エースをねらえ! スペシャルドラマ雑感
鷹羽飛鳥
更新日:2004年10月24日
 以前に書いたとおり、ドラマ『エースをねらえ!』の続編がスペシャルドラマとして9月に放送されました。
 宗方の死後、桂がひろみを立ち直らせる物語を描くスペシャルだということだったので、最終回の“ひろみが1人になっていたシーン”にどう繋げるつもりかと、少々意地悪な期待をしていたのですが、驚いたことに、実に綺麗に繋げてしまいました。


 原作マンガでは、桂はひろみの専属コーチとして、主に体力トレーニングで厳しく鍛えながら、精神面をサポートするというやり方で指導しています。
 桂は、生前の宗方との約束で、宗方を失った後のひろみを支える精神力を養うために寺に修行に入っており、仏教的なウンチクや宗方との昔話などを絡めつつ、ひろみを導きます。
 また、相当な酒豪なのですが、ひろみが立ち直るまでは断酒しており、一見酒を飲んでいるように見えても水を飲んでいるのです。
 以前も書いた気がしますが、最終回では、ひろみが1人で海外遠征に出掛けるとき、桂の「岡!」という声が聞こえ、ひろみが宗方の最期を思い出して振り返ると、息を切らして駆けつけた桂が「エースをねらえ!」と続けるという形で終わっています。
 つまり、桂とひろみの信頼関係は、宗方とのそれに匹敵するほど強いわけです。

 一方、藤堂や尾崎はプロテニスプレイヤーへの道を諦め、後進の指導のためトレーナーに転向していきます。
 これは、本当に世界で通用するプレイヤーはひろみだけだったという冷たい現実でもあるのですが、藤堂はひろみのサポートをしたいという意味も含めての転向でした。
 お蝶夫人、蘭子も、日本の第一線プレーヤーとして頑張っており、マンガ終盤でひろみに破られていくという展開でした。
 まぁ、お蝶夫人は怪我で不戦敗でしたが。


 対して、ドラマ版では、桂は、宗方に再起不能の怪我を負わせてしまったことに責任を感じて頭を丸めたという設定に変わっているようです。
 断酒もしておらず、太田コーチと普通に酒を酌み交わしています。
 そして桂は、ひろみをとりあえず立ち直らせて宗方愛用のラケットを渡すと、後は藤堂に任せてしまい、自分は蘭子のコーチになって弾丸サーブの特訓を始めてしまったのです。
 何ということでしょう。
 藤堂は、自分も選手として活動しながら、ひろみのコーチまでやる羽目になってしまいました。
 いえ、自分で言い出したんですが。

 そして、ひろみと蘭子は、宗方の死で落ち込んで2か月間試合をさぼっていたという理由で、テニス連盟の規約により、除名の危機に瀕していました。
 特別に、ジュニア日本大会で優勝すれば除名されなくてもすむそうです。
 なんて杓子定規な連盟幹部達でしょう。
 日本女子ジュニアテニス界トップ3の実力者であるひろみと蘭子に対し、少なくとも片方、下手すれば2人とも追放するというのです。
 日本女子テニス界の今後など、全く考えていません。
 ちなみに、この時点で、既にお蝶夫人は現役を引退していました。
 つまり、最悪の場合、実力最高の3人が日本テニス界から消えてしまうことになるのです。
 結果的にひろみが優勝したため、追放された蘭子は、海外に活動拠点を移すことになりました。
 才能の無駄な海外流出と言えましょう。


 一方、藤堂の“コーチをしながら選手もする”という無謀な行動に腹を立てた尾崎は、「片手間にテニスをする奴なんかには絶対負けない!」と息巻いていましたが、夜中に自分の練習をしていた藤堂にまたしても負けてしまいました。
 どうもこのドラマの尾崎は、口ばかり威勢が良くて実力が伴わないようです。
 こうして、藤堂は、自分が努力すれば、ひろみのコーチをしながら選手も続けられるという困った自信を持ったようです。


 さて、オチを先に書いてしまいましたが、ひろみは蘭子の弾丸サーブに苦戦しながらも優勝し、更なる高みへと昇り始めます。
 そして桂は、自分が教えた蘭子を破ったひろみを見て、「宗方、もう俺が岡に教えることはなくなった。俺の役目は終わりにさせてもらう」とのモノローグと共に寺に戻ってしまいました。
 たしか宗方との約束は、宗方に代わって岡ひろみを一流のプレイヤーに育て上げることだったはず。
 宗方が生きていれば、まだまだひろみを導いていたでしょうに、桂はもうやることはないそうです。
 無二の親友との約束は、その程度のものだったのですか。

 ていうか、あんた、ひろみには何にも教えてないやんか!


 スペシャルは、ひろみを倒すためにわざわざ来日した世界トップのプレイヤーとの試合の最中で終わったわけですが、どうやら藤堂もひろみも世界に羽ばたいたようです。
 結局、スペシャルが終わってみれば、ひろみの隣には藤堂しか残りませんでした。
 その藤堂にしても、プロとして本格的に動き始めれば、自分の試合もあるわけですし、いつもいつもひろみと一緒にはいられないでしょう。
 というわけで、ドラマ最終回の“1人で試合に臨むひろみ”は、無事実現しそうです。




スタッフのばかぁ!!!!



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