ホープのブルーダイヤ


 あまりにも有名な、実在する“呪われた”逸品だが、念のため解説を。

 アメリカ・ワシントンのスミソニアン博物館に展示されている、全体が恐ろしいほどに真っ青なダイヤモンドだが、これを所持するものは必ず不幸に見舞われてしまうと言われ、現実にかなりの数の被害者が出ている。
 また、その写真すらも長時間眺めている事は危険とも噂されている、最強クラスのカース(呪い)アイテムなのだ。

 そもそもこれは、9世紀頃にインドの西北部ガット山脈・バルカット峠という所で発掘されたのが最初と言われているが、すでにこの段階で279カラットもの青いダイヤモンドだという鑑定が成されたというから驚きである(どうも原石として発見された訳ではないらしいのだが…詳細不明)。
 これを最初に…畑作業の最中に発見した農夫はそのご大金持ちになったが、ペルシアの軍隊の襲撃によって(握った手首ごと)強奪されてしまった

 その後、宝石はペルシア王シャー・ハゼンに献上されるが、強奪してきた隊長は謎の自殺を遂げた。

 次に登場するのが17世紀だが、この時、なぜかダイヤはインドの古都・ペーガンにある寺院の仏像の額にはめ込まれており、これはまた強奪されている。

 さらにその後、フランス人の大旅行家タベルニエ(強奪した張本人)によって持ち帰られた宝石はルイ十四世に贈られるが、その後タベルニエ自身はロシアで狼に喰い殺されている
 ルイ十四世によって「フランスの青」と名付けられた宝石は、その後様々な呪いを発揮する事になる。
 ルイ十四世は病死、宝石を借りていた愛人・モンテスパン侯妃はその後毒殺事件に関与したという事で宮廷から追い立てられた。


 そして、ルイ十六世とマリー・アントワネットへと受け継がれる訳だが、ここで何が起こったかはご周知の通り。
 それだけでなく、マリーからダイヤを借りていたとされるランバル侯妃も、フランス革命時に暴徒に惨殺された
 
 19世紀初頭、オランダの研磨師ファルスの元に渡ったダイヤは彼の息子によって盗み出されるが、息子は発狂して自殺、買い取り主は食事中に喉を詰まらせて窒息死、それから30年後にこれを入手したイギリスの実業家エリアソンは、落馬によって絶命している。

 さらにその後、ロンドンの大銀行家ヘンリー・ホープの手に渡り、これにちなんで「ホープのブルーダイヤ」と命名される事になる。
 もちろん、彼も大規模な破産という被害に遭っている。

 その後の経過も激しく、愛人を射殺した上に自身もロシア革命党員に射殺された貴族、またトルコの大王アブドゥル・ハミト退位を迫られ(発狂していた説もあり)、やがてアメリカの「ワシントン・ポスト」紙の跡取り息子・エドワード・B・マクリーンの手に渡る。

 彼の妻エヴァリンが執着していたこのダイヤはさらにとんでもない呪いを発揮し、当時“一億ドルベビー”と称されていた息子のヴィンソン自宅前で事故死、マクリーン夫妻の関係は破綻を極め、エドワード自身は精神病院で狂死エヴァリンの娘も睡眠薬の飲み過ぎで死亡し、本人も風邪が原因で死んでしまった

 最後に個人所有したとされるのは、ニューヨークの宝石商ハリー・ウィンスンだったが、何度も事故に遭いかけた上に事業にも大失敗してしまい、ついに破産してしまった
 そして、彼はこの宝石をスミソニアン博物館に寄付する事を決意するのだが…


 なんと、彼はこれを普通小包で送付してしまったのだ!
 

 幸いダイヤは無事に届いたらしいが、現在もなお、この時の包装材と一緒に展示されているという。
 …だが、この時ダイヤはアメリカ郵政省にも呪いをかけたのではないか? などという噂もまことしやかに流れたらしい。

 まあ、郵便配達員が手紙のほとんどを投げ捨ててまでサボってしまうなんてのは日常茶飯事らしいから、あながち冗談でもなかったりして…?!


The Secret of Blue−Water!