フェティシズム意外談
後藤夕貴
更新日:2004年9月23日
 …とタイトルをつけてはいるけれど、決してエロ系の話ではないです。


 私、車型のアイテムに目がありません。
 古くはトミカから目覚め、現在でも実車・モデル問わずこよなく自動車を愛しており、昔ほどの知識やこだわりがなくなった現在でも、運転する事やゴムタイヤ・サスペンション稼動などにたまらないフェティシズムを感じてしまいます。

 「超力戦隊オーレンジャー」は、タイヤそのものとしか言いようのないジャイアントローラーの存在だけで、シリーズ最高傑作などとのたまっていた時代もあったものです(遠い目)。


 そんな、どこか間違えたフェチの私は、今から十年前くらいにちょっとしたとんでもない事をしてしまいました。

 当時、スーパー戦隊のDX合体ロボット系を収集していた私は、バトルフィーバーJとサンバルカンを除き、ダイレンジャーまですべてのロボットを集めていました。
 あ、空母系などの大型ロボは例外でしたが。
 とにかく、その当時はなんとかフルコンプ目指していたのです。
 今となってはもはや不可能ですが、当時にしても、よくまあここまで集まったなと我ながら感心しちゃったりもしてました(すべて新品でしたし)。

 …が、そんな戦隊真っ盛りだった私のハートを、横からガッシリわしづかみしてしまったアイテムと巡り会ってしまいました!
 嗚呼、あの時下北沢のアンミラなんかに行かなければ、ついでにアンティークショップに立ち寄らなければ…って、そりゃどーでもいいことですが。

 
 タカトクトイス Z合金「コンビネーション・ゴー超スーパーカー ガッタイガー」

 あ、そこの人。
 「ああ知ってる。グレンダイザーのパイロット版みたいな奴でしょ?」とか思ったでしょ。

 えーと、違います。
 テレビ東京系列で、77年10月〜78年3月まで全25話放送された、永和制作のカーレース物アニメ
 現在でも映像ソフト化はおろか主題歌のCD音源化もされていない幻のTV作品の玩具です。
 センターマシンを中心に、レフト・ライト・エンド・アップマシンの5台がレースの最中にドッキング!
 巨大なカンナ刃みたいな形状のスーパーカーとなり、前方を走る敵チームのマシンを後ろから“片輪走行で”激突!
 そのまま真っ二つにして破壊してしまうという、なんともバイオレンスな内容でありました。

 今あらためて冷静に考えると、破天荒通り越した凄まじい設定なんですが、当時の私は、合体接触部分の後輪を走行しながら折り畳むレフトマシンに萌え萌えし、合体直前に後部にスライド収納されるエンドマシンのコクピットを見て萌え萌えしていたものです。

 ま、何はともあれ、それのデラックス合体セットを見かけてしまったんです!
 もちろん、そんなものと今の時代に巡り会えるなんて思ってもみませんでした。
 現在でも、すさまじいプレミア価格がついている本商品…当時もかなり高かったのですが、それでも価格は15000円くらいでした。

 「買える、これなら買える!」
 そう思った私は、何を思ったか、その資金を作るためにスーパー戦隊のロボットをすべて手放してしまったのです!
 まあ、それだけ金欠なのにも関わらず、欲求はデカかったんですよ。

 一応解説させていただくと、今から10年くらい前というと、確かにプレミアはついていたもののスーパー戦隊ロボット玩具の需要は今ほど大きくはなく、評価も低かったのです。
 店によっては高額で出ていても、高値で買い取ってもらえる事はありえませんでした。
 今では信じられませんが、完品のグレートVやライブロボ、フラッシュキングなどが、せいぜい1500円未満で買い叩かれていたんですよ。
 無論、その後に登場する某“売値の半額買い”の店は、まだそこまで手を広げていませんでした。
 結局、私はその店にありったけのロボを売り、さらに5000円くらい足して、ようやく「ガッタイガー」セットを購入したのです。

 …はあ。


 さて、そんな激もったいない事をした私ですが、しばらくは萌え萌え萌え萌えておりました。
 しばらく飾りっぱなしにしていた記憶もあります。
 このガッタイガーセット、無論中古だったわけですが、その巨大な箱のいたるところには動物のクッションシール(中にスポンジが入っている、柔らかいビニール地の粘着シール)がいくつも貼られており、それだけがかなり気になりました。
 長い間くっついていたせいか綺麗に取れる事はなく、逆に箱の表面が切れてしまうので、一枚剥がした時点で止めました。
 最終的にはあまり気にしなくなったんですけどね。


 さて、それからまた2年ほど経った時…
 諸事情により家具が膨大に増えてしまった私は、一番場所を取っていたコレクションのいくつかを泣く泣く処分しなければならなくなり、あれだけ萌えまくっていたガッタイガーを手放す事を決めました。
 まあ、この辺りに色々な事情と葛藤があったのですが、長くなるので割愛。
 とにかく、諦めるものは諦め、高円寺の某ショップに売りに行きました。

 …もちろん、めっちゃくちゃ買い叩かれましたとさ、ええ
 せいぜい2000円前後くらいだったんじゃないですかね?
 この当時、高円寺といえばココ…と言われたあの店ですが。

 とにかく、あれだけの犠牲を払って購入したガッタイガーがなくなったのは痛手でして…それからしばらくして、無理矢理忘れるようにしていました。


 さて、ここから私にとって不思議な巡り合わせが連発する事になりました。

 なんと、その時手放したガッタイガーセットとまったく同じものと、その後何度も出会う事になるのです。
 しかも一度や二度ではなく、覚えているだけでも5回ほど

 もちろん、珍しいものだからって何でもかんでも「これは元・自分のだ!」と言い張るわけではありません。
 例の“剥がしたクッションシール”の跡と、剥がさなかったシールが同一個所に固まっている箱の物ばかりが、私の前に姿を現すという事です。

 最初は、数年前まで私が勤めていた某有名マニア専門中古書店。
 ここの玩具担当コーナーに買い取りでやってきたシロモノは、紛れもなく同じ物でした。
 内容も確認し、コンディション、欠損パーツ数、ダメージを受けている個所まで一致しました。
 ここまでは面白い偶然もあるものだな、と思ったのですが…

 2回目は、その商品が売れてさらに年単位の間が開いた後。
 またまた買い取りでやって来たのです。
 これも、充分ありえることでしょう。

 なお先に断っておきますと、最初に再会した時点で、すでに私には手の出ない価格に跳ね上がっておりました。
 しかも、この2回目のものは目録にも掲載されたような記憶が。

 そしてこれもまた売れてしまい、私も店を辞めてしばらく経った頃…都外の新規開店マニアショップの目玉商品として、またまた同一の品物が飾られていました。
 この時は、さすがに驚きました。
 なにせ、東京からえらく遠く離れた地でしたからね。
 もちろん、中も確認させていただきましたが、またまたコンディションは同一…価格は言うのもヤボというくらいにナニアレになっていました。

 さらにさらに年をまたぎ、今度はとある某巨大トイ系イベントにて再会。
 こちらで出店していたディーラーさんのブースに、誇らしげに飾られている「シール剥がし跡付き」ガッタイガー
 ここまで来ると、もう笑えません。

 次は果たしてどこで出会うのか、と思っていたら、その次の年のトイ系イベント(先の物より規模は小さく頻度も高い)で、またまた再会!
 こうなってくると、奇妙な偶然というよりは…

「この商品を当時買った人は、なぜか無性にクッションシールを箱の表面、しかも特定の場所に特定の種類を、特定数だけ貼り付けたがるようになっていたに違いない。
 しかも、それを後に買った人は、その特定部分を剥がしたくなるようになっていたに違いない。
 この箱の印刷やデザインパターンを見ていると、人は皆無意識にそういう行動に出てしまうようになるんだ。
 そうだ、きっとそうにちがいない!


 …と、無茶な可能性をでっち上げて無理矢理納得するしかありません。
 欠品のある備品も、なくなりがちなミサイルパーツですからね。

 スーパーカーにミサイル…ここで不思議がってはいけません。
 そういう時代だったんですから。


 とにかく、その後自分が様々な場所で見掛けた品物はすべて同一の物品か、或いはそれと著しくかつ奇跡的に酷似したコンディションの物ばかりだったのです。
 なんかもう「とっとと買い直さんかいおんどれ!」と脅迫されているかのよう。


 何はともあれ、こんな事もあるんですね。
 嗚呼、車フェチやっていて本当に良かったと思います☆
 

追伸:
 2013年に入ってから、ようやく買い直しが叶いました。
 詳しくは、上にあるテキストリンクをご参照ください。


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