吸血殲鬼ヴェドゴニア

 気力転身! オーラチェンジャー! ←は?

1.メーカー名:Nitro plus
2.ジャンル:ADV+不思議な戦闘システム
3.ストーリー完成度:B〜Cの間、B寄り
4.H度:表現的にはDくらい。でも印象としてはE
5.オススメ度:こっちもB〜Cの間、B寄り
6.攻略難易度:D(不思議な戦闘さえなければE)
7.その他:各章ごとに挿入されるOPとEDはとても良いアイディア。
ちゃんと飛ばせる所もGOOD。

(ストーリー)

ヴェドゴニア伊藤惣太は、なりかけ吸血鬼である。
彼をヴェドゴニアにしたリァノーン属する燦月製薬イノヴェルチは、世界征服をたくらむ悪の秘密結社である!
ヴェドゴニアは人間の体に戻る為、イノヴェルチと戦うのだ!

だいたいこんな内容です。<こら

 …もとい。
 主人公・伊藤惣太(変更可)は、高校生ながら親元から離れて一人暮らしをしている。
 高校では軽音部に所属し、もうすぐ行われる文化祭の為、練習の日々を送っている。
 ある日彼はロードヴァンパイア・リァノーンに噛まれたが、なぜかすぐに吸血鬼化はせず、大量の血が失われると吸血鬼化し、吸血を行うと人間に戻れるという特殊な存在になってしまった。
 そんな彼の前に、自らをヴァンパイアハンターと称する幼い女の子モーラが現われ、リァノーンを探し出して滅ぼせば、人間に戻れると告げる。
 現実を受け入れられず、すべて夢として片付けようとしていた主人公だったが、そのせいで軽音部の後輩・京子が謎の化け物に襲われるという事態を招いてしまう。
 リァノーンを探し出し、人間に戻る為、彼女を滅ぼす事を決意する主人公。
 だがリァノーンを追う主人公の前に、人工的に培養された吸血鬼・キメラヴァンプ達が立ちはだかる!


 ありがちな素材“殺し屋”を、ありがちでないシナリオで昇華したデビュー作『Phantom』で高評価を得たNitro plusの2作目は、またしても使い古された素材と言える“吸血鬼”ネタ。
 しかし、ありがちな展開・シナリオになっていない所はさすがで、フツー考える“吸血鬼にされた人間の悲哀を描く泣きゲー”ではなく、なんと“悲哀テイスト(笑)バイオレンスアクション”に料理してしまった。

 完クリ後の感想は「あ〜、面白かった」である。
かっこいいOPとED、凶暴なデザインの武器、スピード感溢れるバイクアクション(&轢き逃げアタック)、悲哀を背負いつつも、だんだん闘い慣れていく主人公!
 エロ部分も一応有るが、それよりこの主人公が闘う前に必ず自殺っつーバイオレンスぶりは18禁で無ければできまい。
 くうっ! 良いね!

…が、実は何を書こうかと困っているんである。
 確かに面白い事は面白かったんだけど、このゲームにはハッキリした欠点がいくつも有る。
 一番気になったのは、戦闘システムの解りにくさ
 これなんかみんなが認める欠点要素のようで、割と色んな所で嫌がられていた。
 修正ファイル使っても、解りにくさはあんまり変わらなかった気がするし。
 “重い武器は当たりにくい”って概念があるのはいいんだけど妙に極端で、せっかく色々面白い武器が有る意味がほとんど無くなってしまっている。
 私なんかあまりにも他の武器が使えないもんだから、結局ほとんど“サド侯爵の愉悦”と“旋風のカリギュラ”しか使わなかったぞ、と。
 『FナルFタジー』である程度ATB(行動入力に時間制限がある戦闘システム)には慣れているけれど、このシステムはさらにやりにくい気がする。
 いっそ戦闘システムは削るか、せめて『DラゴンQスト』風コマンド型にするかしてくれると、もっとユーザーに優しかったんだけどなー。

 ところがこの“不思議な戦闘システム”を削ってしまうと、後半プレイヤーがする事が無くなってしまう
 これはどういう事かと言うと、ADV部分で女の子攻略のルート決定に必要な分岐が、かなり早い時点の選択肢3つ程度の組み合わせで決まってしまうため、その後の選択はテキトーでいいからだ。
 いや、と言うよりルートが決まってしまうと、その後ほとんど選択肢は出ない。
 それに加えて、(当然と言えば当然なんだけど)女の子ごとに持っている情報内容が違うので、モーラシナリオだとこっちの謎は解けても、あっちの謎がそのままとか、弥沙子シナリオだとあっちの事は解決してもこっちはそのまま…なんていうのがある。
 ところが、情報量の差によって展開に多少の差異があるものの、シナリオ全体が大して変わらない印象なので、4人もやらされるとちょいと飽きてくるんだな、これが。

 それと今回も有ります、『Phantom』で物議をかもし出した“別の人物の「一方その頃…」”視点!
 ただ今回は、1章の始まりと終わりごとにOPとEDを入れてみたり、章ごとに“引き”が入るなど、連続アニメかヒーロー番組のような作り(それも30分番組系)になっているため、主人公以外の人物の視点が入る事にあまり違和感を感じない。
 なるほど、普通アニメやヒーロー番組なら、主人公以外の視点が描写されるのは当たり前。
これは上手いやり方だ。
 でも、アニメやヒーロー番組風の作りだからと言って、クリーチャーにあたるキメラヴァンプが何であんな姿なのか? について、ほとんど説明が無いのはどうかと思う。
 「これは“怪人”だから〜、こんな姿なのはお約束〜♪
 というのは柏木困っちゃう。
 『仮面ライダー』(初代)のモチーフ怪人っていうのは、ライダー本人がバッタの改造人間だという部分に立脚しているから、“暗黙の了解”で済むのだ。
 他の怪人も改造されているんだ…って事で(考えてみると、仮面ライダーも“同族殺し”だね)。
 “お約束”には“お約束”なりの設定がないとちょっと…ねぇ。

 …がさがさ…(物音)

河口(唐突に乱入):「呼ばれてないけど来ちゃったよ。何かあんまし褒めてないね…」
柏木:「やあ、私のカゲスター・河口隼人くんじゃないか」
河口:「誰が生き霊だ! …とにかくこの評論、ほとんど欠点指摘じゃん」
柏木:「いや、でも始めの方に書いた通り、面白かったよ」
 そう、実際熱中してやったんである。
河口:「じゃあ、もっと褒めれば?」
柏木:「なぁ〜んか、難しくてねー」
河口:「そう? じゃ例えば、各ヒロインではどの話が好き?」
柏木:「ギーラッハ編があれば彼なんだけどな〜
河口:「できるかそんなもん! おのれもきっか氏から“やおらー”と呼ばれたいか!」
柏木:「そーいう意味じゃなくて、ギーラッハはおいしいキャラだと思うんだけどなー。ま、まじめに答えましょ。リァノーンとモーラシナリオが、同率首位くらいかな。で、香織、弥沙子と」
 とにかく、この香織がもー何て言うかアイヤーって感じで…。
 いくら幼なじみで大家の娘だからって、彼女でも無いくせに、お年頃(笑)の一人暮らしの男の部屋に合い鍵で勝手に入るか〜?
 弁当にだしがらの煮干し入れるか〜? 
 話も聞かずに、勝手に人の事思いこみでロリコン扱いするか〜?
柏木:「ど〜も、香織の事を“フツー過ぎてインパクトが弱い”って思っている人が多いみたいだけど、これは“恋に不器用なボーイッシュな女の子”じゃなくて、“超勘違い思い込み突っ走り女”だぞ。絶対にフツーじゃない!」
河口:「同性の口から断言されるとイタイもんがあるけど、フツーなとこもあるよ」
柏木:「えっ? どこ?」
河口:「…デザイン…」
柏木:「…」
河口:「それは置いといて、何でその香織より弥沙子の方が下なの?」
柏木:「ええと、シナリオ的には香織ルートの方が二転三転して面白いからと、先に妙に味のあるリァノーンEDを見ちゃったからだよ」
 このリァノーンシナリオと弥沙子シナリオ、HシーンとEDくらいしか違いがないんである…。
 何でも、リァノーンEDは、後から弥沙子EDにつけ足したらしいと聞いた。
 なるほど、だからほぼ同じ展開な訳だ。
 けど、なぜかリァノーンEDの方が味がある気がする。
 ただ、リァノーンよりあっさりしている感のある弥沙子EDでも、ED曲の使い方はとても上手い。
河口:「あとはモーラか。彼女には何か言いたい事ないの?」
柏木:「モーラはいい子だよ〜。『ハーフヴァンパイアサキさん』と同じ境遇だけど」
河口:「…何でそのタイトルに行き着くんですかい!」
柏木:「え? だって父親がヴァンパイアで母親が人間ってとこ一緒だよ」
 確かに一緒ではあるが、“だから10歳くらいから成長しない”ってのは無理がないスか?
 それとも成長が遅いって事なのかな〜(エルフみたいに)?
 いや、あのED展開上100歩譲ってそこは良しとしても、“永久処女設定”ってのはロリコンの大いなるドリ〜ム(行き過ぎた夢=妄想の事)じゃないスか?
河口:「あ〜あ、シナリオは気に入ってるんじゃなかったの?」
柏木:「人間に戻りながらも、モーラと共に生きていこうとする主人公、すごく気に入ってるよ。だからこういうツッコミは本当は入れたくないんだけど、どうしても気になるのさ」
河口:「そういや、今回も全員“生”だったね」
柏木:「さ、総評行こうか」
河口:「無視すんな!」
 どっちにしても、Hシーンはどれもこれも主人公が半死体状態の時のモノだから、死んでるだろ子種も。

(総評)
 しかし色々ブツブツ言っているが、プレイ中は雰囲気にハマって本当に楽しく(戦闘以外)やっていた。
柏木:「う〜ん…。何て言うか、このゲームって『五星戦隊ダイレンジャー』だと思うのね」
河口:「ああ、話はぷーなんだけど、逆にアクションはとんでもなくケレン味たっぷりで、超かっこよくて、見所満載っていう戦隊ね」
柏木:「そうそう。だからつい毎回観ちゃうという…」
河口:「ようするに、設定にもストーリーにもツッコミ所満載なのにも関わらず、ついやっちゃう、と
 つまり“見るべき所”が通常のゲームとかなり違うという事。
柏木:「うん。面白さを伝えるには、とにかくやってみてくれとしか言いようがないのよ」
河口:「まあ、『五星戦隊ダイレンジャー』で言うなら、アクション部分の面白さを言葉で伝えても不毛だしなぁ…」
柏木:「そゆコト。ただ、そういうスタンスなら完全にデジコミにした方が、流れが途切れなくて良かった気がするけどね」
河口:「ふーん。でも今時デジコミは辛いっしょ」
柏木:「まあね。けど無理矢理マルチEDはあんまり嬉しくないな〜」

 とにかく、デモなんかでOPを見て、「おっ!」と思った方にはおすすめです。
 とりあえずやってみて下さい。
 申し訳ないのですが、柏木にはこれ以上言える事はありません(ぺこり)。
 あしからず。

(柏木悠里)

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