好きな一条さんを馬鹿にするなんて!」なんて論調で相手を攻撃しても無意味です。
 外国の格言にこういうのがあります。

「僕は君の意見に全く賛成できないが、君がその意見を述べる権利は命懸けで守る」

 反対意見も「こういう考え方もあるのか」と受け止めるのが一番ではないでしょうか。
 特撮業界のみならず、どの世界でもこの姿勢は忘れたくないと思います。

 さて、男性に“腐女子”呼ばれわりされたくない人は、「誰がナント言っても一条さんは受けよ!」なんて意見が、自分的に絶対でも世間的には間違っている事を自覚するか、相手の納得する理論を展開(すげー難しそうだけど)できるようになりましょう。
 作品に惚れ込んでいる&筋金の入った役者好きの人は、賛成の意見が出ようが、反対の意見が提示されようが、徹底的に議論に加わる傾向があるようです。
 これができる人ならば、特撮ファンの本質は男性も女性も同じなのではないかと…。
 少々、排他的・閉鎖的ではあるという点も同じですし(ああ、言い切ってしまった…)。

D同人屋
 この同人屋には色々ありまして、さらに細かく分類すると、ずっと特撮ジャンルの方、アニメ・マンガ系の別パロディジャンルから移ってきた健全派の方、同じく移動してきたやおい(“やおい”という単語については、前回『やおい用語の基礎知識』をご参照下さい)派の方、『クウガ』以降ドッと増えた、ドラマ系ジャンルから移動してきた方(これはほとんどがやおい派)で傾向が異なっています。
 何か、頭の中ごちゃごちゃしてきた…(苦笑)。
 なお、このうちずっと特撮ジャンルで同人活動をしている人は、健全派だろーがやおい派だろーが、基本的に“特撮ファン”の方がほとんどなので、ここでは割愛します。
 また、『クウガ』以降ドッと増えた、ドラマ系ジャンルから移動してきた方(これはほとんどがやおい派)については別項「腐女子」で述べます。

 さて、最初から特撮系ジャンルでなくても、同人誌をやるようなタイプの人には、少なからず“マニア心”という物があります。
 特にマンガ・アニメ系で活動している人なら、マンガやアニメにも無茶な展開等がある事から、ヒーロー物の「ツッコミ所」にあまり違和感を覚えずに観てくれるみたいです。
 ヒーロー番組に出ている役者が、仲間内で「かっこいい」と評判になったりすると「懐かしい〜。小さい頃こういうの観てた〜」というノリでファンになってくれる事も多々ある様子。
 同人屋なので、ハマれば当然本も出します(笑)。

 ここで出てくるのが“やおい”。

 ずっと“やおい”という形でしか表現をしてこなかった方達は、当然ここでも“やおい”に走ります。
 しかし冷静に考えてみれば、相手はナマモノです。
 その作品の中ではティラノレンジャー・ゲキとドラゴンレンジャー・ブライであっても、実際には生きている(なんちゅー表現じゃ)役者さんな訳です。
 昔は遠慮がちというか後ろめたさを持った上で描いている方が多かったようですが、最近はその辺が曖昧な印象を受けます。
 考えてみれば、最近同人を始めたのなら、下手すると小学生の頃から同人誌=やおいのイメージがついている可能性も高く(『あさりちゃん』にやおい同人誌のネタがあるくらいだもんな〜)、仕方ない傾向かもしれません。
 ただ、これもごく個人的な考えになりますが、作品のヒーロー性が高くなり、その事をキチンと描写できれば、自然と“やおい”なんて描けなくなると思います。
 それだけすごい作品なら、汲める所が変わるようになるのではないかと思うのですけど…。
 “やおい”なんて考えもつかないような、ドキドキととアクションと正義感に満ち溢れたヒーローが今後出てくる事を期待します!

 ところで一つ残念なのは、こういう経過でヒーロー物のファンになると、その作品一つだけにこだわって、あまり別の作品を観ようとしてくれない事。
 もっと他の作品も観ようよ〜。
 そしてファンにレベルアップ(オイ)しようよ〜!

E腐女子と表現される人たち
 もともと“女性視聴者とヒーロー番組”の事を漠然と考えるようになったのは、『クウガ』関係の掲示板で、この単語を頻繁に目にするようになったからでした。
 いくら「自分は違うよな〜」と思いたくても、“女子”という単語を含むため、何だか気になってしまうのです。
 最初は「ヒーロー番組である『クウガ』でやおいパロディを描く女性の事」だと思っていたのですが、だんだん何だかそれだけではない気がしてきて、意図的に「同人屋」という項目を先に立てました。
 もちろん、「ヒーロー番組でやおいを描く連中なんてみんな“腐女子”だよ」という方もいらっしゃると思いますが、どうも何だか違う雰囲気。
 気になって知り合いに「“腐女子”の定義って何?」と聞いても、明確な答えをもらった事は一度もありません。
 実は掲示板で質問しようとしたんですが、元締に止められてしまいました…。
 まあ、確かにこの質問、何となく“荒らし”っぽいですよね(汗)。

 昔からヒーロー番組でやおいを描く人たちはけっこういました。
 例えば戦隊ヒーローなら、『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『星獣戦隊ギンガマン』辺りは、けっこう女性ファンが多く、かつやおいネタも多いです。
 また、同じ2000年のヒーロー番組、『未来戦隊タイムレンジャー』で“やおい”を描いている人たちはあまりこの単語でくくられないのに、『クウガ』だと言われてしまうようです。
 そこで「戦隊ヒーローならOKでも、単体ヒーローは駄目なのか?」とも考えたのですが、単体ヒーローでも微々たる勢力ながら一条寺烈と伊賀電のやおい(元締が一番最初に見かけたヒーロー物やおいだそうな)なんてシロモノがあったそうなので、そういう理由で“腐った”まで言われるのは今いち釈然としません。
 比較的「こうかな?」と思ったのは、Dで後述すると書いたドラマ系ジャンルから移動してきた同人屋の方々が、ことごとく役者ボレタイプばかりで、しかも「子供番組なのに“らしくなくて”面白い」などとヒーロー番組ファンの神経を逆撫でする発言をさまざまな場所で語って下さった結果、つい“腐っている”と言いたくなったのでは…という考えです。
 以前掲示板にも書きましたが、新聞のインタビュー記事で 「『クウガ』は暴力を全肯定していない初めてのヒーロー」という女性の意見を見て、私も頭を抱えたモノです。

 そんな事は無いよ〜。
 アプローチの仕方が変わってるだけだよ〜。
 第一、クウガってグロンギ怪人ぶっ散らばしてるじゃないか〜。
 言葉や考え方の違う存在なら殺していいのか〜。
 バルバと雄介や一条がちゃぶ台はさんで話し合いした結果、交渉決裂して闘ってる訳じゃないぞ〜。
 それに一条、常に銃を向けてるじゃないか、バルバに…。

 …などが頭をよぎった事はそのOLさんには秘密さ…。
 しかも、こういう風に作品そのものを“全肯定”しているので、Dでも書いたような、意味不明な意見を押し付けた上に、反対しようものなら攻撃してきます。
 うっ…、これは“腐ってる”かも…。

 でも。

“腐った行動を取る”ファンは男性にもいます。

 後楽園のショーで、女性演者のパンチラ撮影目当てで、子供を押しのけてまで最前列に行こうとする連中なんかどうでしょう?
 それに、「文句があるなら観るな!」という意見。
 これはどうですか?

 『クウガ』に限って言えば、今まで少数派だった女性の…それもヒーロー番組を歯牙にもかけなかった層のファンがいきなり増えたので、反発が大きいのでしょうけれど…。

 実は少しだけ、被害妄想だと思うのですが、この“腐女子”という単語から「俺達のライダーを女が語るなんて!」というオーラを感じる…気もします。

 私は、どちらの番組も始まったばかりの頃『未来戦隊タイムレンジャー』(以降『タイムレンジャー』と略)より、『クウガ』の方が好きでした。
 現在逆転してますが(ははは…、乾いた笑い…)。
 『クウガ』の破綻の無いストーリー、ビデオ映像を上手く使った演出、ドラマ部分重視の作り。
 どれも新鮮でした。
 ですが、主役五代雄介を演じるオダギリジョー氏をドラマのパーツの一つとして捉えていたので、彼個人のファンにはなりませんでした。
 ファンになる、ならないは個人の自由です。
 にも関わらず、“女性のクウガファン=オダギリジョー氏のファン”という図式が出来てしまっています。
 この場合、「やおい派かそうでないか」はあんまり関係無いようです。
 「女の『クウガ』ファンなんて、どうせオダジョーか葛山目当てだろ!」という偏見な訳ですね…。
 その方が、解りやすいし、「俺達のライダー」に乱入してくるヤツラ…という見方もしやすいでしょうから。

 ところが。

 『クウガ』という番組を『仮面ライダー』というカテゴリーで見ている、もしくはヒーロー番組として捉えて観ている女性というのは、確実に存在します。

 たとえあなたが信じようと、信じまいと…。

 本当は『仮面ライダー』という作品については、放映翌年生まれですので、自分が何か言うなんておこがましいと思っています。
 でもAでも書いた通り、単体ヒーローはより男児向けなので、そういう意識が強いのではないかと。

 計算していただければわかる通り、私は比較的新しい特撮ファンです。
 「『秘密戦隊ゴレンジャー』をリアルタイムで観ていて新しい〜?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、なぜかこの業界(?)、“何をリアルタイムで観ていたか?”が重視される傾向があるので、『ウルトラマン』も『仮面ライダー』も通しで観ていない人間の意見は、よほどキッチリした理論の裏付けがないとなかなか聞いてもらえません。
 また“どれだけ正しい知識を持っているか”、“自分なりの意見を持っているか”も重要です。
 この段階で、「やおらーで、作品そのものはベタぼめ、子供番組らしい子供番組は馬鹿にして観ない」という人達が失格になるのは火を見るより明らか。
 この辺りが、先に「特撮ファンは少々排他的・閉鎖的である」と書いた理由でもある訳ですが…。
 結局、“議論好き”な所から来ている訳ですよね、こういうの…。
 議論をするには“知識量”が多いに越した事はない訳で…。
 
 とにかくCでも書いたけど、「腐った」と言われないために、かつただでさえ数少ない女性のヒーロー好きに肩身の狭い思いをさせないために!
 「楽しみ方は人それぞれ自由だが、意見を述べる時はなるべく一人よがりにならないよう注意しよう!」という事で。
 …しかしこれもCで書いた事の繰り返しだけど、何もヒーロー番組に限った話じゃないような…。

 ついでに「大丈夫かな?」と思っている事:昔は『透明ドリちゃん』などの流れの、女児向け特撮なるモノも存在していましたが、いつの間にか消滅しているし、最近やっている女性が主人公のヒーロー(ヒロインと言うべきか?)物は全てイロモノ(キッパリ)。
 その証拠に、「『タイムレンジャー』すごく良かった。久しぶりに特撮で感動しちゃった!」という女性はいても「深夜やってた『仮装エンジェル・ロゼッタストーン』(仮名)すごく良かったの! 久しぶりに特撮で感動しちゃった!」という女性はほとんどいないでしょう。
 質のいい特撮ヒーロー番組なら、数的には多くなくても、必ず女性も取り込む物。
 つまりこれは『仮装エンジェル・ロゼッタストーン』がイロモノの証拠。
 いくら人間同性に厳しくなりがちと言っても、『ブルースワット』のサラ、『タイムレンジャー』のユウリ、『クウガ』の榎田、バルバのように、女性に人気のある女性キャラもいるのだから、女性が絶賛する女性ヒーローが居ても良いのでは…なんて考えるのですが、これはマーチャンダイジングから見ても、企画を出す側から見ても、かなり難しいでしょう。
 しかし、それにかなり近い事をやったのが、『美少女戦士セーラームーン』ではないかと思います。
 『セーラームーン』は色々と問題の多い作品だったと思いますが、それについては色々な方が指摘しているので、ここではあえて触れないでおきます。
 それよりもこの作品で一番すごいと思ったのは、女性の戦士であるセーラームーンが、男性のタキシード仮面に向かって言ったセリフ、「ここは危険よ。敵は私達が倒す! 早く逃げて」。
 アニメではどうだか知りませんが、原作ではタキシード仮面(衛)は、地球を癒す能力のある王子。
 つまり、女性・男性に関わらず、あくまでもセーラー戦士は“戦士”だから「自分達が戦う」と言い、“癒し”能力のあるタキシード仮面は自分の役割が解っているから、無理に彼女らと一緒に戦ったりしない。
 大変合理的(語弊があるかな)です。
 こういう風に“女性の戦士”をキチンと“戦士”として描いてみたらどうでしょうか?
 『タイムレンジャー』のユウリはかなりいい描写がされていたと思いますが、そういうのではなくて、本当に女性戦士が主人公のやつを。
 
 え? 「マーチャンダイジング上、そんなんもんはオタクが喰いつかないから必要ない」?
 そうですか。
 じゃあ、せめて『透明ドリちゃん』系はどうです?
 は? 「もう今時ファンタジーはダメ」?
 じゃあ、『おジャ魔女どれみ』は?
 「アニメと特撮は違う!」

 …てなトコなんでしょうか。

 でも、小さな女の子が観られるヒーロー番組or特撮番組を今作っておかないと、後々えらいコトになりますよ〜。
 すっごくハードでかつ超カッコよく、男児の評判バッチリでも、特撮慣れしていないお母様から総スカンを喰らったら、一発でアウトですからね。
 何しろ、幼稚園で「観るな」指導が出るコトだってあるのです。
 
 マーチャンダイジング上重要な“お母様”になるのは、「男の子」ではないのですから。

(まとめ)
 昔から自分を“特撮ファン”と言い切るのには自信がありません。
 周りの「そこそこオタク系、でも特撮はそんなに知らない」人には私を“特撮ファン”と思っている人もいますが、このレベルでファンを名乗るのは甘いと思うのですよ。
 だから本当は、もっと『ウルトラマン』リアルタイム世代で、今のヒーロー番組までの流れを、フェミニズム心理分析(あの本、ムカつきませんか?)以外の「女性とヒーロー番組」を書いてくれる人がいると嬉しいんですけど…。
 今現在このサイトでこれが書ける人間は自分だけですので、みなさん、こんな未熟な物ですみません。
 
 (柏木落ち込み中)
 
 ま、しかし、今ならビデオもLDもDVDも衛星放送もあります!
 とりあえず勉強だ!
 今年は真のヒーロー道を目指すのだ!
 
 …最初は「“腐女子”とは何ぞや?」から考え始めた事だったのに、何でこんなになってしまったのやら。

 
(柏木悠里)


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