勝 あしたの雪之丞2 「勝 あしたの雪之丞」本評論 メーカー:エルフ
アーク 様
 WIN95 98 2000 ME/XP
 ジャンル 青春ADV
 発売日&価格 2002年9月27日 8800円
 購入日&価格 2002年9月27日 6280円
 入手難易度 易


<ストーリー>

 前作の主人公、雪村雪之丞によって意識不明となっていた親友、久保勝は奇跡的にも意識を取り戻す。
 しかし出席不足から学園を留年、生きがいであったボクシングもドクターストップをかけられてしまう。
 鬱屈とした彼は自分の心に決着を付ける事が出来るのだろうか?

 本作は前作の主人公雪之丞がせりなと結ばれていることを前提に作られた続編です。
 前作のあのはちゃめちゃな青春ストーリーを大いに気に入っていたので、発売が発表されたときは大喜びしたものです。
 で、これからプレイする人に言いたいのはやはり「必ず前作をクリアしておくこと」ですね。
 一応インストール画面で前作のあらましや登場人物が紹介されますが、やはりその作品そのものに触れて初めてわかる雰囲気やのりというのもあり、また本作はあくまで「2」というより「完結編」といった感じが強いので本作が初めてだとおもしろさが激減します。

 さて本作のテーマは見たところ「昌子の雪之丞への想いを断ち切る」「雪之丞と勝の自分との決着」の2つに集約されると思います。
 また興味深いのはそういったストーリーをあくまで前作のせりなルートを完全に継承していることです。
 だから前作の昌子ルートで和解したはずの明男は本作でも雪之丞を恨んでいるし新島早苗は本作で初めて足を傷めてます。
 この一貫性が前作のユーザーを混乱させる事無く、またせりなルートの後このキャラはこういう風になったのかと感心させる一助になっています。


<システム>

 さすが老舗、ほぼパーフェクトです。
 まあ存在意義の無いあそこアップシステムも健在ですが…まあ、あったとしてもプレイに支障が出るわけでもないので目をつぶりましょう(笑)。
 前作のキャラの立ち絵も新規バージョンが加わっているので見ごたえがあります。

 それとシステムには関係ないですが、本作は攻略難易度が前作と比べて思いっきり高くなってます。
 前作だとお目当てのヒロイン、しかもCG付きのものを追いかければOKだったのですが、本作の場合全く関係無さそうな所に出向かなければ途中EDとなるので非常に難儀しました(由美子とちはると昌子)。
 またインターミッションで前作のヒロインとのサブエンド、そして明男と権造とのEDもあるので自力で全EDを見るのは相当困難です。
 え? 自分はどうしたかって?
 もちろん文明の利器「いんたーねっと」で突破しましたとも。


<シナリオ>

水島あきら
 別名水島上等兵(命名勝)。
 本作のメインヒロインでいつもぼーとしており、勝とは補習仲間で勝に食事をよくたかるという前作のせりなとほぼ正反対の性質を持ってます。
 前作の雪之丞のように前半での主人公への注目度がそれほど高くない分ヒロインの重要性が高いのですが、どうもあきらの場合攻略しようというモチベーションが沸かなかったです。
 確かに後半でのあきらの側面や家庭の事情が明らかになり彼女の魅力もアップするのですが、何しろ前半でのあのだれた姿が尾をひいてどうも感情移入しにくかったです。
 他サイトに書かれていた事なんですが、現実をどこか遠くから眺めているからこうなるんでしょうね。
 彼女のEDはハッピーよりバッドの「最初の試練」が一番インパクトがありました。
 まあ自分がヒロインが逮捕されるというゲームをしたのが初めてなこともあるんですが、面会室での憔悴しきったあきらの姿はとても痛々しかったです。

藍川ちはる
 ボクシング部の新マネージャーで勝や雪之丞を伝説の先輩として尊敬している。
 攻略泣かせヒロインその1。
 ちはるばかり追っていると確実に途中EDになってしまいます。
 正解は4月24日に自転車を修理に出すという一見おいしくない選択肢を選ばないとだめなので、つまずく人多数だと思われます。
 前半は勝のボクシングへの葛藤、後半はちはるのおやじさんの就職探しというイベントのため影が薄くなってしまっています。
 ちはる自身とてもいい子なんですけどね。
 また、唯一このシナリオのみ勝は自力でボクシングのトレーナーになる事を決意している事も興味深いです。

桜瀬由美子
 あきらの親友であり勝のクラスメートで生まれつき喘息を患っており、叔父と2人暮らし。
 攻略泣かせヒロインその2。
 ほとんどの人は何も知らないとNo7の「新しい宝」に行っちゃうんじゃないでしょうか。
 4月25日に昌子と買い物に行くと翌日昌子が倒れ食堂で由美子と急接近って、普通誰も解りませんよ。
 おまけにその日由美子を会うとCGイベントも有りますし。
 後半は後半で何気ない選択肢が命運を決めるので、原因も解らずバッドという事が良くあります。
 位置付けとして前作の由希に当たるキャラです(勝も酔って由希と由美子を間違えてます)。
 何といっても見所は叔父で前作の目の上のたんこぶ田島静でしょう。
 このルートの田島はホントに漢です。
 はっきり言って彼のためのシナリオといっていいでしょう。
 何故彼が前作から雪之丞をしつこくいびるのかが明らかにされ、これだけでも本作をやる価値はあります。
 このシナリオで田島は大いに株を上げた事でしょう。
 また、シナリオですがこのルートのバッド「自分との決別」は一番悲惨です。
 まあハンデを背負っている人に中途半端に接すると痛い目に遭うという事なんでしょうね。
 しかし権造もいってるけどつくづく男キャラの目立つゲームですね。

三枝マキ
 勝のかつての彼女でマキの卒業と同時に2人は別れてしまう。
 2年後ひょんなことで再会する事に。
 前作の妙子を我侭に成長させるとこうなるんじゃないかなあと思わせるヒロイン。
 正直彼女のことあんまり好きになれません。
 自分では何もしないくせに勝に対しては「好きなら行動を起こせ」だのと言ったり他力本願なので「勝、こんなのほっといてあきらや由美子と仲良くしようよ」と何度思った事か。
 シナリオもどうも惰性でダラダラした展開が続くので飽きてきます。
 ちなみEDはハッピーよりノーマルの「10年越しの大恋愛」の方が好きです。
 まあ前作の牧野詩織ルートで雪之丞が一人前になって初めて詩織を迎えに行ったのと同様、例え困難でも勝にもマキと釣合う人間になってから結ばれて欲しいという思いから来てるんですけどね。

久保昌子
 勝の妹、前作で雪之丞との恋が破れ1人涼月町に戻ってきた。
 せりなと雪之丞から卒業すると約束したがいまだ彼を忘れる事が出来ない。
 攻略泣かせヒロインその3、前半はともかく後半の選択肢がややこし過ぎます。
 この子のシナリオをやると、人というのは言葉で決着をつけようとしても心はそう簡単に変わる物ではないなということが良く解ります。
 そういった点ではこのシナリオが一番完成度が高かったかな? そうでなくてもプレイする前に一番恐れていた「実はお兄ちゃんとは血が繋がっていなかったの。だからお嫁さんにして☆」という展開にならなくて良かったです(笑)。

鷲淵権造
 勝のクラスに転校してきた旧石器時代の番長キャラ。
 大物政治家の息子で昌子に1目ぼれして勝を義兄と慕う。
 何気に一番好きなキャラというよりインパクトあり過ぎ(サウンドも含めて)です。
 彼のED「世界に羽ばたく俺とオデ」は一風変わっていてこういうのも有りかなと思わせてくれます。
 しかしロンドンでナンパした相手が玲於奈だとは…つくづく世間は狭いものです。

間部由希
 前作のヒロインの1人で由美子ルートで攻略できる。
 珍しく雪之丞が達也と由希の仲を取り持つ作りとなっています。
 彼女より達也の方が目立ってますが(笑)。
 それにあんた言ってること滅茶苦茶だよ(爆)。
 まあ達也らしいといえば達也らしいですけどね。
 息抜きには最適のシナリオでした。

新島早苗
 前作のヒロインの一人であきらルートで攻略できる。
 ほとんど前作と同じシナリオ展開で正直飽きるかも。
 しかし彼女のその後の新しい目標? が明らかになるので見てみる価値はあります。

そして始まる物語
 全EDをクリアすると現れるトゥルーシナリオで、勝と雪之丞の自分との決着が描かれています。
 2人の対決シーンではCGタッチが変わったりと創意工夫が成されており完成度は非常に高いです。
 雪之丞は再びボクシングへ、勝は雪之丞のためにトレーナーの修行を始めるといったこれぞボクシング、これぞあしたの雪之丞というものにふさわしい結末でした。
 ただ気になるのはこのシナリオがどのルートから来ているかという事です。
 おそらくNo24「至福の時間」が妥当といったところですがそれだと本作のヒロインはいったい何のために存在していたのかという事になってしまいます。
 まあ、これはせりなのようなメインヒロインがいない(あきらが一応それだがどうも力不足)という事に起因しているんでしょうけど。


<総評>

 前作から継承されてきたパクリの嵐は健在です
 いや見てて面白かったですけどね。
 この制作者よほどガンダムが好きらしく例をあげるなら、
立てよ国民、ジークジオン!!」「ソロモンよ、わしは帰ってきたー!!(しかもシュミレーションゲームの南太平洋海戦中(太平洋戦争中のソロモン諸島を巡る海戦の1つ)の台詞という念の入れよう)」「足なんてかざりです。お偉いさんにはそれがわからんのです」「足だけ出して(実際は上半身)、デンドロビウム」「ビグザムのマスタ−グレード(実在なら自分も欲しいです)」等よくバンダイから苦情がこなかったと思います。
 他にも「はじめの一歩」の「デンプシーロール」や「モーニング」の曹操といったねたも出てきます。
 それと時事問題も使われているのも特徴です(狂牛病や同時多発テロ等)。
 まあこちらは何の問題の無いでしょうが。
 それにしても久々に買ってよかったと思える作品でした。
 あしたの雪之丞を楽しめたのなら絶対買いでしょう。
 というよりこれやらずして雪之丞を語るなかれといったほうが良いでしょうか。
 前述した通り、前作のキャラが当たり前かのように登場して大活躍しますので前作プレイは必須です。
 まあ、パッケージやタイトルで本作から買うという人はほとんどいないと思いますが。


追伸
 本作だけでなくどうしてギャルゲーのキャラはああも酒をぱかぱか飲むンでしょうかねえ?
 未成年では法律違反という事が分かっているのどうかはなはだ疑問です…
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