『れーっつ! モテモテ王国ッ!!』
 〜オタクな貴方のためのデート講座 PART-2〜
柏木悠里
更新日:2004年6月3日
 ある雨の木曜日。
 河口隼人さんが自宅で『神魂合体ゴーダンナーSECOND SEASON』を見ながら、のんびり過ごしていると、インターフォンが鳴った。

 ピンポーン♪

河口: 「はい、真夜中の探偵なら間に合ってる。ちなみに押しかけデリヘルもいらねェよ」
男性: 「……何スか、それは?」
河口: 「あれ? 谷川か? 何の用だ、こんな夜中に」
谷川: 「先輩、またしても相談があるっす」
河口: 「雨の中、太ったヤツを立たせとくのも絵にならないから、とりあえず入れ」
谷川: 「先輩、開口一番、それッスか……」

 がちゃ ←扉の開く音。

谷川: 「お邪魔しまーす」
河口: 「うわー、びしょ濡れ。
 ホレ、バスタオル。あ〜、シャワーの方がいいか?」
谷川: 「そ、そんな先輩っ!
 そんな事言うと、腐女子の方々が萌えちゃいますよ?」
河口: 「おまえの体重が100キロ越えてなければそーいう豪快な女性も居るかもしれんがな。
 今のおまえとオレじゃ、絶対無い!!
 安心してとっととシャワー行け!」
谷川: 「うわっ! 素で蹴らないで下さいよ!」

 20分後、谷川君がシャワールームから出てきました。

谷川: 「先輩〜、コーラ無いッスかぁ〜?」
河口: 「コントレックスと48時間ダイエットジュースと青汁なら冷蔵庫に入ってるから勝手に飲め」
谷川: 「何スか、その壮絶なラインナップは……」
河口: 「つーかオマエ、いい加減コーラ卒業しろ。そんなんじゃ、いつまでたっても体重減らねーぞ」
谷川: 俺とコーラは切っても切れない仲なんです!
 第一、俺からコーラを取ったら何が残るってゆーんスか!」
河口: 「脂肪」
谷川: 「うううううう、ひどい」
河口: 「ええい、自分でネタを振っておいて、勝手に落ち込みおって!
 さっさと用件を言えい!!」
谷川: 「い、いや実は、明日例の彼女と会うんスけど、金が無いッス!」
河口: 「おまえ、この間、イベントでエロ同人誌完売させてたろ?
 2時にはもうキレイサッパリ3000部はハケてたじゃねーか」
谷川: 「税金できれいさっぱり無くなったっす」
河口: 「あ〜、もうそんな時期かぁ〜」

 ほぼ同人誌で食べている谷川君は、個人事業税を払わないといけないのです。
 払っているだけエライかもしれませんが。

 もちろん、河口さんの入れ知恵です。

 税金を払っているだけで、親が文句を言いにくくなり、ただの同人屋からマンガ家と言い張る事も可能になります(ある意味事実)。

河口: 「で? 金貸して欲しいの?
 でもオレも給料日前でちょっとキツイな〜」
谷川: 「うっ。そ、そこを何とか、乗り切る知恵を貸して下さいませ、美貌のセンパイ!!」
河口: 「……オレはサービス叔父様(by.『南国少年パプワくん』)じゃないぞ」

 しかし河口さんはいい気になったので、おじちゃんの知恵を貸してあげる事にしました。

河口: 「誰がオジちゃんだっ!」
谷川: 「誰につっこんでるんスか?」
河口: 「そうだな。
 まず、前回言った『給料日前でちょっときついんだ』作戦を展開するんだ。
 今日は……22日か。じゃあ、おまえの給料日は25日だ。メモしとけ」
谷川: 「ええ? 何故メモ?」
 バチッ!
谷川: 「い、痛い!
 コンセントではたくなんて、デブ虐待ですよ!!」
河口: 「馬鹿者!
 おまえみたいな、たまにバイトしてるだけの奴は給料日が一定じゃねーだろ?
 しかも本来は同人誌で食ってて、固定の給料日なんざねーんだから、嘘設定を忘れたらヤバイだろーがっ!!」
谷川: 「は、はい。
 自分の給料日は25日、今ケータイにメモりました!」
河口: 「それで良し。
 ……とはいえ、こんなおつき合い最初期も最初期に割り勘デートは辛いな〜。
 おい、ファーストフードくらいなら、金出せるか?」
谷川: 「そりゃ、まあ」
河口: 「だったら、ランチデートにしろ。
 夕方から仕事とか何とか言って、昼の間だけ会う分には、ファーストフードでも問題あるまい」
谷川: 「わ、分かりました。
 明日会ったらすぐ仕事で時間が無いと伝えます!」

 バチバチバチッ!!

谷川: 「いて、いて、いててっ!
 コンセントの先ではたくのやめて下さいってば!」
河口: 「おまえのアホはまだ治らんのかっ!
 予定が分かった時点、すなわち今! メールで送っておけ」
谷川: 「で、でもこんな夜中ですよ?」
河口: 「当日言われるより、誠実さが伝わるんだよ、早く言った方が」
 嘘に誠実が含まれているのかどうか、疑問だ……と谷川君は思いましたが、素直にメールを打つ事にしました。
谷川: 「えーと。
『明日、仕事でミスしちゃって、夕方から会社に行かないといけなくなりました。ゴメン』
 ガッ!! 

 河口さんは携帯をひったくりました。
河口: 「違うっ! そこはこうだっ!!

『会社で後輩がミスしちゃって、明日は仕事に行かないといけなくなりました。
 ホントは朝から出なきゃいけないんだけど、君に会いたいから、夕方からにしてもらいました。ゴメンね』
だ!

 ミスしたのは自分じゃない。
 いいか、ここでおまえがミスしたとなると、大切な初期デートの前に何やってんだ、ってなるだろ。別の奴のせいにしろ!」
谷川: 「せ、先輩! ケータイメール打つの早っ!! すげっ!!」
河口: 「フ、オレの102芸のうちの1つだ」
 河口さんは得意そうだが、そんな事は別段芸では無い。
谷川: 「ところでつい勢いに飲まれて聞けなかったんすけど、何で夕方で帰るんスか?」


 バチバチバチバチっ!!!!

谷川: あんぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
 で、電気漏電してるっスゥ〜〜〜!!!!」
河口: 「分かってるのかと思えばっ!
 おまえはファーストフード如きで夜までデートを引っ張るつもりくわぁーーーーー!!!!
谷川: 「はっ! な、何か、そう言われると、分かる気がします!
 目が覚めました、お師匠はん!!」
河口: 「良し。で、肝心の店選びだが」
谷川: 「やっぱりモ○バーガーみたいな、ちょっと高くて健康イメージの方がいいンすか?」
河口: 「フ、惜しいな。その作戦は初回ではダメだ」
谷川: 「え、えと。
 じゃ、1000円くらいするハワイタイプバーガーとかのコジャレ系の店とかッスか?
 店、全然分からないっす」
河口: 「それでも無い。もちろん、ファースト○ッチンやロッテ○アも違う」
谷川: 「……と言いますと?」
河口: 「ここはマ○ドナルドだ」
谷川: 「えええっ? そ、そんな庶民テイストでいいんスか?」
河口: 「ああ。マク○ナルドはそうイメージが悪くない。そして何より重要ポイントだが……」

 ごく。
 ↑谷川くんは息を呑んで次の言葉を待ちました。

河口: 「あそこのハンバーガーは……ペラい!
谷川: 「……は?」
河口: 「フ、つまり、ソースや具を見苦しくこぼさなくて済むという事だ!」
谷川: 「な、なるほど!!」
河口: 「お互い慣れてくれば気にならない事も、初回ではチェックされてしまう危険性があるからな」
谷川: 「アレ? でも最初のウチって、そーゆーの甘く見てもらえるものなんじゃ……?」
河口: 「そりゃ、相手がベッタベタにこっちに惚れ込んでくれてりゃな」
谷川: 「う、それはさすがに自信ない……」
河口: 「だったら隙を見せるな。
 女性は些細な事を減点対象にする生き物なのだ」
谷川: 「ハ、ハイ」
河口: 「うむ。素直なオマエの為に、もう1つ伝授してやろう。
 注文するメニューだが」
谷川: 「俺はビック○ックとポテトとコーラLが定番っス」
 じろり(平均点80点のテストで10点しか取れなかった息子を見つめる母親の目)。
谷川: 「せせせせせせ先輩っ!
 その『何じゃ、この不出来な男は』って目はやめて下さい〜(泣)」
河口: 「デブ的な男? ああ、まさにその通りっ!
 それじゃせっかくマクド○ルド選んだ意味ねーだろ!
 確かにビック○ックには“ひっくり返して食べればこぼれにくい”という裏技があるが、ここはより安全策を取れ!
 フツーのバーガーを2個頼むんだ!」
谷川: 「そ、そうか!」
河口: 「そしてコーラ禁止。ポテトもサラダへチェンジな」
谷川: えぇえぇえええええぇええええ!
 ギロリ(部屋でエロパロロリ同人誌を読んでいる兄を見つめる妹の目)。
谷川: 「ひぃいいいい! そ、そんな目で俺を見ないで(滝涙)」
河口: 「いいか、デブは、いかにもデブ然としたモンを食べていてはイカン」
谷川: 「でもぉー、俺はコーラが無いと生きていけないっす」
河口: 「ポーズでいいんだよ、ポーズで!!
 彼女と一緒の時くらい我慢せんか!!」
谷川: 「は、はいいいぃ」
河口: 「ああ、あと、これだけは絶対に守れ。
 あらゆる例外なく、口を開けたまま食べ物を噛むな。
 大概の人間はこれだけで1億年の恋も冷めるからな」
谷川: 「それは大丈夫っす。自信あります」
河口: 「ほお? そーなのか?」
谷川: 「だって、昔っから先輩が散々そう言って、躾てくれたの忘れたんスか?」
河口: 「あ、そーか。
 デブがくちゃくちゃ噛んでるとみっともなさロトくじ倍率だから、ちょっとでもやろうとしてたら鉄拳制裁してたっけ」
谷川: 「そっす。だから完璧っス」
河口: 「良し良し。鉄拳制裁の甲斐があったな!」
 バリバリに文系(ヲタク)のくせに、体育会系な事を言い合う二人だった。
河口: 「最後にもう1度、作戦を言ってみろ」
谷川: 「はい。
 金が無い初期のデートはマクドナ○ドで。
 注文はキレイに食べられるペラいバーガーとサラダ系。
 食べる時に口を開けるのは厳禁。
 ファーストフードで済ます時は、夕方までに帰る」
河口: 「うむ。完璧だ」
谷川: 「そーだ、先輩。
 ついでに夕方、上手く帰る方法を教えて下さいよ。
 いくら仕事って言っても、やっぱ彼女を置いて帰るの辛いッスよ〜」
河口: 「そーだな。何かキッカケが欲しい所だな。
 よし、オレが時間になったら電話してやるよ」
谷川: 「助かるっス〜」

 谷川君は今回も明るい顔で帰っていきました。


 翌日。
 ここはマクドナルド。

割とカワイイ女の子: 「谷川君って、本当に面白いね」
谷川:「あはは〜(先輩〜、電話まだっすかァ〜)」

 タッタ、タッタ〜、タッタタ〜ン(『鳥人戦隊ジェットマン』OP)♪

 ↑着うた(著作権の問題で、歌詞を書いていません。各自思い出して下さい)

谷川: (しまったぁあああああああああ〜!!!!)
 た、谷川っす!
 あ、先輩、仕事、そ、そーすね仕事っ」
 谷川君は慌てて電話を切りました。

 何と河口さんから電話がかかってきた時の着うたを『鳥人戦隊ジェットマン』にしていたのをすっかり忘れていたのです。

 こんなヲタク丸出しなマネをしてしまうとは大ピンチです。
谷川: 「あ、あは、あははははは。し、仕事場から電話がかかって来ちゃって……」

 しかし演技は忘れない谷川君、ちょっとエライです。
女の子: 「今のジェットマン?」
谷川: 「へ?」
女の子: 「懐かし〜。
 私、イエローオウル好きだったんだぁ(はぁと)」

 世の中には、ごくたまに奇跡が存在します。
 ほら、こんな風に。



※今度も絶対に本気にしないで下さい。でも今度はギャグ70%。
 特に「口を開けて物を食べない」は激マジ。



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