寝ぐせ Mr.Boo
更新日:2004年4月1日
 髪の毛は時に好き勝手な方向へ曲がる。
 くせっ毛とか天然パーマのことではなく、単なる寝ぐせのことである。

 「寝ぐせ」とは書いて字のごとく、何かしらの原因により寝ている間に髪の毛が固定されたまま元に戻らなくなってしまう現象のこと。
 人間は寝ている時だって例外なく活動を行っている。
 しかし、寝ている時にはそうそう思い通りに体を動かせるものではない(中にはいるかもしれないが)から、当然髪の状態など気にかけられるはずも無い。
 幾度かの寝返りを繰り返し、次第に寝ぐせは完成される。
 特に髪の毛が長い人は、乱れる髪を調整するのに苦労していることだろう。
 実は、短い人だって苦労しているのだ。


 ぶっちゃけた話、BOOの頭髪は短い。
 なじみの床屋でスポーツ刈りを短めにしてもらっているので、切った直後は五分刈りっぽく見えるほど短い。
 その時点では、寝ぐせは特に問題無い。
 短すぎる髪の毛は、さすがに圧力や水分程度では固めきれないものらしい。
 問題は髪の毛が頭になじんでくる2、3週間後辺りから。
 この頃になると、短く切って手応えのあった毛の硬さも無くなり、髪の毛にそれなりの長さと柔らかさをを実感できるようになってくる。
 柔らかくなったということは、自由に動くということだから…しっかり寝ぐせを発生させる条件を満たしているということに他ならない。
 結果、スポーツ刈り程度でも寝ぐせはしっかりとできてしまうのである。

 寝返りを多く打つ場合は、毛の長い人に比べて短い方が回復力があるためさほど気にならないが、寝返りをあまり打たなかった場合がひどい。
 固まった短い毛は頭にくっきりとその痕跡を残すため、毛の長い人より余計に目立ってしまうのだ。
 しかも毛が短い分、長い人のように毛の重みを利用して整えることもできなければ、髪型の雰囲気を変えてごまかすといった芸当も使えない。
 こうなると短い方が始末が悪く、頭を洗い直してでも元に戻さない限り情けないことこの上ない。

 BOOは一度だけ、頭の両側を抑え込んできれいなモヒカン状態にしてしまったことがある。
 幸いにもその日は休みのため出かけることも無く困らなかったが、長時間寝たときや、体を固定されて寝返りが打てなかった時などは、たとえ髪の毛が短くても起き掛けの頭には気を遣った方がいいだろう。


 さて、そんな苦労をする寝ぐせも、漫画やアニメの世界ではあまり重要視されていないようだ。
 例えば、起きたばかりで意識がはっきりしないボーっとした表情や、あっけに取られた時などの感情を表すための比喩的表現として使われることがほとんどと言っていい。
 だから、キャラの意識がはっきりした瞬間に髪の毛は元に戻ってしまい、何事も無かったかのように話は続いていく。
 劇中のキャラにとって、髪の毛は「変化しなくて当たり前」の部位だけに重要でないのも当然といえるかもしれない。

 しかし、その取るに足らない話題に真っ向から挑戦した作品があった!
 それは日曜日の定番長寿アニメ「サザエさん」。
 その中で10年以上は前に放映された話なので記憶が少し曖昧だが、対象となっていたのはワカメである。

 ある朝、ワカメが朝起きたら頭の後ろに寝ぐせができていた。
 サザエがお湯で絞ったタオルをワカメの頭にあてるが、寝ぐせは一向に直らない。
 そのうち学校に行く時間になってしまったので、やむなくワカメは帽子をかぶって登校する。
 しかし、やはり寝ぐせが恥ずかしいので教室でも帽子を取ることができず、とうとう先生におこられてしまう。
 渋々脱いだ帽子の下には、いまだしっかりと寝ぐせが残っていた…

 という話。
 最終的に寝ぐせがどうなったのかは覚えていないのがちょっと悔しい。
 それにしても、三本立てのうちの一本とはいえ、寝ぐせだけで丸々一本取り組んだ話をBOOはこれ以外見たことがない。
 例えあったとしても、作品のインパクトが弱くて覚えいないだけなのだろうが。
 とにかく、あのヘルメットのように硬そうなワカメの頭に発生したしつこい寝ぐせが印象的で、当時から毛の短いBOOは共感すら覚えていたような気がする。
 日常を描く作品ではあっても、作品内では取り上げないであろう事柄に敢えて挑戦したその姿勢。
 「サザエさん」恐るべし。

 寝ぐせ、それは身近なもの。
 髪の毛が長かろうが短かろうが関係無く、つるつるにしてしまわない限り一生ついて回る頭への課題だけに、常に気を配っておかねば。
 
 しかし、飛び起きて朝の日差しを浴びながら仕事に向かうBOOの影には、頭の形状に不似合いなヘコミがしっかり映っているのだった…

 …余裕作れよ。


 → NEXT COLUM
→「気分屋な記聞」トップページへ