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更新日:2006年3月5日 | ||
知人と話をしていて、結構「消費者」と「店員」って距離があるものなんだな、と感じることがある。 私は首都圏内のファーストフード店に勤めているのだが、「恥ずかしいから」「なんとなく気まずいから」等の理由で店員に声をかけ損ね、損をしている人(消費者)が多いような気がするのだ。 別に店員に話し掛けるのは、恥でも迷惑でも無いよ、と個人的には言いたい。 例えば前に、こんなことがあった。 とあるファーストフード店で、ハンバーガーを頼んだところ、具材が一つ足りないような気がした。 しかし、それを申告するだけの自信が無いため、そのまま完食。 退店の際にメニューの写真を確認したところ、やっぱり具材は足りていなかった。 あ〜失敗した!! という経験の一つである。 ちなみに当時は、まだファーストフード店で勤めるなんて夢にも見なかった頃だ。 見知らぬ人と話すのがどうにも苦手で、店員に何かを訊くのも臆病で出来なかった。 お店の雰囲気や、買った時の状況等もあるのだろうが、こういった申告をしないというのはそのまま損に繋がる。 当時のお金の状況や、そのバーガーを買ったときの心情も含めて、未だに悔やんでも悔やみきれない過去の記憶だ。 そういえば、知人に「お前のところのポテトは、味薄いよな」と言われたことがある。 味覚は生活環境や年齢によっても違うため、標準の味付けで出品しても、人によっては薄いと感じてしまう。 その逆も然り、味が濃いと思う人もいる。 実は味付けに分類されるソース・パウダーなどは、量を変えてもらうことが出来る。 「タルタルソースが苦手なので減らしてください」「ポテトの塩多めにしてください」等、快く引きうけてくれる場合が多い。 これらの味付け変更は、店と商品にもよるが大概可能だ。 パックされているドレッシングや、バーガーの肉などはさすがに無理だが、もしも物足りないと感じるものがあるなら、試しに店員に言ってみると良いと思う。 また、最近はアレルギー対策のために、特製オーダーの出来る店が増えたらしい。 ハンバーガーの中のソースや具材等、訊ねてみると、他にも店員が何か教えてくれるかもしれない。 はたまた前に、中学生がエスプレッソを頼んでいて、目を丸くしたことがあるのだが。 その子は会計を終えてしばらくしてから、店員に「これ量が少ないんですけど」と、不満そうに言っていたのを見たことがある。 先日、アニメ「あたしんち」でも「エスプレッソってこんなに量が少ないのに千円も取るの!?」というネタをやっていて苦笑してしまった。 エスプレッソを知らないで頼んだんかい!? 一般的に、エスプレッソとは豆の苦味を楽しむためにコーヒーよりも濃く煮出したもので、量もかなり少ない。 知ったかぶりしてエスプレッソを頼んで「これ量が少ないんですけど」と無知を晒すよりも、「エスプレッソって何ですか?」と聞いた方が良いと思う。 というか、さすがにこういうのは返品してもらえないと思うんだけど…あの後どうしたんだろ? やはり店員に訊ねていれば、損はしなかっただろうにな〜という、最たる例だと思う。 あと、私個人が気をつけていることに、デザート、ケーキ類の味の方向性というのがある。 リンゴのお菓子を想像して頂きたい。 パイでもタルトでも、ケーキでもいい。 あなたが思い浮かべたそのお菓子は、果たして甘いかすっぱいか、考えてみたことはあるだろうか? その時の気分によって求める味も違うだろうが、特にフルーツやチョコ系のお菓子などは、求める方向性によって味付けに相当の差が出てくる。 甘いものが食べたかったのに、思ったより甘くないお菓子でガッカリ、という経験はないだろうか? それを防ぐためにも、私は店員に訊くようにしている。 と言っても、このスキルを身に付けたのは、極々最近のことなんですけどね(汗)。 店員の目で見て一番「損をしているな」と思う人は、食品を落としたまま自力で掃除してしまう人だ。 明らかに手をつけていない食品が床に落ちた場合、掃除と共に代わりの商品を用意してくれる場合があるというのは、意外に知られていないらしい。 知人の一人が、かつて私の勤めている同列チェーン店で未着手の商品をトレーごとぶちまけ、慌てて掃除してそのままトンズラしたという。 その話を聞いて、「勿体無い!!」と私が叫んだのは記憶に新しい。 商品を落としたら、まず「きゃー」と叫ぼう。 別に叫ばなくても良い。 店員に一言「こぼした」と告げれば、床掃除や後始末などは絶対やってくれるはずだ。 ちなみに、これらのサービスを知って、意図的に落としたと思われる食品について。 店の傾向と店員にもよるとは思うが、あまりに作為的だと、退店願いを出されたりするかもしれない。 というのも、店によっては来客層や地理の都合上、警察のご厄介になることが多かったりするため。 そういう店の店員は全てとは言わないが、不正やクレームに対し、てかなり強気な対応を見せる場合が多い。 「営業妨害」と見られる行為にかなり敏感になるため、オフィス街やショッピング街等の比較的温和な客層の店よりも、強気な態度で接客しないと身がもたないらしい。 恐いオジチャンたち相手に萎縮するような店員では、その地域では続けていけないのだ。 同列チェーンの店でも、地域や立地によってその接客レベルや求められるスキルが相当違うために、店員の私も驚かされることがある。 歓楽街や飲み屋近辺のファーストフードは、喫茶店やその他の食品店と比べ敷居(値段)が低いらしく、若い客(学生・フリーター)や朝帰り客が集いやすい。 ただ店内を利用するだけなら良いが、やはり度を過ぎた長居やマナー違反者が居座ることが頻繁なため、店員からは(表に出さないまでも)苦い顔をされることが少なく無いようだ。 そのため一部店員は、追い出し画策の他にも「いちゃもん(クレームではなく)」対応や、その他スキルを別途に持っているらしい。 店員も、客を選り好みしたくなる時がある。 非常識な人よりも、マナーを守ってくれる人の方が、接客していて楽しい。 勿論、相当な経験を詰んだ「プロ」とも呼ぶべきレベルになると、お客を選ぶ・接客に差が出るというようなことはほとんど無くなる。 それでも、やはり店員も「人間」なのだ。帰り際に「ごちそうさまでした」と一言告げられるだけで、店員のやる気はアップする。 あるいは「このお客さんはいい人だ」と思うだけで、無意識の内に接客に精が出る。 以前、店で働いていてものすご〜く無愛想なおじさんが来店したことがある。 「このハンバーガーのセットで飲み物はコレ」 と、どことなく早口でまくしたてる様子に、内心かなり怯えていた。 無愛想な人自体はけして珍しくもないのだが、そのおじさんはどことなく「怒っている雰囲気」を醸し出していたのだ。 そのため、テイクアウトの準備をしている間もかなり気を遣って接客した記憶がある。 とにかく、怒らせないように、少しでも頑張ろうと思ったからかもしれない。 そのおじさんは、最後商品を受け取る時に「にやっ」と笑い「ありがとね」と言った。 表には出さなかったが「笑ってくれて良かった」「怒ってないようで良かった」とかなりほっとしたものだ。 いつもより「ご来店ありがとうございました」の声が大きかったのは、気のせいではあるまい。 (って、あれ? これ表に出てるんじゃないか?) この人は、私の中で「ツンデレおじさん」として強烈な印象が残っている。 接客業の醍醐味とは、この些細な「笑顔」や「ありがとうの言葉」なのだ。 店員が機械じゃなくて人間なんだ、ということを覚えておくと、役に立つこともあるかもしれない。 「店員と客」ではなく、「お兄さん(あるいはお姉さん)と客」という風に考えれば、多少は店員にも話し掛けやすくなるのではないだろうか? 閉店作業のために掃除していて、飲み物をこぼして掃除した跡などを見ると、何とも切ない気持ちになる。 服を汚しはしなかったろうか、あるいはこの掃除のためにどれだけの時間をこの人は費やしたのだろうか、等…なんとなーく残念な気持ちになってしまうのだ。 逆に、こぼしたまま何も言わない、トレーや灰皿をゴミ箱に入れたまま申告しない、というのは…店員の立場からすると「ひとこと言ってくれるだけで良いのになぁ」と感じてしまう。 確かに忙しい時は厄介だと感じるが、掃除や備品の管理は「仕事として当然」のことだ。 たった一言申告してくれるだけで、心構えや準備が出来てぐっと楽になる。 私たちは商品を購入し、来店して下さった方を満足させるために、日々教育を受けているのだから。 ファーストフードに限らず、損をしない一番の方法はまず店員に、話し掛けることだと思う。 新人ならともかく、ある一定以上の経験を詰んだ店員なら、それがアルバイターだろうが社員だろうが、接客を楽しんで職を続けているのだから悪いようにはされないはずだ。 聞くは一時の何とやら。 まあ、試しにそこの店員に声をかけてみてください。 → NEXT COLUM |
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