SECRET 第32回 ■ コトブキヤ To Heart2「向坂環」各種

2006年6月25日 更新


 ここでは、タイトル画像に利用したフィギュアをご紹介。

 今回は、「To Heart2」の真のヒロインと一部では強く論じられている、タマ姉こと向坂環。
 これのフィギュアを扱ってみたいと思います。
 ちょっと前のものになりますが、実は一部非常にタイムリーなネタも扱っているので、どうかおつき合いください。
 てなわけで、三体まとめて行きます。

…え、三体? と思った人も多いでしょうけど、そこが今回のミソです。
 実はね、そのネタ揃えるのに時間食って、こんなに発表がズレこんじゃったの。

 というわけで、向坂環。
 いずれもコトブキヤ製で、左側「ドリマガ限定版」は2006年2月11日発売、定価\6,300(税込)。

 右側「通常販売版」は2006年4月13日発売、定価\3,990(税込)。
 原型師は、左は爪塚裕之氏、右はHIDE氏。

 同じメーカー、同じキャラなのに随分と印象が違います。

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■□ ドリマガ誌上限定版 □■

 ドリマガ2005年9・10月号誌上で告知・宣伝・販売された限定版。
 元になった甘露樹氏のイラストや、原型段階などから丁寧に紹介し、購買希望者を募っていました。
 ただ、サイズの割に高い価格(6000円プラス送料プラス書籍代)に躊躇した人も多く、また「これはいずれコトブキヤ店頭でも売られる筈だ」という見込みも多くあったため、情報を知りつつも申し込みを躊躇する人も多かったそうです。

 結果的に、その判断は思い切り裏目に出てしまったわけですが…一部の人にとっては。

 ま、値段や入手方法の話は後回しにして。
 ドリマガ版タマ姉は、本体高さ約20センチ(台座含む)、台座直径10センチ強。
 台座はビス固定。
 出来はかなり良いもので、何よりささやかな躍動感がいい味わいを発揮しています。
 ちょっと表情が大人しすぎで、今ひとつタマ姉感に乏しいのですが、元になったイラスト自体こういう表情(つまり本来の雰囲気とは異質なイメージ)だったので、そこは必ずしもマイナス点ではないと思われます。
 ディテールも細かく、やや細すぎの体型にもかかわらず出るところはしっかり出ているので、お楽しみに対する期待も裏切りません。

 以下は、旋回撮影。

 このスカート丈でこういう姿勢なもんだから、お約束全開ですな。
 タマ姉フィギュアの醍醐味とも言えますな。
 絶対領域の広さも丁度良い感じ。

 顔のアップ。
 制服上着のシワというか、布の流れ方が実に自然で良いと。
 また、リボンの傾きと髪の毛各所のなびく方向が統一されており、風の流れを実感させる造りなのもさすがです。
 特に、前髪の自然な動きが素晴らしい!

 これで、目が洗脳状態じゃなかったらもっと良かったんだけど。
 これは、最近の絵柄を立体化させたための弊害ですな。
 瞳のハイライトの少なさと小ささが逆効果になっているわけですな。
 瞳孔がはっきりしていないのも厳しいかと。
 この辺りが、目に生気を与えるかどうかの大事な部分ですから、どうしても気になります。

 お約束をズームで。

 オーバーニーの端、太腿に若干食い込んでいる、この膨らみ加減がマニアックなツボです。
 こういうところをきっちり押えてくれるのは、嬉しい限りですよね。

 言うまでもなく、スカートは脱着可能。
 ただ、お腹の部分にスカートの肉厚さをカバーするための段差が付いちゃっているのが残念。
 ここは、なんとか均一に整えて頂きたかった部分。

 それはそれとして、下着のモールドの凝りっぷりがよくわかります。

 後ろからだとこんな感じ。

 確かに良い出来ですし、タマ姉フィギュアとしては決定版に近い造りなのは充分認める余地があるのですが、正直な話、価格に見合った商品かというとかなり疑問です。
 確かに、最近少しずつ完成品フィギュアの価格帯が上がり始めていますが、だとしても、これはせいぜい4000円台〜5000円弱が関の山という程度の出来ではないかと。
 ドリマガ誌上販売版では、これ以外に下敷きやテレカなどのオマケが付いたのでまだ良いですが、後にコトブキヤ店頭で行われた予約版は、特典一切無しで同じ価格でしたから、やっぱり高い買い物だったのではないかと。

 まして、現在オークションでは、こやつの相場は9500〜12000円程になっていて、益々割高感高まってます。
 まあ、結局は購入される方がどれくらい納得されているか、という問題なので、いくらで買っても満足感が得られるならいいとは思うのです。
 しかし、この商品は受注生産とはいえ、相当な数の注文を受けた果ての生産だったため、一部では平均的な完成品フィギュアの倍以上作られているのでは、という推測もあります。
 場所によっては、5桁単位の生産数だったのでは、という意見も出てました。
 だとしたら、相場もいずれは落ち着きを見せるのではないかと思われます。
 あくまで予想に過ぎませんが。

 とにかく今言えることは、「欲しいんだけど1万円前後出す必要があるのか」と少しでも悩んでしまう人は、今しばらく状況を静観された方がいいのではないかという事ですね。

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■□ 通常販売版 □■

 今度は、一般販売版の方を。
 サイズは、高さ約20.5センチ(台座含む)、台座の直径10センチ強。
 こちらも台座はビス固定。

 その見た目から、「デブ姉」という酷いあだ名を付けられてしまった商品。

 これは原型師のクセなのか特徴なのか、全体的に膨らんでいるような造型になってます。
 上着やリボン、スカートは、まるで内側に風船状のパッドを入れているかのよう。
 確かにこれでは、デブ姉と言われても仕方ないかも…。
 よく見れば、身体そのものは決して太くないのに。

 顔のアップ。
 ただ、表情のつけ方や仕草については、こちらの方がタマ姉らしさに溢れてます。
 個人的には、顔はこっちのが圧倒的に好き。
 ただし、共感を得ようとは思いませぬ。

 以下は、旋回撮影。 

 髪の毛のモールドが厚ぼったくなってしまっているのが、残念。
 面積的にも一番目立つポイントのため、この簡略化はかなりきついものがあると思います。
 ドリマガ版と比較するまでもなく…後頭部が何にもなくのっぺりしているなんて、ちょっとあり得ないですよね。
 これはむしろ、二次元的簡略化の方式です。
 立体でやってはいかんでしょ。

 腰の厚みや脚全体の肉付きなどは、こちらの方が圧倒的に良い質感を出しています。
 逆に、その分上着やスカートの膨らみとの違和感が際立ってしまって、アンバランスさが目に付いてしまいます。

 ただ、角度によっては妙に決まっているように見える場合もあるので、なかなか面白いものです。

 ささやかにお約束。
 こちらは、もはやスカートの丈自体に問題がありすぎて、ポージングの関係で見えてしまっているとか、そういう状況ですらありません。

 スカートを外した状態。
 通常版は、スカートと本体の癒着防止のためのビニールが挟まれています。
 ドリマガ版にはなかったような…つか、すでに色移りしちゃってるし。

 可愛らしい下着で好感は持てそうですが、さすがにちょっとあっさりしすぎかな? という印象。
 また、スカートの形状との兼ね合いの都合でしょうか、腰のくびれからヒップサイドにかけてのラインがやや不自然になってしまってます。

 しかし、ヒップの厚みがやや足りない気がするものの、脚としては、こちらの方が肉感的で良いものです。
 もうちょっと、ハッタリかましてくれていれば文句なしでしたけどね。  

 こちら、通常版パッケージ。
 サイズは、縦25センチ×横14センチ×奥行14センチ。
 意外にコンパクトにまとまっています。
 るーこの時のアレはなんだったんだろう…。

 って、実はこれも、奥行きにかなりゆとりがありすぎなんですが。
 あともう一体収納できそうなくらい隙間空いてます。

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■□ ?!?!?! □■

 さて、ここでもう一度、最初に紹介したタマ姉を上げてみましょう。

 角度を変えて。

 なかなか良い出来ですが…さっき散々書きましたよね。
 なぜ、同じ物をもう一度アップするのか? と疑問をお持ちの方も多いでしょう。

 せっかくなんで、さっき撮影しなかった角度で、お約束ギリギリを。

 「つか、一体何がやりたいんだよ?」といらだちを覚える方も出てきてるかもしれませんね。
 実はこれ、さっき紹介したのとは別物なんです

 はい、こういうオチです。

 左は、コトブキヤの正規版、右は、現在オークションで流通している、海外出品・発送のパチモノ製品です。
 否、パチというよりは海賊版と言うべきでしょう。
 上記写真は、微妙な角度差や照明の位置関係で顔が別物に見えますが、造型そのものは両方とも同じです。

 はたして、この海賊版はどういうものなのでしょう…?
 比較写真を見ながら、考察してみましょう。

 写真で見る限り、後ろ姿はほとんど区別が付かないです。
 しかし、実際に現物を見てみると、肌の色味が全然違っているので、一目瞭然です。
 また、髪などのパーツ接続が不充分で、頭部から外れそうになったりします。
 さらに、なびいている髪の毛に変なクセが付いていて、ひん曲がっている部分も見られます。

 しかし、独特の髪の毛のモールドそのものはほとんど同じで、区別が付きません。
 これはどういうものなのでしょう?

 肌の色比較。
 よりによってこんなアングルですが、これが一番わかりやすいので。
 海賊版は、肌のグラデーションが暗く汚い上、 肌の成形色すらも別物と思わせるくらい違う印象になってしまってます。
 また処理が大変粗く、表面に不着する汚れや接着剤のカスのようなものがあったりします。
 もちろん、これは下半身だけの話ではなく、他の肌露出部分すべてに言えるポイントです。
 脚の付け根も、なんとなく接合感が弱い気がしますね。

 パッケージ表面と裏面の比較。
 これだけだと、あまり大きな違いが見られませんが。

 こちら、正規版パッケージ裏面
 印刷が綺麗です。

 こちらが海賊版パッケージ裏面
 タマ姉の身体の影部分に入っているかすれのようなものに注目。
 カラーコピーした時に出るようなアレですね。
 文字などはそのまんまなので、中国版によくある「あやしい日本語表記」などは見当たりません。

 正規品を基準に、海賊版の相違点をまとめてみました。

●外箱

  • 上面両端がセロテープ(完成品フィギュアでよくある透明の丸いシールではない!)で封がされている。
  • あまり箱の状態が良くない。
  • 「向坂環」など、ピンク色で印刷されている文字の色が濃い。
  • 製品写真部分が、まるで質の悪いカラーコピーを元に印刷したかのようで、コントラストが不自然に強い(というか暗い)。

●本体

  • パーツの接合が甘く、部位によっては外れやすくなっている。
  • グラデーション塗装が不自然に濃く、塗装面積が広すぎる。
  • 肌色が、グラデーションのせいでさらに濃くなっているように見える。
  • 腕や指など、末端部パーツのパーティングラインが際立っている。
  • 部分的に、接着剤の塊のようなものが付着していたりする。

 目立つポイントは以上です。
 逆に言えば、上記ポイント以外はほとんど本物と区別がつかない状態なわけで、中には最後までニセモノと気づかない人も居るかもしれません。
 
 オークションなどで落札を狙う場合、まず海外発送品や、UFOキャッチャーで取ったという物、複数同時出品物は無条件で避ける事をオススメします
 さらに、過去同じ物をいくつも出した事がある出品者も、避けた方が賢明です。
 国内発送でも、ショップによっては海賊版を正規品と偽って販売しているケースがあるようなので、判断に困る場合は出品者に質問して、テープ止めの有無を確認してみるといいでしょう(正規品はテープ止めなどが一切されていない)。
 また、ドリマガ特典の下敷きや、新品納品時に付いてくる白いトレーシングペーパーのような保護紙が付いているものを選ぶという手もありますね。
 多少割高になっちゃいますけど。

 とにかく、こういうものが平気ではびこるようになってしまったため、安心して購入する事が大変困難になってきました。
 こういう状況はとても悲しいと思いますが、まあこれも、完成品フィギュアバブルが招いた悲劇の一つということで、数年後には笑い話の種になるのでしょうね。
 ちなみに、ドリマガタマ姉以外にも、マックスファクトリーの限定版・霞黒バージョンの海賊版が流通しています。
 こちらも気をつけたいものですね。

 箱のサイズですが、どちらも縦25センチ×横14センチ×奥行12センチ強。
 通常版とあまり変わらず、大変コンパクトです。

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【買ってみて一言】

  • ドリマガ版:微妙に期待はずれ&やはり割高感拭えず
  • 通常販売版:ドリマガ版にないものを求めて、やはり期待はずれ

 というのが、個人的な購入後の感想です。
 いずれもそれぞれ別方面で出来の良さは実感できるのですが、総合的な良さに乏しく、何か物足りない。
 ドリマガ版は身体の薄さと細長さ、そして表情(特に目)のうつろさが大きなマイナスで、通常版は風船状態が。
 しかし、前者は造形密度が高いというポイントがあり、後者は適度な身体の厚みと良い表情を持っています。
 結局のところ、それぞれプラス要素とマイナス要素の入り混じり方がぐちゃぐちゃで、最終的な判断が述べにくいわけです。
 少なくとも、値段=商品造形と考える人ならば、高いプレミア値を払ってまで今からドリマガ版を買うのはどうかなと思っちゃいます。
 逆に、すでに安売り対象となりつつあり、在庫も豊富な通常版は、それなりに価格に見合ったものではないかと思われます。

 ただ、過去にコトブキヤが発売したTo Heart2シリーズの別フィギュアと並べた場合、統一感が果たしてあるのかと聞かれると…正直なところ「どっちもダメ」といわざるをえません
 無論、統一感が必ずしも必要というわけではないですが、「一緒に飾る時に浮いてしまうとイヤだ」という人にとって、今回のダブルタマ姉は間違いなく浮いて見えるでしょう。
 それだけ、各々の造形には個性がありすぎるのです。

 両方の良い所取りをすれば、より良いものが出来ただろうなあ…と思わず考えてしまうのですが、そんな事しょっちゅうあるわけですからね。

 さてここで、ドリマガタマ姉の流通状況等に触れてみましょう。

 先の通り、誌上申込をしていた時点では、いくらかのファンは躊躇していた様子で、ここで思い切って申し込んだ人が、いわゆる「勝ち組」になりました。
 ただ、この誌上申込自体を知らなかった人も結構居たようで、時間が経つにつれ、ドリマガ版タマ姉はどんどん注目を集めていく事になります。
 これは、各模型掲示板上での情報提示や、申込を済ませた人達による扇動の効果が大きかった様子です。
 コトブキヤ店頭でも売られるだろうと思っていて、あえて手を出さなかった人達も、だんだん焦りを覚えてきました。

 ところが2005年10月頃から約二ヶ月間ほど、コトブキヤが店頭・ネット上でドリマガ版の予約受付を始めました。
 ここで、注文数は一気に跳ね上がったものと思われます。

 申し込めば必ず手に入るわけですから、随分沢山の人が注文したそうです。
 ところが、この店頭・ネット申込にも気づかなかった人も、当然多く居ました。
 2006年に入り、すべてが終わった後にわめく人達に対し、「なぜあれだけ長期間申込受付していたのに、予約しなかったんだ?」という疑問の声が囁かれました。
 ただねえ…偶然の妙というか縁というか、たまたまそういう情報をすっぽり抜かしてしまうケースって、多々あるものなのですよ。
 そんな「タチの悪い偶然」に見舞われてしまった人達は、それでもなんとか入手できないものかと画策します。

 そんなある日、アクアプラスの通販サイトで、若干数ですがドリマガ版を販売するという情報が流れました。
 恐らくこれが最後のチャンスになるだろうと思われたもので、発売予告日、凄まじいアクセスが集中しました。
 しかし、このサイトはなんとしたことか、トップページのみならず通販ページまですべてがフラッシュで作成されているという「ユーザビリティ完全無視」の極悪レスポンスサイトでして、リロードも効果が薄く、ページの切り替わりも極遅な上、さらにアクセス過多になったものですから、もはやほとんどその機能を発揮できなくなっていました。
 その上、商品そのものはたった5分未満で完売!
 長時間モニターの前でねばり続け、ちょっとトイレに行って戻ってきたら、その間にすべてが終わっていたというケースもあったとか。
 実はこの時、転売目的の人達もかなりアクセスして来ていたのではないか、という見解もあり、争奪戦は想像を超える凄い規模だったようです。

 で、これで終わりだと思ったら。
 実は、まだありました。

 発売後、なんとコトブキヤが、予約キャンセル分の実売を店頭で始めたのです。
 これは平日の日中だったもので、当然ながら、まともな時間に仕事に就いている人達はまったく手が出ませんでした。
 しかも、事前情報なしのゲリラ的販売だった上、過去「たとえ予約キャンセルがあっても、決して店頭で売る事はない」と信じ込まれていた部分もあったため、虚を突かれた人も多かったようで、ここでもかなりの人が泣かされました。

 結局、こんな背景があったため、オークション上ではいつまでたっても出品が途切れないという「よく考えたらすごい状況」にも関わらず、いずれも9000円〜15000円単位の落札額が付きまくり、順調にさばけて行きました。
 その流れは、これを書いている現在も止まっていません。
 もう、さすがにかなりの人に行き渡っているのではないか、とも思わされるのですが、未だにすごい数の入札があるという事は、やはりそれだけの牽引力のある商品だったのでしょうねえ。
 ここは純粋に評価したいものです。

 が。
 そんな状況に目を付けたのか、いつの間にか出品物の中に「パチモノ(海賊版)ドリマガ版」が混じるようになりました。

 いつ頃からの流通なのかはもちろんわかりませんが、多分三月辺りから頻繁に見られるようになったのではないかと推測します。
 オークションで、海外出品または海外からの発送のものは、ほぼ間違いなく海賊版で、特に複数出品している場合は、もう確定と考えていいでしょう。
 また一部の情報によると、UFOキャッチャーの景品として出回っている海賊版もあるようで、想像以上の独自流通を見せているように思われます。
 そんな状況なので、筆者も思わず一つ買ってしまったわけです。
 ええ、もちろんパチだとわかった上で落札しましたから。

 で、この海賊版ですが。
 上の写真の通り、確かにニセモノなのですが、よくありがちな「製品からの複製品」にしては妙にモールドや造形が細かく、またサイズも同等という奇妙な特徴を持っています。
 製品からの複製の場合、製品自体が原型になるため、完成すると、どうしても元より縮まります。
 ガレージキットの場合は例外で、オリジナルと複製版の製作工程がほぼ同じなので明確な劣化が起こりにくいのですが(リキャストみたいなものですから)、PVC完成品となるとそうは行きません。
 しかも、海賊版は台座がオリジナルとほとんど同じ…というか、多分同じ物を使用しているようで、ちゃんと裏側にドリマガとアクアプラスの名義が浮き彫りにされています(しかもエッジはしっかりしていて、複製にはまったく見えません)。
 さらに、下半身の凸ジョイント部分のみABS製という、オリジナルとまったく同じ部品構成になっているのも疑問です。
 さらに、よく見るとグラデーション処理するポイント指定が、奇妙なほどオリジナルと共通しているのです。

 以上の条件から推察すると、恐らくこれは、オリジナル製品の製作工程において、工場でエラー品として弾かれた部品をかき集めて組み立てた「限りなくオリジナルに近い海賊版」なのではないかと判断できます
 このようなものであるなら、ここまでオリジナルに酷似している事も納得です。
 また、箱のみオリジナルと大きく異なっているという点についても理解できます。
 最近は、ガレージキットでしか出ていない筈のフィギュアが、塗装済み完成品という触れ込みで、ブリスターから外箱まで作りこまれて流通するという「手の込みすぎた海賊版」も存在していますので、そこから考えれば、これくらいの行程は自然に行われそうなものです。
 もちろん、これは断定ではなく、高度な複製品である可能性も否定できないわけですが、今のところ、筆者個人はそう判断せざるをえないという状況です。
 どちらにしろ、こんなタイムリーなタイミングで大量に出回らせる事の方がすごいかな、とも思えるわけで、アジア系のパチエネルギーというかバイタリティには、別な意味で敬服させられました。

 ともあれ、個人的に、こういう物が出回るようになってしまったという現状は、完成品フィギュアバブル末期の兆候が見え始めた証拠なのではないか? などと勝手に勘ぐっています。
 なにせ、これを書いている時点でのヤフーオークションでは、正規品よりパチモノの方が出品数多いくらいなんですから。
 おかげで、相場も軒並ダウン。
 こういう事で相場が低下しても、あんまり嬉しくないんですけど。

 経験上、大人気ブームの最中にパチモノが出回ると、それを契機にそのジャンルは衰退を始めるというジンクスみたいなのを感じておりまして。
 アジア現地で販売している商品という範疇を出ないパチモノならともかく、最初から日本のユーザーを騙す目的で作られていたり、或いは国内の流通相場を乱すために流されてきたりした物が出てくると、たいがいそのジャンルは元気を失います。
 時には、それがパチではなく、海外版の正規品だったりする事もあるのですが(例:一部のSICとか)。

 個人的に、完成品フィギュアは頭打ちになるだろうと読んでいるので、そろそろ安定期になって欲しいものなのですが、その落ち着きを取り戻すきっかけがパチ流通だとしたら、ちょっと悲しいかなという気がします(もちろん、そればかりではないですが…あくまでジンクスの範囲で)。

 今回の商品は、ふと、そんな事を考えさせられた、ある意味貴重なシロモノでありました。

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