勝 あしたの雪之丞2
 目覚めた男の愛と苦悩の日々

1.メーカー名:エルフ
2.ジャンル:恋愛アドベンチャー
3.ストーリー完成度:B
4.H度:E
5.攻略難易度:C
6.オススメ度:C(前作の「あしたの雪之丞」とセットならB)
7.その他: あしたの雪之丞から一年。
 すべての原因となった男が動く。


(ストーリー)
 三年の教室。
 勝(まさる:主人公・名前変更不可)は再び同じ学年にいた。
 10月にボクシング部のスパーリングで頭部を強打する事故に遭ってから、三ヶ月の意識不明状態。
 目覚めた彼を待っていたのは、体力の低下だけでなく、出席日数の足りなさと、スポーツ特待生としての学力のなさからくる留年という現状だった。
 それをこそ、気に留めることもなかったが、授業や小テストはサッパリ解らず、退屈でしかたがない。
 それでも転校生が来たり、こんな自分に興味を持つ娘がいるおかげで、にわかに騒がしい毎日は続く。
 そして、ゴールデンウィーク直後にせまる修学旅行。
 勝は二回目だからと渋り、参加するかどうかを決めかねていたが…

 そんなこんなでさらに半年が過ぎ、勝は雪之丞と再開を果たす。
 そして…


 このゲームは、前作「あしたの雪之丞(以降『1』と表記)」の続編。
 「勝 あしたの雪之丞2(以降『2』)」主人公は「1」の主人公・雪之丞がスパーリングの途中に殴り倒してしまった彼の親友・久保勝。
 システムは基本的に前作と同じで、前半の選択肢と学校や町の移動によって女の子を決定し、修学旅行をはさみ、後半の女の子達と勝との葛藤を描く。

 今回は前作に比べ、総エンディングの数が減り、攻略する女の子の数も7人から5人へと減った。
 それは、小粒になったということではなく、ヒロイン一人一人に対する厚みを考慮した結果だろう。
 それに、エンディングが少ないといっても、前作のキャラのエンディングが用意されていたり、アツーイ秘密のおまけシナリオがあるなど、そのバリエーションは前作以上に多岐にわたっている。
 他にも、システムの画面がすっきりと見やすくなっていたり、移動画面が楽になっていたりして、細かい部分で洗練されている。

 一番特徴的なのが、この「2」の舞台に、前作の舞台を並行して描いていることだろう
 前半はヒロイン達の紹介を兼ねているため、勝を中心に女の子達の活動が描かれるが、修学旅行をはさんで後半に入ると、インターミッションと称して一時舞台が鹿島学園へと移り、その様子が描かれる。
 「2」の時点で「1」のキャラの行動を描く事は、その後勝が出会うキャラクターに説得力を持たせ、ゲーム全体に深みを持たせているといってもいいだろう。
 この「前作のキャラを丸々挿入する」手法は、明らかに他の恋愛アドベンチャーと比べて特殊で、よくある「前作のキャラが登場!」といったおまけ的要素とは違い、これなくしてはゲームとしての味が薄れてしまうほどの比重を占めている。
 何しろ、ゲームのオプションの項目に前作のあらすじと、人物相関図間があり、とにかく前作がどうなっているかを頭にいれて楽しんでくれ、といわんばかりに主張してある。

 鹿島学園の面々は一部のシナリオを除き、時に勝を助け、あるいは喧嘩して、といった具合に、女の子達のシナリオにからむ。
 シナリオの基本は「1」同様、女の子達の騒動を中心に勝るはどうする? というスタイルになっている。
 ただ本作は前作とは違い、主人公が能動的なため、ヒロイン達の一人芝居にならない分テキストを追いかけていくのが楽しい。


●水島あきら
 なんとなく勝の弁当をあさりにくるクラスメイトで、「2」の正当なヒロイン。
 彼女は家庭内に問題があり、最終的に解決できないものと知った勝はどうするか? という話。
 あきらは、同じクラスになった勝の、何事にも縛られない自由気ままな性格にあこがれ、惹かれていく。
 彼女はハッキリした物言いをせず、なかなか本音を語らない。
 彼女の「お弁当ちょうだい」は、素直になれない自分と、自らの趣向を合わせて考え出したアプローチの手段として味のある表現だ。
 あきらのセリフは、自分が家庭や世間から一歩引いているせいか、「あー、…かも」等の間延びした言い方が多い。
 しかし後半、彼女の心根が明らかになるにつれ、だるそうに聞こえていた声優の声そのものが、前半と比べて微妙に変化して聞こえるのは、自分の気のせいだろうか?
 このシナリオを通してのあきらの微妙な変化は、クリアまでの間に彼女の奥深さをを感じさせる。
 それに対して勝は、あきらの期待に違わず総じてマイペース。
 だが、後半であきらの置かれた環境を知ると、徹底的に落ち込んでしまう。
 終盤、壊れそうになる彼女との仲をより強くせんとするため、勝は協力してくれた雪之丞をダシにして「久保勝の本気を見せてやるぜ!」と自らに喝を入れた。
 そして、勝は彼女が持つ、ささやかだが、普通に考えると無謀な「木の上の家」を数日で造り上げる。
 お互いに全幅の信頼を寄せてはいるが、計算高く、早々に高卒で就職を決めてしまったあきらと、マイペースで、行き当たりばったりの勝という、2人の対照的な姿が印象深いシナリオ。

 ちなみに、「2」のキャラデザインは「1」同様「ながせまゆ」氏が担当しているが、不思議なことに、他キャラと比べて彼女だけがぱっと見てそれだと気が付き辛い。
 多分、髪の質感と瞳の描き方に理由があるのだと思うが、それはメインヒロインとして差をつけたかったためかもしれない


●桜瀬由美子
 あきらの友人で、「1」に出てきたいびり役の体育教師「サディスティック静」を保護者とし、その身を寄せている。
 彼女は喘息を患っており、両親と死別してから今に落ち着く過程で感情の仮面をかぶり、あたり障りなく生きてきた。
 以前雪之丞に好意を抱いていたが叶わなかったという経緯が、勝に「今でも好きなのか?」という誤解をさせ、結果みんなをもギクシャクさせてしまう。
 そんな感じで、とにかく最後まで雪之丞を引きずってしまう話。
 由美子の心情がシナリオの中心にあるため、勝の気持ちはどうしても空回りしてしまい、結果彼女のいないところで動き回ることが多くなる。
 終盤、雪之丞にこだわる勝や、その性格を何とかしようと躍起になるあきらに対し、由美子は自らの感情を爆発させるまでかなり影が薄い。
 それは、控えめな彼女の設定としては十分にマッチしているが、シナリオごとのヒロインとしては弱いかもしれない。
 ちなみに、由美子は、その性格とシナリオの内容が、前作の間部由希とかぶっている
 それを知りつつ「なんとなく二人とも雰囲気が似てねえか?」とあきらのシナリオで堂々とネタにしている所に、スタッフの潔さを感じる。


●藍川ちはる
 新しくボクシング部のマネージャーになった一年生。
 ちはるのボクシングに対する情熱が、勝を、事故以来意図的に避けていたボクシングへと再び向けさせる話。
 父や勝がボクシングから遠ざかる姿を見るちはるの目はどこか切なく、それゆえ勝に対して興味以上の感情を持つようになっていく。
 ボクシングを愛してやまない彼女が、後半、家庭の事情のためにボクシングから遠ざかることになるのは皮肉としか言い様がない。
 それを転機に、シナリオは恋愛の方向へ進む。
 勝の人間臭さを感じさせ、恋愛とは別の意味で、彼が深く掘り下げられた渋いシナリオ。
 勝は特待生以外で唯一残った後輩を指導することで、トレーナーとしての素質を開花させる。
 そのことが、ちはるの父を助けることになり、ラストで離ればなれになってしまったちはると再会するための手段となった。
 実はオマケシナリオにもからむ、トレーナー・久保勝として興味深いシナリオでもある。
 余談だが、勝はあきらのシナリオの時に「隣がが晶子の部屋だから、おいそれと自分の部屋でできるものか」とSEXを遠慮していたのに、このシナリオでは、晶子の居場所が不明なままでちはると事に及んでいるが、いいのか?
 毎朝、晶子や母が部屋に入ってきて彼を起こすことから考えると、ドアには鍵も付いて無さそうだから、久保勝…大したチャレンジャーである。


●三枝マキ
 勝が一年の時に、なんとなく付き合うようになった、2コ上の元彼女。
 彼女の卒業と共に終わった関係が、偶然街中で出会ってから再び再燃する。
 しかし、財閥の娘と、将来も決めかねている庶民の男との溝は大きい。
 勝は、別れた時から既に政略結婚を迫られていた事実を知るが、そんなことで恋愛を終わらせてしまっていいのか! という話。
 このシナリオは雪之丞が高校生になる直前にあった、マキの「さよなら宣言」が事の発端だ。
 そのため、彼女のシナリオは唯一「1」「2」を通して、他のシナリオと何の関わりも持たない、独立した話になっている。
 お嬢様気質に振りまわされつつも楽しんでいる勝と、引っ張りまわしているように見えて、勝の視点に合わせようとするマキという、お互いの行動。
 二人で観た映画のラストシーンが「結婚式当日に花嫁をさらう」という、終盤への伏線。
 すぐに逢いに来てほしいのに、財閥の時期当主としてそっけない態度で突っぱねるマキの姿。
 それらはベタだが、しかし「家ではなく、人に惚れる」というストレートな表現を感じさせ、それにより、マキを引き立たせようとしている。
 また、二人とも18歳以上のため、休日の度に「マキに引っ張りまわされ身体を求め合って朝帰り」というスタイルが妙にしっくり来る。

 ちなみに、自分のシナリオでは、勝といっしょに補習を受けるくらい成績の悪かったあきらが、ここではやたら頭の回転が速い。
 しかも、勝を好きだけどその背中を押してあげる魅力的な女の子になっている。
 また、マキが無理やり勝を引っ張りまわすのを総じて「拉致られる」というのは、昨今の「北朝鮮の日本人拉致問題」もあって実にタイミングが良すぎ。


●久保晶子
 勝の妹。
 晶子は、前作から引き続きヒロインとして登場する。
 晶子の心の中は、一度けじめをつけたにもかかわらず、以前からの「雪之丞が好き」という気持ちがいまだに続いていた。
 明るさは以前と変わらないのに、鹿島学園の事となるととたんにトーンダウンしたり、雪之丞の家にいた犬を老衰で失うことを自分のもとから去っていった彼に重ね合わせ、自らを慰めたりする晶子の姿は、前作にもまして寂しそうに見えるが、それは、実家に戻っために感情を向ける対象がいなくなってしまったからだ。
 そんな晶子を見て、勝は徹底的な兄バカぶりを発揮し、妹の感情を受け止めてやろうとする。

 後半で、勝は精神的に頼れる兄貴として晶子の支えになるという決意を持つ。
 時間が解決するには足りない部分を補おうと、切羽詰まった勝はせりな(「1」のキャラで雪之丞の恋人)の前に土下座して「別れてくれ」とまで言い出す。
 晶子はそんな勝を見て、「お兄ちゃんがいるから大丈夫」と笑顔を取り戻す。
 過去への郷愁を振りきったラストシーンで、晶子がピアノを弾く姿は「WITH YOU」の乃絵美エンド(バッドエンド)を連想させるが、とにかく仲睦まじいシナリオ。

 ところで、恐るべきことに、このシナリオにはHがない!(一応サブキャラの妄想の中で用意されているが)
 勝は妹を溺愛するいい兄であり、それ以外の何者でもない。
 「1」から続いている話だけに、キャラの描かれ方が、あきらよりもヒロインらしく見える。

 
 ヒロイン達に対して主人公の勝は、どのシナリオでも豪放磊落で人を引っ張るタイプだというイメージが伝わってくる。

 しかし、学校の成績は悪いし、どこまで解っているか曖昧なのにむやみやたらとことわざや名言を多用する。
 ゲームするし、CDなども好んで聴くし、ビデオをレンタルしまくって一日を安穏と過ごしたりする。
 人には分け隔てなく接し、考えていることは顔に出て、妹には頭が上がらない。
 とにかく、どこまでも「人間臭い」ことが、久保勝という男の魅力。
 勝はゲームの最初から最後まで、その姿勢を変えない。
 それは、勝が「1」「2」の物語の原因となった張本人だからだ。
 そのため勝は「1」の主人公・雪之丞の様に、自分の犯した罪にさいなまれること無く、常に自分を保っていられる。
 だからといって、全くの考え無しでもなく、ちゃんと雪之丞への済まなさも感じている。
 落ちこんだ時には、女の子達や母親に叱咤激励され立ち直る。
 勝は基本的に竹を割ったような性格だから、縮こまることに耐えられない。
 だからこそ、彼はあきらのために家をつくり、晶子のためになりふり構わず土下座する。
 自分を見てくれる女の子のために行動する勝はヒロインの可愛さを差し置いてカッコ良く見える。
 ヒロインやサブキャラより抜きん出た主役を持つゲームは、プレイヤー=主人公だけに、プレイ感覚も上々といえるだろう。


 問題点は、さほど多くあると思えない。
 しかし、目立たないわけでもない。

 まず、背景の枚数が少なすぎる。
 例えば、町内。
 晶子シナリオでは、雪之丞が一度実家に実家に帰る。
 そのワンシーンしか彼の実家が出てこないのなら、確かに必要無いかも知れない。
 しかし雪之丞の家は彼の飼い犬の件で何回も登場するのに、なぜ勝と晶子が学校に通学するシーンの背景で済ますのか?
 彼の家は店をやっているという特徴を持っているのだから、CGがあっていいはず。
 他の部分にも言えるが、同じ背景しかないと、プレイヤーが飽きるのではないだろうか?

 HCGが少ないのも気になる。
 先にも述べたように、Hシーンそのものに意味がありそうなのはマキ一人なので、その他はあってもなくても同じ。
 雪之丞達は幸せだということがわかればいいし、あきらは自分の夢を勝が叶えてくれたのだから、その家の中で二人で寄り添い、朝まで寝てるだけでも構わないと思う。
 まして、今回はトゥルーエンド以外の各キャラのエンディングに前作のような自暴自棄Hシーンも用意されていないから、もしかしてH排除の方向へ向かっているのだろうか?
 シナリオを重視した結果であるのなら仕方がないが、キャラのHを期待した人には期待はずれとなるなるだろう。

 それから、「1」でもその存在が疑問だった「あそこアップシステム」は相変わらず継承されている。
 しかし、例えばあきらが感慨にふけるシーンや、由美子が喘息の発作を起こして大変な時にも発動しているので、むしろ改悪されているように見えなくもない
 いっそ、無くした方がマシのように思える。

 今回一番の問題は、一作目の要素を含有しすぎな事。

 「2」では、中盤にインターミッションと称して、前作のキャラが動き回る。
 別に前作のキャラを出すことは一向に構わないと思うが、問題はその比重。
 何しろ本編と同様に、選択肢あり、校内移動ありと、そのままゲームをクリアするための過程の一つとして組み込まれている。
 確かに、あきら・由美子・晶子のシナリオでは、雪之丞が大きく関わっているため、どうしても今現在の様子をあらわす必要はあるだろう。
 そのため、勝が暮らしている裏側を見せたのだろうが、逆効果になっているように見える。
 特に、せりなはキャラクターが強いため、勝以外のキャラクターがかすんで見える。
 せりなと勝の掛け合いは、果てしなくテンションが高く、どのキャラよりも見てて面白い。
 「2」のキャラ同士でやるときよりも面白いと思うからこそ、逆にあまり多く出してはいけない。
 解説や相関図をつけ、前作を把握させようという姿勢は「2」の世界を味わうという意味で確かに効果的かもしれないが、ゲーム内でプレイするほど出しゃばらせてしまってはヒロインまで潰してしまう。
 おまけシナリオも、雪之丞を中心に展開するし、勝自身、言ってみれば、前作から引き続き出ているキャラだから、どうせなら「2」ではなく「番外編」として出した方がこのゲームの形としてあっていたと思う。
 

 両方を融合したと判断するかどうかで、このゲームの好き嫌いは大きく変わってくるだろう。

 前作一番の問題とした、パクリ多用は微妙。
 今回は、意図的に決めゼリフや状況をひねるか、表現が直接タイトルをあらわしたものかの両極に分かれた。

 例えば、ひねったものなら
 「泣け、叫べ、跪け、命乞いをしろ」(ラピュタ)、
 「立ち絵なんて飾りです。お偉いさんにはそれがわからんのです」&「いけません! 大佐」(ガンダム)、
 「マグナム選手の左右の必殺ブロー&幽霊の左」(リングにかけろ)
 「ボクシング大好き、拳キチ段平」(あしたのジョー)
 特に、ちはるのお父さんは「あしたのジョー2」に出てきた「おでん屋台を出している、日本人で唯一ホセと戦った元日本チャンピオンのおやじ」そのまま。

  直接的のものなら
 「畑山選手」
 「ショーシャンクの空へ」
 「激突」「あだち充」
 「サンデーでKASTU!!」
 「マガジンではじめの一歩」

 といったところで、もちろんまだまだたくさんある。

 他作品の出来事を、直接作品内のこ出来事として持ってこなくなったのはいいことだが、直にタイトルを出すのもどうかと思う。
 この使い方は、パソコンソフトでなければ、たとえ著作権などの問題が絡まないとしても、おいそれとは使えないはず。
 挙げられた作品はバカにされているわけではないから、多少多目に見てもらえるかもしれないけど、まだひねってくれた方がましだと思う。

 前作がなかったとしても、これ一本で成立させることは、できたかもしれない。
 「1」の要素も詰め込んでまとめたまではいいが、まとめすぎて「2」単体で終わってしまうところに、少し行き過ぎを感じる。
 2作目にしておくのはもったいない気のする作品だと思う。


(総評)
 前作よりも楽しめた、というのが素直な感想。
 それは、主人公の勝がよかったということに尽きる。
 サブキャラの鷲渕君も、特異な姿と鋭い物言いでがんばっていたけど、主人公の勝ち。
 勝のお母さんも良い味出して、この人あっての勝という、温和な家庭を晶子と共に演出してくれている。
 勝は、先に挙げた人間臭さをはじめ、妙に雑学や、ことわざなどを列挙してしたり顔をする姿がなんとも庶民的に見える。
 鹿島学園の面々、特にせりなとの掛け合いは非常に面白く、そのやり取りははっきり言って、2から出てきたキャラが太刀打ちできていない。
 そのため、もしインターミッションを削った場合、ゲームとしてそれなりにまとまっても勝を活かせない分、さえない作りになっていたに違いない。
 何しろ、前作の原因を作った(というより被った)張本人が主人公だけに、彼を外側から語ってくれる場所を無くしては、面白くないのは当たり前。
 前作の流れから考えると、病院で寝ていた姿を見て、寂しそうに昔の話を語る雪之丞の姿から連想する久保勝という人物像からは、正直とても想像のつかないキャラなので、プレイヤーはさぞ面食らうことだろう。
 勝はボクシングが好きなのに、事故で選手生命を絶たれたため鬱屈した毎日を送るが、しかし、腐ることのない頼り甲斐のある男として描かれる。
 当然それは周囲の支えもあってのものだが、その姿にはゲーム内のキャラだけではなく、プレイヤーも親近感を感じるのではなかろうか。

 もし、「1」と「2」が同時に出ていたなら、BOOは「2」だけでなく、「1」の方の評価も高くなっていただろう。
 問題として挙げたように、今作は「1」に拠る所が大きい。
 それならばいっそ、「赤コーナー(雪之丞)」「青コーナー(勝)」として一気に出してしまった方がすっきりしたに違いない。
 前作だけ、今作だけと出したのは、ちょっともったいないと思う。

 それから一言いいたい。
 このゲーム、Hゲーで出さないで欲しかった。
 前作もそうたけど、特に今作は三枝マキを何とかしてCG全て差し替えか、極端な話カットしてしまえば、完成度から見てもコンシューマーのギャルゲーと互角だと思う。
 大体、マキを除いてHシーンははラストに一回きりの愛の確認だけだし、晶子は妄想と入浴シーンのみ
 あまつさえ、勝を差し置き、雪之丞とせりなの前作キャラに場つなぎ的に「2」でエッチをさせている。
 それだけHシーンやいやらしさを排除してしまうなら、いっそない方がいい

 パソコンではなくコンシューマー機に「あしたの雪之丞1&2」としてまとめて移植した方がウケると思うのだがどうだろう?
 「ドリームキャストは将来的に不安だから避けよう」とか「PS2はタイトル変更などの手間が掛かるから見送ろう」みたいな思惑が渦巻いて、ストップがかかっているのか?
ウォーターサマー」(パソコンタイトル「水夏」)のようにがんばっているタイトルもあるのだから、チャレンジする価値はあるだろう。
 それとも、パクリという遊びが出来ないから家庭用では出したくないのか?

 ネタの使い方には相変わらず難はあったが、それでも前作に比べれば格段に面白くなっているので、BOOは十分に楽しめた。
 これ一本でも、ストーリーを把握するだけなら十分い楽しめるけど、どうせなら出来るだけ間を置かずに、前作と一緒にプレイすることをお勧めしたい。

(Mr.BOO)


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