第13回 ■ バンダイ 装着変身「仮面ライダー轟鬼」
2005年7月10日 更新
2005年6月発売分の装着変身は、ちょっと変わった販売形態をとりました。
まず、「装着変身 仮面ライダーブレイド・キングフォーム」と「同・仮面ライダーグレイブ」を6/18に発売し、なぜか一週間ほど遅れた6/24に、「装着変身 仮面ライダー轟鬼」を発売しました。
個人的には…というか金銭面的には、この微妙にズレた発売がとてもありがたかったのですが。
しかし、超合金ナンバーは轟鬼→キング→グレイブという順番で「GD-85・86・87」になっていたり。
何か理由があって、本来同時期に発売する筈だった三体を、二・一に振り分けたようです。
で、今回は一体だけ遅れて登場した轟鬼をご紹介。
●バンダイ 装着変身「仮面ライダー轟鬼」 定価2,100円(税込)
- 轟鬼素体フィギュア
- 轟鬼頭部(マスク)
- 轟鬼胸アーマー(前後各×1)
- 音撃震・雷轟(ベルトのバックル)
- 音撃弦・烈雷(武器)通常形態
- 音錠(変身アイテム)・通常形態
- 音錠・展開状態
- ディスクアニマル(携帯時)×3
- ディスクアニマル用ホルスター
- ディスクアニマル用シール
(3枚分裏表・計6枚) - 取扱説明書
現行ライダー三体目の装着変身化。
うおお、緑だ! なんてグリーンな緑だ!
テレビ本編だと全身黒じゃねーか、なんでこんな色なんだよおぉぉぉ!!
…とお嘆きの方もいるだろうが、実はアレ、本当は濃い緑色らしい。
だから決して間違えた配色ではないんだけど。
●映像内のキャラクター
僕、戸田山登己蔵は、持田ひとみの親戚で、元警察官。
鬼に変わる男の人と出会って、 何かが変わってきました。
斬鬼さんという人の下で修行して、やっと変身できるようになったのですが、その斬鬼さんが負傷してしまい、引退すると言い出してしまって…
おお、これであらかた説明が済んでしまう。
もう少し真面目に説明すると、轟鬼こと戸田山登己蔵(こう表現していいものかどうか微妙なんだけど…)は、弦使いの鬼・斬鬼に師事し、最近ようやく一人前の鬼として認められたばかりの熱血漢。
ブレスレット型のアイテム・変身鬼弦「音錠」を使って変身するが、この内部には弦が数本仕込まれており、これを鳴らす事で変身のための音響を発生させる。
引退した斬鬼から引き継いだエレキギター型の音撃武器「烈雷」を使い、次々に魔化魍を倒していく。
人柄は良いのだが、真面目さとガサツさがバランス悪く共存しているような性格で、連日はりきって魔化魍を追い詰め退治するのはいいのだが、ディスクアニマルを地面にバラまいてから起動させるため、無駄に破損させてしまったりする。
轟鬼自身、特に目立った強さや特殊技は持っていないが、ひたすら真っ直ぐに魔化魍などに立ち向かっていく姿はとても勇ましく、新人とはいえなかなかの頼りがいを感じさせる。
時には、たった一回の攻撃で童子と姫を同時に撃退したりと、意外に応用が利く一面を見せたりする事もある。
基本的な戦術は、まず武器モードの烈雷を剣や槍のように使い、敵にダメージを与えていく。
その後、魔化魍の身体に烈雷の末端部(ギターの底部)にある鬼石付きの刃を突き立て、ベルトから取り外した雷轟を烈雷本体部分に接続させる。
すると、剣先のような形をしていた烈雷が展開し、エレキギターのような形に変型。
この状態で雷轟の弦を激しくかき鳴らすと、その音が音撃となって魔化魍の体内に浸透し、爆砕に至る。
烈雷を鳴らす直前の「音撃斬、雷電・激震!!」という叫びと、その後の「調子にノリノリまくったギターの乱れ弾き」は、どエラくカッコイイ!!
特に、初始動の回ではハードロック・ギタリスト張りの演出が加えられ、なんかものすごく間違っているんだけど、とにかく良し! な映像をたっぷり見せてくれた。
もちろん、筆者はこの場面を見て、一撃で惚れてしまった。
師匠の斬鬼もこれと同様の攻撃をするのだが、演出の都合かあまり派手な演奏場面がないままで終わってしまったのが残念だ。
筆者は、この音撃の仕組みや使用方法は理屈的にどうかと思うのだが、それを踏まえても、轟鬼の音撃演出が劇中でもっとも好きだったりする。
これで、最後に興奮しまくった轟鬼が烈雷を岩や地面にたたきつけてコナゴナにぶっ壊してくれれば、もう文句ナシなんだが。<違
なお、戸田山は鬼と認められる前から変身能力を身に付けていたが、その時は「戸田山変身体」と呼ばれていた。
本来は斬鬼の名前を引き継ぐ筈だったようだが、それを辞退し、新しい名前「轟鬼」を授かった。
斬鬼曰く「“戸”田山だから、“ト”ドロキ」なんだそうだ。
(注:劇中に登場する鬼は、「名字と名前の頭文字」と「鬼の名前の頭文字」が共通になるように設定されている)
轟鬼は、バイクを持たず斬鬼との活動時代から使用している車を利用している。
文句なしの「仮面ドライバー」だ。
●セールスポイント
装着変身・轟鬼は、言うまでもなく響鬼系装着変身のフォーマットに準じているため、装甲らしい装甲がほとんどない。
残念ながら、劇中で行った「フルオープンモード」も、再現不能。
マスクは取り外せるので、「顔だけ変身を解く」状態は可能だが。
今回は、威吹鬼の時と違って胸アーマーが外れやすいということはないようだ。
轟鬼は、武器の「烈雷」が最大の注目ポイントになっている。
本商品では、烈雷の変型前・変型後が両方付いており、サイズも手頃、しかもベルトの雷轟を本当に接続できるため、本編と同じプレイバリューが楽しめる。
実は、ベルトのバックルを絡めたプレイバリューで、劇中のギミックを再現できたのは、この轟鬼が初めてなのだ。
響鬼のバックル「火炎鼓」は巨大化しないし(当たり前)、威吹鬼の「鳴風」はサイズが合わない上に変型も出来ないし(常識)。
だから筆者は、商品情報を手に入れるまで「よもや轟鬼も、すでに雷轟がくっついた状態の烈雷が入っているのではあるまいな?」などと邪推していた。
個人的には、この雷轟接続ギミックがあるだけで、かなり好印象になっている。
烈雷は、装着威吹鬼の烈風同様、大変細かく作られており、ヘッドからネック、フィンガーボード部分はプラ製のため、ヘタることはない。
なんと、この大きさにも関わらずストリングが一本一本丁寧に塗り分けられており、かなり驚かされる。
それだけでなく、ペグやヘッド部分の紋章までも、しっかり手が加えられている(←各用語については、検索サイトで調べよう!)。
このこだわりようは、なかなかにとんでもない。
ボディ自体はPVCで、これがジョイントで接続されている。
つまり、ネック部分を引っこ抜けるわけだが…おお、お艶さんの隠し武器が、よもや仮面ライダーの玩具で再現できるとは!<まて
ボディ表面のディテールも見事なのだが、なんと裏側のモールドまでしっかり作りこまれており、さらに驚愕させられる。
わずかに対比が小さいかな〜とも思わされる事があるが、決して小さすぎる事はないし、何よりここまで作りこまれていると、文句もあまり出てこなくなる。
烈雷は、ここしばらくの装着変身武器の中では、トップクラスに相当する旨味を持ったアイテムだと、断言しても良いだろう。
だが、烈雷の魅力はそれだけではない。
それ単体だと、あまり面白みを感じない轟鬼本体と絡ませる事で、さらに凶悪さ(褒め言葉)に磨きがかかるのだ。
轟鬼本体は、今までの響鬼系装着変身素体の欠点をそのまま継承している上、妙に馬面なマスクが加わり、バランスの悪さが際立ってしまっている。
なので、単体で素立ちさせたままだと、涙が出るくらいかっこ悪い。
ヘタな戦闘員よりも、面白みに乏しい印象すらある。
だが、烈雷を持たせた途端、その悪印象は一気に覆される。
左肩から袈裟懸け状にまたがる胸アーマーはギター本体を支えるベルトのようになる。
今まであまり活用のしようがなかった胴体の前後スイング機能は、ギタリストの激しい動きを再現するのに役立つ。
肘のロール軸は、ギターのネックやフィンガーボードを無理なく支えるためにフル活用される。
バランス最悪の細い首は、ハードロックギタリストの首のスイングのように自由な表情付けを可能ならしめる。
さらに、各関節部分をフル動員する事で、ヘッドを下に向けた姿勢、上に向けた姿勢など、自由自在にポーズを決める事が可能になる。
下半身の安定性も高いため、これら「本来無謀とも思えるポージング」はガッシリ決まり、本当に素晴らしくバランスが整う。
これは、実物を直接手にしない限り、絶対に伝わらない魅力だろう。
ギターを弾く姿勢…本来ならば仮面ライダーをはじめとする特撮ヒーローにもっとも相応しくないポーズの筈なのだが、轟鬼に限ってはこれが融合しているため、ストレートにかっこよさに繋がってくれる。
魔化魍に音撃を決めているシーンの再現にこだわってしまうと、烈雷の後ろに何かがあるような姿勢を想定しなければならなくなってポージングの幅が狭まってしまうが、幸い轟鬼は、本編中でも烈雷の独奏(魔化魍出現地帯を「清めの音」で清めようとする行為)を行っているので、制約なく楽しめるだろう。
ギタリストの持つ独特のかっこよさが好きな人にとっては、本商品はかなりオススメになる。
もし、本編中の轟鬼の音撃に一度でも感激した事があるなら、騙されたと思って手にとってみるのも悪くはない。
筆者は、本気でそう思う。
これだけでも、同時期発売の「キングフォーム」や「グレイブ」などに、決して劣ってはいない筈だ。
音錠は、通常形態と展開状態が付属。
左手首のジョイントに差し込む。
対比はやや大きいが、某音叉や某笛よりは遥かにマシ。
出っ張っている割には、意外に外れにくい。
反対側には、ディスクアニマル接続用の凸ジョイントが飛び出ており、これがちょっと外観のバランスを崩しているような気もするが…ウソ、ごめんなさい。
愛溢れまくりの筆者には、こんなの全然気になってないっす。
でも、気になる人は気になっちゃうかも。
構造的な問題で、音錠がなくってもディスクアニマルが接続出来てしまうのは、言うまでもない。
で、中の人なんだけど…今回は響鬼同様「草加タイプ」を使用。
しかし、なぜか妙に顔色が赤い。
これは日焼けというより、肌の色そのものが赤いという感じだ。
なんで、こんな色になったのかなあ?
響鬼系の素体の顔は、どうして皆微妙なものばかりなんだろう。
付属のディスクアニマルシールは、セイジガエル、アサギワシ、キアカシシの三種類が付属、銀色円盤パーツの両面に貼り付けて楽しむ。
●問題点
…と、響鬼系にしては珍しく褒めまくったが、当然問題点もあるわけで、こちらはかなり困らされてしまうポイントばかりだ。
まず、マスクが外れやすいという装着変身定番の問題点がある。
だが、実は響鬼系には、今までこの欠点はほとんどなかった。
響鬼も威吹鬼も、個体差を別とすれば、いずれもマスクはガッチリはまり、滅多な事がない限り外れる事はなかった。
だが、なぜか轟鬼だけはポコポコ外れる。
装着響鬼は、頭頂部とマスク下部に2つずつ、計四箇所の接続部がある。
にも関わらず、轟鬼だけは、頭頂部付近の二箇所だけにしかジョイントがなく、マスク下部にはまったくない。
正確には、マスク下部のものはジョイントと呼べない「ガイド(凸軸がただ当たるだけの溝)」で、これはマスクパーツ保持にはまったく役立っていない。
せいぜい、マスクの前後がズレないようにしているだけだ。
ご存知の通り、響鬼系装着変身には襟パーツがないため、首を回してもマスクがどこかに干渉する事はない。
にも関わらず、ちょっと回すとポロポロ取れてしまうというのは、かなりまずい。
なぜ、轟鬼だけ構造が違うのだろう?
理由はわからないが、とにかくこの「取れやすさ」を改善するためには、ユーザーの方で何かしらの手を加えないといけないようだ。
あまり玩具に手を加えるのは好きではない筆者も、今回ばかりは瞬間接着剤で軸をわずかに太らせてみた。
おかげてもう滅多なことでは外れなくなったが、なんだかむなしい。
響鬼・威吹鬼にあった「装備品が異常に大きすぎる」という問題点がないのは結構なのだが、轟鬼では、予想外の部分に問題が発生してしまった。
それは「ディスクアニマル」のホルダー。
どうしたことか、今回だけはホルダーへの接続が弱すぎて、ディスクアニマルがポロポロ外れてしまうのだ。
よくよく見てみると、威吹鬼まではディスクアニマル表面に銀色の塗装が施されていた。
しかし、轟鬼はなぜか未塗装で、銀色の成形色がそのまま出ている状態だ。
よくわからないが、塗料の皮膜がない分、穴の口径が広がっている、のかな…?
もちろん、これはシール未貼付状態での話なので、シールを貼る事で多少緩和できる可能性はある。
だが、本来腰にぶら下げているディスクアニマルに色は付いていない。
個人的には、そんなディスクアニマルにシールを貼るのは邪道だと思うので、接続状態回復が図れるかどうかは、永久にわからない。
ホントなら、腰用と手持ち用と、別々にディスクアニマルをつけて欲しいところなんだけどね。
そして、最後に…やはり「色」だ。
ボディカラーが妙に明るいグリーンになっており、劇中のイメージを大きく損なっているのはいただけない。
確かに、設定では体色が濃い緑系だという事はわかるが、実際はほとんど黒に近く、設定をいちいち確認していない人ならストレートに「これは黒だ」と思っていることだろう。
これは、本当になんとかして欲しかった。
R&Mや装着変身の仮面ライダーナイトの体色をも受け入れた筆者だったが、今回だけはどうしても許容できない。
だって、あまりにも色見が違いすぎて、全然別な存在にしか見えないんだもん〜!
もちろん、玩具的なカラーリング優先のため、どうしても明度が上がってしまうという事情はわかるのだが…新生装着変身は、半分以上高年齢マニア向け商品なんだから(いや本当に)、こういう所は拘って欲しかった気がする。
本当なら、その他にも「顔が縦に長すぎる」という問題もあるのだが、これは大元のデザインの問題であり、一概に玩具だけの問題とは言い切れない。
そのため、ここでは特に取り上げず、その代わりに「買う時は、顔の隈取の塗装状態を入念にチェックしておくべし!」という教訓を置いておこう。
筆者のは、顔の中心線付近の塗装が、細かくポツポツと剥げていて…
●総合評価
劇中の轟鬼に思い入れや魅力を感じている人にとっては、大変にお奨めできるアイテムだと思う。
しかも、商品を手に取っただけでは、その魅力の深さは絶対にわからない。
購入して、箱から出し、そして実際にいじってみて初めて魅力が炸裂する。
旨味がかなり遅れてやってくるタイプのアイテムなので、第一印象でかなり損をしているような気もするが、少なくとも、響鬼系装着変身の中では現状もっとも遊べるアイテムだと述べておこう。
ただし、ギターを持ったポージングに魅力を感じなかったり、またはディテールやカラーリングに徹底的に拘るという人には、シリーズ中もっとも奨められないかもしれない。
そんな両極端なアイテムなのだ。
ともあれ、もしこのページの画像を見て、少しでも「おっ?」と思う部分があれば、買っても損はしないと言っておきたい。
九月には、師匠・斬鬼の装着変身も出る事が決定しているので、師弟揃い踏みをさせるために購入しておくのも良いだろう。
【買ってみて一言】
前回、威吹鬼の総括で書いた事は、ひとまず杞憂に終わったようで、安心している。
ただ、「玩具的な個性」の問題がまだ解決しているとは言い切れないので、不安要素が完全になくなったわけではない。
今のところ、先にも述べた「斬鬼」の他に「響鬼紅(七月登場の夏限定フォーム)」などの装着変身化が決定しており、恐らくは劇場版登場のフォームも発売されるのではないだろうか。
しかし、斬鬼も響鬼紅も、結局は轟鬼や響鬼ノーマルのリペイントに過ぎず、独自性はかなり薄い。
なんというか、もう少し考えようがあるんじゃないのかな、という気がしてならない。
これだったら、むしろ弾鬼や裁鬼などを装着変身化させた方が、まだ良かったんじゃないだろうか、などと考えてしまったり。
いや、あんなチョイ役まで商品化されるとは到底思えないんだけど。