第10回 ■ バンダイ 装着変身「仮面ライダー響鬼」
2005年4月3日 更新
●バンダイ 装着変身「仮面ライダー響鬼」 定価2,100円(税込)
- 響鬼素体フィギュア
- 響鬼頭部(マスク)
- 響鬼胸アーマー(前後各×1)
- 響鬼脇腹アーマー(左右各×1)
- 火炎鼓(ベルトのバックル)
- 音撃棒・烈火“阿”
- 音撃棒・烈火“吽”
- 音角(変身アイテム)・通常形態
- 音角・収納形態
- ディスクアニマル(携帯時)×3
- ディスクアニマル用ホルスター
- ディスクアニマル用シール
(3枚分裏表・計6枚) - 取扱説明書
「仮面ライダー剣」に続く、現行ライダーの装着変身化。
この響鬼用素体は、これまでのものより多くの新可動軸を設定。
なんと腰が反れたり、前屈みになったりする事も出来る!
とにかく、嫌になるくらい動く動く。
●映像内のキャラクター
「仮面ライダー響鬼」は、2005年1月末から毎週日曜日朝八時、テレビ朝日系列で放送されている、現状最新の仮面ライダーシリーズ。
ただし、その外観や設定はあまりにも個性的で、仮面ライダーとしての面影はほとんど見受けられない。
ついには「人間の姿から異形の戦士に変身する」以外の仮面ライダー的設定要素が、ほぼすべて姿を消してしまった(なんと「変身」とすら言わない)。
これらのあり方については、いまだに賛否両論あるものの、一部では「元々仮面ライダーではない企画を無理矢理ライダーにされたのだから仕方ない」という説もあり、どちらにしても、ありのままに受け止めるしかないようだ。
響鬼(変身前名称は「ヒビキ」とカナ表記)は、人間を守るために「鬼」になる能力を取得した特殊な存在で、すでに数多くの戦歴を持っている勇士。
普段は飄々とした態度の青年だが、余裕を持った冷静な戦闘をこなす事が出来、数多くの戦闘技能を取得している。
変身音叉・音角を使ってその姿を鬼に変えるが、その際衣服は燃え尽きてしまうため、元に戻った時は新しく服を着なければならない。
「音撃棒・烈火」を両手に持ち、ベルトのバックル「火炎鼓」を魔化魍の身体に接触させて、これに向かって太鼓のように打撃を叩き込むのが必殺技。
こうする事で、魔化魍の体内に「清めの音」を送り込み、破砕するのだ。
その他、青白い火炎を口から吐き出す技も持っている(名称は記述により複数存在する)。
これは主に、魔化魍を育てている怪人・姫と童子との戦闘に使用される。
その他、「ディスクアニマル」と呼ばれる円盤型から小さな動物の姿に変形可能な式神(のようなもの)を行使する事も可能で、これを大量にバラ撒き、魔化魍の位置を探索させたり戦闘のサポートを行わせたりする。
音角には、変身以外にもディスクアニマルが徴収してきた情報を読み取る能力もある。
本作の世界観では「魔化魍」と呼ばれる妖怪変化が跋扈しており、響鬼はこれを討伐する事を生業としている。
響鬼の他にも、同様の目的を持つ鬼が大勢存在し、これらは「猛士」と呼ばれるグループによって支援を受けている。
「猛士」とは元々、鬼によって命を救われた者が集まって作られた極秘民間組織のようなもので、現在では「魔化魍討伐専門組織」といった様相になっている。
鬼達は猛士のメンバーの助力を得て、効率的に討伐を行っていけるようになっている。
鬼は、ローテーションを組んで魔化魍討伐を行っており、また魔化魍のタイプによって、担当者が決定される。
地上型の相手には響鬼が向かうが、響鬼では対応できないタイプの場合は別な鬼が担当する、といった感じだ。
空を飛ぶ魔化魍「イッタンモメン」を討伐するため、「遠距離攻撃で清めの音を放てる」威吹鬼が登場・派遣されている。
他にも、未登場ながら「弦を使う鬼」の存在が劇中で述べられている。
ちなみに、ヒビキはどうやら車などを運転する事ができないらしく、普段は猛士の一員である立花香須実の運転する乗用車で現場に向かう。
つまり現状では専用バイクなどの移動機器をまったく持っておらず、これも「どこが仮面“ライダー”なのか」という議論の種に挙げられている。
威吹鬼は普通に大型バイクを乗り回しており、響鬼もこのバイクを運転した事があるが、これまでのような専用スーパーバイクの類は、2005年4月現在出てくる様子が見られない。
これもまた、物議をかもし出している部分だ。
●概要
装着変身・響鬼は、かなり複雑な受け取られ方をした商品だった。
商品化する事そのものに異論はなかったものの、「装着変身にするべきものなのか?」という疑問があったためだ。
番組をご覧になった方はおわかりと思うが、響鬼はその外観や設定などから、恐らくもっとも装着変身に向かないと思われるライダーだ。
装甲のように思えるディテールはすべて生身の身体が変化したものだし、腹筋や上腕筋など、人間的な特徴も多く残しているデザインだ。
また全身のラインが一体化しているため、「鎧」に相当する部分を見出す事が出来ない。
せいぜい、マスクが取れるくらいだ。
装甲らしきものをほとんど持っていない昭和ライダーの方が、まだ装着変身向きだと思わされるほどである。
可動範囲強化という前宣伝は、ファンに好意的に受け取られたが、この「装着変身」としてのあり方については、色々と複雑な思いのこもった意見が飛び交ったようだ。
で、実際に発売されてみたら、これはこれでなかなか。
●セールスポイント
装着変身響鬼は、とにかく問答無用で動く、動く!
新生装着変身もかなり可動範囲が広がったものの、響鬼はそれ以上だ。
可動範囲についてまとめてみよう。
- 肩…前後に若干スイング可能になった。
- 腕…肘部分に回転軸が付いた(二重関節ではない)
- 腰…前後にスイング可能。
挙げてみると大した数ではないのだが、これだけで表情付けが格段に向上した。
背中を反らせる事が出来るというのはかなり大きく、全身で振りかぶるようなポーズも取れるため、太鼓ドンドンの姿勢も楽に取れるし、何より力強さが感じられる。
肘の回転軸が今ひとつ活用のしようがない気もするが、これはユーザーによって解釈が変わるだろう。
また、従来の装着変身のように、胸アーマー部分に蝶番がないため、腕の動きを阻害される事がない。
その上で、従来のような脚部の可動範囲を維持しているから、本当にポージングが楽しい。
本当かどうかはわからないが、一部ではバイク新登場の噂がある。
もしもそれが現実化し、商品が発売されたら、是非乗せてみたいものだ。
装備品も、意外に充実しているのが嬉しい。
基本装備はほぼ一式揃っており、ディスクアニマルまで揃っているのは本当にありがたい。
シールを貼ると、いわゆる「起動待機状態」を再現できるわけだが、そのままならただの銀色円盤なので、筆者はこの状態で持たせているのもいいと思う。
この辺も、ユーザーの好みで自由に調整できるのがいい。
欲を言えば、変形後のディスクアニマルも欲しいところだが…何か別な商品で代用できないかなあ?
ガシャポンのスイングだと、ちょっと大きいし。
音角は、本来の対比よりもかなり大型に作られており、これだけだとあまりセールスポイントとは言えない。
(まあ、ファイズの携帯用ポインターみたいに小さくしすぎるのも問題だろうが)
しかし、腰からぶら下げている時の形態も付属しているのが嬉しいし、何よりディスクアニマルをはめ込んで、収集情報を確認するポーズを取らせる事ができるのが大きい。
音撃棒も、ちょっと大きすぎる気はするが迫力満点で、しかもきちんと作り分けされているのが素晴らしい。
そう、先端部の鬼の口が、片方は閉じ、片方は開いているのだ。
ややモールドが甘いのが残念ではあるが、そこまで求めるのは贅沢だろう。
持たせるときも、ちゃんと指を穴に通して保持できるため、イメージに反する事がない。
大変良く出来た小道具だと思う。
本体を見てみよう。
本編内の響鬼の着ぐるみは、偏光により色味が変わって見える「マジョーラカラー」というもので塗装されており、独特の質感を持っている。
装着変身では、その雰囲気を可能な限り再現してくれたようで、ほとんど違和感がない。
マスクパーツは、パープルの本体色の上に薄くパールを吹いているのだが、このパールカラーの適度な反射がいい味を出している。
体表のモールドもしっかり作られており、パーツ化が困難な細かい装身具も、きちんと作りこまれている。
特に、手首や足首周辺の作りこみはナイスだ。
全体的に、これでもかというくらい気合が入っている。
●問題点
だが、せっかくここまで作りこまれているにも関わらず、山のように問題点が存在するのも事実。
しかも、「せめて、ここをこうしてくれれば問題ないのに…」という微妙な、だけど重要なポイントが多くて、大変困ってしまう。
まず、「装着変身である意味がほとんどない」という事について。
アーマー系装備が少ないから、という事は前に述べたが、それ以外にも、「装着変身だからこその問題点」というものがある。
それは、首周り。
これまでの装着変身は、首周りに襟があったり、独特の形状のものが首の根元にあったりして、素体の首の細さがそんなに気にならないようになっていた。
ところが、今回はほとんど素体むき出しのため、素体の首の細さを誤魔化す手段がない。
その上、素体の頭の上にマスクを被せるため、当然頭はデカくなる。
すると、「アーマーを着せる事でバランスが良くなる細身の身体」との差異が極端に大きくなり、結果的に凄まじいほどの頭でっかちに見えてしまう。
マスクパーツを良く見てみると、どうやらこれは、マスクの前後を固定する凸軸周辺に強度を持たせるため、肉厚にしてしまった事が原因らしい。
肉厚にするという事は、必然的にマスク内部の空間の一部が占有されるという事で、素体頭部はそれよりさらに狭い空間内に収めなければならなくなる。
とすると、素体の頭のサイズは変えられないため、必然的にマスク自体が大きくなる。
パーツ強度を考慮にいれなければ、もっと小さなマスクを作る事も出来たのだろうが、これは…仕方ないとはいえ、どうにも割り切れない問題だ。
この細い首は、何かしらの改造で太くすれば違和感がなくなるものの、そうすると今度は、マスクを外したときに首だけが太いというおかしな状態になる。
結局、マスク外しのギミックを活かす前提で考えた場合、これ以上はどうしようもないのだ。
これなら、合金パーツを使用したR&Mのようなアクションフィギュアにしてくれた方が良かっただろう。
商品展開的に、それが無理なのはよくわかっているのだが…
以降は、響鬼全体のスタイルに抵触する問題だ。
なんと、装着響鬼は音撃棒を腰に携帯させる事ができない!
これは、かなり致命的な問題だろう。
劇中の響鬼は、未使用時は音撃棒を腰の後ろに横向きで収納しており、魔化魍に清めの音を打ち込む際に引き抜く。
つまり、通常の戦闘スタイルとしては、音撃棒が腰に付いているのがデフォルトなのだ。
にも関わらず、本商品は初めから携帯させる気などないかの如く…
一応、携帯させなかった理由も理解できる。
実は、劇中の音撃棒は、携帯時と使用時で大きさが違う。
「仮面ライダーファイズ」のフォンブラスター各種のプロップが、携帯とは思えないほどバカデカかったり、「仮面ライダー龍騎」のアドベントカードが、玩具と比べると異常に大きいのと同じ理由だ。
手に取ったアクション時は武器を大きく見せなくてはならず、かといってそのまま携帯させたのでは動きに制約を与えてしまう。
そのため、それぞれの状態用に大きさの違うプロップを作製して使い分けるのだ。
装着響鬼の音撃棒も、このまま装備させたのではせっかくの腰の動きを殺してしまう上、肘部分にも干渉してしまう。
だからこそ、手に持たせるだけにしたのだろう。
装着555と913から始まった新生装着変身とは、とても思えない処置だが。
だが実は、音撃棒を腰に携帯させる事は、そんなに難しくない。
4mmの太さのプラ棒を適度な長さにカットし、響鬼の腰の後ろにあるネジ穴に挿すのだ。
そして、ここに音撃棒の丸い穴(指を入れる部分)を通せばいい。
かなり不恰好になってしまう上、腰の可動が制約を受けてしまうが、一応これで簡単に対処できるようだ。
もっとも、これはネット上で広まった改良手段の引用で、筆者は試してもいないんだけど。
マスクパーツには、先に挙げたサイズ問題以外にも、もう一つ難点がある。
顔部分の塗装が、あまりにも劇中のものと違いすぎるのだ。
響鬼のマスクは、本来は鼻にあたる部分を中心に、白いグラデーションが広がっている。
ところが、装着響鬼にはこれがまったくない。
響鬼の顔は、実際はのっぺらぼうで、赤い隈取が顔面の特徴になっているのだが、この白いグラデーションも、立派に自己主張しているものなのだ。
確かにパーツ塗装が困難そうではあるが、なんとかしてほしかったものだ。
…が、仮にそれをなんとかしてくれても、赤い隈取が鼻下部分で繋がってしまっているのだけは、かなり酷すぎる。
これではまさに「赤ひげ」。
響鬼の隈取は、顔の中心部分で途切れており、適度な空間が設けられている。
この僅かな部分が意外に目立ち、大きな特徴になっているのだが…繋がっているとはどういう事なのだろうか?
ご丁寧に、隈取部分は立体になっているので、加工する場合は繋がった部分を削り落とさなければならないが、その部分だけギザギザになってしまっては、益々問題になる。
火を吐く時の口開け状態すら再現してくれない装着変身…こんなところで、どうしてこんな問題を作ってしまうのだろうか。
まあ、個人的には口開けはどうでもいいんでけど、一応ね。
その他、細かい問題を挙げたらきりがない。
スイング機構があるため、左右への回転幅が大きく制約されてしまった「腰関節」や、持たせる事を前提に作られているとは思えない「音角・携帯時(ディスクアニマル装着はいいけど、それをしっかり持てないというのは)」。
さらに、音角とディスクアニマルを全部装備すると、腰の左右幅が異常に広くなり、まるで「S-RHFファイズのフル装備状態」のようになってしまう。
腰に携帯する専用のパーツが欲しかったところだが…ダメだったのかなあ。
個人的には、ディスクアニマルやホルダーなどはすべて一体化形状で構わないから、腰から吊るしていてラインが崩れないものにして欲しかったところ。
百歩譲ってホルダーはいいにしても、音角だけはどうにも…
でも、一見ものすごく落ちやすそうに思えるのに、意外にしっかり固定されるのでなかなか脱落しないというのは、嬉しいところ。
あと、なぜか足首の可動範囲が、新生装着変身の中では最小になっている。
それでも充分ポージングは行えるが、あとちょっと曲がれば…という所でそれがままならない事も多い。
これは、足首周りの形状再現を優先させた弊害かな?
最後に…筆者のヒビキさんは、眉剃って気合入りまくりでおられる。
購入後、別な商品を確認したら、ちゃんと眉毛があるし。
単なる塗装忘れか!
でも、これはこれで面白いからアリかも。
●総合評価
大体のユーザーが気付いているのではないかと思われるが、この「装着変身・仮面ライダー響鬼」は、明らかに他の装着変身と存在意義が違う。
555&913以降に始まった新生装着変身シリーズは、高年齢層ユーザー…つまり「マニア層」をターゲットにした商品展開なのだが、響鬼だけは、ごく普通の小児向け男玩として考えられているように思える。
というか、正確には、筆者の個人的見解をあえて述べさせていただくなら「マニア向けなのか一般男玩なのか、的を絞り切れずにいる状態」のように思えてならない。
変にマニアックな所がある割に、妙に簡略化している部分が混在していたり。
具体的な商品開発事情を知る由もないので、どういうやりとりの果てにこのような商品内容になったのかは不明だが、出来の良し悪しは別にしても、色々な意味で大変奇妙な商品だったと思われる。
ターゲット層に対する「迷い」みたいなものが感じられるなんて、興味深いではないか。
響鬼は、「仮面ライダー555」にとってのS-RHFシリーズ、「仮面ライダー龍騎」にとってのR&Mシリーズのような、独自商品展開が認められなかったのかもしれない。
番組開始前に成立し、現在もなお展開中の“アクションフィギュア規格”がある以上、あらたに独立シリーズを作製するよりは、そちらに統合した方がいいと考えるのは、自然な成り行きだ。
もし、別シリーズ展開で響鬼のアクションフィギュアを出していたら、それはそれで「装着変身として出してくれ」という声を受けてしまう事になるだろう。
響鬼がそれに向いている・いないに関わらず、だ。
■総括
結局のところ、装着変身・響鬼は、大変ユニークでプレイバリューも多く、玩具としては大変優秀な商品だと思う。
また、装着変身シリーズに対してあらたな試み(腰のスイングや肘のロール軸など)をもたらしたという意味でも、貴重な存在である事は間違いない。
ただし、装備品の充実や全体的なバランスを重視される傾向のある新生装着変身シリーズとしては、いささか難のあるアイテムだった、とまとめていいだろう。
続く威吹鬼も、完成度に対する不安の声が一部にあるようだが、恐らく本商品のフォーマットがそのまま転用されるだろうし、大きな進化は期待できないかもしれない(断定は出来ないが)。
でも、響鬼を買ってしまったなら、すべての鬼を揃えるという目的意識も生まれるだろうから、決して無意味だとか、余計なラインナップだ、などと唱えるつもりはない(つーか筆者も楽しみだし)。
他の龍騎系、555系、剣系とは完全に独立したラインで、最後まで展開してくれれば、それはそれで素晴らしい商品群になるんじゃないかな、と筆者は考える。