MISSING PARTS the TANTEI stories
 FOGが送る、本格推理探偵ADV。今回はドリームキャストで登場!
 いつもとなんとなく違う雰囲気で、とってもアダルティ…なのはいいが、これって、ここで扱うジャンルでいいの?!

1.メーカー名:F・O・G
2.ジャンル:移動型ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:皆無
5.オススメ度:B(久々にムラなし評価)
6.攻略難易度:クリアオンリーならばD、クリアランクAを狙うならばA。
7.その他:これだけ楽しめて4,800円(定価)ならば充分お買い得だと思う…


(ストーリー)
 主人公・真神恭介は、とある事情から鳴海探偵事務所に勤める事になった唯一の探偵で、しかもまだ新米。
 さらに所長代理の鳴海京香は、行方不明の所長であり父親の誠司に代わって経営しているだけで、探偵としての経験も技量もほとんどない。
 そんな状況のため、ほとんど仕事の依頼もこないのだが、それでもなんとかやりくりを続ける毎日であった。
 しかし、恭介はひょんな事から知り合ったアンティークショップ“セクンドゥム”の主人・月嶋成美の元でも働くハメになる。
 探偵と、アンティークショップの雑用係(実際は成美の下僕)という二足草鞋を履く事になった恭介の運命は如何に?! 


【第一話 鳴らないオルゴール】

 恭介は、とある雨の日に暴漢に襲われる兄妹を助けた。
 その礼という事で彼らの家に招かれる事になるが、そこは大財閥・木原家の屋敷…嘉納浩司・潤は、とある縁で木原家に住まわせてもらっている他に身寄りのない兄妹だったのだ。
 屋敷の中では、複雑で醜悪な人間関係が渦巻いていた。
 それを目の当たりにする恭介だったが、なんと、その翌日に長男・良一が刺殺されるという事件が屋敷内で発生! これに巻き込まれていってしまう。
 さらに、立て続けに発生する不可解な暴行事件・さらなる殺人…
 果たして犯人は誰か、目的は一体?!

 そして、潤が亡き母より受け継いだ「パーツの足りないオルゴール」には、どんな因縁が秘められているのだろうか…?


【第二話 赤いカメオ】
 芸能プロダクション・スターライツ社のビルより、まもなくデビューを控えていた候補生・高崎美幸が飛び降り自殺をした。
 彼女は新人アイドルデビュー番組にて選出された3人の一人で、“3人の中から2人が残り、ペアとして売り出される”企画での有力候補であったのに…
 不可解なこの一見は、警察によって自殺と正式に断定された。
 その前日に、恭介は街で春日野唯という少女と出会っていた。
 彼女はその三人のうちの一人で、一番実力不足でありながらも、美幸をも追い抜きかねない潜在人気を得ている存在であった。
 彼女や、関係者達は美幸の自殺に大きな疑問を抱いている。
 やがて「選考に残るために、唯が美幸を殺した」などという悪質な噂がネットを中心に広まり始める。
 マネージャーの亀山は、鳴瀬探偵事務所に「美幸の死因は間違いなく自殺であるという事を証明」してほしいという依頼を受ける事になった。

 時同じくして、成美の店に持ち込まれた一つの“カメオ”。
 中央部分が欠け落ちたこの装飾品は、持ち込んだ者によると“呪われた品”だという。
 そしてこのカメオは、やがて恭介達の関わる事件との不思議な因果関係を表していく事になる…



 2月某日、東京…
後藤夕貴 「ふむ、プレイ総時間約16時間…結構かかったものだが、やっと終わった。さて、レビューを…」
 ピンポーン♪(突然闇夜に鳴り響くチャイムの音) 
「こんちわ! 元気だった?」
へ? 誰?
「おお、誰? とは寂しい事で。私でございますよ元締」
「…(しばらく考え込んで)…あ、茜? まさか?」
中島茜 「さいです。大変ご無沙汰しておりました。中島茜でございます」
「ご、ご無沙汰なんてもんじゃね〜だろ! 最後に登場したのが同人誌版『九拾八式・極』だから…げげっ、6年ぶり?!
「あー、私の正体覚えている人にとっては大爆笑な反応ありがとう(笑)。それにしても元締、まーだゲームレビューなんかやってたの? 進歩ないなあ」
「ぬかせ。おかげでもう丸7年経過したわい」
「風の噂でまだ生きながらえてるのは知ってたけどね。…お、次は『MISSING PARTS』? 渋いねえ。私もやったよぉ」
「ほほお。どーだった?」
「まあ、それなりに…って元締、私、これは普通のゲームとして購入したんだけどな。どうしてこちらで扱うの? アダルトでもギャルゲーでもないでしょ」
「ううむ、でも、まあ…それについては後々語るとして」
「ほーんーとー? なんだかんだではぐらかすつもりなんじゃないの?」
「う、う、うるさいなぁ! それより、せっかく来たんだから何か語っていっておくれよ」
「…語ると長いよ?」
「むぅ、では後藤式としては珍しく対話トーク型でやってみようかな、今回のレビューは」
「なんか、御都合主義的な登場になったんですかね、私?」
「まあまあ、細かい事は気にしない。それでは音楽などかけながら、まったりと語り合っていこうではないか」
「まったりはいいけど、元締…『DRAGON KNIGHT2』のサントラ流すのやめてよ。7年前にもやられたよ、それ」
「ははは、たまたま近くにあったからね。それはそうと、今回もネタバレ必至なので要注意という事で! というよりも、今回は徹底してプレイ経験者じゃないとわからない事ばっかだけどね。真犯人以外はバシバシ本筋に触れまくるから、もしまだ未プレイの人が覗いているようだったら気をつけてね!」
「そうそう。私も昔『かまいたちの夜』の一番オイシイネタ部分ばらされた事があるし」
あれは、うっかりリセット押しちゃっただけだろーが!!
 
「このゲームって、今後シリーズ化していく事を前提として発売されたためか、いくつか面白い特徴があるよね」
「ドリキャスソフトにして4,800円という価格設定もそうだけど、いきなりオムニバスだもんね」
「おいら、パソコンの周辺機器買いに行ってお店の前を通るまで、このソフトの存在全然知らなかったのよ」
「おいおい、『久遠の絆』の時にあれだけ周囲に布教しまくった人間の言葉とは思えないね」
「6年も音信不通だったくせになんでそんな事知ってるかな君は。まあとにかく、衝動買いしたおかげでその後えらい目にあったんだけど、その犠牲を補うくらいのおもしろさは充分にあったと思うんよ。次回作に期待かな」
「…そう?」
「ん、何か不満が?」
「いえ、不満という程ではないんですがね。実はちょっとした不安要素が見え隠れしていてね」
「えーと…なんだろ?」
「このゲーム、一体どういう路線を狙ったゲームなのかよくわからない部分があって。主人公の名前、なんて言った?」
真神恭介…だけど何か?」
神津恭介(かみつ きょうすけ)…って知ってるかな? 高木彬光原作の推理物の主人公なんだが」
「そういえば、以前柏木がそんな名前を…」
「第一作目『刺青殺人事件』(昭和23年発表・初版発行1953.12.20)から、平成6年発表の『神津恭介の予言』まで、連続ではないけれど40年以上に渡って発表されたシリーズらしいよ。結構有名…どころか、実は“日本三大名探偵”の一人だと豪語する人達も決して少なくないよ」
「へええ。…って、名前似てるね。それが何かあるのかな?」
「あると思うよ。探偵系の物語って、こういう主人公の名前とかサブタイトルの付け方によって結構イメージを作られやすいんだ。言い換えれば、完全オリジナルの推理探偵物を樹立させるのは、日本ではかなり困難な状況だとも言える訳ですよ」
「ああ、そういえば…。確かに推理物なんてジャンル提示した作品は、まず推理マニアの“偏見”の洗礼を受ける傾向が強いね」
「そうなんですよ。だから、うかつに有名探偵作品の用語を引用したかのようなワードを組み込むのは考え物なんです。たとえ“あやかって命名”したとしても、それが仇になるケースとかね、多いから」
「『金田一少年の事件簿』なんてのも、そういった事かなりあったというね」
まあ、あれは原作者も絵描きも、金田一物をまったく読んだ事がなかったからこそできた、怖い物知らずの結果だけど
「…おまえ、さりげに怖い事言ってない?」
「ん、もう時効でしょ? 嘘は言ってないし」
「…」
「これの主人公の恭介も、名前は完全に同じだわ名字にも同一の文字を使っているわで、たとえ命名者がホントに“神津の存在を知らなかった”としても、絶対に認められそうにないよね」
「ま、それはないわな。それより、“神津恭介”ってどうしても知名度がイマイチでしょ。自分みたいに興味ない人でも知っている名探偵といえば、やっぱ明智小五郎とか金田一京介だし」
「元締、辞書が混じってる(笑)。でも、それはその通りだね。“神津恭介”という存在を知らしめたいという気持ちが、どこかに含まれていたからこそのネーミングだったのかも」
「でも、それはあんまり正解ではないような気がするよ」
「…残念ながら、これは同意だね」
「物語としては、そんな事あまり臭わせないような作りになっていたと思うけど、どーよ?」
「これも、ちょっと難しい所かな。いや、実際すごくしっかり作ってあって好感持てるし、何よりちゃんと人物関係や背景描写を描ききっているのは評価できる」
「では、茜的にはどーだったと?」
「これもさっきの話にかかるんだけど、これってそれぞれの物語の中盤から急に謎解き要素が高まる傾向があるんだよね。…いいや、言い方悪いな。“プレイヤーに突然謎解きを提示し始める”と言ってもいいかも」
「ああ、確かに。特に第一話なんか、和江夫人が殺された辺りからそういう臭いがただよっていたなぁ。それまでは陰惨な人間関係や事件の経過を側面的に眺めていくストーリーだとばかり思っていたんだけど。高校で、早弁しようと思って机の下でスタンバっていたら、突然抜き打ちチェックうけたみたいな心境だな」
「…な、なんという例えを…」
「先の“神津”なんかに反応する人達としては、どう感じたんだろうね」
「いい所を突いて来たね。そう、それがこの作品の抱えていた爆弾でさ」
「ほぉ?」
「忘れないで欲しいのは、神津の件を避けたとしても、一度“探偵物”とか“本格推理”みたいなジャンル提示をした作品は、特殊な見方ですべてを評価される傾向があるって事」
「それは、さっき言ったんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、元締…考えてみてよ。よく、犯人探し系の物語で“あ、あたし犯人わかっちゃったー♪”とか言ってはしゃぐ輩がいるでしょ?」
「ああ、いるね。自分にも多少はそういう部分があるかもしれないけど」
「そういう人達は、いわば“トリックや謎掛けの出題者の解答発表よりも、如何に早く答えを出すか”という、本来とはちょっと違った楽しみ方をしてしまうよね?」
「…そ、そういわれてみれば…」
「もちろん断定はできないんだけど、多い筈なんだ実際。しかし、世の中には“あえて犯人探しなどはせず、ありのままに展開を受け止める”人もいるの。そういう人達は、純粋に“驚きの結末”を期待するんだよ」
「ああ、推理物の犯人を知ってても、絶対教えるな! ってなパターンだね」
「そうそう。で、自分がプレイしていて感じた事は、この作品“どっちを選びたかったの?”という事なんだ」
「? ご、ごめん…もうちょっとかみ砕いて教えてくれ」
「お? 失礼。さすがに午前3時ともなると、元締でも思考能力鈍るか」
「…喧嘩売ってるのか?」
「まあまあ、落ち着いてよ!(汗) つまりね、『MISSING PARTS』という作品は“プレイヤーに推理させたかった”事が主体なのか、“探偵が活躍する物語”を描きたかったのかが、あんまりはっきりしていないって印象を抱いたの」
「…そうかぁ? 結構しっかり“謎解きせぇ”言われていたような気がするけどな」
「それ、最初から事件が始まっている第二話の印象じゃない? 第一話はどう?」
「でも、いきなり潤が襲われて…そいつの正体は不明で…」
「その程度の謎なら、べつに普通のADVでもやらない?」
「…あっ(・o・)」
「どうも、第一話は途中までは普通の“探偵活劇”として、中盤辺りから趣向を変えたようにも感じてしまうんだ。どういう方向性に定めていくかが固まりきっていなかったと言い換えてもいいね。そもそも、事件の発端は“失われたオルゴールの部品”なんだし」
「待った。そこから先は、各話の批評に移ってからにしよう」
「ああ、その方がいいかもね。あとは、クリア後に表示されるランクもなんかアレだし」
「ああ…『エクソダスギルティ』の悪夢をまた思い出すとは思わなかったよ! 今回はランクを得る過程で展開が違ったりするから、それなりに意味はあるけど…良いランクを得るために再プレイする価値は…ないよなぁ。というより、その気になれないよ、やっぱし」
「それが評価をAに出来ない理由なのかな? …ちなみに、元締は初プレイいくつだった? 私は両方ともC」
…全部A
「ええっ?! すごいじゃない!」
「だって、時間なかったんだもん…(ボソリ)」
「?!」
  【第一話 鳴らないオルゴール】
「ゲームのタイトルが表す通り、一話も二話も“紛失した部品”から物語が始まるというのも面白いよね。第一話は、事件そのものというよりも被害者側中心人物との出会いのきっかけとして機能しているようだけど」
「元締、ちゃんと最後のオチを持っていく訳だから、それだけって事はないよ」
「そりゃそうやね。中盤ではすっかり存在を忘れそうになるオルゴールだけど、最後はとてもおいしい使い方だったものね」
「うまく使っていたと思うよ。特に、源三が潤に送ったカセットテープのピアノなんかね。あれ、わざと弾き方を変えてるようだね。たぶん指一本で順番に鍵盤を叩くように演奏したんだと思う」
「あれは面白かったね。程良く“わかる人にはわかる”演出で。おいら、思わず『ジーザス』思い出しちゃった」
「…そこでそういう方向に持っていく思考がすごいよ、元締」
「ふふふ(謎)。それはそれとして、最初はオルゴールから始まるのだけど、それからどうだって?」
「うん。つまり私が思ったのはね。発生した事件があまりにも遊離し過ぎているという事なの」
「…遊離? はて」
「あの連続殺人事件、なんか取って付けたかのような気がしない?」
「う〜〜ん…。…まあ、そう思ったかもしれないけれど…」
「主人公が、事件発生の場に立ち会っていたという状況から進行する推理物って、実は結構難しいんじゃないかと思う。特に今回みたいに、事件発生の要因とは直接関係のないアイテムからスタートしているタイプは、その絡ませ方を工夫しないと“…で?”って事になる」
「そこで氷室刑事の真似やめなされ(笑)」
「これは私の主観だけど、潤や浩司の生活描写やこれまでの経緯、そして謎のオルゴールの正体の追求に対して、ああいう事件が並行して起こるという事になんか違和感を感じるんだ。だから、中盤オルゴールの存在を忘れてしまうんじゃないかな、と。本来はメインの筈なのに」
「そんなもんかねぇ」
「たぶんあのまま、純粋なオルゴール追求物語でもイケたんじゃないかな、と…」
「ういっ、反論」
「どーぞ」
「あのオルゴール自体の最終的な設定を考えると、それだけで物語全体を引っ張るのはどうかなと思うぜ。結局制作に関係する事も、パーツの行方についても、主人公達はただ情報の到来を待ち続けるしかない訳だし」
「…ふむ」
「それに、あのオルゴールについては途中でだいたいの存在意義が伝わるような作りになっていたでしょ。あれから考えると、おそらく最後のカタルシスを用いるために“貯め”に入っていたんだと思う」
「つまり、オルゴールは中心にありそうで、実際はそうではないという解釈?」
「そう。やっぱりあれは潤&浩司の兄妹と、彼らがどういう風に事件の中で翻弄されていくのかがメインだったと感じるけどな。で、それを推理で打開していくのが恭介な訳で」
「元締の言うことはわかるけど、ではあの殺人事件の違和感はどうだろう?」
「うん、確かに感じるんだよね違和感は。現実にあんな事がありゃあそれは“突然に…”と感じるものだろうけど、物語である以上、そういう事件が発生してしかりというベースを構築しとかないと。今回はそれがイマイチ充分でなかったのかも」
「良一の事件については?」
「突発的ではあったけど、あれだけならばまだきっかけとして問題はなかったと思う。問題はそれから連発する事件だ」
私、充と和江の事件だけはかなり無理矢理感が拭えないけど
「…無理に殺してない? とは思った。っていうか、和江夫人は死ぬべきキャラじゃなかったようにも思う」
「ほほぉ、いつからそういう方向の趣味に?
「…怒るぞ(- -#」
「充については、まるで“彼が真犯人ではないよーん”という事をアピールするためだけの事件だったね。なぜ彼だけ犯人に殺されなかったのかがいまだに不満だよ」
「そうだなぁ…殺すつもりはあったのかもしれんが、かなり不明瞭だったし。構成的に言うと、彼は彼独自の情報を持っていた訳だから、それを伝えるという役目を果たすまでは死ぬわけにはいかなかったんだと思う。もちろん、そのためだけに無理に生かされていたような印象は否定できないけど」
「でも、彼が持っていた情報って、結局和江の事と、自分が襲われた事に対する種類だけだったような…」
「それ以上言うなよ。狂言回しだった事がバレてしまう
「おいおいおい…そりゃあないよ(^^;」
「充については、潤を巡った大立ち回りがあった訳だからね。あれで特殊な人間関係の掘り下げが完成形になったと思うから、俺は好きだよ」
「あれを“大立ち回り”と表現するところが素敵だなぁ」
「それ以外の何物でもないんちゃうかい? まぁいいや。その後の“潤と充の血縁関係”の暴露については、結構衝撃的な展開だったからね」
「あれは、全ゲーム中でも最大級のトラップでしょう! びっくりして、思わず声が出ちゃったし(笑)」
「充が死んだ後に…というのがすごいんだよね。皮肉というか因果というか…。ああいうのが、大人が楽しむ“苦み”なんだと思うよ」
「あれで初めて充に同情した私は残酷ですか?」
「日本全国8千万人くらいが、たぶん同じ事を考えたと思うから心配ないよ」
「…それ、無茶(- -;」
「キャラクターがいずれも濃いよね。使い方もうまかったし」
「この系統は第二話で炸裂するんだけど、準備段階と言えばいいか、プレイヤーに世界観を体験させるのにはもってこいって感じだったね」
「ただ…どーしても我慢できないのが、アレ
「アレ?」
「覚えていよう中島茜よ。今から6年10ヶ月前…『九拾八式・改』に掲載された“座談会”にて、私が唱えていたアレを…」
「アレ…あれ…? …えーと、なんで今更DOS時代のゲームにまつわる話なんか?」
DOSはどーでもいい! システムで、私が一番異論を唱えていたものがあったであろう!」
「…まさかして、“クリックタッチ”システムの事?
「ご明察」
「ああ! 虫メガネアイコン使って、画面を調べるアレかぁ。なんか、どこかで似たような事した記憶があったけど、そうかぁ…」
「あれがかなり難でしょ。別に、あそこも他と同じような選択式で良かったと思う」
「そりゃまあ、女の子の裸クリックするのに比べればつまらないだろうしね」
違うっ!!(激怒) あれで物語が分断されちゃうんだってば鯖」
「鯖? …う〜ん、そうだったかな。私は、探偵モノだからああいうのもアリだとは感じたけど」
「廃工場の場面でも、それが言えたか?」
「おお、言われてみれば…なんかあそこだけ妙に手間取ったな」
「元々かなり時代錯誤的なシステムであると思うんだけど、そういう点を除いてもね、無茶は多かったと思う。1〜2回同じポイントをチェックして、それからさらに別なポイントをチェックして、テキストを変化させないと進まないとか…」
「あれは、嫌いな人は徹底的に嫌うだろうからね。私はそれなりに我慢出来たけど、推奨はしたくないかも」
「あのモードを終わらせない限り、中断すら出来ないというのは痛すぎる。自分は、なぜか廃工場の場面だけで40分もかかってしまった」
「あれ、そういえば…」
「どーした?」
「他の場面では、どこをチェックすればクリアに繋がるのかよくわかったけど、あの場面だけは“いつの間にか先に進んでた”感が強かったなぁ…と思って」
「決め手になるのは、画面中央下段・右辺りに落ちてる“潤の靴”なんだけど、困った事にこれ、最初はどんなにクリックしても認知してくれんのだわ。実はおいら、そのためにあの画面全部クリックしたの」
ぜ、全部って…まさか、隅から隅までって奴ですか?」
「そう。それで“包帯ピン”と“足跡&引きずった跡”まではストレートに見つかったんだけど、そこから頓挫しちゃってねぇ…その後も延々クリック。もちろん、一回きりじゃあないよ。嗚呼、九拾八式で最悪の評価を得た『リザレクト』を彷彿とさせるね
「…そ、そりゃご苦労様でした。しかし元締、なんか今回やたらと古いゲームタイトルの引用多くない?」
「いまだにあのシーン、進行の決め手が何なのかがはっきりしない。“ひょっとして時間制?!”とまで疑ってしまった」
「結局解答は得られず…なのかぁ」
「まあそのくだりはいいとしても、どうもこのゲーム、アイコンでキャッチしなければならないポイントが解りづらいんだわ。ただ小さいだけじゃなくって、色が他の背景と溶け込むようなものばかりでね。目の悪い人にはさぞかし難儀だったと思う」
「元締、視力いくつ?」
「最後に測定した時は2.0」
「それで見つけ辛かったっていうなら、かなりのものか…って、モニターの大きさは?」
14インチ…
「…元締、それ、なんか違うよ絶対(笑)」
「物語の方向性は、どちらかというと“感動系”人間ドラマかな? 第二話はどちらかというと“泣き系ではないけど悲しみ系”だったと解釈しているけどね」
元締、潤に萌えたでしょ
「(ギクッ)…な、な、何を根拠にぃ〜?!?!
「だーって。“盲目”“不幸”“やや暗めでひかえめな性格”“岸上キャラ”…これ以上ないくらいにツボの集合体じゃない」
「(すっとぼけて)要潤に山崎潤に嘉納潤…なんか去年から、やたらと“潤”に縁があるのぉ」
「元締、ここを読んでいる人のどれくらいが、その名前に反応すると思うの?」
「け、掲示板をROMしてくれている人なら…」
「まあ潤はおいといて。ストーリーの話をもうちょっとだけしよう」
「振ったのは、おまえだっつーの」
「忘れたなぁ。この話って、結構型通りの素材ばかりを利用している様に思えて、結構根底部分に工夫があるよね。私はそこが気に入ってるんだけど」
「真犯人が1人ではないって事?」
「真犯人…というより、実行犯が複数で、かつそれぞれに関連がないといった感じでしょ。これも、第2話でさらに昇華している訳だから、良質な“方向性のアピール”という解釈しているけど、OKかな?」
「いや、俺に同意を求められても(笑)。でも、言いたい事はよく解るが」
「ひねりはもちろんあるものの、基本的にはスタンダートな展開と謎という事で、第1話としてはこれで正解だったかもね」
「…おまえ、まさかそれで締めのつもり…?」
  【第二話 赤いカメオ】
「完成度、異様に高かったね」
「そうそう。第1話はそれなりに不安要素もあったんだけど、これは掛け値なしで楽しめた。なんつーか、程良く展開を推理する楽しみがあるんだ」
「いきなり話の構成や進行が複雑化するんだけど、それがからまったりしていないのは見事だよね。よく練られていると」
「カメオの行方と、局長の行動&行方、美幸の自殺の真義、幽霊事件…そうか、4つも同時進行させていたのにあれだけまとまっていたのか。それはそれで怖いなぁ…ほめ言葉だけど」
「それぞれが無駄にかみ合わないように、丁寧に並べられていたね。だから進行させていても違和感がない。一部の話が進んでいる間は他の展開を忘れるように仕向けて、一段落したらもう一回浮上させる…これがうまくつながっているため、プレイしていて退屈しないんだ」
「うーん…そうだったな。振り返ってみると、あんまり目立った問題点が思いつかないような気がする」
「…それは、そうでもないと思うけど」
「ほ? 例えば?」
「そうだね、局長の行方不明を引っ張った結果、彼が姿を消した事が本編にまるで絡んでいなかったというオチとか」
「…事故死、じゃあな。確かに…」
「あれは、成美独自の調査方法の結果だったのだろうけど、あれだけ浮いてるんだよね。冷静になって考えてみれば、局長自身の行動はカメオを売りに来た段階ですでに完了しているのはわかるんだけど、だからってああいうオチを終わりの終わりに持ってくる事には納得がいかない」
「手厳しいね。俺は、結構早い時期に局長が死んでいる事に気付いていたけど」
「いやね、元締。死んでいる事に気付く時期と、その答えが出るまでにあまりに間が空きすぎだと。あるいは、推理のミスリーディングを誘発させるためのトラップとして配置しておいた可能性もあるけど、だとしたらあまりに後始末の方法がお粗末じゃないかな、って言いたいの」
「…そうか。せめて“本当に発生したカメオの呪い”によって死んでしまった…とかなら、まだ納得できたかも」
「ホープダイヤほど強烈なのは求めないけど、“呪いの〜”と称するからには、それなりの活躍(?)があってもしかりかもね。元締、参考にホープのブルーダイヤの説明してよ」
「洗剤の?」
「……ははは、眠気がピークに達しているようだね。この寒空の下で安らかに眠ってみるかい?
「ここ、俺の家なんだけど…。まぁいいや。ほい、“ホープのブルーダイヤ”の解説ね」
「…リンクにしたか」
「まさかここでアレをえんえん書くわけにゃあいくまいて。まあ、結局噂のカメオが“こつ然と姿を消した”くらいにしか不思議効果を発揮していなかったのは個人的に残念かと」
「他には、唯の使ったトリックなんてのも…」
「(手を打って)ああ! アレは確かに!!」
「あんな事をやった動機そのものには理解を示せるんだけど、そのために唯があんな事を考えついたとは、とても思えないんですよ」
「言われてみれば、なんだけど、それには同意するわ。確かにあれは“おいおい”と思った」
「ブレーカーの配電構造の把握って、一般人には結構難しい事だよ。まして、テレビだけ別配線に接続するなんて芸当、とても普通には行なえっこない」
「というより、さりげに無理のあるトリックだったね、アレ。リモコンが二つある事だってよく考えればすごく変だし」
「唯が、ブレーカーダウンを利用したパニックを演出しようと考えつく…ものかなぁ。単純に“女の子だし”という言葉では片づけるつもりはないけど、あんなアンポンタ…」
「ひどい事言うなぁ。唯がいなかったら、このゲームを“ギャルゲー”にこじつける理由がなくなってしまうんだぞ! 扱いに気をつけたまえ
「(驚愕)そうか…そういう事だったのか、元締…
「(無視)おいら、あのトリックは“唯には出来っこないからなぁ”と思いこんでいたもので、しっかり引っかかってしまったよ」
「そう…第1話の犯人の一人もそうなんだけど、ちょっと“このキャラを実行犯にしたら意外でしょ?”といった発想で設定したかのような気すらする。一般人の認識なんて、“ヘタにブレーカー細工したら感電しない?”ってなもんだよ普通」
「てっきり誰かが唯にやらせてるもんだと思ってた」
「あれを唯がやるためには、最低限一度“彼女がブレーカーを落とした事がある”というのを表現しておかなきゃ説得力は生まれない。しかも、それをやっていたら他の人間がとっとと気づいてしまう…もう、どーにもならない」
「そうすると、あのトリックそのものに存在意義がなかったという事にも…」
「元締、私に最終結論をそんなに出させたい?」
「…ううっ、や、やめとく…」
「あとは、“カメオになぜ宝石が?”かな」
「ほえ、おかしいですか?」
普通、ああいった実用的なカメオには宝石なんかつけない
「えーっ、そうなんだ?!」
「というよりもね、ああいう装飾品には“取れやすい部品”はつけないものだよ。実際取れやすかったからの展開ではあったけど。確かに宝石をあつらえたカメオは沢山あるし、そういう美術品は写真で沢山見たけれど、今回登場したものはそういうのとはどうも違うようだし」
「そうか…でもね茜、絶対そうとは限らないんじゃないかな? 言い換えれば、そういう常識を以てプレイヤーから疑問符が打ち出されなければ、それはそれでありだという考え方も出来るが…」
ブローチにすれば?
「…あっ…」
「そう、問題はそこなの。別にカメオである必然性がないのね。そもそもカメオなんてそんなに一般的な存在じゃないんだよ。漠然とブローチと言えば、より一般的なアイテムだからいくらでも言い訳できるんだし、よく知られているものだからさ」
「むぅ…。それは考えてもみなかったよ」
「もうちょっとだけつっこむと、あんなデザインの物に宝石がちょこんと付いているのも妙。もしも中央に宝石が配されているならば、それを中心にデザインが成される筈ですもの」
「そうかぁ。ひょっとして、仮にああいうデザインのものがあったとしても、よく似たデザインのものが容易に手に入るとはちょっと考えづらいという方向に収束するのかな?」
「そんな所だね」
「けれど、だいたい気になったのはこんな所かな。あとはストレートに楽しい部分・良い部分が目白押しだったと」
「とにかく、美幸の存在の使い方がうまかったかな。まさかああいう使い方で統一されるとはおもわなんだ」
「おお、さりげにこれも元締のツボじゃないですか。あったねぇはるか昔。『真説・大江戸探偵神谷右京2』ないしは、これのリメイク『象牙の塔』」
「よく覚えているなぁ。感心したぞ。…そう、すでに主人公がアプローチする事が出来なくなってしまった存在を出して、ストーリー進行に合わせてどんどん掘り下げるというやり方だね。神谷右京の場合は“一度関係した知人”が死んでしまって…という流れだったけど、今回恭介は、美幸の事をほぼ完全に知らなかった。それなのに、あれだけ深い印象を残せるように仕組んだなんて大したものさ」
「…よく、そんなに長く息継ぎなしでしゃべれるなぁ」
「…してるってば(笑)」
「信也が出てくるあたりで、“登場していないというのに”ほぼキャラクターは完成していたね」
「あそこまで使い方がうまかったものだから、まるで冒頭の唯が話している相手も、美幸ではないかって錯覚しちゃうんだよね」
あれは見事なすかし方だったね! まさかああ来るとは思わなかったよ。ちゃんとわかっててやった演出だもんね」
「後は、まさかまさかのご本人様登場、かな?」
「ランクA展開だと京香の変装だと勘違いされるんだけど、それ以下のランク進行だと“京香である事はバレた”上で、成美の変装だと勘違いされるんだよね」
「よくよく見ると、ちゃんと美幸の顔にうっすらボカシがかかっていて、輪郭がはっきりしていないんだ。あれで“あ、こいつはホンモノだ”と思ったもの」
「あれはなんとなく良い…のだけど、なぜか一抹の不満が残るんだ。なんだろうか…」
「あのね、これ…人によってどう思うかすごく興味あるんだけどさ」
「? 何だろ?」
真犯人って、死ぬ必要あったと…思う?
…!!
「なんか俺さ、あれでは根元的な解決にはならないと思うのよ。確かに真犯人はそれだけの悪い事した存在である事は明白だけど、それがイコール“死の制裁”とはならないと思うんだ。この場合の制裁は、美幸の幽霊にされたという事ではなくて、そういう方向に仕向けた制作者側の思惑という意味だからね念のため」
「なるほど。今度はこっちがため息ロカビリー」
「ふ、古〜!! まあ、あれはそういう方向よりも“ああいう形式の解決”という一つのスタイルだったのかもしれないから、あまり悪くは言う気ないけど」
「複数の実行犯がいた第1話と、また違った展開パターンを持ってきたのは新鮮だったね」
「基本的に、犯人は一つの犯罪しか起こしていないんだ。それが色々とゆがんだ形で関係者達に影響与えてしまった故の展開だからね。基本的な方向が違うんだから当然なんだろう」
「そういえば、芸能関係ネタにうるさい元締が、今回に限ってはあんまりツッコミかまさないけど、何故?」
「ん、何? 唯は衣装着ていても同一人物にしか見えない…とか、そういうコメントを希望してんの?!」
「…そ、そう来たか(汗)」
「これ以上深く詮索すると粗が出るギリギリの所で引いてるし、物語はあくまで人間関係を中心で進んでいるから気にならなかったんだよ。もしこれらの事件の舞台が放送局内オンリーとかだったら問題もあっただろうけど……って、あれれ、なんかでじゃぶを感じるわ」
…“猟奇の檻 第3章”
「…う゛っ…、第4章・別名『こ○パサスペンスバージョン』も発表されたなぁ、アレ。すでに初期設定でツッコミ所満載というすごい奴だけど
「軌道修正」
「…っと! 話反らした上に修正ですか! …まあ、いいか。でも、明日香の設定とかも、なんとなくリアル感があってわりかし好みだったなあ」
「愛人、という部分に安直感はあったんだけどね」
「でもまあ、成美の“性格悪そうな〜”発言ですべて精算だよ。見事だと思ったねあれは」
「まあ、そうだからこそ“あの”演出での使い方が最高にうまかったんだけどね☆」
「ところで…ね、元締(ニヤリ)」
「…な、何だよ不気味に笑って?!」
「似てない?」
「な、何が? 何に?」
「美幸…結構お気に入りだったでしょ?」
「な、な、何を根拠にそんな?! 俺は、気の強いアイドルキャラってのは…」
「だってぇ、似てるんだもん。た・か・は・ら・万葉に♪
あ゛ーーーーーーーーーーーーっ!! お、お、お前、なんて事をーーーーっ!!
「万葉萌え萌えだったもんねぇ♪ 美幸見て、硬直して感涙する元締の姿が目に浮かぶよ
人を勝手に萌えラーにするなって!(笑)
「潤に、唯に、高原万葉…そぅかあ。元締がこのゲームを無理矢理ギャルゲー扱いにしてここでレビューしたがる理由が、手に取るようにわかるよ♪」
だーかーらー! 誤解を招くような発言はやめーーーいっっ!!!!
「…で、何回萌えたの?」
「…お、覚えてない…」
  (総括)
「総括までトークでいくのね」
「うん、もうヤケだから(爆)」
「そういえば各ストーリーには触れたけど、基本の設定部分にはなぜかほとんど触れないままで来たね。どーして?」
「うん、とりあえず主人公の名称くらいしか、今はまだ何も言えない状況だからね」
「はなっから連続物だと銘打っているから、設定も出揃っていないしね」
「そう。だから結局もう少し設定が出てこないと、言いたい事もまとめられない」
「今まで扱ってきたタイトルと比べても、こういうパターンは珍しいんじゃないの?」
「おまえ…沈黙期間中もずっと九拾八式チェックし続けていたのバレバレだぞ」
「(豪快に無視して)各キャラそれなりに魅力的な人物が揃っていて良いね。京香は、登場回数の割にはちょっとアピール不足だと思うけど、悪くない」
「俺は、哲平の存在にちょっとした違和感を感じていたけどね。なんか、唐突に主人公と仲良くなったような…。哲平に気に入られているようだけど、あれだけだとなんかホモっぽい関係を想像させてイヤかも(笑)」
「この場合、男っぽさの濃い哲平が攻めだと断定するのは素人考えですか?
誰がどー見ても恭介が攻めだろう! 過去の例を見ても…って、なんでここでやおい談義が?!」
「貴方が始めたんだって」
「…そ、そうなのか?! では気を取り直して。つまり、哲平と恭介を結びつけるために、何か一つでいいから大きなイベントを絡めて欲しかった所なんだよ。哲平は、実は恭介の行動の断片しか見られない位置にいて、おそらく彼の行動は人づてでしか耳にしていない筈。それで、あんな信頼関係が生まれるかというと、ちょっと疑問なんだ」
「ご隠居や成美なんかは、その辺独特のキャラクター性で補っているからね」
「本来そういう事が出来る存在って、その二人を除くとスピリットのマスターくらいのものなんだよ。第2話では、哲平が一人で汚れ役方面を担当しているようだけど、本来こっちの方に恭介もつき合わせるべきだったのではないかと考えるね」
「役割分担に徹しすぎ?」
「そうとも言う。なんだかんだで、あの二人は“恭介&京香”以上にお互いの能力の高さを認め合うべき間柄でなければならないと思う」
「なるほどね。そういえば成美も、かなり特殊な設定のキャラそうだけど…」
酒に弱い酒乱…という、なんだかよくわからない設定は大好きだし、常に自分勝手でマイペースなのは新鮮かも。…でも、ホントに吸血鬼ってのだけは勘弁してほしい」
「パトカーに乗る時のやりとりは、絶対この後に響いてくるだろう演出だろうからね。飼い猫の名前がヘルシングってのも確信犯的だし」
「さて、日光を拒絶する病気について下調べをしておこうか」
「?! そんなのがあるの?!」
「まあ、それについては書く機会があったら…という事で」
「全体的に見たら、やっぱり面白いよね」
「そうだね。色々問題は指摘したものの、別にこれを絶対的に排除すべきだという程でもない。かなりまとまった良質な作品だよ。逆に、次回作にはこれ以上のグレードが求められてしかりな訳だから、生半可にはいかなくなってしまうのだけど…」
「『久遠の絆』みたいに、口コミで広まっていけばいいんだけどね」
…茜、なんか大事な事を忘れてない?
「え?」
「そう、これは最後に取っておこうと思って今までわざと触れていなかったんだけどさ。これ、この後どこのプラットフォームで続くの?」
「プラットって…そりゃ当然、ドリキャス…ああっ!?!?
「やっと気づいたか。この作品に対しての最大の不安はそこなんだよ」
そうか…。ドリキャスはもう生産が…
「昨年3月に生産が停止して、当時“この後一年間はソフトの供給を間違いなく続け…”という発表をしているけど、そろそろそのリミットが切れる時期だ。まして、今のご時世は『X-BOX』か『PS2』の巻き返しかが叫ばれている訳だし、一部では、これまでのようなコンシューマー展開そのものが不可能になっていくんじゃないかって見方もある。オンラインゲームの需要も増えたしね」
「あっちゃ〜、って事は、かなりとんでもない時期に発売されちゃったのか」
「ここで過去の例を考えに加えてみると、プラットフォームを移した上での次回作ってのは、かなりリスキーな選択になる可能性があるという部分もあるんだ。もちろん、明日あさってにドリキャスが消滅してしまう訳ではないけどね。だが、すでに本体の品不足が囁かれて久しいんだ。続編以前に、これ自体がどこまでユーザーに迎え入れられるかも難しいと言える訳で」
「なんか、めっちゃくちゃハードな状況のようにも感じられるんですけど?」
「FOGだけじゃなく、他のメーカーさんもドリキャスという土壌で新作を出し続ける事は、今後難を孕む事にはなっていくと思うよ。良いソフトであれば、本体ごと保管に走るマニアは多いけれど、それだけに頼る訳にはいかないし。まして、本作は…」
「え、まだ何かあるの?!」
「ここで最初の話題になるんだけど、このゲームって、ホントは全然ギャルゲーじゃないでしょ」
「そうだね。元締はFOGつながりという事で無理矢理これをピックアップしたのかと思ったけど」
「いや、まじめな話だけど、このゲームの内容次第では、今回でFOGを扱わない決断をするつもりだった
「あらら…で、結果は?」
「まず、このゲームは“ギャルゲーではない”という事を理解しているという事を強調しておくけど、やっぱり本作の作りの根底には“18禁ゲーム”等のジャンルで培われてきたノウハウが生きている。単純にゲーム進行の方法や画面構成だけではなく、そういう形式を採用した上で、やはり何か“これまでにも沢山出会ってきたもの”が残るんだ」
「それで、今回の結論は?」
「うん、やはり根元的な部分に共通項が多く含まれている以上、うちではむしろ扱うべきだとと思う。だって九拾八式って“18禁”“ギャルゲー”というレーベルの作品しか絶対扱わないというつもりではないもん。あくまで“レビューを書く”題材にそれらを選んでいるだけだから、共通要素がある以上、これも充分扱いたい作品だよ」
「なるほどねぇ。その、程良いこじつけ感がたまらないよ」
「…で、ちょっと逸れたけど。つまりジャンルはギャルゲーではない訳で…けど、FOGってこれまで“ちょっと異質な”ギャルゲーブランドであると解釈されていた部分もあると思うんだ。世間的な人気から見て」
「そう?! …まあ確かに、メインはストーリーや演出だけど、ギャルゲーマーのツボにスカーレットニードルってなくらいに突きまくりだもんなあ。ギャルゲーイコール“ストーリーゲーム”“泣かせゲー”って解釈している人達も確かに多いし」
「そういう認識の人に、このタイトルはどーだろ?」
「?」
「茜は、さっきから“これってギャルゲーじゃないよね?”と言ってるし、実際そうなんだけど…そういう印象って、パッケージからもすぐにくみ取れる事だよね」
「…ああ、なんとなく言いたい事が解ってきたよ」
「よほどのFOG信者でない限り、盲目的にはなれないんじゃないかな、と感じるんだ。これを恐れていては新作を作り続ける事が出来ないのは承知だけど、これの場合さらにプラットフォームの問題も孕んでいる訳だからね。結構厳しい状況に立たされかねないんじゃないかな…と、心配になっちゃうんだ」
「続編が出る事が前提になっていて、結局出ずじまいの名作…ってのは、ある意味クソゲーよりも辛い存在だものね」
「いきなり未来を閉ざすような発言でアレなんだけど、なんとか打開してほしいよね、この状況…」
「全面的同意、だなぁ…」
「あらゆるメディア情報の第一印象だけで、作品のイメージを決めてかかってしまう傾向も妙に強まっているようだからね。昔の“めもラー”“LEAF信者”的な話はあまり聞かなくなった昨今ではあるけど、まだまだそういう部分は大きいから」
「またまた、別な意味で冬の時代の予感…」
「これは自分に言い聞かせる意味も含んでいるんだけど、やっぱり、ユーザーには良質の作品を見つけるための選別眼や、それにしかるべき評価を下せるだけの基準を持って欲しいものだと、本気で考え始めた。こういう作品が沈むのも浮き出るのも、結局はユーザーの評価一つだからねぇ」
「おおっ、なんか最後になって妙にまじめな言葉が出るようになったねぇ。さすが眠気のピークを過ぎると違うようで」
「ああ、たまに目を閉じていても外が見えちゃったりするんだよ、半分眠っていると…(本当)」
それまずいって!
「ところで元締、最後の疑問」
「ん?」
「どーしてこのサブタイトルは“TANTEI Stories”なの? 普通は“DETECTIVE STORIES”とかにしないかなぁ?」
「ふふふ…茜よ。日本ではな、ある理由からそのタイトルは非常に付けづらいんだよ」
「理由? えーと、ごめんちょっと思いつかないよ」
「今言ったのを、日本語に直訳すると?」
「え? そりゃあ当然、探偵物あ゛っ!!
「そういう事なんだよ。わかったかい工藤ちゃ〜ん☆
「よく解りました…(泣)」

 (後藤夕貴)