これ以上小型化するのも考え物
これまでに発売された玩具の中で、複数のメカが合体する事によって一体のロボットまたは巨大メカになるタイプは、ものすごい種類に及ぶ。
しかし、その中で「合体前の形態が設定通りの大きさ対比に準じている」というものは、実は意外と少なかったりする。
これは、
- 合体前の形態・プロポーションを優先する
- 合体後の形態・プロポーションを優先する
- 一応両立を目指す
これのどちらを優先して商品デザインするかによって大きく変わってくる訳だが、現実的には、いずれを目指しても大なり小なりバランスが崩れてしまう傾向が生まれるようだ。
これによって、厳しい問題が発生する事もしばしばある。
例えば、5体のメカが合体して一つのロボットになるが、合体前の個体がそれぞれ大きさがほぼ等しいものとして画面上で再現されていたとする。
そのメカの構成のうち一体が胴体ほぼ全部で、もう一体が腕一本だけを構成するものだとしたら、大きさが等しい筈がない。
物理的な問題で、玩具化した場合はそれぞれが相応しい大きさにされる訳だが、それを手にしたユーザーには大きな不満が残ってしまう事も起こりうる。
これは一見仕方ないようにも思えるが、実際はそうも言えない。
過去、玩具メーカーが乱立し開発コンセプトがまちまちだった時代ならいざしらず、現在はたいがいメーカーがデザインを先に起こし、それが本編を制作する会社へと卸され、そこで設定に準じた描かれ方または撮影のされ方が考慮される。
つまり、玩具メーカーでデザインされる段階で、この“対比”の検討がどれほど行われるかが決め手であると言えるのだ。
玩具のプレイバリューは、どうしても基本的に番組内での表現にイメージが引きずられてしまう。
「超合金魂 コンバトラーV」で、本編のバンク同様の合体をやってみた人も結構多いと思うが、どうだろうか?
そういった事からも、本編内でのメカの表現が現実の玩具と大きくかけ離れたものであると困ってしまうのだ。
あくまで傾向だが、近年のバンダイは、これの両立を目指す方向でデザインしているように感じられる。
かつては「スーパー〜」等の名称が付く2大合体ロボなどでかなり無茶なデザインをしていた事もあるが、グレートイカロスやスーパーギャラクシーメガなどで一応の完成型を見た後、合体スタイル自体を再検討し、現在に至っているようだ。
一方で、タカラなどは先に合体すべきモチーフを選択し、それがどう変形・合体するかというコンセプトが決定した段階でデザインが行われるようだ。
これだと「ヘリコプターとバイクが同じ大きさで、しかも両方腕になる(ビッグボルフォッグ)」や「クレーン車の下にダンプカー、両脇には分離したパワーショベルがぶら下がる(ビルドタイガー)」「20メートル級ジャンボジェットが、合体後は約十数メートル程度のロボットの胴体になる(スカイセイバー)」などという荒唐無稽な表現が生まれてしまうが、その矛盾は豊富なギミックやプレイバリューの幅で補っている。
これらの諸問題を解決するためには、
- 大きさの違いなどの絶対個体差を、本編内でも忠実に描写する。(例:ダイナロボ ゴーディアン各3体ロボ 等)
- 視聴者に悟られる前に、豪快に勢いで流す。(例:勇者シリーズ 等)
- はじめから各個体に大きな差が出ないように、綿密なデザインを行う。(例:ゴッドシグマ 無敵将軍 VRVロボ 等)
などの工夫が必須となる事は間違いない。
ただしこれでも完璧なものが生まれるケースは希なので、ある程度の差異には消費者側が目をつぶらなければならない場合もある。
ガオシャークなどの場合も、そういったケースの一端なのではないかな、という事。
※筆者追記:後に2005年度作品「魔法戦隊マジレンジャー」にて、かなり理想的な対処が行われている。
各マジマジンはCG合成で身長差を再現されており、マジキングのボディ大半を構成するマジタウロスの肩に、胸部のごく一部分になる小型のマジフェアリーが乗る(両方とも着ぐるみ)など、画期的な映像を作っていた。