とびっきりRuin

遺跡の奥で見つけたものは、過去の記憶と心の絆。

1.メーカー名:エスクード
2.ジャンル:遺跡探検アドベンチャー
3.ストーリー完成度:C
4.H度:D
5.攻略難易度:E
6.オススメ度:C
7.その他:狙った訳ではないけど、なぜか前作の「流星天使プリマヴェール」にひき続きエスクードの作品をプレイしたので、また書かせてもらいました。
 これを見て気が向いた人は、せっかくだから「プリマヴェール」の方も見ていってくれるとありがたい。

(ストーリー)
 主人公(鷹月まさと:変更可)は、将来を期待されたカメラマンの卵だ。
 しかし盗作の疑いをかけられて以来、写真をとることに抵抗を感じてしまい、高校の写真部で暗穏とした日々を送っていた。
 12月も半ばを過ぎたある日、そんな彼に「遺跡発掘の記録写真を撮影して欲しい」と神薙夕凪(かんなぎゆうな)から依頼される。
 聞けば、彼女の家の敷地内にある遺跡を価値あるものと認めてもらい、この地域に持ちあがったダム建設の話をなくそうとしているらしい。
 そこで資料としての写真得るため、その腕を見込んで頼みにきたのだ。
 人物写真ではないことでしぶしぶ承諾した彼は、考古学部の探掘(探検+発掘、部長の紅美が作った造語)メンバーと共に現場に向かう。
 やってきた現場の付近でデジャヴを感じ、不思議に思うまさと。
 その原因は判らないまま、探掘は進む。
 一見して、とてもただの遺跡とは思えない場所。
 その奥で見つかるものは何なのだろうか?



 RPGで使うような小さいキャラクターを操作し、遺跡内に散らばるアイテムを回収してステージをクリアする、極めて珍しい探索型のアドベンチャーゲーム。
 アイテムによっては、獲得方法がパズルのようでもある。
 キャラクターを見て楽しいと言うよりは、動かして楽しいタイプだ。
 一ステージ毎に異なる遺跡の顔は、一時期はやっていた「インディ・ジョーンズ」シリーズのようなB級娯楽アドベンチャーを思わせる。
 また出てくるアイテム類も世界各地で見つかるような物が多く、集めることを飽きさせないようにしていることが判る。
 探掘中の音楽は、やはり「インディ」のそれを思わせる感じで、気分を盛りあげてくれる。
 12月19日から1月頭まで、約2週間の間に行われる遺跡の調査は、主人公と六人の女の子(シナリオによっては、後二人加わる)の内誰か一人が組む、二人組みのチームで進められる。
 誰と組むかによって調査する場所とイベントが変わり、一回のプレイだけではアイテムのコンプリートができないようになっている。
 その中には、おまけシナリオに入るためのアイテムも含まれているため、女の子の攻略と重ねて複数回プレイさせようという狙いだ。
 あまり広くないマップに7個前後のアイテムがあり、それを探して行動する様子は、探索の気分をしっかりとプレイヤーに伝えていると思う。
 全部手に入れられたかどうかは、一日の探索終了時のセリフで判断できるのも親切だ。
 Hゲーでは滅多に無いシステムであることも手伝って、十分に楽しめるだろう。
 シナリオは遺跡の探掘をバックに、主人公と女の子が互いの心を開いていく話でまとめられている。   

 このゲームの基盤となっているのは「過去」。
 ストーリーは、主人公が写真に対するトラウマを克服することを縦軸に、女の子それぞれの主人公に対する昔からの思い(一部例外あり)を横軸に進む。
 女の子の過去は、一族のしがらみを絶ちたい夕凪、考古学を追求する紅美、主人公の写真に魅かれた絵美、といった具合に様々。
 主人公に過去のすべてのきっかけを作らせたのは、10日あまりという短い期間が有効に活用できるうまい設定だと思う。
 もちろん舞台となる遺跡そのものも過去の遺物。
 人の記憶を呼び覚ましたり、死んだ直後の人間を生きかえらせたりと人知を超えたものでありながら、その役目が終わったらきれいさっぱり消えてしまう。
 更に主人公達の泊まるペンションの名前も、過去を司る女神の名前「ウルド」なので、その徹底ぶりがうかがえる。
 くるみと美鈴は例外で、主人公の過去との関わりが無い。
 それでもくるみは夕凪の一族と因縁があるが、特に美鈴は、他の女の子とは別のストーリーとして存在しており、同じパターンへの飽きを防ごうとしている。
 美鈴は紅美の考古学上の同志である以外、何の関りも無い。
 しかしそれだけに、病に侵された身体をおして発掘に情熱を傾ける一途な少女、というシナリオが、他の7人と一線を画していて際立っている。
 メインのヒロインは夕凪だが、同列に置いてもいいぐらいだ。
 全体的に遺跡内の探掘がメインであるため、シナリオのボリュームは薄い。
 悪い意味ではなく、テキストばかりに頼らない、キャラの操作とのバランスを考えた上でのものなので、これで丁度良い感じだ。

 ところで珍しいタイプのゲームだからだろうか、問題点というか、ゲーム進行上の疑問点が目立つ。
 例えば上記のパーティー別のルートで、Aルートのクリアに必須のアイテムを、Bルートを選択した時にも回収できてしまうこと。
 後で連絡が取れるといえばそうなのだが、全部自分が回収しておいて「後は反対側のパーティーがうまくやってくれていたらOKだね」はないだろう。
 反対側はきっと困っているはずだ。
 どうせならいっそのこと、BルートでAルートのアイテムを採ってしまった場合、それを関係ない部分で使ってしまうイベントを用意してクリア不可能のトラップとしてしまえば、ゲームが引き締まっただろう。
 ゲームオーバーがなく、よほどのことをしないかぎりバッドエンドにもならないので、何かの刺激がないとだらけるばかりだ。

 そして採集するアイテムの意味の無さ。
 回収されるアイテムは見てて面白いものは多いが、ステージクリアに必要なもの意外のイベントはほとんどない。
 本当なら無視して早く次のステージに進みたいのだが、回収しなければ調査率の関係で、グッドエンドにならないため八人分プレイしようとするとかなりの手間となる。
 ましてコマンド選択ではなく、自分でキャラを操作するわけだから、クリアまでの時間が無駄にかかっている気さえする。
 二度目以降のプレイがやり易い工夫が欲しかった。

 他に、クリスマスイベントで「この日のために用意した」服がゲーム中ずっと着ている服だったり、「一緒にお風呂に入りましょう」と入ったら、露天風呂の脇に脱ぎ散らかした服がある上に、主人公は服を着て風呂に入っている(池に落ちた体を暖めようと風呂に直行するイベントの使い回しだから)し、ペンションの間取りではほぼ両端の対角線上の部屋にいるのに「誰かが風呂に入った」音が聞こえる等、細かいところにアラが目立つ。

 遺跡の全体が判らないのもよくない。
 ゲームのバックを支えるのは遺跡の発掘、そして探検だ。
 しかし足を踏みいれた場所の地図が作られないため、自分がどのあたりまで奥に入ったのかが判らない。
 遺跡を調べても、その構造が明らかにならないのでは、先に進んでもわくわくしてこない。
 実際の探検でも、マップは命綱の如く重要なもの。
 高校生程度の知恵があるなら、自作のマップがあってもおかしくない。
 この肝心な部分への考慮が足りないのは、前作の「流星天使プリマヴェール」で私が書いた「敵・味方共に設定が足りなくて面白さが半減してしまう」のと同様に“一見必要なさそうで実は重要”というゲームの面白さや魅力に関わる大きな問題なのだが、残念ながらあまり改善されていないようだ。

 Hが少ないのも問題だ。
 基本的に本作のHは終盤に愛を確かめあうだけなので、興奮とはかけ離れている。
 なんとか遺跡バカ一代の紅美をはじめ数人が、遺跡内のアイテムでオナニーしたり、出てくる怪物に襲われる等でがんばっているが、プレイ時間に対してCGが少ないので、あっさり感が離れない。
 正直な所、それが目的のゲームにはどう考えても見えないので仕方が無いのか。
ちなみに身体のバランスは「プリマヴェール」の時に比べて格段の進歩がある。
 HCG以外のCGや、キャラクタのポーズやリアクションも乏しいので、この辺は特に努力して欲しい。

 前作とは違うタイプのゲームに努力の影は見られるが、やはり一歩足りないという感は否めない。
 更なる努力に期待したい。


(総評)
 なぜ一介の高校の部活が、個人の敷地内とはいえ調査可能なのか? という疑問は「ギャルゲーだから」ということで納得していただくとして、一点集中から一変、八人もの女の子を攻略するゲームへの転身は、どんなパターンにも対応できるという自信の現れだろうか。
 今作を見ていると、HCGを差し変えて細かいイベントを追加していけばあっという間にプレステ用のアドベンチャーゲームに早変わりできる。
 いい意味でHゲーから遠いゲームだ。

 ただ、先に書いた「前作からの問題」があまり改善されていない点が気になる。
 ゲームを制作する時点でどの位の設定を作っているのだろう?
 表に出てこない設定があって初めてゲームの中身が生きてくると思うのだが。
 でもゲームとしての面白さは上がってきているようなので、今度はどんなタイプの作品を出してくれるか楽しみだ。

 ところで遺跡ではないが、探検といえば、やはり誰でもが思い浮かべるのが「ゆけ〜ゆけ〜川口浩」で一世を風靡した「探検隊シリーズ」だ。
 私ぐらいの年齢の人なら、誰でもあのフレーズを一度は口にしているだろう。
 この作品もそんな雰囲気が漂っていた。
 由緒正しい神社の敷地内にある山に開いた入り口から入ると、洞窟・神殿・不思議な広間があり、行きつくところは人知を超えた過去の遺産。
 段々とおおげさになっていく様子はまさに川口浩のそれであり、ゲームの最後まで遺跡のことがはっきり説明されない所も、最後に「あれは何だったのだろう」で締めくくる探検隊のそれである。
一つの探検は終わった。次に我々を待ちうける謎は一体何であろうか? 新たなる冒険はもう始まっているのである!」って感じをプレイヤーが感じられたら、このゲームは遊んだ人にとって十分に楽しめるものだったといえるだろう。

 ほら、頭の中に浮かんでこない? あのエンディングのフレーズが…。

(Mr.BOO)

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