『仮面ライダークウガ』
特別篇
(Story)
EPISODE1『復活』とEPISODE2『変身』の再編集版。
五代雄介が戦士クウガのベルトを身に付け、赤いクウガになるまでの物語。
(傾向と対策)
番組終了後にわざわざ再編集したという結構凄い作品が、DVDなどで発売された。
こういうページを持っている都合上、こういうのもチェックすることにした鷹羽は、ほぼ1年ぶりに『仮面ライダークウガのお部屋』に付け加えることにした次第。
内容はと言えば、尺の関係で切られたであろう部分の追加と合成のやり直し、一部セリフの手直しをした、所謂ディレクターズカットだ。
冒頭にダグバのナレーション(勿論グロンギ語!)が入り、0号の声がダグバの声で録りなおされているなど最終回の後ならではの変更のほか、EPISODE2での赤いクウガの初変身やEPISODE1のヘリなど、合成のまずかった部分も修正されている。
足されたシーンについては、気がついた部分は少ないが
雄介が九郎ケ岳遺跡に向かう最中、信号待ちをしている際に一条と亀山が乗ったパトカーが脇を通り過ぎていく
ズ・ゴオマ・グ(コウモリ種怪人)の初登場シーンで、警戒中のヘリやパトカーが映るシーン
が挙げられる。
もちろんこのヘリは、逃走した未確認生命体1号と2号への警戒態勢を敷いているのだ。
EPISODE2はEPISODE1の事件当日の夜から始まるわけだが、それをより強調したものと言えるだろう。
だが、一条のパトカーが雄介を抜いていく場面は不必要だったような気がする。
勿論、調査団からの110番通報で呼ばれたということなのだろうが、雄介が追い抜かれてから現場に着くまでの時間を考えると、どうも距離が合わないような気がするのだ。
そのほか、新番予告にあったのに本編で削られていたグムンのセリフで
手を出すな! 俺が殺る!
が入れられている。
番組前半くらいまでは、ゴオマが仲間に蔑まれていたのはこのときグムンを置いて逃げたからだという話がまことしやかに囁かれていて、「このセリフさえ削られていなければ良かったのにね」とか言われたりもした台詞だ。
実際のところ、ゴオマが蔑まれていたのはそんな理由ではなかったのだけど、とにかく今回ようやくこの台詞が入ったわけだ。
なお、字幕モードだとグロンギ語の日本語訳が表示されるが、全ての言葉に訳が付いているわけではなく、しかも字数制限のためか意訳が多いため、実はあまり役には立たない。
冒頭のダグバのナレーションからして字幕は出ないのだ。
これが一番聞き取りにくくて長いセリフなのに…。
ま、売り文句として「一部字幕あり」になってはいたけどさ。
そして、このグロンギ語のセリフには、テレビ版とは違っているものがいくつかある。
今回付け足されたゴオマがヘリを見上げるシーンでは
やけに騒がしいな
と言っているが、字幕では
耳障りだな
になっている。
これは、洋画などでよくある“字幕における文字数制限”ではないかと思うのだが、演出上の要請でセリフが変えられている場合もあるようだ。
白いクウガを見たズ・グムン・バ(クモ種怪人)は、テレビでは
ツノが小さくなったな
といっていたのだが、特別篇では
その白い身体はなんだ?
字幕:今度は白いのか
に変わっている。
これは、古代には白いクウガになったことがなく、グムンが知らなかったという演出としてセリフが変えられたのではないかと思う。
なにしろ、アフレコをやり直しているくらいだから。
つまり、演出上の都合でセリフを変えてしまった可能性が高いということだ。
これの最たるものが、教会での
貴様がなぜクウガに!?
だろう。
テレビ版とBGMや効果音の入り方が違うために聞き取りにくいが、セリフ自体は全く同じだ。
それなのに、字幕では
貴様を殺すクウガ!
になっている。
これは、セリフ上はっきりと「…クウガ」で終わっているのに、訳が「…クウガに」となるのを避けたのだと思う。
クウガ研究室で何度か触れているとおり、グロンギ語では固有名詞は文末に置かれ、それに伴って目的格や所有格の助詞も倒置される。
上記の台詞で言えば
ビガラグバゼビ クウガ
(きさまがなぜに クウガ)
となるわけだが、実はこの文法は、正にこのシーンのために作られたものではないかと思えるのだ。
この“固有名詞倒置”は、文章を作る上でかなり面倒になる。
良い例がEPISODE30『運命』でのゴ・ガメゴ・レ(カメ種怪人)の
リントの言葉にこんなのがある
だ。
これは、原語では
ボンバン グガスビ ボドダン リント
(こんなの があるに ことばの リント)
となっており、「リント」が倒置されたことに引っ張られて一般名詞である「言葉」まで倒置されてしまったわけだが、係り受けが非常に煩わしい。
ところが、「破壊のカリスマ」のように、固有名詞を含まない場合、単純に
ザバギン バシグラ
(はかいの カリスマ)
とストレートに掛かってくる。
この“固有名詞倒置”は文法上の特殊例という扱いになっており、そのために難しい文章が書きにくく(解読しにくく)なっているのだが、鷹羽には、この特例はひとえにEPISODE2の「貴様がなぜクウガに!?」のためだけに作られたものに思えてならない。
この台詞は、雄介が「クウガ」という名前を知るきっかけとなる言葉だ。
雄介は、ゴオマがこのセリフを言いながら自分を指さしたことで
クウガ…? そうか、クウガか!
と、赤い戦士の名が「クウガ」だと思ったわけだ。
ここで、文法の特例を外すと
ビガラグバゼ クウガビ
となってしまう。
そうなると、それを聞いた雄介も
クウガビ…? そうか、クウガビか!
とならざるを得ない。
それじゃあ番組名が『仮面ライダークウガビ』になってしまうじゃないの!
で、話を戻すと、この字幕の作成者は、「…クウガ」という音が「…クウガに」という訳になることの違和感を考慮して、字幕の製作段階で「貴様を殺すクウガ!」に変えちゃったんだろう。
首を傾げながら「殺す」とか言われてもピンと来ないんだけどね。
だから、音声の方を録りなおすことはしなかった、と。
そして、タイトルに出てくるリント文字は
クウガを 可能な限り 見直した 素晴らしい出来映えの 作品を 公開する
ではなかろうか。
つまり“仮面ライダークウガという番組を可能な限り手直しした特別版をここに公開する”というわけだ。
で、最大の難関であるダグバのナレーションだけど
逞しき者グロンギ 襲い掛かりて
惰弱なる者リント (不明)
(不明) 眠る者なし
と、全部は分からなかった。
ダグバったら発音悪くて聞き取れないんだもん…。