まったく近頃の若い奴は…

鷹羽飛鳥

更新日:2011年6月21日

 遙かな昔から、年寄りが若い部下にお説教するor酒の席で愚痴を言う際の決まり文句であるこのセリフ。
 鷹羽も、就職した当時はよく言われたものです。
 鷹羽の場合、この手のセリフは、仕事のやり方や時勢が変わった時などに付いていけなかったおじさん達がブツブツ言うというイメージがあります。
 曰く「何かっていうと男女平等だ、セクハラだとうるさい」「言われたことしかできない」「言われたとおりにしかできない」「どうすればいいか自分で考えないですぐ訊いてくる」「直接斬り結ばないで種子島に頼る」などなど。
 そうかといって、「自分で考えろ」と言われたから自分の判断で動いたら、「相談もせずに勝手に話を進める」とか文句を言われてしまうこともあります。
 まあ、要するに、自分の注文どおりにやってほしいとか、深い意味はなくてとりあえずくだを巻きたいだけとかってパターンも多々あるわけです。

 そんなわけで、必ずしも意味があるとは限りませんが、そうかといって全く無意味というわけでもありません。
 職場という組織の中で、無視できない問題である場合なんかもあります。
 よくあるのが、「最近の若い奴は、自分で調べないで何でも人に訊く」というパターンです。
 資料を調べれば分かることを、すぐに先輩や上司に訊いてしまう若手社員なんかが言われます。
 確かに、自分で調べるよりも訊いた方が早いので、時間的な面から言えば合理的です。
 だからこそ若手社員も訊いちゃうわけで、その若手君の論理としては「先方が急いでいるのに、こちらが調べる時間の分を待たせるわけにはいかない」となるわけです。
 一面では真実なのですが、おじさん社員の不満は、その後若手君が改めて調べるということをしない点にあります。
 当然、若手君からすれば、知りたかったことは分かったわけですから、もう調べる必要はありません。

 まぁ、ね。
 人間、いつでもできることはいつまでもやらないもので、まして分かったつもりになっていることは、わざわざ調べません。
 この場合、おじさん社員が怒っているのは、「人に訊いたことはすぐ忘れるから、ちゃんと自分で調べて理解しろ」と言っても、「もう分かったから大丈夫」という姿勢でいるということなのです。
 鷹羽の経験上、自分で苦労して覚えたことはなかなか忘れませんが、人から聞いたことはすぐ忘れます。
 もっとも、おじさん社員にしても、パソコン関係などは何度説明してもちっとも覚えてくれない&参考書の類を読ませようとしても、カタカナ言葉が理解できず読めないのですから、結局「最近の若い奴」に限った話ではないんですけど。
 「何にもしてないのに、どんどん字が消えるんだ!」とか騒いでたおじさん、あなた、インサートキー押したでしょ! 「どんどん消える」んじゃなくて、字を打つとその分消えるんでしょ! 状況説明は的確に!

 平均値で言えば、今の50代と比較して、今の20代は、マニュアル人間が多くて融通が利かないとか、テストの成績が悪いとか、肉体能力が低いとか、色々あります。
 ただ、仮に全部そのとおりだとしても、あくまで平均値の問題であり、「若い奴」全部がそうだというわけではないのです。
 そもそも最初に書いたとおり、今の50代の人達だって30年前は「最近の若い奴」と言われていたわけで、人間がそんなに延々と低能化し続けているはずはありません。
 まぁ、物事を深く考えない人が増えている気はしますけど。
 とはいえ、そもそも何十年も仕事をしてきて、自分なりのやり方もノウハウも築いてきたおじさん社員が自分を基準に若手を計るわけですから、どうしたって見劣りするわけです。
 というより、50代のベテランと同じくらい仕事ができるなら、今時同程度の待遇を受けなきゃならないわけで。

 鷹羽も入社して十数年が経ち、何人もの新入社員を見てきました。
 全体的にどうこうということはないにしても、“できる人”“使えない人”に分かれているのが現実のようです。
 同じように入社試験を通った人達なのに、です。
 まぁ、成績の良さと頭の良さはイコールではありませんから、当然と言えば当然ですが。

 先日、“使えない奴”として社内で有名なA君が慌てふためいていました。
 A君は、大卒で今年入社した人ですが、なんだかやたらと視野が(精神的に)狭くて、自分勝手に判断して行動してはミスするタイプだそうです。
 騒いでいるA君に事情を聞くと、「何故か分からないんですが、データが消えてしまったみたいなんです!」とのこと。
 どうやらデータ管理のシステムで自分が入力したデータを消してしまったということのようです。
 何をしたのかよくよく問い質すと、「前に作ったデータの内容を確認していたら、見たことのない『削除』ってボタンが出たんでなんだろうと思って押したら、データが消えてしまったんです」…ですって。

 もしもし?
 そりゃあ、「削除」ボタン押したら、データは削除されるんじゃない?
 マニュアルにも、「間違って登録したデータは、こうやれば消せる」って書き方だけど、ちゃんと載ってるよ?

 なるほど。
 彼が“使えない奴”って言われているのも納得です。
 「何だろう?」って思った時点で、一旦立ち止まりなさい!
 マンガとかで、「あれ、このスイッチなんだろう?」って言いながら既に押してる人なんてのがいますけど、そういう人って現実に存在するんですね。
 少なくとも、鷹羽は、A君と一緒にダンジョンには入りたくありません。
 命がいくつあっても足りませんもの。

 A君が消してしまったのは、分かりやすく言うと「請求書」と対になった「納品書」のデータみたいなものです。
 請求書番号と納品書番号が合わないと入金した時に何の代金か分からなくなるというようなシステムで、納品書を消してしまった、と。
 あろうことか、A君は、担当者が明日渡す予定の請求書を作った後で、その大元になる納品書を消してしまったのでした。
 仕方なく、請求書のデータも削除して、新たに納品書から作り直すわけです。
 翌日使う請求書の作り直し、しかも作業するのはA君じゃなくて請求書の担当者。
 いきがかり上、鷹羽が作業の根回しをする羽目になってしまいました。
 次からは、A君が騒いでいたら近寄らないようにしよう、うん。

 まったく、近頃のわかい奴は…。

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