梨瀬成の自転車四方山話2 梨瀬成
更新日:2004年2月26日
【今、オススメなスポーツ車!2】

 さて、前回では自転車入門用という事で、取り回しが楽でなおかつスピーディーさが楽しめるクロスバイクを紹介したわけだが、当然前回のお話を読んだ方々にはこういう方もいらっしゃるかと思う。

「ああーーん?
 ドロップハンドルが扱い難しいぃぃぃ?
 おいおい、わりぃけどかつてはロードマン(古っ!)で近所を爆走していたんだぜい。
 ドロップなんて楽勝じゃん!」


 まあ、このどこぞのチンピラ口調のお兄さんは置いておくにしても(苦笑)、俺っちが中学生時代だから、もう20年近く前になるが、ドロップハンドルを装備し一世を風靡した自転車にブリジストンから発売されたロードマンがあった。
 ハイテンション鋼と呼ばれる重くがっしりしたフレームに、3×6の18段変速を装備したこの自転車は、一般の人たちの目に触れるという点においてはスポーツ車のハシリとも言える存在で、実際自転車を趣味にしたことのない人間でも、これでドロップハンドルに触れたことのある人間は少なくないだろう。
 まあ、そんな訳でドロップハンドルに抵抗のない方たちにオススメな車種が実はもう一つあったりする。その名も

 シクロクロス

 と呼ばれる車種だ。

 このシクロクロスというのはもともと自転車を使った競技の一つの名称であり、簡単に説明すると自転車でやるクロスカントリーレースとでも言えばいいだろうか。
 ほとんどオフロードの環境下でところどころにある障害物を乗り越えていく競技であり、場面場面では自転車を担いで行く場面もあったりする。
 とにかく試合が終わる頃には選手達は泥にまみれるわ、担ぎは疲れるわで、そのハードさは想像を絶するという過酷な競技なのだ。
 日本でのなじみは薄いが、ヨーロッパなどではロード選手の冬季トレーニングとしても盛んに取り入れられており、去年でツール・ド・フランス5連覇を成し遂げたアメリカのランス=アームストロングも冬季トレーニングとして採用しているのは有名である。

 さて、こんなある意味特殊な競技用の自転車という事で、実際このシクロクロス用バイクというのはかなり色々な特殊工作が施されている。
 一見すると、少しごつい感じのロードレーサー(以下RR)にしか見えないが、まず、フレームの作りは太いタイヤが入るようにクリアランスが広く取られ、更に障害物対策としてボトムブラケット(クランクの中心軸:以下BB)が高めに設定されている。
 また泥詰まりを防止するため、カンチブレーキと呼ばれる小さなブレーキ本体とワイヤーを利用した簡単な構造をしたブレーキを取り付ける台座を装備し、競技の特性上、フレームはある程度軽いもののそれなりの強度を持ったものが使用される。
 タイヤはRRと同じく大きな径のものが使われるが、28〜35C(タイヤの幅である○○Cはミリ単位)という太いものが使用され、タイヤ面も悪路での食いつきを考慮してブロックパターンのごついモノだ。
 ハンドルも大会の規約により、ドロップ以外禁止となっている(低いカテゴリーはフラットハンドルでの参戦OKだが)。

 まあ、専門的な話は置いておくにしても、これがどういう事かというと、実はツーリングなどでのんびり流す様な使い方にこのシクロクロスというのはぴったりなのである。

 まず、タイヤの幅が太くパンクなどのトラブルが少ないのが実にいい。
 またRRのタイヤのように細くないので、扱いやすく乗っていて安心感があるというのも大きいだろう。
 ちなみに一般的なシクロクロスに付いているタイヤ幅は30C前後。
 一般的なRRは23Cが殆どなので、その差実に7ミリもある事になる。
 流石にRRの様に軽快には走れないが、マウンテンバイクのタイヤに比べればはるかに細くタイヤ径も大きいので、ある程度のスピーディーさは保証される。
 しかも、タイヤをRR並みの細いものか、ブロックパターンのない転がりのスムーズなものに履き替えれば、かなりのスピードを得ることも可能だ。
 町乗り優先ならば、コチラの方がいいかも知れない。
 オススメはPanaracerから出ているツーキニストとT-servの700×28Cだろうか。
 どちらも耐パンク性が強化されており、シクロクロス用タイヤより軽快なのでスピードツーリングなどでも十分効果を発揮する。

 また、BBが高めに設定されているというのも、別の意味でポイントとなる。
 というのも、自転車のフレームというのは構造上、BBの位置が低いとペダルで伝えたパワーがダイレクトに推進力になりやすい反面、高速巡航時のバランスが悪くなってしまうのだ。
 しかし、BBの位置が高いとスピードこそ出しにくいものの、巡航時の安定性に優れるので一定のペースを保ちながら走るのにはうってつけなのである。

 そしてフレームの頑健さも長距離を走るツーリングには非常に強い味方になる。
 もちろん段差の多い町乗りでもそのフレームの強さが武器になるわけだ。
 頑健なフレームは反面、路面の微振動をダイレクトに体に伝えてしまう弱点も抱えているが、最近のカーボンフォークは振動吸収性が良く優秀なものが多いので、どうしても疲れるようならば、これを換装する事でフォローが効く。

 よく言えばRRとマウンテンバイク(以下MTB)のイイとこ取りの自転車な訳だが、逆を返せばスピードではロードに負け、頑健さもMTBほどではない中途半端なところがあり、そういうトコロはクロスバイクに通ずるところがあるが、とにかくメジャーな車種ではないため、昔はほとんど見かけられないのが実状だった。
 しかし、最近の自転車ブームに乗じてか、各メーカーもかなりお得な値段でこのシクロクロスをラインナップする様になった。
 ちなみに本格的な競技に使用出来るものは値段が跳ね上がってしまうので、これらはどちらかと言えばクロスバイクの亜流として販売されている感が強いが、シクロクロスの基本設計自体は継承されているので、ツーリングに必要な機能はほとんどあると言っても過言ではないだろう。
 RRによるスピードあふれるツーリングや、MTBでのオフロードツーリングも悪くないだろうが、シクロクロスによるまったりのんびりツーリングもまた乙なモノである。

 ちなみに三十路に入ってから再び自転車の世界に入った俺っちが、最初に購入した自転車GIOSのPUREもこのシクロクロスである。
 また、ライターの1人エルトリア君はLOUISGARNEAUのシクロクロスLGS-CCRを保有している。


 さて、次回はもう少し突っ込んだ自転車小話でも披露しようかと思うが、突発的にツーリングレポートかもしらん(笑)。

 ゴメン…今の段階でまだ決めてないの…つーわけで次回に続く。


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