古物倉庫 第4回 ■ グリップキャラクター 円盤戦争バンキッド「バンキッドマザー」&「バンキッドベビー」
2010年2005年7月10日 更新
今回紹介するのは、これまで以上に年齢限定のアイテム、永大グリップの「グリップキャラクターシリーズ」です。
このパッケージ見て、「おおっ!」と思う人は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
永大グリップは、昭和40年代から50年代前半にかけて販売されていた、小型ダイカスト玩具のブランドです。
今回は、その中から「円盤戦争バンキッド」のメインマシン「バンキッドマザー」と「バンキッドベビー」をセレクト。
永大とグリップキャラクター、バンキッド自体の説明は後回しにして、まずは商品を見てみましょう。
左からバンキッドベビー、バンキッドマザー。
これが、グリップキャラクターのパッケージ。
ほぼすべての商品が、こんなブリスター形態で販売されてました。
当時の値段は、各480円。
今で言うなら、キャラウィールみたいな感覚で買えた商品だったわけです。
もっとも、キャラウィールなどとは比較にならないほどの商品数があったんですけどね。
(写真の丸内の番号は、シリーズナンバーだもんね)
パッケージ背面asバンキッドベビー。
取扱説明書はなく、この印刷面が説明書を兼ねています。
おや、今は無きタカトクの名称が。
パッケージ背面asバンキッドマザー。
バンキッドの主力玩具は当時タカトクから販売されていまして、「タカトクZ合金」というシリーズで、現在の超合金やポピニカに相当するアイテムが出ていました。
で、いわばそれの廉価版という形で、永大から発売されていたのがこれのようです。
他にも、タカトクがメインの「快傑ズバット」のズバッカー、「超神ビビューン」のベニシャークなどが、グリップ化しています。
バンキッドマザーのパッケージを上から撮影。
赤色のミサイルみたいなのは……後で説明します。
こちらは、バンキッドベビー。
グリップシリーズは、パッケージ内に収まっていてこそ、その価値があります。
ですから本来、開封するなんてもっての他なんですが。
それでは全然レビューになりませんから、思い切って開けちゃいました!
もちろん、この撮影のために初めて開けたんです。
ホチキス止めされている所を丁寧に取り外して。
バンキッドの主力メカであり母艦でもある、バンキッドマザー。
主翼と垂直尾翼の上に、なんかバンキッドベビーに良く似た形のものが。
実は、バンキッドベビーというのは、元々マザーに合体している小型戦闘機なんです。
だから、対比としてはこんな感じになってしまうんですね。
横から撮影。
バンキッドマザーの特徴ともいえる、機首部分の「目のような形の」インテーク? がモールドされていないのが残念。
ちなみに、上面中央部分にある赤い丸パーツは、なんだかいかにも押せそうにみえますが、実際は何もありません。
バンキッドマザー背面。
ベビーのパーツの凹ジョイントがえらくきつくて、こんなものしか入らない…
ひっくり返すと、こんな感じ。
コロ走行が可能なのが嬉しい。
で、バンキッドマザーは、実は機首部分も分離するんです。
この商品でも、分離ギミックはしっかり再現されています。
ところが、分離スイッチを押しても…パーツが飛ばないし、外れない?
なんでだろうと思ってよく見たら、矢印部分に、しっかりとセロテープが!
このセロテープは、もう30年くらいくっつき続けていたもの。
こんなに綺麗にくっつき続けていたというは珍しいケースですが、いずれは糊部分が劣化して本体を汚し、削らないと取れないような状態にされてしまいます。
という訳で、速攻除去して、接着面を徹底洗浄!
バンキッドマザー、完全分離形態。
某ゴッドフェニックスのように、全5機のメカとして個別活動可能。
機首部分は、「バンキッドエース」という単体の戦闘機になります。
本当は、この状態からさらに翼が生えてくるんだけど。
そして、こちらがバンキッドベビー。
つまり、マザーに搭載されている戦闘機を単体でグリップキャラクター化させたって訳です。
横にあるのは、バンキッドマザー付属のベビーパーツ。
ちなみに単座式です。
どういうものかよくわからないという人は、まず「秘密戦隊ゴレンジャー」のバリブルーンを思い出してください。
あれには胴体部分と主翼末端部にも単座コクピットがありますが、それがすべて分離して、個別に戦闘機になったようなものが、バンキッドベビーなのです。
背面部。
ものすごくストレートなデザインです。
裏返すと、こんな感じ。
こちらもコロ走行可能ですが、マザーと違ってちょいと仕掛けが。
前輪にあたる青色の車輪は、機首先端のヤリみたいなパーツと連動していて、転がすとこれを出したり引っ込めたりします。
これが、なかなか滑稽で可愛らしい。
キャノピーは開閉可能。
残念ながら、搭乗者モールドはなし。
なおこの写真には、付属のミサイルを装備させていません。
途中の撮影までは装備させてたんだけど、実はミサイル発射ギミックが経年劣化で死んでいる事が判明!
はめ込むと取り外せなくなってしまうようになっちゃいました。
なんで、慌ててミサイルを引っこ抜いてから撮影したわけです。
あげくに、ミサイルに触ると、なんとなく表面がベタベタしてるし…
パッケージ状態を、キャラウィールと比較。
かなり小さいということが、よく判るでしょう。
【買ってみて一言】
永大グリップは、冒頭部に書いた通り、今から約30年くらい前に数多くの玩具を販売した一大メーカーでした。
現在のような、玩具メーカーというとバンダイやタカラ、トミーくらいしか名前が出てこないような時代と違い、当時は他にも沢山のメーカーが、それぞれの特色を持ったアイテムブランドを展開・販売していました。
永大は、特に亜鉛合金を用いた小型玩具の販売展開をメインとしていたようで、「グリップキャラクター」の他にも「グリップゼッケン」という、実在する車両や船舶、飛行機などの商品ブランドもありました。
もちろん小型玩具たけでなく、大型の「グリップジャンボ」などというシリーズもありました。
その辺で、確か「破裏拳ポリマー」とか「ウルトラマンレオ」とかもあったような気がする…スタンダード超合金みたいなスタンスで発売されていたウルトラマンレオは、ちょっとした衝撃でした。
それから、プラモデルなども色々出していました。
決して合金玩具だけではなかったんです。
今回紹介した「グリップキャラクター」は、480円という低価格にも関わらず亜鉛合金をふんだんに使用し、可能な限り特徴的なギミックを盛り込み、さらに精密な造形を売りにしていました。
このバンキッドシリーズだけを見ると、あまり精密に感じないのですが、ウルトラマンタロウのZATメカシリーズなどは溜息物で、特にヘリコプター「ドラゴン」などは、その情報密度の高さと高級感が合わさり、脇役メカであるにも関わらず素晴らしい個性を発揮しています。
台形のブリスターパッケージも特徴的で、これは専用ショーケースとしての効果も持ち、アイテムの良さをさらに引き立てていました。
またこのパッケージがコレクター魂を揺さぶりまして。
グリップ好きにとって、このパッケージが並んでいる光景というのは、果てしなくたまらないものなのです。
昔は、玩具店の一角やお祭りの出店でこれがズラリと並んでおり、少ないお小遣いでも買えるという事もあって、本当に楽しく選別していたものです。
グリップキャラクターシリーズは、どうやら各番組のメインスポンサーから権利の一部を引き継いで商品を販売していたようです。
今回の「バンキッドマザー&ベビー」はタカトクの表記がありましたが、「宇宙の騎士テッカマン」の時は、タカトクではなく中嶋製作所の表記になっています。
この辺、どういうやりとりがあったんでしょうね。
残念ながら、永大は昭和50年代半ばを待たずしてシリーズを止めてしまい、ひっそりと業界から姿を消してしまいました。
また、その活動の歴史を記した資料もほとんどなく、今となってはその概要すら不明瞭になっています。
さらに、グリップキャラクターシリーズの全ラインナップなどの資料もほとんど見かけられず、もしすべて知っているという人が居たら、それだけで相当自慢できると思われるくらいです。
とりあえず、今後も出来る限り調べてみたいと思います。
――で、今度は「円盤戦争バンキッド」の説明ですね。
この番組は、1976(昭和51)年10月3日から1977(昭和52)年3月27日まで、日本テレビ系列で全26話放送されました。
カテゴリーとしては特撮ヒーロー物なのですが、当時のUFOブームの影響下にあったせいか「未確認飛行物体との戦い」というスタンスが強く、ヒーローのバトルよりも、母艦バンキッドマザーが、敵宇宙人のUFOをいてこます印象の方が強くなってしまっています。
バンキッドとは、五人の少年少女が変身した集団ヒーローで、ゴレンジャーの始祖とも言われ……
うそですごめんなさい。
一年と半年くらい、こっちの方が後出です。
面白いのは、真っ当な大人的ヒーローは主人公の天馬昇ことペガサス(奥田瑛二が演じていた)ただ一人で、残りの四人はせいぜい小学生程度のガキんちょばっかりで構成されていたということ。
レッドがペガサス、ブルーがオックス、ピンクがスワン、イエローがドラゴンとラビット…という構成で、なんとイエローが二人も居るんですな。
一応、この二人は体格差で区別が付くのですが、基本的なデザインは全員共通なので、マスクだけだと全然わかりません。
また、中身も本当にお子様だったのか、等身大アクションもかなりショボく、あまり印象に残りません。
ただ、女性メンバー・スワンの体型がくっきりと浮き出てしまうスーツは、一部のロリペドラーに大変好評だったとか。
敵がメカで攻撃してくると、バンキッドマザーを呼び寄せてこれに搭乗、戦闘…という流れが、スーパー戦隊の巨大戦への移行の先駆けのようにも見え、なかなか趣深いものがあります。
第一話冒頭から、とてつもない長さのナレーションで説明が始まり、登場人物が会話を始める頃にはおおまかな概要が把握出来てしまっているという、恐ろしい詰め込み具合の内容でした。
民家の和室で行われる大特訓シーンは、必見です。
20年後に母星が滅んでしまうというブキミ星人は、現在の地球の子供達を無気力化させ、20年後に「家畜」として回収しなければならないという、健康な一般人には永久に理解不能な使命をもって、随分遠大な侵略作戦を展開してきます。
それに立ち向かうのが、バンキッド隊…というストーリーベースだったのですが、その最終回の内容のおポンチさはいまだに語り草になっています。
なにせ、いきなり敵の幹部が詫びを入れに来るんだもん。
そして、侵略を辞めて他星への平和的移住を行うと約束して、帰っていっちゃうし。
それまでの26話に渡る大激戦(極端な誇張表現)は、いったいなんだったのだろう…と思わずにはいられず、涙と汗と何かを垂れ流しそうになってしまう、特撮史に燦然と輝く名最終回でした。