コラム 柏木悠里の徒然ビュー

X:今度は本当にあなたの知らない世界…良い子のホームルーム、やおい用語の基礎知識


 ほほほほ。世の中には知っていても知らなくても人生にはまったく関係ナイ知識があるものよのう。
 もしかしたら「やおい用語」なんて、その最たる物かもしれん。
 でも、コミケカタログを行列に並んでいる間の暇潰しに読んでいるそなた、「これ、どういうイミ?」って思う単語があるのではないか?
 絵的にもジャンル的にも“やおい”である事は理解可能。でも、ちょこっと書いてある補足みたいな文章の意味が気になる…、そんなそなたに、同人誌歴13年のわらわが教えてやろうぞ。
 これを見て「ああ、そういう意味だったのか!」と開眼し、イヤ〜ンなやおい同人誌をゲットするがよい。

 え? 買う気は無い? それはすまぬ。

 なお、詳しい方にはわざわざそんな事説明しなくても…的な基礎中の基礎も含まれておるので、つまらない内容になっているかと考えられる。
 その点、平にご容赦(なぜここだけへり下る?)。
 実は、めったに同人誌なんか見ないけど『仮面ライダークウガ』の本でも探すか! なんてバリバリクウガかっこいいな派の殿方が、うっかりやおい本なんか見た日にゃ血の雨が降るんじゃないか…なんて心配しておってのう。
 なにしろ“やおい”がめっちゃくっちゃ多いのでな…。
 とりあえず、ここに書かれているレベルの事を理解した上でカタログチェックをすれば、椿と五代がどっちも一条を手に入れようと争っていて、そのうちどっちとも一条が関係(肉体)しちゃって…本を手に取ってしまい、暴れる…なんて事態は避けられると思うのじゃ。

 そうそう、わらわ一人では荷が重いので、質問形式でやろうと思う。
 「解説の河口! いでよ!」

 河口:「呼ばれて2回目、筆者の分身、河口隼人です。ようするにコミケカタログを見て、解らない事を質問すればいいんだね?」 
 柏木:「うむ、その通りじゃ。直答を許す」
 河口:「答えるのはアンタだろ…。じゃ、いくよ」

(以降、質問が河口、解答が柏木)


@そもそも“やおい”って何?
 これに関しては色々な所で説明されている事なので、今さら言うまでもない気もするが、念のためじゃ。
 最初は“やま無し、オチ無し、意味無し”ってゆー自虐的フォローだったのだが…なんて話はこの際他の本や何かをテキストにしていただくとして、ここでは既存のキャラクターを使ったホモパロディの事と思うがよい。
 オリジナルキャラクターでホモネタやる場合に使う人もいるけれど、ホモとJUNEとやおいは別物…というのを上手く説明できる程わらわは頭が良くない。
 ここでは便宜上そう理解しといて下さると嬉しいぞよ。
 ただ、一般的にはやおい<JUNE<ホモの順で過激度が上がると思われているよーじゃな。
 “やおい”(まれにJUNEでも)にはプラトニックもあるしな。
 ギャルゲーとラブラブテイストエロゲー位がやおい、ラブ有り、調教有りがJUNE、ホモは『さぶ』の差くらいか。
 (現在河口メダパニ中)


A気をとりなおしってっと。(せめ)と(うけ)って読んで字のごとし…でいいの?
 その通りじゃな。攻=責め役ってトコロかのう(爆)。攻めが男役、受けが女役じゃ。
 最近、こっちの方が通りがいいもんだから、レズネタでもこう書く人が増えておる。
 昔はホモ用語からの流れでタチと猫だったのになぁ(←おまえいくつだ)。


B×ってなあに? どう読むの?
 例えば五代×一条って書いてある場合。
 この場合、五代と一条のやおいと思ってほぼ間違いないぞよ。ほぼ…というのは、ごくまれにコンビをこう書く人がいるからじゃ。
 ただそういう場合、横に“健全です”とか書かれてている事が多い。
 読みは“かける”と素直に読んでよし。
 ただし発音する場合は、五代×一条だったら、わざわざ「ごだいかけるいちじょう」なんて言わずに、「ごだいいちじょう」って読むのじゃ。


Cこの一条総受っていうのは? 一条輪姦?
 こらこらこら(アセアセ)。
 確かにそうとも取れるのじゃが、ちょっと違う。
 基本的には一条がモテモテキャラになっていて、受であるという事だけが一緒で、相手は毎回話ごと(作家ごとの場合もアリ)に変わるパターンの事じゃ
 例えば、一冊の本の中に五代攻の一条受ネタ有り、椿攻の一条受ネタ有りの、亀山攻(なんかこれには無理を感じるぞ)の一条受ネタ有り〜の、桜井攻の…とこういう作りが総受本じゃ。


Dそういえばエロ系でもこういう×とか総受って書き方あるね。「
ランス×かなみ」とかさ、「智子総受」とか…

 ああ、それはやおいから流れた人ではないか?
 セーラームーン以来、やおい派だった人がえろ系に移って来ておるからの。 


Eなんかやおいっぽい、でも×とは書いてないんだけど…????
 『聖闘士星矢』の一輝・瞬、一輝・氷河みたいな奴の事か?
 発音する時に読まない事からも解るよーに、×をわざわざ書かない人もおる(笑)。


Fふーん。…で、どっちがでどっちがなの?
 実はこれ、けっこう難しい問題でのう。
 基本的には前に書かれている人が攻、後に書かれている人が受(ぶっちゃけた話、先の人が上! 後の人が下!)にしている人が多いようだけれど…。
 ところが、コミケ59カタログのスタッフのつぶやきの中で「基本的には受が先、攻が後がふつうでしょ?」とまるでこう書かなければ間違いかのように書いているスタッフさんがいて困ったモノじゃ。
 どの辺が困っちゃうかとゆーと、語感のいい方を選ぶ傾向があってコロコロ変わっちゃうからだ。
 『聖闘士星矢』の一輝×瞬なんかの表記は、どう考えても瞬受であると思うだろう?
 ところが、同じ星矢内でも氷河×瞬は、語感が悪い(つまり言いにくい)ので、瞬・氷河と言う人の方が多いしの。ほら、リンダ困っちゃう? であろう?
 もうこの辺はある程度の訓練と勘で勝負なのじゃ! (河口「無理だって…」) 

 そうそう余談になるが、氷河って微妙な立場のキャラクターで、こいつは攻受両方主張する人達がいて、しかも場合によっては、同一作品中どっちもやってたり(例えばカミュが相手だった頃は受だったけれど、瞬が自分に言い寄ってくるようになったら攻になってたりね)と大変忙しかったな。
 全盛期の頃は攻派受派で争っていたものよ(しみじみ)。
 ここまでジャンルが衰退しちゃうと、どうでもいいらしいけどのぉ…(笑)。


Gそういや、このサークルカットもやおいっぽいけど、この51とか15ってなあに?
 ああ、『クウガ』の…。
 これはガンダムWからの流れで、名前が数字で表せる人の事は略すのが流行っているのじゃ。
 だからこれはそのものズバリ、51=五代×一条、15=一条×五代の事である。
 でもどっちが攻でどっちが受かはFで書いた通り、人によって解釈に差があるから何とも言えぬ。
 ただもしわらわが「『クウガ』でやおいを描け! 描かなかったら大葉健二氏を暗殺する!」とか脅されたら、五代攻の一条受で描く。
 わらわにとって、五代=クウガ。クウガ=ヒーロー。ヒーロー受など耐えられぬわ(五代受派の皆様ごめんね)…。


Hねえねえ、じゃあこの59×野菜ってなぁに?
 はあ、ドラゴンボールの悟空×ベジータ。
 ここまで来ると想像力が必要だの。


Iこのでっかい数字の33×28とかって?
 野球サークルの選手背番号の事か?
 たいてい巨人何番×何番みたいにチーム名が先に書かれているはずじゃが…。
 ちょっと隼人、この質問の背番号適当に決めおったな?
 横浜ベイスターズ(←ファン)でこの背番号の選手って…おえ。


Jう〜ん、でも実在の人物使ってやおいってまずいんじゃ…
 …アイコラだってまずいよ…。
 それ以前にジャニーズなんかはシャレになってない人もいそうな気がするがな(オイ!)。
 ついでにもし私が「『V6』でやおいを描け! 描かなかったら戦隊シリーズをなくす!」とか脅されたら長野クンだけは攻決定。
 わらわにとって、長野博=ダイゴ(ウルトラマンティガ)。ティガ=ヒーロー。以下略。


Kねえ、柏木女王、戦隊ヒーローは複数いるけど、全員攻?
 …ボカッ(河口、女王発言に怒った柏木に殴られる)!
 …やおい描かなきゃいいであろうが!?


(まとめ) 
 河口:「ひどいや! 今回の君のどこが女王様じゃないっていうんだい?」←論点がズレている。
 柏木:「わらわは古典的伝統的な話し方を尊んでいるだけじゃ! レザーのブーツにムチを持っている訳ではない!」
 河口:「…柏木くん、頭の中まで「やおい」と「えろげ」になってないかい…? それにしても、何でわざわざ「やおい」なんか描くのかね? 同じ18禁なら男女間でもいいじゃん?」
 柏木:「よく、同じ女として好きなキャラをその作品のヒロインに渡したくないが、ラブラブな疑似体験はしてみたい、だから男キャラを使う…とか、男キャラの肉体なら自分(つまり女という性)が傷つかずに高みの見物ができるからとか、その辺は中島梓氏の評論に詳しいので、そちらを読むと良いだろう。ただ、個人的意見なのじゃが、純粋に「恋愛感情のクライマックスにあるもの=SEX」にするためには、男女じゃダメなんではないかと思うがのう」
 河口:「男男なんて、かえって純粋じゃないよ〜」
 柏木:「そうではないのじゃ。ことが男女ではSEXが終わりにはならない。その先に妊娠、出産が待っておる。かならずしもそうなる訳ではないが、なまじ女だとどうしてもそう連想しがちじゃ。つまり、二人の間の恋愛感情→SEX(めくるめく快楽)→完とするには、妊娠しない性(男)である方が良いって事だろう」
 河口:「納得いかないなー。それじゃ子供ができるのがいけない事みたいじゃないか!」
 柏木:「…そうであろうな
 河口:「ええっ(驚愕)???」
 柏木:明治以降の西洋カブレ貞操教育のせいだと思うが、「めくるめく快楽を得るSEX」は子供を作る行為とは別物らしい。欲しいと思って子供を作る行為は「神聖なSEX」とされておるからな」
 河口:「じゃあ、とっても愛し合っていて、結婚して超ラブラブで、「めくるめく快楽を得るSEX」をしていて、その上で望んでいた子供ができるって展開は?!」
 柏木:「この問題に触れるとただでさえ長い文章がまた長くなりそうじゃから、詳しくは次の機会に譲るとして、実際にはそういう人も居るだろうが、物語上ではあまり見ないであろう?」
 
   例@:ご家庭のちょっとした事件を描くレディースコミックの場合
   SEXシーンほぼナシ。夫とは中が良く、まれに「もう一人子供が欲しいの」なんて展開で「神聖なSEX」(もしくはほのぼのSEX)がイメージ画で入る程度。
   例A:不倫を描くレディースコミックの場合
   もう今までの夫とのSEXじゃ満足できないわ! この人と出会って初めて「めくるめく快楽を得るSEX」を知ったの! ああ、でも生理が来ないわ。まさかあの人の子?
   
   …ほらな。
 河口:「ボクハモウニンゲンフシンデス。ヲハリ」
 柏木:「勝手に終わらすなー!」

 ※なお今回、女王様口調が支持されたので、ヘドリアン女王様口調にさせていただきました。

 
(柏木悠里)


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