ビギンズナイトとTV本編のつながりについて

 『ビギンズナイト』は、テレビ本編と同一時間軸上にあるのかとても微妙な存在だ。
 途中までは同一時間軸上に見えるが、単体で終わらず、夏の劇場版『オールライダー対大ショッカー』と、その続編に当たる『ムービー大戦2010』のそれぞれに繋がっているため、そのままではパラレルワールド化してしまうのだ。
 『ムービー大戦2010』では、ハードボイルダーで走っていただけのWがディケイドの最終決戦と合流している。
 つまり、ダミードーパントとWに次元を超える能力がない限り、ディケイドが見付けた“自分の世界”は、Wの世界ということになってしまう。
 更に、『ムービー大戦2010』において、アルティメットDに吸収されたダミードーパントを分離させようという努力をせず、メモリブレイクを試そうともせず、殺してしまっている。
 テレビ本編のWではドーパントも犯罪者として扱っており、少なくとも組織構成員であるマスカレード以外は殺したことはない。
 これでは、テレビ本編の描写とは相容れない。

 また、『ビギンズナイト』と本編とのリンク時期を考えると、14話『レディオでQ/生中継大パニック』と15話『Fの残光/強盗ライダー』の間となる。
 これは、『ビギンズナイト』がクリスマスの1週間程度を舞台としていること、15話以降、翔太郎が“おやっさんのことを亜樹子にどう話すか”迷っていないこと、15話で亜樹子が翔太郎に「それもお父さんの受け売り?」とからかっていて父の死を知っているらしい素振りを見せていること、ビギンズナイト』の封切が14話の前日である12月12日でありカレンダー的にも符合することなどから考えると、そうならざるを得ない。

 ただし、そうなると色々と綻びも出てくる。
 例えば、『ビギンズナイト』ラストで、タブー、クレイドール、ナスカの3幹部が登場するが、14話ラストで若菜はクレイドールのメモリを捨てており、18話『さらばNよ/友は風の彼方に』で琉兵衛に渡されるまで持っていないのが明らかだ。
 かといって19話以降ではもう霧彦がいない。
 しかも、『ディケイド完結編』『ムービー大戦2010』が『オールライダー対大ショッカー』を引きずっていたりするものだから、Wはディケイドと面識があることにされてしまい、ついでに光栄次郎が死神博士のガイアメモリを持っているなどという素っ頓狂なオマケまで付いてしまった。

 これらの問題を解決するには、ちょっと反則気味だが、大人の事情を考慮するしかない。
 つまり、『ビギンズナイト』は、単独の映画として企画・制作されていたが、興行的な要請から『ムービー大戦2010』と繋げなければならなくなり、ラストにダミーが逃げるための下地として3幹部が登場して逃げる手助けをした、と。
 本来ならば、ダミードーパントがメモリブレイクされて事件が解決するという展開だったのではないだろうか。
 劇場版のパンフレットのプロデューサー対談の中で、土壇場で『ムービー大戦2010』に繋げることが決まったという話が出ているから、当初は『ビギンズナイト』単体で完結する予定だったのだ。