消せない「お気に入り」の話

柏木悠里

更新日:2008年12月28日

 ご無沙汰しております。この頃、会社で「妖精さん」なるあだ名をつけられた柏木です。
 いやね、最近、自分が読みたい記事の為に、子ども向け雑誌を買うようになったのですが、その手の雑誌って、絶対付録がついている訳ですよ。
 それが、殆どが紙製品だった昔の付録と違って、材質もデザインもすこぶる良かったりするんです。
 ……で、自分には不要だけど、お子様の居るパートの方々に「いりませんか?」って言って、ご希望の方に差し上げた所、ついたあだ名が「妖精さん」。
 実際にそれを受け取ったお子様から見ると、「もらって嬉しいモノをくれるけど、顔を見た事が無い」からだそうで。
 まあ、可愛いと言えば可愛いのですが、複雑な心境になるのは何故なのでしょうか。

 さて、妖精さんと言えば『透明ドリちゃん』、『透明ドリちゃん』と言えば、東映特撮ファンタジー路線シリーズ。
 東映特撮ファンタジー路線シリーズと言えば、『5年3組魔法組』。
 そして当然、魔女ベルバラ。

 前フリと繋ぎが無茶過ぎる? とりあえず気にしないで下さい。
 作品が古すぎて何を言ってるか分からない? 頑張って検索して下さい。

 とにかく、魔女ベルバラを演じられ、2006年にお亡くなりになられた、曽我町子さんの話を少しだけ。
 何故今頃? とお思いの方も多いでしょうが、ようやく落ち着いて書けるようになったからです。
 身内の人間でも、友人ですら無いというのに、どうしてそんなに……と笑わば笑え。
 私にとって彼女は、それだけ思い入れの強い俳優さん、否、「女王陛下」でした。

 彼女の訃報を目にした時、「タチの悪い夢でありますように」と祈って、早く布団に入った事を今でも思い出します。
 結局、目が覚めた後も、それは現実として報道されていました。
 闘病中との噂は聞いていても、直前まで『魔法戦隊マジレンジャー』に出演されておられたせいか、「こんな急に」という思いは拭い去れず。

 少し話は逸れますが、『魔法戦隊マジレンジャー』の劇場版、『インフェルシアの花嫁』を見に行った後、同行者から「いやあ、(曽我町子さん演じる)天空大聖者マジエル様が出て来た時の柏木の反応は面白かった」と言われたな〜。
 何でも、目をキラキラさせながら、超かぶりつきでスクリーンに魅入っていたとか。
 「失礼な。いくら大ファンとはいえ、多少目の輝きが増した事は認めるが、いい大人が戦隊の劇場版でそんな、初めてストリップ劇場に行った童貞君みたいな態度を取る訳が無い!!」 と言い返しかけてやめました。
 ……だって、ちょっと自覚あったんだ、うん……。

 『マジレンジャー』絡みでもう一つ。
 くだんの劇場版を見た後くらいから、仕事の都合でリアルタイム視聴ができなくなってしまいました。
 録画はしてあったのですが、色々あってなかなか見る事ができずに数ヶ月。
 で、久しぶりにゆとりのある日曜日が訪れたある日、たまたま見た回が、ヒカルと麗が結婚した回。
 それ自体にもお茶を吹きましたが、次回予告のマジエル様の姿にビックリ仰天。
 当然、翌週もリアルタイム視聴。始まる10分前にTVの前に正座してわくわく。
 仕事には遅刻しかけたけど(註:飛び込みで間に合いました)、満足まんぞく。
 ↑この話、知り合いに話したら「どんな超能力だ?!」と言われましたが、偶然ですよ、偶然。

 そんな風に喜びまくっていた人間には、あまりにもあんまりな……。
 自分以外にも、同じように混乱した方は多かったようで、「他に悲しみを共有できる人を知らないから」と言った理由で、ネット上でささやかに交流があっただけの方から、悲しみのメールを頂いたりもしました。

 そんな中、曽我さんの経営していたお店、ステラが閉店する事を、国立市商工会サイトにある、お店のページで知りました。

 このお店、以前から存在は知っていたのですが、行った事はありませんでした。
 アンティーク・輸入雑貨のお店でしたので、表向きは「年配の方向けのデザインが多いし、値段的にも買える物が無い」という事にしていましたが、本当の所は……その……運が良いと曽我さんがお店にいらっしゃる事もあるという事でしたので……その……陛下にお会いしても気後れしないような堂々とした人間になってから行こう、などと……。

 今から考えると、「何を馬鹿な」と言った感じなのですが、当時は真剣にそう思っていました。
 そんな事どうでも良いから、お店に行くべきだったと、後悔しても、全ては後の祭りで……。

 とはいえ、他の従業員の方がいらっしゃるはずなので、お店は存続するだろう、だったらいずれ行ってみようなどと考えていた矢先に閉店のお知らせ。
 それに伴って閉店セールをやる、という一文を見た瞬間、気持ちは国立でした。
 ここで行かなかったら、後悔が増すばかりと判断したのです。

 お店に着いて、様々なアイテムを見て。
 やはり殆どが、自分には不相応な感じがしたのですが、それでも手の届く範囲のリングを一つ買いました。
 従業員の方にとっては、単に在庫処分のアイテムが一つ減ったというだけの事でしょうが、私にしてみれば、形見がわり……勝手な思い込みですが、そんな感じでした。

 家に帰った後、「五色」の石がついた「指輪」を何の迷いも無く選択した事に気付き、泣き笑い。

 それから少しずつ少しずつ、日常を過ごして来て、もう2年以上が経ちました。
 曽我さんの話題をネット上、書籍上などで見て、
 「次はいつ戦隊に出てくれるのかな〜」
 と無邪気に考え、その後落ち込む事も、もうありません。
 今でも少し、涙ぐんでしまう事はありますが、既に彼女がこの世界に居ない、という事実は脳に浸透して来たようです。
 そのせいか、リングを買った当時に書こうとしていたのに、気持ちがかき乱れて書けなかったこの文章も、ようやく書く事ができました。
 ついでに言うと、「リングにしては微妙なサイズだな〜」と思っていたアイテムが、足指用のトゥーリングらしい、という事にもちゃんと気付きました(←まぬけ)。
 さらに、映像の中なら女王様にはいくらでも再会できるじゃないか! と前向きな気持ちも持つようになっています。

 ですが、IEのお気に入りフォルダから、国立ショッピング情報ステラのアドレスは削除できずに残してあります。
 今このアドレスを開いても、本文には「只今、ご都合により、このページは公開されていません」との一文が残るのみ。
 さりとて、「曽我町子コレクション ステラ/曽我町子が世界中から集めたコレクション店」のヘッダー部分が消えない限り、このアドレスを消す気は無いのです。
 今後、PCを変えても、お気に入りフォルダは持ち越すつもりなので(簡単にバックアップできますから)、ずっとずっとこのままのような気がします。

 曽我町子さん、いえ、陛下。
 こんな馬鹿なファンが居る、と、天国で笑って下さいますか?

 ……などと、いまだに空に問いかけたりしている、本気で馬鹿な柏木でした。

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