玩具ありMINI2 ガシャポン
ユージンSR「ヴァンパイアセイヴァー3/3.5」
後藤夕貴
更新日:2003年10月19日
 今回の「玩具ありMINI」は、ガシャポンネタです。
 そういえば、こういうジャンルってやった事なかったですね。


 最近またまたギャル系フィギュアのガシャポンが大人気となっておりますが、なかなかとんでもないブームを巻き起こした物が多数ありまして、今回紹介する「SR ヴァンパイアセイヴァー3/3.5」は、その代表的なものになります。

 今回のようにお題がガシャポン系のときは、今までのように個別商品の出来不出来を云々唱えるのではなく、「世間的評判」「販売状況」などについて語っていきたいと思います。
 ガシャポンの場合、そちらの側面のみを語った方が面白いってのもあるんですよ。


 さて、ガシャポンのメーカーについてちょっとだけ定番説明を。
 話題が少しばかり遠回りになりますが、まずはご容赦。

 トミーの子会社であり、かつてバンダイの独占状態だった「200円リアルフィギュア系ガシャポン」の舞台に切りこんだユージン(YUJINとも表記される事あり)は、メジャーかつ緻密な完成度を旨とするバンダイに対し、ガレージキット原型師などの力を以って非常にマニアックな作品の商品化を目指し、明確な住み分けを行おうと試みました。
 かつては同時期に同じ番組商品を出し合って、真っ向からぶつかり合ったこともありましたが、今となってはそれぞれに特色が出て「どちらがいなくなっても寂しい」状態に発展してきました。

 このユージンという会社の商品ラインナップには、ちょっとおかしなものがありました。

 それは「レアバージョン」という、それまでブリスターフィギュアなどに多かった“1カートンに○個しか入っていない限定版”という概念をガシャポンに組み込んだのです。

 98年頃に発売された「SR ToHeartリアルフィギュアコレクション PART-1」は、本来全6種類というアソートだったにも関わらず「宮内レミィ」の下着の色に6種類のバリエーションを設け、さらに「松原葵」にも別バージョンを作り、これらを混入する事でフルコンプの難易度を爆発的に高めました。
 結果、全12種類になったこのシリーズは、全盛期にはセット売り2万円単位などという凄まじいプレミアをつけた事もありました。

 これが大変な話題になった事から、ユージンはその後も数々のシリーズに別彩色バージョンを混入し、あげくには「本編にはまったく登場しないカラーリング」まで捏造するに至ります。
 ただし、それも「ToHeart PART-4」の頃には飽きられてしまい、レアがあろうがなかろうが関係ないという心理を、消費者に植え付けるようになってしまいました。

 それと時期を前後して、ユージンはまた別なレアバージョンを考案しました。
 これが「クリアバージョン」

 本来彩色済みであるべきフィギュアの、別素材完全無彩色版を組み込んで、フルコンプリートの必要数を2倍にしました。
 ガシャポンはだいたい全6種類平均でコンプになりますが、これによって真のコンプは12個になります。
 そうすると、すべて揃えたいという人は「最大でも50個〜60個しか入らないガシャポン機」に向かって、無尽蔵にコインを投入するようになるわけです。
 これでアソート数を調整し、全50個の中に12個セットはたった2組しか完成しないように仕向けておけば、さらにやっきになって回す人達が出ると。

 こうして様々なシリーズに組み込まれたクリアバージョンですが、これが単にシリーズ毎のコストダウンを狙った対策であるという事がばれたのと、調子に乗りすぎて「クリアの方が混入数が多いシリーズ」などを量産してしまったため、以後クリアバージョンはタダでもいらないハズレの代名詞になってしまいました。


モリガン・レザータイプ
モリガン・エンドドレスタイプ
ビシャモン
ザベル・ミッドナイトプレジャータイプ
 さて、そんなこんなでしばらくレアバージョン混入の話はなりを潜めたのですが、今度はバンダイが、自社のシリーズHGシリーズにこの概念を投入してしまいました。
 同じ金型で彩色が違うだけというものを、完全同数混入にするという方法。
 これにより、全6種は実質7種になり、60個毎アソートは綺麗にセット数で割り切れなくなりました。

 どうもこれは、2000年辺りから大量に増えた「ガシャポンセット販売業者」対策の一環だったようです。

 セットを作り辛くする事で販売セット数を抑え…と仕向けるつもりが、単にレアセット化を煽りたてただけという逆の結果を招いてしまいました。
 また、シリーズによっては「別に色違いまで揃える気はない」と多くのユーザーに割り切られ、早々に人気低迷の一途を辿ったものもありました。

 さて、ユージンがそれを見て影響された…のかどうかは知りませんが、クリアバージョンに継ぐあらたなレアバージョンの混入を検討し始めました。
 それは、彩色違いというだけでなく「造型もちゃんと違っている」別バージョンを混入するというもの。
 しかも、その別造型バージョンの方がなんとなく出来が良いように思えるというものになっています。

 その代表例が、今回のお題である「ヴァンハイアセイヴァー3/3.5」シリーズなのです。

 …あ〜、遠回りし過ぎた(笑)。

 
●商品説明:
 SR「ヴァンパイアセイヴァー」シリーズは、2000年に発売されたPART-1、2001年7月発売のPART-2、そして2003年4月のPART-3、9月19日のPART-3.5と続いておりますが、その間にも「PART-1リペイント版」「PART-1ブラッククリア版」「PART-1SRショップ版」などの別バージョンが発売されました。
 結果、第3弾までしかないというのに結構なアイテム数を誇ります。

 PART-2までは、他のガシャポンフィギュアよりもなんとなく小振りな印象のあるアイテム群でしたが、PART-3になって突如巨大化!(笑)
 同じ200円だというのに、PART-1のモリガンとPART-3のレザータイプモリガンとでは、恐らく2.5倍くらい体積が違うのではないかとすら思わされます(対比テキトー)。

 →右側に並べている写真は、PART-3の実際の商品写真です。
 よく知らない人が見たら、完成品ガレージキットみたいにも感じられるかもしれませんね。

 さて、1と2にも魅力的なアイテムは多いのですが、まずはPART-3から。


・モリガン レザーコスチュームタイプ:
 うたたねひろゆき氏がかつてゲーメストに掲載していたイラストがモチーフで、ゲーム中には登場しない姿
 黒いボンテージスタイルに、右目を覆う眼帯が特徴。
 胸と下半身がすごい事になっている(笑)。
 ノーマルの中ではもっとも出にくいものなのだが、その完成度は最高レベル。
 そのため、ヤフーオークションでは単品でもすごい価格になっていた。


・エンドドレス・モリガン:
 ものすごいマイナーな衣装だが、ゲーム2作目「ヴァンパイアハンター」のモリガンエンディングに、ほんの少しだけ登場するもはやこれは服とは言わないコスチューム。
 ほとんどボディペインティング。
 一番造型がいやらしいともっぱらの噂。


・ビシャモン:
 腰や腕・脚などにボールジョイントを仕込み、さらに丁寧に作りこまれているアクションフィギュア的な要素を持つ物で、これはゲーム中のノーマルカラーの再現。
 出来はかなり良いのだが、シリーズとしてはまったく求められていないセレクトの上、大量に出てしまうことから大変忌み嫌われた


・ザベル(ミッドナイトプレジャータイプ):
 ゲーム3作目「ヴァンパイアセイヴァー」で、デミトリの使う新超必殺技「ミッドナイト・ブリス」の攻撃を食らい、女性化してしまったゾンビのロッカー(笑)。
 ペチャ胸でロリっぽい造型になってはいるが、ふてぶてしい表情とタバコ、そして大型のギター(実はパートナーモンスターの変形)がニクイ。
 ゾンビなので、肌は青みがかったグレー。
※ちなみにミニブック及び商品説明では「ミッドナイトプレジャー」と表記されているが、これは完全な間違い。


オルバス・ミッドナイトプレジャータイプ
・オルバス(ミッドナイトプレジャータイプ):
 海洋生物の姿ならなんでも変形してしまう、軟体イケメン半魚人がミッドナイト・ブリスを食らった姿。
 凶悪なほどの巨乳美女人魚になっているが、これは原型担当のオーバーダードの性格の現れか(笑)。
 髪と下半身が半透明パーツで作られていて、実は結構ハズレ系なのにも関わらず需要は大きかった。


・ビクトル(ミッドナイトプレジャータイプ):
 全然可愛げがないが、これもフランケンシュタインの怪物がミッドナイト・ブリスを受けた姿。
 元とあんまり雰囲気が変わっていないが、よく見ると確かに女性。
 その外観から、一部では「ガッツ」と呼称されている(笑)
 本シリーズ最大のハズレであり、ビシャモンと共にもっとも恐れられていた。
 ショップで30円売りを見た時、涙が止まらなかった。


★シークレット/・ザベル(ミッドナイトプレジャータイプ):
 納品一袋50個の中に、たった1つしか入っていない鬼アソート1号

 基本的にはノーマルザベルと変わらないが、顔部分が新造形の上可愛らしい美少女フェイスになっていて、さらに肌が普通の肌色になっている。
 もちろん、ゲーム本編に登場してはいない。
モリガンシークレット、顔のアップ。未開封品なのでこれでご容赦!


★シ-クレット/モリガン レザーコスチュームタイプ:
 こちらも、1袋に1つしかない鬼アソート。
 ノーマルとの違いは「眼帯がない」…つまり両目が出ているわけだが、という事は実質的に前髪パーツと顔パーツは新造形という事になる。
 もちろん、単体としてみた場合はこちらの方が普通に見える。


 以上、全8種類。
 

●世間的評判:
 まるで200円ガシャポンの限界に迫るかのような巨大サイズでリリースされた本セットは、これまでのシリーズと対比がまったく違うので、並べて飾る意味は大変希薄になってしまいました。
 もっとも、PART-2からもかなり間が空いた事や、現状ゲーム最終シリーズともいえる「ヴァンパイアクロニクル(ドリームキャスト)」からも年単位で開きがある事から考えて、実質的には「古めのキャラクターを使用したオリジナルフィギュア」的なテイストが漂っているものでした。
 レザータイプモリガンの引用元や、過剰なアレンジのオルバスなどを見れば、それはなんとなくわかるでしょう。
 もちろん、これが発売された時期には元ゲームを知らない人も多かったようで、しかしそんな人も手に取りたがる傾向がありました。
 造形的な魅力だけでなく、商品のレア性に着目した人も多かったようですが…
 あとは、一部のものが「改造用素体」として大変魅力的だったという背景もあったようです。

 このセットを語る上で外せないのが、やっぱり「アソート」の話です。
 近年、これほどわかりやすいネタはなかったかもしれません。
 
 1つのガシャポン機に1つだけ、しかも、ひょっとしたらすでに誰かが取ったかもしれない筐体にコインを連続投入し、次々に訪れるビシャモンやガッツ(笑)の恐怖に耐え、モリガンやオルバス、ザベルを狙う…なかなか怖いことです。
 とにかくビシャモンとビクトルの不人気具合は凄まじいものだったらしく、すでにユーザーはこのシリースに対して「男キャラは求めていない」という事がはっきりしたわけです。


 …え、この場合ビクトルも女性だろうって?
 まあ、それはおいといて(笑)。


 一部では、ビシャモンやビクトルが出るたびにその場に投棄していった人が多くいたらしく、店によっては、それを再び筐体内に戻している事もあったとか
 これによって、益々ハズレのアソート率が高まり、さらにシークレットがなくなってしまった…いわゆる“地獄筐体”にハマってしまった人は、ただお金を垂れ流すだけの存在に貶められてしまうのでした。
 なおPART-3は、1袋内で可能な限りのノーマルセットを作った後に、ビシャモンとビクトルだけが大量に余ってしまうという事実を私自身確認しております。
 それぞれ4つずつ以上余っていたように覚えています
 オルバスも多少あまっていましたが、せいぜい1つか2つくらい。
 で、肝心のセットは…せいぜい5〜6セット程度しかできなかったような。
 ちょっとこの辺はうろ覚えですが、あの2体だけが多いというのは紛れもない事実だったのです。

 また、店舗による「抜き」も問題視されました。

 つまり、筐体に入れる前に中身を選別して、シークレットやアソート率の低いものを抜き取り、それを高値で販売するというケース。
 決して全てではありませんが、ガシャ機を置いているプレミアショップではもはや常套手段となっており、わかっている人達は決してそういう店では回しませんでした。
 また、そういった事をやる店に限って、わざわざ中身を開封・組み立てた上に袋に詰め直し、数千円単位の価格を設定したり
 あまつさえ、そういったものを「新品」として販売する始末。
 未開封のままコレクションする人の事をまったく考えていないその姿勢は、大変問題ありと言わざるをえないでしょう。
 とにかく、そうやってユーザーの反発を買った店舗はネット上に晒されたりと、えらい騒ぎになっていたものです。
 某有名チェーンショップ等は特に有名で、「あそこでは絶対回すな」という制止呼びかけも盛んだったようです。

 本来格闘ゲームで、男性キャラの方が比率が多いにも関わらず、女性キャラの商品化だけが盛んに求められるというケースは、他でも多数あったことです。
 ですが、それは今までガレージキットや完成品フィギュアに求められていた事であり、ガシャポンにはあまりなかったものでした。
 それが、現在はすっかり侵食されて(笑)。
 ヴァンパイアシリーズには、まだフォボスやパイロン、アナカリスなど造形的に面白そうなキャラクターがいるのですが、彼らもいざ発売されたらハズレの烙印を押されてしまう事でしょう。きっと…
 で、今それらが欲しいと思っている私も、いざ回す段階になったら…いやがるかもしれませんね(笑)。

 ちなみに、PART-3のオークションなどの相場は、シークレット各種が2000円前後を平均としてエンドドレスモリガンが500〜600円ほど、ザベルやオルバスも定価越えが見える中、ビシャモンやビクトルはまったく値が付かないという状態が依然続いているようです。


 さて、どうもこのアソートについて、ユージンのところにも相当なクレームが行ったようです。
 なぜそう言い切れるかというと、この次にリリースされたPART-3.5…リペイントバージョンのアソート比率が、まったく変わってしまったからなのです。


 こちらについては、また次回に。


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