コラム 柏木悠里の徒然ビュー




1.こんな所にエロ小説が!



 梅雨なのに晴れた、ありがちな六月のある日の事です。

 

 私が会社から帰る途中、誰が捨てたのか…おや?

 一冊の文庫本が、駅ビルのゴミ箱に引っかかっているじゃありませんか。

 カバーがかかっていたのでどんな本かはわかりませんでしたが、とてもきれいな様子。

 まあもったいないですこと。

 

 「いけませんわ、本は捨てちゃダメでしてよ。古本屋に売ったり、知人に売ったり、リサイクル資源にしたりしないと」

 

 いや、そのままにしとけば電車の網棚や、駅のゴミ箱から古書回収&違法販売業をなさっておられる方々が、くるくるリサイクルしてくれるだろーけど。

 とりあえず手に取って、カバーを外してみると…

 

 「こっ…これは! エロ小説?! い、いいえ、官能小説ではありませんこと? それとも、どっちでも同じなのかしら?」

 

 それも“CGの美少女が表紙で半裸”タイプの物ではなく、もぉまぎれもなく“官能”という感じのシロモノ。

 そーかー、リサイクルに貢献してくれている方々がたまーに置いているこういう小説って、本当に拾われているんだなー。しみじみ。

 今まで、こんなタイプの本を電車に置いていく恥ずかしいヤツがいるのか?

 もしかして盗ってんじゃないの? などと疑ってました。

 

 多分、古物販売免許を持っていないであろう古書販売業のみなさま、スイマセン!

 

 その人達のためにも、もう一度ゴミ箱に戻そうと考えましたが、本の裏にある内容解説に“官能サスペンス”と書いてあったので、ちょっとだけ好奇心が湧きました。

 

 「サスペンスならよろしいかしら…」

 

 …私、かなりいい歳してます。

 このHPを閲覧して下さっているみなさまご存じのとーり、18禁ゲームもやってます。

 あまつさえほんのちょっとですけど、エロマンガ編集部で仕事をさせていただいた事もあります。

 そして読書歴20年以上、『ドグラ・マグラ』や『黒死館殺人事件』すら読み切ったこの私が…、こっ、この私がぁ!

 なぁぁぁんと! 途中で挫折致しましたぁ

 

 …が、あまりにエロくて恥ずかしくて読めなかったなら、その本は官能小説としての役割を果たしているとも言えましょう。

 これは賞賛すべき事かもしれません。

 いえ、遠慮なく褒め讃えますとも!

 

 でも、でもでも、そうじゃなくて…
つまんないんだよおぉぉぉぉぉぉ! ←(C)鷹羽飛鳥

 

 ここではまず、基礎的な素材となる主人公について解説しまぁす。

 …と言いたい所ですが、私、何も語りたくないんですの。

 こ、こんな時は最後の切り札を出しますわ!

 
解説の河口さーん!

 

 「呼ばれたんで出てきました、幻の河口隼人です! 柏木クンはこーゆーワガママ人なんで、しかたない、オレが解説しますよ! すりゃいいんでしょ! さて、主人公の男の容姿・性格関係の描写から…って!」

 

 げっ! 最初の一話ではなぁーんにも書かれていない?

 

 特徴的なのは、モデルプロダクションの社長だという程度。

 二話目にして、やっと普通のオヤジである事が判明するが、じゃあ何でこんな男がHし放題な程もてるのか?

 プロダクション所属の女性だけなら、まだ利害関係があるから理解不能とまではいかないが、その他の女性にもてる理由はさっぱりわからない。

 「まあ、そんな事は官能小説としてはどうでもいい(いいのか?!)事かもしれないので目をつぶるとして、肝心の“官能”シーンに行ってみよー!」

 

 「…閑脳…」

 

 男に対して、たとえどんなラフな話をしていても、それどころかSEX中でも常に丁寧語か敬語なんて女性は、今どきそういないだろう。

 その上イク時に、必ず自分の名前(しかも私とかあたしという一人称じゃなく、友美とか佳織とか)を言った上、自己申告する人はさらに少ないだろうに、この小説では出てくる女性の全員がそうする。

 まるで、法律か憲法で決まっているかのように遵守してくれるのだ。

 出てくる女性は、女性社長・未亡人・ハーフのモデル出身タレント・OL・看護婦と多岐に渡っているのに、みんな同じパターン。

 同じ女性がイメクラごっこしてる方がマシ。違うのは体位くらいか?

 いくら作者がこーゆータイプの女性が好きだからって(←決めつけ)、読者もそれを望んでるとは限らんでしょーに。

 読者の男性諸氏にも、こういうタイプの女性が好き、という方はいるだろうが、何人も出てくるのに根本的な性格&Hシーンでの態度が全て同じじゃあ、飽きるでしょ?

 まったく、捨てた人の気持ちがわかるってもんでぃ。←江戸言葉

 

 「そーか、必要なくなって読み捨てるだけじゃないんだ。捨てたい程、つまんなかったのだ! わかったかい、わがままな我が分身? そろそろ自分でしゃべれよな!」

 

 ええ、わかりましたわ。

 よく18禁ゲームはステロタイプの女の子ばかりで、妙にHな子か、妙に純情な子(でもHシーンではちゃんと気持ち良さそうにしているナゾの存在)しかいないなんて言いますし、私もそういう偏見を持っていました。

 しかしっ!

 この小説に比べれば、100万倍バリエーションがあるって感じ?←ここ語尾上げ

 これからは18禁ゲームが、以前より偏見抜きに楽しめそうです。

 あ、その事がわかっただけでも、この小説にお礼を言いたいです。

 

 そうそう忘れてた。

 そういえば、いっさいサスペンスではありませんでした、まる

 …責任者出てこい! ←すでにひろった物であるこたぁ、棚上げ!

 

  あれ、何、私、完クリ(違うだろ…)してないのに評論しちゃってるんだろ?

 このHPでは、完クリしてない物は書いちゃいけないんだ。いかんいかん。

 

 …とゆー訳で、タイトルが書けませんわ。

 だって、書いちゃいけない評論なんだもん。

 
(柏木悠里)



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