|
|||||||||||||
更新日:2004年3月18日 | |||||||||||||
最近、とある漫画のワンシーンで、隠れ家を引き払う爆弾魔が証拠を隠滅する際、CDやフロッピーを暖炉にくべながら「データを取られない最良の方法」ということを言っていた。 確かに変形させてしまえば、読み取ろうとしても機械にかけることが不可能だから確実な方法だろう。 しかし、そこまでしなければだめなのか? 例えばCDは、盤面に傷がついただけで記録面を読み取ることが不可能となる。 盤面の傷の度合いによっては、手の入れ方次第である程度回復も可能だが、穴一つあけてしまえばそれも無理なものとなる。 ただ、証拠を集める側もちょっとやそっとの状態であきらめる集団ではないだろうし、傷がついた時点でデータが全部消滅するわけでもない。 レコード盤が傷付いていてもそのままプレーヤーにかければ十分鑑賞に耐え得るのと同じように、傷の部分を読み飛ばして解析する方法くらい持っているかもしれない。 そうなると、後はバキバキと粉砕してしまうのが確実な方法といえるが、(盤面に傷を彫り込む機械や、本当に「粉砕する」機械まであるらしいが)爆弾魔が本職とは無縁な道具を常時ご丁寧に持ち歩いているはずもない。 即座にかつ手間をかけずに燃やしてしまう方法は、なるほど最良というのもうなずける。 ではフロッピーはどうか? どちらかというと、CDにくらべてこちらの方がヤワに見える分簡単に処分できそうな気はする。 しかし、意外と頑丈であることを思い知らされる出来事があったので、改めて見直してしまった。 ある時、友人宅に遊びにいった時、彼からフロッピーの処分について聞かれた事があった。 「捨てちゃえばいいじゃん」とBOOは答えたのだが、どうも本人のものではなく、父親のものらしい。 彼によると、「文豪」シリーズや「オアシス」などが群雄割拠していたころから事務処理に関するデータを打ち込み続けてきたもので、中身を人に見られる事無く処分したいとの事。 なるほど確かにただ捨てただけでは、誰が拾って面白半分に覗くか判らない分、心配になるのもうなずける。 実際、漫画の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」では、ごみ捨て場にシュレッダーにかけた上で捨てられた切れ端を、両さんが繋ぎあわせて情報を盗むという荒業を行う話があった。 それは極端な話としても、フロッピーがそのままころがっていれば、少しパソコンを扱える人なら拾ってデータを見る事など苦も無くできてしまう事だろう。 更に友人が言うには、彼の父親は社内で経理をやっていたらしいので、会社の中身を見られる事に余計に敏感になっているらしいとの事。 「じゃあフォーマットしちゃえばいいじゃん」と更に進めてみたが…4ケタを超える数を相手に作業するのはつらいかもしれないなあ。 要はデータが読み取れなければいいのだから、中の磁性体に対してよくある注意書きに逆らった事をすればいいんじゃないか? ということになり、早速フロッピー数枚を借りて試す事に。 相手は現在もっとも普及している3.5インチのフロッピー。 言うまでもなくこのフロッピーは、円盤型の磁性体をプラスチックのケースでがっちりとガードされている。 この保護性の高さによって、信頼を勝ち取ってきたと言える。 狙うはデータを読み取るために開くカバーだ。 そこから見える磁性体に対して…… まずは基本の「落書き」。 取り出しましたるボールペンで、盤面に対して中心から外側に力強い一本の立派な跡をつけてみる。 そして読み込ませてみると…あれ? 読める! 次にこれまた基本の「触る(曲げるというオマケ付き)」。 手で適当に触る触る触る触る触る触る触る触る触る…はぁはぁ、指紋も付いたししわもついたからもういいだろう。 が、しかし…読める!! ならば必殺の「KILL(切る)」。 徹底的に切り刻んでしまえば確実だろうが、それも手間だし、試し読みさせるためのドライブのダメージも気になるので、とりあえずカッター片手に落書きと同様のやりかたで、震える手でスーっと一本。 磁性体は口を閉じたパックマンとなり、そのままドライブへと差し込まれる。 読みにいく音の大きさが気になる所だが…なんとなんと、しっかり読めているではありませんか!!! これらは全て一枚のフロッピーに対して続けて行った結果だったりする。 正直これには驚いた。 えらい丈夫じゃん! 手元のドライブは実験のために用意したものではないため犠牲にするわけにもいかず、やむなく実験はここまでとなったが、もしかしたら、磁性体を少しぐらい切り取ってみたり、外の保護ケースをとってあれこれやったとしても読み込めるかもしれない気がした。 それに昔、同じく磁性体を利用した商品であるミュージックテープを鍋で煮込んだ後で聴いてみたら聴けた! という冒険野郎がいてくれた。 この事例から考えると、仮に水につけたとしても読めるはずだ。 つまり、傷が付いたら終わりのCDに比べて、フロッピーはある程度破損しても磁性体に刻まれた情報をキープし続ける事が可能なのである。 これを確実に消すためには強い磁気に接触させるか、湿気を利用してカビなどを発生させ、磁性体そのものの機能を失わせてしまうかのどちらかしかない。 もちろんどちらともフォーマットの手間同様に実用的な方法ではないから、実行する事はないだろう。 となると、やはり冒頭で爆弾魔がやっていたように燃やしてしまうことが最も確実かつ簡単な方法なのだが、漫画の舞台はイタリアで、ここは日本。 焚き火の禁止もされて久しいこの国では、フロッピーを処分するためだけに焼却炉を買うなんて無駄な出費は誰もしないだろう。 考えてみれば、フロッピーは8インチや5インチから3.5インチと変化してきて、ある意味完成されたメディアといえなくはないだろうか? その容量は今でこそ微々たる物だが、かつてはHゲーのメーカーをはじめ、あらゆるソフトハウスの人々がその中にいかに多くの内容を詰め込み提供するかに尽力したものだし、磁性体メディアの中にはファミコンの世界に進出を図ろうと派生したものなどもあるだけに、各所で研究が行われることによって鉄を叩いて鍛えるかのごとく洗練されていったに違いないのだ。 最近では、さすがにスマートメディアやフラッシュメモリのような小型&大容量メディアに押されてしまっているが、使い道が無くなっているわけではなく、少なくともBOO個人の環境下ではいまだに十分な働きを見せている。 シンプルかつ丈夫、そして安価、気軽さにおいても他のメディアとは一線を画した完成品に対して、BOO&友人が行ったようなちょっとやそっとの生兵法で太刀打ちできないのは当然の結果だったのだ。 果たして我々にあっさり処分される方法は無いものだろうか? 実験を終え、帰り際に友の肩を力強く叩き、処理? を託して彼の家を後にする。 フロッピーは丈夫だ。 今ここであれこれやっただけではどうしようもない、ということが解っただけでよしとしよう。 …という出来事があったのが、つい一ヶ月ほど前の話。 友の家にはそれ以来、まだ一度も訪れていなかったりする… それらはいまだに友の家に鎮座ましましているらしい。 まー放っときゃそのうちカビくらい生えるでしょ…って実用的でないと言ったばかりではないの。 処分に手間をかけるしかない恐るべき完成度がここにある。 フロッピーあなどれじ。 → NEXT COLUM |
|||||||||||||
→「気分屋な記聞」トップページへ |