第2回 宇宙刑事シャリバン
−中級編− シャリバンの着ぐるみについて少々説明しよう。 シャリバンの撮影用コンバットスーツには、大まかに分けて
いずれも黒い部分については、レオタード素材のような衣装を使用しているようだが、赤い装甲部分の処理がタイプによってかなり違う。 4の大規模アクション用は、爆発やジャンプなどのシーンで使用される物で、ボディアーマー部分はラテックスのような材質、腿などは薄切りのウレタンに着色したレベルのものだ。 画面で見ると、赤というよりオレンジ色に見える。 3の簡易なアクション用は、ボトム部分以外の装甲はいずれもFRPに塗装したもので、それなりの光沢がある。 また、状況次第ではボトム部分もFRP製が使用されている。 2のアップ用は、名乗りや幻夢界のセット撮影などのシーンで使われる物で、ボトム部分も含めてFRPにメッキ塗装が施され、かなりメタリックな光沢を持っている。 1の電飾付きは、幾重にもメッキと塗装を重ねられたもので、胸のランプや目が光り、超次元ソナーのアンテナが伸びるようになっている。 OPの最初でポーズを切るシーン、レーザーブレードにエネルギーを溜めるシーンやシャリバン・クラッシュのバンクシーンなどに使用されている。 ちなみに、この電飾付きの衣装は、1着作るのに300万円以上かかるらしい。 またレーザーブレードも、撮影目的に合わせて数種類作られている。 一般的なのがFRP製と思われるアップ用のもので、刀身が銀色塗装されている。 芯材をウレタンで覆ったような、振り回すと柔軟に曲がるアクション用もある。 ほかにも蛍光灯使用の物があり、幻夢界の戦闘シーン(セット撮影)でよく使われる。 これは、『太陽戦隊サンバルカン』の頃から使用されている“光る剣”で、レーザーブレードの合成の手間を少しでも省く目的で使われるようだ。 構造としては、両端に電極をつけた蛍光灯を薄いアクリル円筒で覆い、コードをスーツの手袋を経由してスーツ内部に装着された電源に繋ぐという形だ。 この蛍光灯ブレードは割と簡単に作れるらしく、映画『スターウォーズ』のファンがライトセーバーを手軽に模すために作ってイベントに持っていったりもしていたという。 表面のアクリル円筒に色を付けて光らせることも可能で、翌年放送の『シャイダー』では青いレーザーブレードとして使用されていたし、『シャイダー』と同時期の『バイオマン』でも、5色の蛍光灯バイオソードが使用されている。 当然のことながら衝撃には極めて弱く、強く打ち付けると割れてしまうため、これで剣劇をやるにはかなりの熟練を必要とする。 このように、蛍光灯ブレードは一見して“丸い棒”であることが分かる上、使いにくいわけだが、それでも使われているのは、やはり手軽に光る剣を表現できるからなのだろう。 なお、レーザーブレードには、通常の形で刀身部分が透明アクリル製の物も存在する。 どうやら、戦闘が終わって幻夢界が解除された後でポーズを取っているシーンで持っている物は時折これを使っているようだ。 この剣についてはスチール写真などで確認できるが、透明にした理由についてはよく分からない。 メッキの光り方ではイメージにそぐわなかったのだろうか。 『シャリバン』には、番組としての特徴のほかに、ちょっと特殊な時代背景がある。 『シャリバン』が放送された1980年代初頭は、JAC(ジャパンアクションクラブ:現JAEジャパンアクションエンターティメント)が所属員を顔出しで売り出そうと色々とやっていた時期だ。 『シャリバン』では、主役である伊賀電を渡洋史氏、ベル・ヘレン役を矢島由紀氏、敵幹部ガイラー将軍を栗原敏氏と、レギュラー枠3つをそれぞれJAC所属の役者が演じている。 元々JACは、千葉真一氏が“アクションにスタントマンを必要としない俳優を育成する”目的で結成した組織だったはずなのだが、現実にはスタントマンとしての仕事がほとんどだった。 春田純一氏は『仮面ライダー』でトランポリンアクションを演じていたし、『宇宙刑事』シリーズの説明ページでも書いたとおり、大葉氏も『キカイダー』でトランポリンアクションを演じている。 『仮面ライダー』以降しばらくの東映のヒーロー番組は、大野剣友会がアクションを担当していたが、トランポリン系だけはJACが請け負っていたのだ。 その後、『秘密戦隊ゴレンジャー』の後半からはメインのアクションもJACが担当するようになり、名乗りポーズも変わったが、このときアカレンジャーを演じていたのが大葉氏なのは有名な話だ。 また、同時期の『アクマイザー3』や続く『超神ビビューン』などは最初からJACがアクションを担当しており、『アクマイザー3』のザビタンを演じた高橋利道氏は、その後スーパー戦隊シリーズのアクション監督をしたり『仮面ライダーBLACK』の神官バラオムを演じたりしているし、ビビューンを演じたのは前述の春田氏だったりする。 このように、当時JACメンバーはあくまでアクション担当という扱いだったわけだが、アクションができる人は筋肉質のいい体格なわけで、チャンスを与えてやれば大成する可能性はある。 問題は演技力だが、戦隊ヒーローならば5人の中の1人だから多少下手でも許されるし、1年間出演するうちに上手くなる可能性もある。 『バトルフィーバー』や『デンジマン』では、大葉氏がバトルケニアやデンジブルーを変身前から(変身後も)演じているが、役どころはちょっとコミカルで、テストケース的な意味合いが強かったのではないだろうか。 大葉氏は演技が達者だったので、その後『ギャバン』主役に抜擢されたわけだが、JAC側としてもこのことから自信を持ったはずだ。 だからこそ、渡氏が『シャリバン』オーディションを受けることになったのだろう。 なお、以前ある雑誌の記事で、大葉氏が『サンバルカン』の頃に顔出し出演をしていなかったことについて、曙四郎や青梅大五郎でコミカルな印象が付いたので、シリアスもある一条寺烈を演じるには1年かけてそのイメージを消し去る必要があったという評価をしていた。 本当にそういう理由で1年空けたのかは分からないが、なんでもこのころ、大葉氏はバルシャークの衣装を着たりしたこともあったそうだ。 まぁ、2年続けて顔出し出演したのだから、一旦画面から消えざるを得なかったとしてもおかしくはないだろう。 次の『シャイダー』では、主役:沢村大はJACメンバーでない円谷浩氏(特撮の神様円谷英二氏の孫・故人)が演じているものの、真の主役(笑)であるアニーをJACの森永奈緒美氏が演じている。 また、『ジャスピオン』では主役:ジャスピオンを黒崎輝氏が演じ、正体不明の味方:ブーメランを渡氏が、敵幹部マッドギャランを前述の春田氏が演じているし、続く『スピルバン』では、スピルバンを渡氏、パートナーのダイアナを澄川真琴(現:高野槙じゅん)氏、スピルバンの姉ヘレンを森永氏が演じているなど、毎年JACメンバーがレギュラーキャラを演じていた。 『メタルダー』(昭和62年3月開始)以降は、メタルヒーローでJACメンバーのレギュラーはなくなったが、1年半後に開始された『仮面ライダーBLACK RX』(昭和63年10月開始)に前述の高野槙じゅん氏がレギュラー出演している。 一方、スーパー戦隊の方では、『デンジマン』の後、3人組の『サンバルカン』にはレギュラー出演者がいなかったものの、『ゴーグルV』と『科学戦隊ダイナマン』ではゴーグルブラック・ダイナブラックを春田純一氏が、『ダイナマン』ではダイナブルーを卯木浩二氏が、『超電子バイオマン』ではブルースリーを大須賀昭人氏、イエローフォーを矢島氏(前期)、田中澄子氏(後期)が顔出しでそれぞれ出演している。 なお、『バイオマン』には真田広之氏が特別出演しているが、それは矢島氏の突然の降板に対するJAC側からの詫びという意味が強いらしい。 矢島氏は、ベル・ヘレンで好評を博した後での『バイオマン』出演であり、ファンの期待も大きかっただけに残念だった。 その辺については話すと長いので、こちらをどうぞ。 顔出し出演としては、その後、正義側では『電撃戦隊チェンジマン』のチェンジフェニックス:大石麻衣氏と電撃戦隊戦士団の面々、『超新星フラッシュマン』のピンクフラッシュ:吉田真弓氏と続いて終わった。 ちなみに大石麻衣氏は、『シャリバン』では奥伊賀島のイガクリスタル親衛隊の1人(当時:大石弘子、最終回のラストで「見て、地球よ!」と言っている娘)を演じており、次作『シャイダー』で敵方準幹部ギャル2を演じた後に『チェンジマン』に出演している。 なんでも、『チェンジマン』時代は、目つきを鋭くすると「ギャル2引きずってるぞ」とからかわれたそうだ。 また、敵側では、岡本美登氏が『チェンジマン』で宇宙海賊ブーバ、『フラッシュマン』でボー・ガルダン、『光戦隊マスクマン』で地底忍オヨブー、『超獣戦隊ライブマン』のドクター・アシュラと4年連続で悪側のキャラを演じているが、このうちオヨブーは本当に目の部分だけしか見えないかぶりものキャラだが、ブーバは目の周辺全体が露出していて目元の演技ができるキャラ、ガルダンとアシュラは完全に顔出しのキャラだった。 その後も、メタルヒーロー系に限らずJACのメンバーがゲストとして顔出し出演することは時々ある。 『メタルダー』25・26話『とびだせ! ジャック電撃応援団』『ぶっちぎり! 炎のジャック野郎』の前後編では、レギュラーである北八荒(きた・はっこう)の古い友人という設定で大葉氏や春田氏、渡氏らが登場するアクション編になっているし、映画『仮面ライダーZO』でも、大葉氏や森永氏が空手道場の人として登場している。 ほかにも、『特捜ロボ ジャンパーソン』に、仮面ライダーBlack、同RX、王蛇、シャンゼリオンなどのスーツアクターである岡元次郎氏が悪役で出ていたり、前述の岡本美登氏がスーパー戦隊にちょい役で出演するなどしている。 ただ、いずれも“ただの人”という扱いなので、結局はあまり強い印象は残せていないと思う。 やはり、ヒーローや悪の幹部のような特殊能力者として登場するのとそうでないのとでは、扱いが相当違うのだ。 唯一の例外が、『世界忍者戦ジライヤ』27話『闘破の敵は磁雷矢』に登場する伊予野二郎(いよ・やじろう:演大葉氏)だろう。 慢心した主人公:山地闘破(やまじ・とうは)を鍛え直すため、闘破の父にこっそり頼まれてやってきた忍者という役どころで、闘破とジライヤスーツを賭けて決闘して奪うなど相当強い印象を与えていると言える。 このエピソードでは、野二郎が本当にジライヤスーツを着ているシーンもある。 これは、生身の忍者同士の戦いという設定であることによる希有な例と言えるだろう。 いや、本当に人間か怪しい奴が多い…というより本当に人間でない奴もたまにいるのだが。 余談だが、前述の『メタルダー』では、八荒が敵の攻撃で重傷を負い、大葉氏演じるキャラがメタルダー:剣流星(つるぎ・りゅうせい)に「八荒が…」と伝えるシリアスなシーンがある。 このシーンの撮影で、大葉氏はカメラに背中を向けていて口元が見えないのをいいことに、真顔で「メンタンピンドライチ(編注:麻雀用語です)」などと言っており、流星役の妹尾洸氏は笑いをこらえるのが大変だったそうだ。 話を戻そう。 渡氏が撮影用着ぐるみに入ったのは『サンバルカン』の戦闘員:マシンマンが最初だそうで、ほかにバルシャークにも入ったことがあるそうだ。 その後、『ギャバン』でも数回コンバットスーツを着ているそうで、OPでのサイバリアンに乗ったギャバンは渡氏だ。 渡氏は、『シャリバン』でも、怪我をしたスーツアクターの代役として自身でコンバットスーツを着ている。 普通、代役といったら逆のパターンだと思うのだが(笑)。 また、『シャリバン』最終回に登場するギャバンのコンバットスーツを着ているのは大葉氏本人だったりする。 それを見ていた渡氏は、自分もシャリバンを着たいとうらやましがったそうだ。 ちなみに、渡氏は、顔出しとしては唯一、コンバットスーツヒーロー5作品全てに出演している。 『シャイダー』本編には出ていないものの、最終回後の特番に出演しているからだ。 本編に出なかった理由は、ミュージカルに出演中だったこともあるが、主に大葉氏が映画『コータローまかりとおる』に天光寺輝彦役で出演するため坊主頭にしてしまい、印象が変わりすぎて出られなかったためらしい。 パトロール隊長が出ないのに、よその星担当の刑事は出られない、というわけだ。 この辺のバランスは難しい。 なお、大葉氏は、『シャイダー』特番に坊主頭で出演し、「隊長、どうしたんですかその頭?」という質問に「あ〜…ちょっと、な」の一言で済ませてしまい、どういう言い訳をするか楽しみにしていた大きなお友達の期待を裏切っている。 『ジャスピオン』で渡氏が演じたブーメランは、当時黒崎氏が忙しかったので、ジャスピオンが素面でやるべき敵基地潜入などを代わりに行うために登場したキャラクターだった。 『仮面ライダー』新1号編で、主役の藤岡弘氏が忙しくて、千葉治郎氏演じる滝和也の出番が増えたのと同じような理由で、要するに主役の代わりに場繋ぎをする役どころだったわけだ。 そのためにあつらえたキャラクターなので、渡氏自身もどういう設定なのか説明を受けておらず、なんとなく宇宙人だろうというイメージで演じていたそうだ。 それで宇宙人ぽく見せようと中性的なメイクをしたら、撮影現場では「オカマ洋史」と呼ばれたとか。 ところが、渡氏も『シャリバン』時代の骨折の治療(補強用の金属板摘出手術)のため『ジャスピオン』を降板せざるを得なくなる。 こうしてブーメランは謎のまま退場した。 その後、1回だけゲスト出演しているが、その際“実は地球人だったんだけど、インターポールの捜査官に採用されて忙しいから、マッドギャラン一味の件からは手を引いてジャスピオンに任せる”と訳の分からない説明を残している。 渡氏が役者を目指した動機は、“人を感動させる仕事をしたいけれど、歌は下手だから役者になろう”というものだったそうだが、『スピルバン』では、ヒット曲集収録曲の1曲を歌うことになった。 しかも、その歌を本編中で実際に歌っているシーンがある。 渡氏は、後にインタビューで「監督に“ここで歌いながらコクピットに入ってくるんだ。(歌をバックにではなく)本人が歌いながらじゃなきゃ駄目だ”と言われ、照れまくりながらやった。オンエアで見て、やっぱり恥ずかしかった」旨のコメントをしている。 また、ベル・ビリーを演じた土家歩氏は、昭和50年代前半ころ「白い歯っていいな〜♪ ホワイト&ホワイト」のCMに一家(江原真二郎、中原ひとみ、土家里織)で出演していたお兄ちゃんで、1985年に『兄弟拳バイクロッサー』でバイクロッサー・ギン:銀二郎を演じた後、1990年5月に車で自損事故を起こして死亡している。 何の縁か、その記事が載ったフライデーには、前述の森永氏が映画『極道の妻たち』でベッドシーンを演じたという記事も載っていた。 JAC関連以外の役者ネタも少々。 イガクリスタル親衛隊代表:みゆきを演じた柿崎澄子氏は、『透明ドリちゃん』の主役を演じた人なのだが、当時のかわいらしさのまま大きくなったという印象を受ける。 そして、電の父電一郎を演じたのは、『木枯らし紋次郎』の主題歌「誰かが風の中で」などを歌っている上条恒彦氏であり、氏の歌う挿入歌「星空の町を歩こう」が『シャリバン』ヒット曲集に収録されている。 ついでに言うと、ミミーを演じたのは、『ギャバン』開始時点ではまだメジャーではなかった叶和貴子氏であり、“あの人は昔”系の番組では、石田えり氏が『ウルトラマン80』に出演していたのと同じくらい笑われている。 役者ネタでもう1つ。 『シャリバン』出演が縁で結婚したカップルが2組いる。 シャリバンのアクション用スーツアクターの村上潤氏とリリー役の降矢由美子氏、アップ用スーツアクターの清水朗氏とドクターポルター役の吉岡ひとみ氏だ。 この手の番組の現場では、ほとんど四六時中撮影のために拘束されているせいか、スタッフ同士のカップルが誕生することが多いらしいが、1番組で2組結婚するというのは珍しい。 もう1つ、80年代前半特有のこととしてプラモデルの話がある。 この頃、所謂ガンプラブームは既に下火になりつつあったが、『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』のタカラは元より、『超時空要塞マクロス』のバルキリーの成功などで、今は亡きイマイ、アリイなどバンダイ以外のプラモメーカーもキャラ物のプラモデルを発売したりしており、割と元気な時代だった。 バンダイからは『マジンガーZ』や『勇者ライディーン』などという大昔の作品の可動プラモや、ゴジラなどの怪獣のディスプレイモデルまで発売されていた。 また、半ば伝説的な話だが、アリイが出した『超時空騎団サザンクロス』の女性キャラの甲冑姿のプラモは、甲冑を外すと乳房が露出されるという本気で通常市販品ですか!?というとんでもないものだった。 説明書に「ロリコンを取り入れ」などとはっきり書いてあったことから、シャレや冗談ではなく、本気でそういう需要があると信じていたようだ。 企画した人の顔が見たいものだ。 まぁロリコンはともかく、そういった猫も杓子もプラモデル時代の一環として、バンダイから『ダイナマン』のダイナロボやシャリバンのプラモデルが発売されていた。 ![]() ▲ 当時のバンダイ・プラモデルカタログより引用 この前後数年間に東映トクサツ系でプラモデルが発売されたのは、ギャビオン、ダイナロボ、シャリバンだけなので、多分それほど売れなかったのだろうが、当時オモチャとして発売されていた同等スケールの超合金シャリバンの表面がメッキでなくパール塗装っぽかったことを考え併せると、シャリバンのプラモはかなり貴重なアイテムだったと思われる。 なお、翌年の『シャイダー』からは、超合金がメッキ処理されるようになったと記憶している。 調べたところ、シャリバンのプラデラとしてクロスアップ系の商品も出ていたことが分かったが、装甲の表面がメッキだったかどうかまでは分からなかった。 しかし、この時期って『聖闘士星矢』より前のはずだから、もしかしてクロスアップ系のはしりだったりするのだろうか? 中身の顔は整形色一色で、装甲の下のボディも黒一色なのだが、もしこれにちゃんと電の顔やインナースーツが塗装されていたらと考えると、なんだか惜しい気がする。 ちなみに、仮面ライダーシリーズに「かっとびライダー」というフリクションゼンマイ走行のバイク+デフォルメされたライダーの人形のオモチャがあるのを知っているだろうか? 元々は'87年ころから発売されていたシリーズで、J&ジェイクロッサーが最後になっていたが、近年リニューアルされ、旧サイクロンと新サイクロン、ハリケーン、トライチェイサー、ライジングビートゴウラム、マシントルネイダー、ガードチェイサー、ギルスレイダーの8種類が発売された後打ち切られている。 最近ガシャポンで出た「カットビ!ライダーDASH!」というのは、これの流れを組む商品だ。 『Black』の頃にはもっと大きいリモコンバージョンバトルホッパーが出ていたりもしたらしい。 「かっとびライダー」には、旧1号&旧サイクロン、新2号&新サイクロン、V3&ハリケーンのようにリニューアル再発売されたものもあるし、Blackのように当初からロードセクター、バトルホッパーと2種類発売されていたリッチなパターンもある。 実はさりげに、ほぼ全種類のライダーが発売されており、新旧1・2号のようなマイナーチェンジ系や、RXのロボライダー、バイオライダーなどのような2段変身系、そもそも変身するとバイクに乗らなくなる真を除くと、『アギト』以前の作品で発売されていないのはライダーマン&ライダーマンマシーンとスカイライダー&スカイターボ、ZX&ヘルダイバーだけだったりする。 自分の番組を持っている中で唯一発売されていないスカイライダーの立場って…。 で、この「かっとびライダー」シリーズとして、メタルヒーローバージョンが'89年に発売されていて、ギャバン&サイバリアン、シャイダー&ブルホーク、ジバン&バイカンがラインナップされた。 ![]() 3台並べられるなら、そのためだけに嫌いなブルホークも買ったんだけどなぁ。 さらに、食玩バージョンで、無彩色・プルバックゼンマイ走行の「ぶっとびライダー」というのがあり、旧1号&旧サイクロン、Black&バトルホッパーなどが発売されている。 で、こちらのシリーズでも、キカイダーシリーズや宇宙刑事シリーズが出ている。 宇宙刑事シリーズは'91年に発売され、シャリバン&モトシャリアンもラインナップされていたが、鷹羽がこれの存在に気付いたのは販売終了の半年以上後であり、バンダイお客様センターまで電話をかけても手に入らず、これもまた非常に悔しい思いをした。 ところで、宇宙刑事シリーズは、他方面に対しても少々面白い影響を与えている。 「蒸着」や「赤射」のポーズは、変身ポーズとしては相当複雑な部類なのだが、それだけに上手く決めると格好いい。 そのせいか、ポーズを流用されたことがある。 当時週刊少年ジャンプに連載されていた『ウイングマン』がそれだ。 『ウイングマン』は、ヒーローに憧れている中学生:広野健太が、偶然手にした“書いたことが現実になるアイテム”ドリムノートを使って自分が考えたヒーロー:ウイングマンになり、ドリムノートを狙う異次元人と戦う物語だ。 健太は、ヒーロー好きだけあって、自分の趣味でウイングマンの変身ポーズ、名乗りポーズを考えていて、「チェイング! 悪! 裂! ウイングマン!」と、変身から名乗りまで一連の流れを作っている。 面白いことに、変身に必要なのはノートに書いた「チェイング」の一言だけで、ポーズなどはいらないのに、趣味でポーズを付けているという設定だった。 作者が悪ノリしてコミックスにポーズの図解を載せたりしているのだが、このポーズ、実は「蒸着」と「赤射」のポーズを混ぜ込んである。 「チェイング」は「蒸着」の前半のアレンジだし、「悪」と「裂」は「赤射」のアレンジだ。 アニメ版である『夢戦士ウイングマン』のEDでは、このポーズをゆっくりと見せてくれているので、機会があったら見てみると面白いと思う。 もう1つ、面白い例として、'87年にバンダイC-MOONレーベルで発売されたOVA『学園特捜ヒカルオン』がある。 今ではベテラン声優である関俊彦氏の初主演作品だったりするのだが、この作品は、音楽を渡辺宙明氏が作曲、主題歌を串田アキラ氏が歌い、主人公のヒカルオンは「裂空!」と叫んでコンバットスーツ姿になり、必殺技は光る剣という、どう考えても“宇宙刑事をアニメで作りました”というシロモノだった。 OPは、『シャリバン』のOPとEDの映像を混ぜた感じで、しかもOP、EDのラストを飾る必殺技ジャストバンブレイクは、『シャリバン』EDのラストにも使われているシャリバンクラッシュとほとんど同じ演出になっていて、制作者が『シャリバン』を相当好きだったことを窺わせる。 とはいえ、変身前のアクションはトクサツ的でかなり高レベルなものの、いかんせん変身後に怪人と絡む肝心のシーンになると、怪人が等身大でないせいもあってほとんど肉弾戦がなく、しかもジャストバンブレイクが“剣から伸びたビームで巨大な怪獣をまっぷたつ! しかも斜めに切ったのに縦に斬れる”技のため、どうも高揚感が沸かない。 何より、宇宙刑事見てたんなら分かるでしょうと言わんばかりに、敵組織や変身システム、異空間とは何なのかなど全く説明しないまま1つの事件だけを描いて終わってしまったことには、期待して見ただけにかなり落胆したことを覚えている。 一説にはトクサツとして作るつもりで東映にお伺いを立てたら断られ、仕方なくアニメにしたという話もあるが、そりゃあ、ここまでまんまなデザイン・設定で企画されたら誰だって断るだろう。 また、「ピンクノイズ・シリーズ」という15歳未満視聴禁止のレーベルだったにもかかわらず、それらしいシーンはなく、どうしてわざわざ年齢制限のあるシリーズで出したのか理解に苦しむ。 一応弁護しておくと、この当時、コンバットスーツヒーローのオマージュやパロディは巷に溢れかえっており、れっきとしたプロが、その仕事の中でそういうものを作っていた時代だったそうだ。 今は亡き『少年キャプテン』という雑誌に連載されていた『魔神伝』(本当は「神」の下に「人」が入る)に登場するザンカンというキャラクターは、ほとんど宇宙刑事だった。 ちなみに、『魔神伝』の作者は、『超獣戦隊ライブマン』のモンスターデザインの一部を手がけた人だったと記憶している。 前述の『ウイングマン』にも、「黒着」するバギャンと、「金着」するゴーギャンという作品世界内のテレビヒーローが存在し、バギャンについては(作中の)デパート屋上でショーまでやっている。 こういった波はプロだけではなく、同人界でも起きていたらしいが、残念ながら、『シャリバン』当時、鷹羽は同人誌の世界を知らなかったので、詳しい事情は全く分からない。 なお、特番『3人の宇宙刑事』は、新番組『ジャスピオン』の放映準備が間に合わなかったために急遽放送が決まったものだ。 『ジャスピオン』の放送開始までの間を持たせるために『シャイダー』を2週延ばす必要が生じ、最終決戦間際の46話『幻のショータイム』が水増しのために作られた。 水増しなので予算も時間もなく、新しい怪人(不思議獣)も登場させられない。 昨今なら総集編で誤魔化すところだが、古代の遺跡突入直前のシャイダーをポーが邪魔するという話をでっちあげ、ポーと珍獣(敵方のマスコットキャラ)だけで1話持たせている。 ポーに翻弄され、シャイダーのプラズマブルーエネルギーが消耗していくという緊迫感をちゃんと描いている辺りは職人芸と言えよう。 まったく大した手腕だが、さすがに本編を延ばすのはそれが限界だったようで、もう1話分は特番という形にしたのだろう。 特番の構成が各番組の回想シーン中心で、素顔の3人がちょっと喋るシーン、それぞれコンバットスーツ姿になって並ぶシーンと、新撮シーンが少ないことは、いかに短時間で撮っているかを如実に示している。 この特番にガイラー将軍のそっくりさんが登場するのも、演じる栗原氏がJACの所属でありスケジュール調整が楽だったからだろう。 ちなみに、この特番の山場となる3人変身を促す声は聖なる者と同じだが、そういう設定であるかは不明だ。 |