第62回 ■ ニンテンドークラブ・プラチナ会員特典 復刻版ゲーム&ウオッチ「ボール」
2010年11月20日 更新
ここしばらく、フィギュアーツのレビューばっかりだったので、反省の意味も込めて全く異質な商品を取り扱ってみることにしました。
今回はなんと「ゲームウオッチ」。
1980年代前半を中心に日本中で大流行した、「時計機能つき携帯ゲーム機」のはしり。
現在のDSやPSPの始祖にあたります。
んで、なんでそんなものが「古物倉庫」でなくこっちでレビューされるのかというと、タイトルの通りこれが復刻版だからです。
以前「超合金・帰ってきたドラえもん」もこちらのコーナーで取り扱ったので、今回もこっちにしたというわけです。
ニンテンドークラブのプラチナ会員に向けて配布される特典の、2009年度版アイテムがこの「復刻版ゲームウオッチ・ボール」。
到着日は、だいたい2010年4月22日以降なので、商品としてはまだ最新のうちに含まれます。
要するに、こじつけって奴っす。
てなわけで、今回は二十代の方完全においてけぼりな内容です。
なんせファミコン発売より昔のゲームですからね。
ただし、当時小学生くらいだった人達にはかけがえのない思い出の逸品になります。
ゲームウオッチは、国内では80年から85年頃を中心に発売されており(海外展開も含めると実際は90年代まで続く)、その数も約60種類にも及びます。
その中で何故「ボール」が復刻されたのかというと、これがゲームウオッチの記念すべき第一作目だったからです。
当時品の発売日は1980年4月28日。
奇しくも、プラチナ会員特典が配送された日は、発売日からほぼピッタリ30年後にあたるわけです。
恐らくこれも狙っていたのでしょうが、なかなか心憎いものを感じます。
ゲームウオッチを当時から知っている人の中でも、最初期の「シルバー」までは知らないってことが意外によくあるようです。
ゲームウォッチには様々な種類が存在するのですが、「シルバー」は最初期に発売された5作品を差します。
「ボール」の他には、「ファイヤ(ビル火災現場から転落者を救い救急車に投げ運ぶ)」「バーミン(モグラ叩き)」「ジャッジ(対戦型ボタン早押しゲーム)」「フラッグマン(記憶力ゲーム)」などが存在しました。
ゲームウオッチというと「アラーム機能」「200点でミスがクリアされる」など様々な特徴が思い浮かびますが、この「シルバー」にはそういった特殊機能は全くありません。
これらは後の「ゴールド」から始まった付加機能で、「シルバー」はデジタル時計とゲーム(2種類のモード)のみという、無駄のないストイックな仕様でありました。
そしてこの復刻版も、当時の仕様に極力忠実に作られています。
尚、当時といくつか仕様が変わっている点があります。
ゲームスタート時に方向キーとGAMEボタンを同時押しするとミュート機能が作動。
加えて、ゲーム中でもTIMEボタンを押せばミュートのON・OFF切り替えが可能になりました。
ゲーム内容に触れてみましょう。
「ボール」は、要はジャグリングゲームで、球を落とさないようにひたすらキャッチし続けるという単純なものです。
LEFTボタンを一回押すとジャグラーの両腕が(向かって)左に一段階動き、RIGHTボタンを押すと右に動きます。
一番左に手が寄っている状態から、一番右端に手を寄せるためには、RIGHTボタンを二回押す必要があります。
ボールは常に一つずつ動き、同時に複数動くことはありません。
こう書くとものすごく簡単に思えますが、得点が上がるごとに移動速度が速まり、しかも内側の弾道は外側より早く周回するため、だんだんキャッチするタイミングが掴みづらくなっていくというトラップが仕組まれています。
手の位置の高さまでボールが来て、次のタイミングまで触れずにいると落下したことになりミス(ゲームオーバー)となります。
逆に言えば、球が手の位置に辿り着いてからでも後から手を添えれば無問題です(「ピッ」というキャッチ音がすればとにかくOK)。
こちらは、「GAME-A」。
二個の球でジャグリングを行うというもので、一回キャッチするごとに1点加算。
ボーナス特典や補助アイテムなどのお得機能は一切ありません。
たった二個なら割とカンタンじゃん! …と一見思えますが、実はこれ後述の「GAME-B」より難しいかもしれないのです。
最高得点は9999点※で、その後は0に戻り更に続きます。
球の取り損ね(ミス)はたった1回でゲームオーバー。
得点が5点に達した時点で球が加速を始め、下二桁99点までどんどんスピードアップしていきます。
下二桁が00点になった時点でスピードは一旦治まりますが、スタート直後のスピードには戻りません。
それだけではなく、280点を超えるとボールが分身し、益々キャッチのタイミングがわかり辛くなるという恐ろしい仕掛けまで存在します。
この状態で、9999点まで行くためには相当な時間と根気、集中力が求められます。
※wikipediaでは999点と誤表記されている
この1ミス終了1点加算で9999点MAXというのは、全シリーズ中でもトップクラスの難度です。
同じく9999点の「タートルブリッジ」等は、ボーナス加算があるのでこれよりまだマシです。
この後のシリーズで3ミス制・999点MAXが基本となるわけですが、この頃はまだ試行錯誤の段階だったのでしょうね。
こちらは「GAME-B」。
三個の球で行うジャグリングで、一回キャッチするごとに10点加算。
最高得点は9990点で、単にカンスト?を目指すだけならこちらの方が「GAME-A」よりは早くて楽です。
ただし、一個増えた球の扱いはハンパなく難易度を高めていて、スピードの遅い頃はまだ何とかなっても、加速していくごとにだんだん球の落下順番がわかり難くなってきてしまうという難しさが際立ちます。
当然ボールの分身もあり、こちらでは2800点から発生します。
「GAME-B」で球を落とした(ミスした)状態。
「ゴールド」以降は3ミス制が一般的になりましたが(元祖はシルバーの「ファイヤ」)、先のようにこちらは一回でゲームオーバーですから、緊張感がハンパありません。
以上、ゲーム内容はオリジナルと全く同じもので、これについては完全な移植と言って間違いないでしょう。
んで、こういうのはいくら文章で説明してもわかり辛いと思いますので、アニメーションGIFを作成してみました。
キャラの形状、球の大きさとスタート位置・軌道、球の速度は極力実機と同じにしています。
まずは、「GAME-A」から。
すぐに終わってしまいますが、だいたいこんな風に動くと思っていただければ幸いです。
同じく、こちらは「GAME-B」。
「GAME-A」より少し長めにジャグリングします。
一つ球が増えただけでこんなに変わるというのが、うまく伝わればいいなと思います。
ゲームオーバーになっても、まだ腕が動かせたりします。
終わったまま5分ほど放置しておくと、自動的に時計表示に戻ります。
実機画面での、キャラクターの動きです。
まずはスタート時のデフォルト(素立ち)状態。
右寄り。
左寄り。
ところで、これを書いてる最中にふと思ったんですが。
このキャラクター(Mr.ゲームウオッチ?)って、今まで個性豊かなモヒカンヘアだとばかり考えていたんですが、ひょっとして「上向いてるだけ(突起は鼻)」なんですかね?!
今まで目線だけで上向いてるものだとばかり思ってたんですが、ひょっとして画面に背を向ける形で顔を上に向けてるんですか?
ゲームウオッチの特徴として、電池を入れると全部のパターンが表示されるというものがありました。
(時計を合わせるためにACLボタンを押した時もこうなる)
今回もこれは忠実に復刻されており、とても懐かしい気分にさせられます。
尚、全パターンといってもキャラクターの手足だけは最低限のものしか表示されていません。
これは原典でも同様で、他では「バーミン」等でも見られるものです。
こちらが「オリジナル版」の全表示画面。
古い物で液晶画面を分解修理したため、色味が変わっていますが、表示内容に問題はありません。
ひょっとしたら、腕や脚が沢山生えていたら気持ち悪がられる、とでも思って配慮されたのかもしれませんね。
だがそれでも完全フル表示は見てみたいと思うのが人情というもの。
先のアニメーションGIFの原型になった、真・フル表示をご覧いただきましょう。
まるでアシュラマンのようだ。
ソフト面は完璧なので、今度はハード面の比較を行ってみます。
まずは、前面。
左が「復刻版」で、右が「オリジナル版」つまり当時品です。
経年による傷や汚れ、カスレを別にすれば、スチール部分の再現や各部の文字プリント、ベースの色など完璧に同じ物になっています。
中央部分のボタンの色も違うようにみえますが、これは単なる経年劣化で実際は全く同じです(分解時に確認)。
このように、正面を向けて飾っておく分には全く変わらないという、とても嬉しい造りになっています。
ところが、裏面は全くの別物でした。
先と同じく、左が「復刻版」で右が「オリジナル版」。
ネジの位置と数、ネジの種類(オリジナルのマイナスに対し、復刻はプラスになっている)、電池蓋の位置と形状、表記部分の位置とレイアウトなど、全く独自のものになっています。
「オリジナル版」の日本製表記に対して、「復刻版」は中国製。
この辺は時代の変化を感じさせます。
電池蓋を取った状態。
今時のようにネジで蓋を固定する方式で、CR2032型ボタン電池を一個使用しています。
「復刻版」の裏側の表記は以下の通りです。
(Nintendo)
“マリオの帽子のマーク”
club.
nintendo
----------------------
GAME & WATCH
MODEL NO. : RGW-001
RATING : 3V
BATTERY : CR2032
(c)1980-2010 Nintendo
MADE IN CHINA
対してこちらは「オリジナル版」の裏面。
スライド式の蓋の下に、LR-43のボタン電池を2個入れて使用します。
裏面の表記は以下の通り。
MODEL NO. : AC-01
RATING : DC3V --- 0.0002W
BATTERY : LR43(orSR43)×2
(c)1980 BY Nintendo
PAT. PEND. MADE IN JAPAN
今回の復刻版は、専用の紙製スタンドが付属します。
「ゴールド」以降定番になったスタンドアームは、この頃まだ存在していなかったため自立は不可能でしたから。
スタンドは簡単に組み立てられる簡素なものですが、しっかり支えてくれて重宝します。
ただし本体をロックするほどの保持力はないので、スタンドだけ持って移動すると本体は当然落下します。
スタンド裏側。
次に、パッケージ。
当時品レイアウトを忠実に再現しているナイスなものです。
さすがに当時品のパッケージは持っていないので比較出来ませんが、だいたいこんな感じのものでした。
パッケージ裏側には懐かしい電池の入れ方イラストと、「ボール」についての説明書きが。
こちらも、オリジナルとほとんど同じデザインレイアウトになっています。
絶縁体引き抜き形式になっているところに、時代を感じますが。
欲を言えば、電池は別添えにして欲しかったな……
大変残念なことに、内箱はこの通り厚紙製ボックスになっちゃいました。
復刻っていうくらいなんだから、ここは発泡スチロールにして欲しかったところです。
確かに丁寧に梱包してあるので問題はないんですが、箱を開けた時の雰囲気というか当時の喜びについても注意を払っていただきたかったところです。
説明書も、同時の物と同じデザインレイアウト。
真っ白な紙じゃない所がよくわかっているなという感じなんですが。
これまた残念ながら、説明書はミニブック形式ではなくなり、折りたたみ形式に変わっておりました。
当然ながら、内容はほぼ全て新規。
個人的には、説明書も当時のままに復刻してもらい、相違部分または書き切れない部分だけ別添えのペーパーで追加説明するというものにして欲しかったものです。
まあ、それでもこれだけやってもらってれば充分と言えますが。
尚、オリジナルに添付されていた「ACLボタンについての説明書き」の黄色い紙はさすがになく、説明書内で触れられています。
他のゲームウォッチシリーズと比較してみましょう。
先で触れた「ゴールド」シリーズの第一弾マンホールとの比較。
大きさは同じで、プレート部分の色とACLボタンの横にある「ALARMボタン」の存在が目立ちます。
本当は、ボタン2つの「ヘルメット」と比較すべきなのかもしれませんが、持ってないのでやむをえず。
両者の発売日は約9ヶ月開いてますが、その間にゲーム内容も機能もものすごく進化したのがわかります。
続けて、「ワイドスクリーン」シリーズの一つポパイと比較。
一年と二ヶ月未満で、こんなに様変わりしてしまいました。
キャラクターは緻密な線画になり、ゲームの内容もバリエーションが増加。
「ポパイ」の前に発売された「パラシュート」「オクトパス」、後に発売された「シェフ」「ミッキーマウス」も含めて考えると本当に凄い進歩ぶりでした。
ちなみに、「ACL」「ALARM」ボタンが単なる穴ではなく、蓋付きになった点も大きな変化です。
筆者が持ってる一番新しいゲームウオッチ「ドンキーコングホッケー」との比較。
さすがにここまで来ると、全くの別物ですなあ。
4年と7ヶ月も開いてるし、この頃はもうゲームの方にベクトルが向きすぎてた感があるから、原型止めないほど変化するのもやむなしといった所ですが。
他社製品とも比較。
エポック社の大人気ゲーム・ポケットデジコム「モンスターパニック」と。
長さといい厚みといい、だいたい一周り大きい感じです。
以上、復刻版「ボール」でした。
復刻版というより、「ボール」自体のレビューだったような気もするけど、たまにはこんなのもいいでしょう。
任天堂はもっと精力的にゲームウオッチを復刻すべき! と思ってやまない筆者です。
まー、末期の様子を知ってると難しいってのは想像出来るけどね。
【貰ってみて一言】
ゲームウオッチのシルバーシリーズは、現在入手が大変困難です。
ゴールド以降は、状態すら気にしなければ割とよく見かけるのですが、とにかくシルバーは難しい上に、美品なんか求めたらもうとんでもない出費と探索時間を要してしまいます。
ゲームウオッチ系コレクターにとってある意味夢のアイテムになっているわけですが、今回の復刻版は新品のシルバーが手に入るわけですから、本当に素晴らしいことです。
出来れば他のシリーズも復刻してもらいたいものですが、「ボール」みたいに“ゲームウオッチ一作目”といった触れ込みがないと厳しいかもしれませんね。
さて、マニアにとってはありがたく、当時を過ごした人達には懐かしい逸品なんですが、そのどちらでもない人達からしたらどうなのか?
色々な個人ブログを拝見してみたところ、どうも非世代の人達にとっては全く関心を引かない物のようです。
すごいのになると「こんなの送られても困る」といった否定的なコメントも。
まあ、そりゃ今更30年前のゲーム貰っても、ありがたみは乏しいでしょうからね。
当然といえば当然ですが、温度差の激しさにどうしても驚かされてしまいます。
さて復刻版「ボール」ですが、ソフト的にはともかくハード的には完全復刻とはいえず、ここまでしたんならもっと凝って欲しかったなというところでしょうか。
大変よく再現されていてそれで充分感動物ではあるのですが、機体表記などはあえて当時のままにして欲しかったものです。
色々制限もあるんでしょうが、復刻なんだしそこまではっちゃけて欲しいわけです。
また、パッケージや説明書はやはり残念。
この辺については、復刻版というものに対する任天堂の解釈の違いを思い知らされた気がします。
まー、あくまで特典だし贅沢なのはわかりますが。
それにしても、懐かしい実機が手の中に30年ぶりに収まる感覚は、やっぱりたまらないものがありますね。
なんだかんだで、結論は任天堂グッジョブ! になるわけであります。
ちなみに、復刻版「ボール」は2010年11月現在だとヤフオクで2000円前後で入手可能のようです。
やっぱり需要がないからなのでしょうか。
当時品を狙うよりは遙かに難易度が低いですし、興味を覚えた方は今のうちに狙ってみてはいかがでしょう?