レンタルビデオの思い出 ウルトラ編

本部長

更新日:2007年1月7日

 レンタルビデオ四方山話第2弾。
 今回は、「ウルトラシリーズ」のビデオソフトについてお話しましょう。
 なお、ここで取り上げるのはレンタルビデオ黎明期〜繁栄期にリリースされた『ウルトラマン』から『ウルトラマン80』までの、昭和ウルトラ作品に限らせていただきます。

 前回(リンク希望)お話した通り、レンタルビデオは80年代初めに登場し、全国で加速的に増殖していきました。
 それに伴い映像ソフトもどんどん製造されたわけですが、「ウルトラシリーズ」もその知名度の高さから、かなり早い時期からビデオソフトが製作されています。 
 とはいえ、ウルトラシリーズの製作元である円谷プロダクションにはソフト事業部はなく、そのため他のソフトメーカーからの発売とあいなったため、作品ごとに販売メーカーがまちまちだったりします。
 まず、80年代前期に『ウルトラマン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』の3作品が東宝ビデオからリリース。
そしてこれら3作とほぼ時期に『ウルトラセブン』が、何故か東映ビデオからリリースされました。
 これってやっぱり、『マン』終了後から『セブン』までの放送枠のブランクを、東映が『キャプテンウルトラ』で埋めてあげた事が縁になってたんでしょうか?
 そういえば、『ウルトラQ』も東映ビデオでしたっけ。
 少し遅れて80年代中期には『ウルトラマンT』が東芝ビデオから、80年代後期には『ウルトラマン80』がハミングバードより、それぞれリリース。
 ちなみにハミングバードとは、ビデオバブル時に乱立したソフトメーカーの一つで、既に倒産して現在は存在しません。 
 あ、そういえば東芝ビデオ(ソフト事業部)も、もうありませんね。

 この頃発売されたビデオは、80年後期発売の「80」を除けば、どれも収録話数が短いのが特徴です。
 『ウルトラマン』『帰ってきたウルトラマン』は、なんと1本につき1話収録。
 『ウルトラマンA』『ウルトラマンT』は各巻2話収録、「ウルトラセブン」も2巻目までは2話収録でしたが、その後は3話収録へとスタイルを変えました(3巻、最終話のみ4話収録)。
 しかし、実はこの時代に出たウルトラのビデオには、もう一つ大きな特徴があったんです。
 そう、ビデオリリースが放送順ではなく、ランダムだったというトンデモナイ特徴が。
 例えば『ウルトラセブン』ですと、第1巻に「姿なき挑戦者(第1話)」「湖の秘密(第3話)」の二本が収録されていますが、次の巻では「史上最大の作戦・前後編」を収録と、早くも最終話が登場。
 その後も放送話数とは関係ないセレクトで巻数をこなしていき、16巻目の発売をもってなんとか無事全49話コンプリートは叶ったわけですが(もちろん、12話は欠番のまま)、第2話が終わりの方の12巻に収録されていたりと、かなり混乱を招くリリース方法でした。
 『T』も同様で、1巻目には第1話(ウルトラの母登場)とウルトラの父が登場する51話のカップリング、2巻目はウルトラ6兄弟勢揃いのテンペラー星人編を収録と、ファミリー共演エピソードを優先してソフト化。
 『帰ってきたウルトラマン』に至っては、肝心の1巻目に収録されてるのが何故か「必殺!流星キック(第3話)」。
 特に、『帰って〜』はビデオパッケージの背ラベルのデザインが全巻共通だったため、レンタルショップで陳列されている時は紛らわしい事この上なかったり。
 人によっては背ラベルに1巻と記してあるのを見て、「ああ、初回の話が入ってるんだな」と思って借りたら思わぬ失敗をしてしまった、なんて事もあったでしょう。
 まあ、一応背ラベルにもサブタイトルは表記してましたけど、全作品のサブタイまでいちいち覚えてない人も結構いますからね…。
 最初ッから“放送話数順に4話ずつ収録して順次発売”というまともな方法でリリースされたのは、発売時期が遅かった『80』だけだったのです。

 もっとも、この“放送話数と関係ないリリース方法”は、当時はさほど珍しくはありませんでした。
 この頃は、発売したソフトがどのくらい売れるかの見通しが全くつけられず、特撮やアニメ、ドラマなどの話数の多い作品は全話リリースできるかどうかの目処も立たなかったため、人気の高そうなエピソードを優先してソフト化して、売上の様子を見守ろうという方法がとられていたわけです。
 実際、この時期に発売された『大鉄人17』のビデオは、1巻目に第1話と2話を収録したものの、売上が芳しくなかったのかその後のリリースは打ち止め。
 『17』って、最初の1クールは“正体不明のロボットの謎が、回を進める毎に解き明かされる”という展開だったので、1話と2話だけ観せられてもちっともすっきりしないんですよね。
 このように“さっさとリリース打ち止め”の可能性もあったため、話数順に商品化していく事が必ずしも良い、とは限らなかったんですね。
 かの『仮面ライダー』も、1巻目を旧1号編である1〜13話から、2巻目は旧2号編となる14〜39話からそれぞれセレクト収録し、3巻目に早くもダブルライダー編を持ってきています。
 そういや、アニメ作品には初回(FIRST)と最終回(FINAL)のみを収録した「F/Fシリーズ」なんてリリース方法が採られたものもあったとか。
 なお、東宝ビデオは数年後に3作とも“放送話数通りに3話収録”のスタイルで再販。
 このバージョンの『帰って〜』と『A』は、背ラベルの画像が分割写真になっており、全巻並べると“ウルトラマンの変身直後、画面に向って巨大化してくるシーン”が完成します。
 また、タイトル上部にある小さい写真が実は連続写真という小粋な演出もあり、『帰って〜』では全巻並べるとウルトラブレスレットを放つ一連の動きが完成、これはなかなかカッコよかったのですが、『A』の方は何故かメタリウム光線発射ではなく、“腕を胸でクロスさせたまま、体ごと右から左に振り向く”という、ちょっとピンと来ない動き。
 これって、本部長が知らないだけで『A』ファンには周知の動作だったんでしょうか?

 その後、平成の世に入ってウルトラシリーズの版権を獲得したバンダイビジュアルが、ウルトラシリーズの新装再販に踏みきりました。
 最初に1992年に、『ウルトラセブン』を4話収録のスタイルで全話ソフト化。
 そしてその後に『マン』を、そして『帰って〜』以降も順調にリリース、最終的に『80』までの作品を放送話数通りにソフト化。
 この時期、すでにレンタルショップのテープは劣化のため、モノによってはすでに撤去されていたり、また東宝ビデオのように再リリース版の形態が違うため、劣化撤去されたソフトを再入荷してフォローすることもままならならない状況。
 そういった、既にシリーズ全話を在庫している店は殆どなかった時期の再販は、まさに「満を持して」といった感がありました。
 特に『ウルトラセブン』では、後半の巻に映像特典として『ウルトラファイト』をセレクト収録。
 一見珍妙な取り合わせにも思えますが、元々「ウルトラファイト」の新録編は、“ファイター然としたデザインのセブンを、思いっきり戦わせてみたい”という製作側の思いを具現化しようとしたのが発端だったとか。
 まあ、かなり歪んだ具現化になってしまったような気もしますが、5分間の帯番組という性質上TVでの再放送も望めなかったわけですし、マニアの間でも結構珍重されていた作品だったということもあり、これ目当てで「セブン」のビデオをレンタルした人もいたようです。
 ともあれ、なまじ早期にソフトが発売されたばっかりに、リリーススタイルに統一性のなかったウルトラシリーズも、これでようやくまともな形に収まったわけです。
 めでたしめでたし。

 …が。
 1つだけ、ビデオ時代にはついぞリリーススタイルに恵まれないままだった作品があります。

  その作品の名は…そう『ウルトラマンレオ』!!
 なんせこいつと来たら、後番組の『80』よりも更に遅れて1990年にやっとこさコロムビアビデオによって初パッケージ化。
 しかも、放送話数順にリリースされたのはいいとしても、既にどのお店も商品の陳列スペースに頭を悩ませ始めている時代に、なんと“ビデオ1本につき1話収録”なんていうとても正気の沙汰とは思えないリリース方法を選択。
 セル、レンタル共にショップだってこんな無駄に嵩む様な商品、在庫したくなかっただろうな〜。
 このあいだ、このビデオを16話まで揃えてるレンタルショップを見つけたんですが、もうそれだけで60p近い幅スペースを占領してましたね。
 しかも、定価も1本3,000円(税込)というバカ高値に設定したおかげで、ただでさえレンタルユーザーに「同じレンタル料金で1話しか入ってないビデオ」として敬遠されてたのに、セルユーザーにまでそっぽを向かれる始末。
 やっぱりというか当然というか、その後『レオ』のビデオはディスカウントショップに大量に流れる有様に。
 さすがに失敗を悟ったのか、コロムビアも17巻目からは3話収録にスタイルを変更してリリースを続行、更にこれ以降は各巻に「ウルトラマンレオの獅子奮迅!」と題した5分ほどの映像特典を巻末に収録しました。
 これは、『レオ』に関する未公開映像や、スタッフ&キャストの新録インタビューを収録するという、実はかなりおいしい特典映像でした。
 LDでなくビデオソフトの、それも非限定商品でこの手の映像特典を収録したのって、実は『レオ』が最初だったんじゃないでしょうか?
 …が、既にそれまでの巻でスペースを取られすぎたショップでは、以後の仕入れを打ち切った所もあったそうです。
 その後暫くして1〜16話も3話収録のスタイルで再リリースされましたが、違う収録話数のソフトが混在する作品として、ますます市場に混乱を招く結果となってしまいました。
 更に救われないことに、これだけは権利の問題からか、とうとうバンダイビジュアルによる新装再販も叶わずじまい。
 劇中できっちりと「ウルトラ兄弟」に加えられているのに、未だに別の存在扱いされてる感のある『レオ』、ビデオでまでよそ者扱いされちゃったのかと思うと、レオファンの本部長としてはとても悲しいものがあります。

 更に時は流れ2000年に入ると、映像ソフトはビデオからDVDへ移行。
 単なるリマスターでではなく、ネガをブラッシュアップして画質、音質を可能な限り高めた「デジタル・ウルトラシリーズ」として4話収録のソフトを放送話数順にリリース。
 こちらは現在までに無事『ウルトラマンレオ』までリリースを終え、『80』を待つばかりとなっています。
 良かったね、『レオ』。
 とはいえ、『ザ☆ウルトラマン』のように、過去にビデオ未発売だった作品(LDのみ発売されました)が無事リリースされるか否か等、先行きが不明な部分もあるウルトラDVD。 
 また、レンタルショップではシリーズ全てを一気に在庫入替するのも厳しいらしく、いまだ「ウルトラシリーズ」はビデオに依存しているショップも結構あったりと、まだまだ完全に市場を席巻したとはいえないようです。 
 「ウルトラはLDやDVDで全部押さえちゃったから、レンタルビデオなんて利用したことないや」という方も、たまにはコーナーだけでも覗いてみてはいかがでしょう?
 今がちょうど時代の変わり時、もしかしたら面白い発見があるかもしれません。
 …いや、「面白い」といっても、コラムのネタになるくらいのものかもしれませんが。

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