ウルトラ怪獣消しゴム |
後藤夕貴 |
更新日:2007年1月1日
新年明けましておめでとうございます。
今年も、九拾八式工房と「気分屋な記聞」をどうぞよろしくお願い致します。
で、大晦日から連発で容赦なく濃いネタ行きますから、見逃すな付いてこれるならの覚悟でおつき合いくださいまし☆
怪獣消しゴムって知ってますか?
このサイトに来る人の半分くらいは、知っているか名前くらいは聞いた事があるのではないかと思います。
ちなみに、現物はこんなものです。
もっと具体的に言うと、79年度放送作品「ザ☆ウルトラマン」の頃から発売され、80年度作品「ウルトラマン80」辺りで更なる発展を迎えました。
塩ビと言っても、現在の彩色済み人形や、HGシリーズのようなものとは違います。
大きさは様々ですが、だいたい3〜4センチ平均の大きさで、基本的に無彩色。
赤や青、黄色や緑、黒やクリヤー、メタリックなど成型色そのままで様々なバリエーションがありました。 中には、スプレー塗装されたものもありました。
これは、本来無彩色の消しゴムに適当な色のスプレーをさっとふりかけただけのものなのですが、金属的な雰囲気を漂わせるスプレーカラーと成型色のマッチングが独特の味わいを見せて、大変おいしいアイテムになりました。
今でも、スプレー塗装物の美品は結構な人気です。
スプレー塗装は、ウルトラ怪獣だけでなく、他の消しゴム玩具でも多用されました。
形状タイプは様々ですが、だいたいはデフォルメされたデザインで、腕や脚、胴体や首が短くなっているのに、顔や背中が妙にリアルだったり、皮膚の表面のモールドが質感たっぷりだったりと、チープとリアルが絶妙なバランスで組み合わされている造形でした。
ひとことに「怪獣」とくくると、ゴジラをはじめとする東宝系怪獣や、ミラーマンや流星人間ゾーン、マグマ大使やキャプテンウルトラなど、あらゆる方面の番組製品が該当してしまいますが、今回はタイトル通り、ウルトラシリーズの怪獣を扱ったもの…つまり「ウルトラ怪獣消しゴム」に限定して、お話してみたいと思います。
ウルトラ怪獣消しゴム(以下、怪獣消しゴムと統一呼称)は、主にポピーや丸越、山勝などから発売されていました。
これらはライセンスを取得して発売されている正規品の話ですが、これ以外の複数のメーカーからも、版権の有無問わず無数に発売されていました。
恐らくですが、それらすべての怪獣消しゴムをすべて完璧に持っているというコレクターは、まずほとんどいないでしょう。
無版権物の中には、正規品のコピー(ライセンス表記部分が削り取られていたり、一部造形が変えられていたりする)なども多々あり、そのため全体像の把握が大変困難でした。
とりあえず正規品に限って話をすれば、ポピーからは全11期約420種前後発売、丸越からは100種以上発売されています(注:この数字は正確なものではなく、多少の誤差を含んでいる可能性があります)。
販売形式は様々でしたが、一番メインだったのは、やはり「ガチャガチャ」。
ええ、ガシャポンとは言わないでくださいね、あくまで「ガチャガチャ」(笑)。
これは今のものと同じような構造で、コイン投入・ハンドル回転で商品を入れたカプセルがランダムに出てくるというものですが、当時は20円(10円玉を二枚重ねて入れる)や50円などというものもあり、その分カプセルも商品も小さくチープでした。
100円ガチャガチャなんて高嶺の花で、これを躊躇なく回せる子は、皆の羨望と嫉妬の眼差しを集めて居たものです。
20円カプセルだと、中に消しゴムが一個だけ入っており、50円だと(商品にもよるけど)2〜3個、100円なら5個に加えてミニカタログが入っていました。
もっとも、筆者は50円ガチャガチャというものに一度もお目にかかった事がないので、この話は正確ではないのですが。
とにかく、漠然と「一個20円」という感覚がありまして、当時の子供達は、おこづかいを全部10円玉に替えてガチャガチャ筐体の前に陣取り、鬼回ししていたわけです。
今でも200円や300円ガシャポンで鬼回しされる人が多いですが、その回し方を見ると、当時ガチャガチャにどれだけハマっていたか、なんとなくわかる場合があります(連投に無駄な動きがなかったりして、結構よくわかる)。
その他、おもちゃ屋さんに売られていた「怪獣消しゴムセット」という商品形態もありました。
これは、紙のケースや透明ビニールの中に、怪獣消しゴムを詰め込んで閉じ、販売していたというもので、ガチャガチャと違ってある程度中身を選別して購入する事が可能でした。
しかし、代わりに値段が高く、セットで数百円(当時価格)は当たり前。
しかも商品によっては(たとえば「怪獣カセットシリーズ」や「The30シリーズ」)、中身の成型色がすべて同一で、面白みに欠けたりする上、やたらダブりやすいものが多数混在していたりしました。
とにかく、色々なバリエーションの販売形態があったわけです。
中には、超合金のウルトラマンシリーズ(近年のウルトラ合金シリーズとは違う)のオマケとして付属していたケースもあります。
当時筆者がものすごく欲しがった商品の中に、こんなものがありました。
それは今で言うブリスターパックのような形状で、ウルトラマン(多分初代)の顔前面部の形のブリスター内部に、怪獣消しゴムがぎっしり詰まっているというものです。
台紙に開けられた穴で吊り販売されている事が多く、おぼろな記憶では、その中身は固定ではなく、変動だったと思います。
しかも、様々な成型色の消しゴムが詰まっていて、眺めているだけで楽しかったものです。
このウルトラマンのブリスター部分は、開封後加工するとお面になるというサービスも嬉しかったです(結局使ってないけど)。
結構後期のものも含まれる構成だったような気がして、今でもとても欲しい逸品です。
怪獣消しゴムは、その時点で放送されていたウルトラシリーズとは関係なく、一作目の「ウルトラnマン」の怪獣を中心に、A辺りまでの怪獣の中からメジャーなものを抜き出して製作・販売開始されました。
4シリーズ目から、リアルタイム放送の「ザ☆ウルトラマン」怪獣も加わり、10シリーズ目から「ウルトラマン80」が加わります。
後にこれは「ウルトラQ」のマイナー怪獣にまで遡り(メジャーなものは既にいくつか商品化されていた)、とどめは「アンドロメロス」で落ち着きました。
この怪獣消しゴムのブームは、当時全国規模で巻き起こりました。
はっきり言って、現在のガシャポンブームなど、足元にすら及ばないレベルでした。
現在のガシャポンは、それぞれ商品種ごとに別なファン層が存在します。
ガシャポン利用者全体の比率に対して、特定のシリーズに人気が集中する事はあまりなく、あったとしてもそれは一過性で、年単位でコレクター熱が持続するものではありません。
ところが、怪獣消しゴムはそれをやってしまったのです。
商品種自体は、当時のガチャガチャ全体から比べたらごく一部にすぎなかったと思いますが、それを求めるファンは凄まじく多く、当時小学生だった人達は、熱狂して10円玉を炸裂させていました。
今、これに匹敵するブームのものが何かあるかと考えると、おそらくですが「遊戯王」が近いかもしれません。
年単位で熱狂的なファン層が付き、トップクラスの需要を維持し続けたからです。
しかし、「遊戯王」はゲームシステムやカードにその興味の大半が向いており、意外に、作品そのものに対する興味は向けられていません。
というか、怪獣消しゴムともっとも大きく違う点が、そこなのです。
怪獣消しゴムは、その怪獣が出たウルトラシリーズ、話数、そして活躍内容に対する探究心を煽り、巧い具合に、映像作品への興味を植えつける事に成功していました。
当時は、ウルトラマンからAまでのシリーズが頻繁に再放送されており、たまにタロウやレオなども観られました。
だから、子供達はガチャガチャで集めた怪獣の中からお気に入りを見つけて、それが本編内でどう動くか、どの怪獣と絡んだかなどを知り、さらに作品への探究心を深めました。
こんな理想的な販促、滅多にありません。
もちろん、怪獣消しゴムだけが興味を煽ったわけではなく、当時は他にも「怪獣スタンプ(薄い紙に印刷された数枚のブロマイド入り袋を購入し、スタンプブックを埋めていくコレクションブック)」などもあり、実際の映像の凄さやショッキングさ、不可思議さの煽り立てはそちらが担当していました。
また、スタンプの裏側には怪獣のスペックや活動内容、他怪獣や星人との関わりなど面白い情報も記載されていました。
こうやって、怪獣消しゴムを集めていた子供達は、自分が観ている・観ていないに関わらず怪獣の姿と名前、登場作品をどんどん記憶していきました。
筆者の小学校では、Qからレオまでのウルトラ怪獣・星人の名前をすべて記憶するのがデフォになっていて、皆で競って知識を仕入れました。
消しゴムになっていない者まで覚えていくのですから、本格的です。
さすがに、ザ☆マンや80の怪獣の浸透度はあまり高くなかったようですが、それでも、印象的なエピソードに出た者や、消しゴムになった者はだいたい暗記出来ました。
今から考えると、これは恐ろしいことです。
筆者は、例えば今からティガ以降の怪獣すべてを暗記しろと言われても、とても無理ですから。
この熱狂度は、現在でもその片鱗を見る事が出来ます。
たとえば、特撮など見ていないごく普通の人と話をしていても、世代が近く、当時怪獣消しゴムを集めていた経験者なら、いきなり「超獣」とか「ベロクロンが」とかの少しマイナーがかった名前を出しても、意味が通じます。
30年近いブランクがあっても、です。
もちろん、近年「ウルトラマンメビウス」に再登場したベロクロンなんか知らなくても、です。
バルタン星人などは、ウルトラシリーズを知らなくてもメディア露出が多いのでかなりの人が知っていますが、「ガッツ星人」とか「ブラックキング」、「バキシム」とか「アストロモンス」「マグマ星人」などの名前を出しても話が通じる場合があるというのは、やっぱり凄いです。
無論、同世代すべての人達がそうというわけではなく、中には完全に忘れている人もいますし、大雑把にしか記憶していない人もいます。
だけど、そんな人でも「レオに出てきた、片手が剣みたいになってる宇宙人」とかヒントを出すと、どういうエピソードに出てきたか思いだしたりする事もあったりします。
それだけ、当時刷り込まれた知識の浸透度が高いという事でしょう。
必ずしもそういうケースが成立するわけではありませんが、そんな事も多々ありうるわけです。
それだけの根深い影響を与えた、或いは与えるきっかけを作った商品というのは、筆者は他に知りません。
もっとも、近年の商品群の中にも「ポケモン」というでっかいものがありますからね。
必ずしも怪獣消しゴム最強などという気はありません。
…ポケモンは、初期の151匹すらまともに暗唱できない筆者…ちゃんとやってたのになあ。
さて。
怪獣消しゴムは、多くの「パチモノ」「無版権商品(つまりニセモノ)」を輩出しました。
これらも、当時の子供達に受け入れられ、立派な魅力を放つ商品として扱われていました。
怪しい星マークの付いたウルトラ兄弟や、ポピー製品の足の裏(版権刻印)を削り取ったもの、やたらと軽い素材で作られたもの(なんと水に浮く!)、やたらとバリが多く前面と背面がすごくズレているものなど、多種多様。
それでも、よほどこだわる人以外は、オリジナル商品と分け隔てなくコレクションしていました。
無版権物ではないのですが、他にも変わり物として、こんなものがあります。
100円カプセルや、おもちゃ屋さんでのまとめ売りで見かけた記憶はあまりありません。
ひょっとしたらあったかもしれませんが。
驚くべきことに、これ、なんと磁石になっているんです。
詳しい材質は解りませんが、多分ホワイトボード等に用いられるマグネットシートみたいな素材を使っているのではないかと考えられます。
そんなに強くない磁力ですが、鉄や同商品とくっつきます。
おかげで、飾るのが困難すぎて。
並べようとすると、くっついたり反発したりで倒れる落ちる…
この写真を撮影する時も、散々苦労させられました(笑)。
このマグネット怪獣、造形がオリジナルなのはいいんですけど、その造りは今見るとかなりアレ(笑)。
デッパラスとかキングクラブなどはすぐわかるんですが、カメレキングなのかヒドラなのか、どちらとも取れる形状のものまで有り(多分カメレキングの方だと思うけど)。
怪獣名がすぐわかる物にしても、ポピーや丸越版と比較すると、出来の大雑把さがよくわかります。
だけど、当時はこのパチっぽさがたまらず、ポピー版ガチャガチャのハズレとして出てきても、かなり嬉しかったものです(人にもよるでしょうが)。
しかし、中には銀や赤のスプレーを吹いたものがあり、これが独特の味わいを持っていました。
造形がチープな分、スプレー塗装で際立つ凹凸の雰囲気がポピー版や丸越版とはまったく違い、奇妙な独自性を感じさせたというところでしょうか。
これらも、怪獣消しゴムを語る上で絶対に外せないものになっています。
他にも、セアーズというメーカーからも、「磁力戦ウルトラエレキ」という名称の磁石怪獣消しゴムが売られていましたが、こちらは全体に塗装が施されていました。 ちょっと豪華な磁石消しゴムという印象で、こちらは袋売りがありました。
というか、むしろおもちゃ屋さん販売主体だったのかな?
これらの版権表記は、主に背中側に“浮き彫り”になっていました。
怪獣消しゴムは、アンドロメロスのシリーズ(11期)で終了しました。
かなりの数が発売されましたが、やはり立体化しなかった怪獣・星人も多く、さらなる商品展開も望まれていました。
また、復刻を求める声も多く、一時的に行われたおもちゃ屋さんでの同色・同シリーズ物を作品ごとにまとめたボックス売り「THE 30」などを別とすれば、怪獣消しゴムは90年代に入るまで沈黙します。
怪獣消しゴムは、その後94年度から「HGシリーズ」として、リアル志向に走ります。
一個200円、1シリーズ全6種前後という内訳で、これは現在もなお続いています。
もはやこれは、怪獣消しゴムとは呼べない存在になっており、あくまで怪獣消しゴムを求めていた人達の一部は、97年の「ウルトラマンティガ」から続く平成ウルトラシリーズに関連した新展開を期待しました。
もちろん、それは果たされることはなかったわけですが…
その後、怪獣消しゴムという名目で発売された無彩色塩ビ人形商品は多々出ましたが(現在もメビウス関連で、新規造形品シリーズが展開中)、これらはいずれもテイストが大きく異なり、むしろ「SDガンダム」的なノリのものに変わってしまいました。
怪獣消しゴムは、もはや当時品を何かの手段で入手するしかない。
そんな風潮になり始めていました。
ところが。
ある時、突然怪獣消しゴムが復活します。
それが、2001年から発売された「アンティッQ懐獣大集結」シリーズ。
ただの復刻ではなく、新規造形の怪獣・怪人も1ボックスに一個混入しているという嬉しい仕様。
シャドー星人やオイルドリンカー、ゴーガやパゴスなど、欲しかったのになかった嬉しい所が加わり、すごく楽しい内容でした。
しかも、復刻されたものもさりげにツボを付くセレクトで、現在は入手困難な後期シリーズ物を入れたり、これでもかというくらい80系怪獣を加えたり。
マイナー所も情け容赦なく組み込まれていました。
本当にすごい内容で、素材もメタリックで硬質感と高級感を漂わせる旨味の深い作りだったのですが、ちょっと残念だったのは、材質がかなり固めになっており、当時品のような独特の柔らかさは失われていました(これは、当時と同じ塩ビが現在使えなくなったという背景があるためらしいです)。
しかし、このシリーズ。
残念ながら、あまり売れませんでした。
500円で10個、しかもヘタな買い方をするとダブりが同時に複数増殖するという大きな問題があったのです。
また、成型色のバリエーションが少なかったため、色々なカラーの消しゴムを集めるという楽しみ方も出来ず、かといってスプレー塗装のようなバリエーションもなく、ほとんど同じ物がどんどん溜まっていくという難儀な状態に陥りやすかったのです。
さらに、目玉である新規造形が「コンプリート」という概念を構成してしまい、また箱単位で買うとコンプする事も判明していたため大人買いが横行。
そのため、同好の士で交換をするメリットもなくなり、またそういう場が設けられにくいという状況も災いしました。
「自分のペースで少しずつゆっくり、納得の行く買い方を楽しむ」という、怪獣消しゴムのコレクションの仕方が、真っ向から否定されてしまったのです。
つまり「ちまちまと買い集める楽しみ」を度外視され、「造形物を一通り集め切る楽しみ」を強要されたわけですね。
当然、トントン相撲などやりようもなく、以前感じられた楽しみが、ほとんど見出せません。
そういう部分もあり、また他にもいくつか難点があったため、このシリーズはあまりリアル世代の評価を得られず、後に叩き売りになってしまいます。
シリーズもいつのまにか立ち消えになり、とても残念な結末を迎えました。
いい企画ではあったんですけどねえ…
全5シリーズ、合計約200種近くが発売されたわけですが、本当に残念でした。
せめて、売り方を熟考してくれれば、もっと需要は広がったんじゃないかなと思うんですが。
抜きが綺麗になって、当時品より完成度が高くなった個体も多々あったりしたのに。
机の上に飾られたゴーガやゴルゴスを見るたびに、心の底からそう思ってしまいます。
末期には、一箱100円以下で叩き売りされてたりもしました。
だけど、シリーズ第三弾以降はほとんどみませんでしたね。
第二弾当時からかなり厳しい状況でしたから、出荷数を絞ったのかな。
怪獣消しゴムといえば外せないのが、先でもちらっと触れた「トントン相撲」です。
これは、昔からある「紙相撲」の理屈を応用したもので、空箱などを土俵に見立て、双方一体ずつ怪獣消しゴムを出し、互いに組み合った(たてかけた?)形に整えます。
そして、合図と共に土俵の端を、指先でトントントン…と叩いて行くのです。
そうすると、振動で人形が動き出し、取っ組み合いを始めます。
倒されたり、土俵や台から飛び出したりした側は、負けになります。
これが、トントン相撲の基本的なスタイルです。
ここに、様々なマイルールが組み込まれ、独自の発展を遂げていきました。
基本的なものとしては、「負けた力士は勝った側に取られてしまう」というもの。
これはダブり交換の発展みたいなもので、負けたから奪われるというシンプルなもの。
情け無用の鉄の掟でもありました。
当時、怪獣消しゴムを集めていた子供達は、誰もがだいたい数百個単位で所有していましたから、多少数がなくなっても痛くはなかったのです。
だからこれは、乱暴なルールであるにも関わらずあまり問題は生まず、むしろ発展していきました。
ここで、大切なコレクションを奪われてしまうようでは、まだまだ素人です。
勝つための怪獣をいかにセレクトするかが、勝負師の腕の見せ所です。
トントン相撲は、そのシステムから「自分の指の振動で自分の力士が負けてしまう」事もありえますから、なるべく倒れにくいものを選ぶ必要があります。
そのため、いわゆる「安定型」と呼ばれる個体がよく選出されます。
マンのレッドキングや、新マンのアーストロン、サドラー等はその一例。
しかし、そればかり使っていたのでは面白くないわけで、新しいシリーズが発売されるたびに、能力検証が行われました(笑)。
もっとも、場所によっては「勝った方が、負けた方のストックの中から好きな物を一体もらえる」というルールもあったようですから、力士の数を増やさなくても良かったかもしれません。
ここに、ウルトラマン等の消しゴムで挑む者は、無謀か或いは勇者として見られました。
怪獣ではなく、人間のスタイルに近いウルトラマンの消しゴムは、重心が高い上に足の接地面も狭く、むしろ「立ち続けている方が難しい」ので、トントン相撲には向きません。 しかし、これで勝ってしまった時の爽快感は、格別なものです。
倒れるにしても、相手より後に倒れればいいわけで、一応理屈としては参加するメリットがないわけではないのです。
同様に、ペガッサ星人やザラブ星人のような、二本足尻尾なし直立型の消しゴムも、向かないタイプと言われました。
また、初期シリーズには小型で厚みのないもの(ベル星人やシュガロン、ギガスやギエロン星獣等)もあり、これを使うのもかなりの勇気が必要でした。 腕に自信のある子は、わざと弱い奴を出して相手を調子付かせ、指叩きの技術で一気に決着を着けてしまうという奇策に走っていました。
ウルトラマンなどの背の高い消しゴムを使い、スタートと同時に凄い力で土俵を叩き、自分の消しゴムをわざと前方に倒して相手を巻き込む(自分の消しゴムは相手の上に乗るので、勝ちになる)とか、土俵を横方向から叩き、消しゴムが相手の側面側に回りこむようにして、組み合う姿勢を崩す(前方向に倒れやすいタイプのものは、これで自爆する)とか。
中には、自分の消しゴムを宙に浮かせ、相手に叩き付けるという戦法を用いる猛者も居て、かなり研究されていました。
しかし、こうなると当然「だったら四つんばいの怪獣を使ったら楽じゃん」という発想が出てきます。
さて、そこです。
これは、たいがいの場において「反則行為」となりました。 つまり、使ってはいけないのです。 四足怪獣は無条件で使用禁止として、あくまで二本足&尻尾のみで立つものだけを使うという、一見真っ当な定義を用いるわけですね。
ところが、ここにもいくつか抜け道があり。
ザ☆マンのコンピューゴン(一部表記コンピュードン)が、それです。 これは、「四足ではない」という条件を満たしていながら、異常に低い重心と組み合いにくい体型、さらに広すぎる接地面という「トントン相撲キラー」だったのです。
はっきり言って、限りなく無敵と言い切っていいでしょう。
これを負かす事は容易ではありません。
そもそも転ぶ事すらまずありえないので、対戦する側は、スーパーノヴァ・トリニティを放つくらいの覚悟が求められます。
結局、コンピューゴンも特例として除外されるケースが多々あったようです。
第二の抜け道。
またまたザ☆マンに登場した怪獣「ゲロン」です。 これは一見四足なのですが、よく見ると、さらに二つ腕のような部分があるのです。
つまり「六足」!
小学生的理論としては、確かにこれは「四足禁止」という条件に引っかかりません。
見ての通り、ゲロンは縦に長い身体と、それを側面からガッチリ支える脚があり、接地面は最強クラス。
これなら、負ける事はまずありません。
極稀に、横向きに倒れたりしてしまいますが、それでも充分振動の中で立ち?続けられます。
さらに、バダンやアイランダ等、ザ☆マン怪獣は「アニメ作品だからこそ出来た」非人間型怪獣の消しゴムも多く、「四足じゃないんだからいいじゃん」的ゴリ押しを利かせやすい、トントン相撲不適合種が沢山ありました。 バダンなんか、ひっくり返せたらすごいよもう。
ただし、四足怪獣をトントン相撲に参加させる事を良しとするルールもありました。
この場合、怪獣は後ろ足と尾だけで立たされます。
要するに、ウイリー状態(違)。
これなら、問題なく参加可能であるというわけです。
それでも、マンのケムラーなんかは結構強かったように記憶しています。 もっとも、丸越のハンザキランとかザイゴンなど、尻尾が鋭利で長く伸びている&足が垂直になっている上に左右がくっ付いているものなどは、物理的に参戦不能でした。
このトントン相撲、流行った所では凄まじい過熱ぶりだったようで、場所によっては学校内持込禁止令が発令されるほどだったとか。
実は、筆者の周りでは、トントン相撲はあまりブームになりませんでした。
だけど、いつも遊ぶのとは別なグループの所に行くと、さんざんやりまくりました。
確か、うちのエースはアーストロンとゴーストロンの兄弟コンビ、丸越のシーゴラスやタッコング(上体がデカくて大きいため、浴びせ倒しが効かせやすい)等だったと記憶しています。
しかし、サドラー(大)がウルトラマンレオのひょろひょろ人形に叩き出されたというありえない展開だけは、いまだに忘れられません(最後まで立ってるんだもんなあ…)
▲ 問題外の人達(自立不能)
懐かしい怪獣消しゴム。
愛らしさと緻密さが共存する独特の造形とコレクション性は、今でも通用すると思うんですけどねえ…
今の子供向けに再販してくれないかなあ、なるべくガシャポンで。
…なんていつも思っています。
まして、今年は40周年。
メビウスでも、懐かしい怪獣が出まくりなんだし、需要あると思うんだけどなあ。
すでに別形態で発売されてるってことは(さっきも触れたし)。
でもねえ、やっぱり、それでも復活を求めてしまうのですよ。
あの当時、怪獣消しゴムの洗礼を受けてしまった身としては、生涯忘れられないものになっているのですから。
ものすごく大雑把に、ウルトラ怪獣消しゴムについて振り返りましたが、いかがだったでしょうか?
反響が大きかったら、第二弾やろうかな。
いまだに怪獣消しゴムを持っているor集めているという方、交換会やトントン相撲大会オフでも開催しませんか?(笑)