Handle With Care..


少女の歌声は、すべてを圧倒する

1.メーカー名:ETOILE(エトワール)
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:S
4.H度:D
5.お薦め度:A/ストーリー展開が豊富にほしい方:C
6.攻略難易度:D
7.その他:Handle With Care…日本語訳は「取り扱い注意」です


(ストーリー)
 いまや伝説となったバンド「Bloody Roses」
 しかしとある事件によりメンバーが欠けてしまい、「Bloody Roses」は解散してしまうことになる。
 主人公である黒澤玲司は(変更不可)、その「Bloody Roses」のヴォーカルであった。
 数年後…玲司は時たま来る音楽関係の仕事をしつつ、再びステージに立つ事を思い、歌手を探していた。
 もう一度伝説を作れるだけの力を持った、本物の輝きを秘めた歌手を…。
 そんな歌手を探しに、顔なじみのライブハウス「Mellow」へと足を向ける。
 マスターと何気ない会話を交わしていると、バンドの演奏が始まった。
 そして玲司は、本物の輝きを持った少女・佐原詩音を見つけるのであった。
 彼らのバンド「C/ON」は伝説となれるのか?


 年度が変わりたてのころ。今年から私も社会人になったので、
 「学生時分のように、ふらふら出かけるのは控えないとなぁ」
 などと心新たにスタートを切ったものの慣れない環境に疲れてか、初めての休日は、何も考えないで秋葉原方面の電車に乗っていましたね。
 そんでもって、秋葉原についてからの行動は…
 財布が軽くなった代わりに、前から目をつけてた新作ゲームが握り締められていましたね。
 …結局、それまでと大差ない行動しかできなかった休日。
 人間、一度身についた習慣ってなかなか直らないものです、反省。
 このごろ古い作品しかやってなかったから、丁度良いといえば良かったのだけど。
 しかも、みっちん逝きの“哀”をこめた爆弾も仕入れてきてしまったし…。

 さっ、気持ち切り替えて行きましょ。
 ストーリーをもう一歩詳しく説明しますと
 上で書いた通り、黒澤玲司が佐原詩音の歌声を偶然聞いたことにより、「本物のバンドを作る」というかねてからの野望に向けて動き出すことになります。
 当然、最初のメンバーは一匹狼の詩音だけで、彼女を説得して「C/ON」の結成となります。
 しかし、メンバーはヴォーカルとギターの二人だけで、「それでは足りな」ということで、さらにメンバーを集めていくことになります。
 そんな二人の前に、詩音とタイプが違うライバルが現れたり、メンバーに加えられるだけの人物を見つけても、一筋縄では仲間になってくれません。
 そして苦労してメンバーを集め、様々な障害を乗り越えて、メジャー・インディーズを問わないバンドの祭典が行われるライブハウス“ムーランルージュ”のステージに立つことがこのゲームの最終目標になります。

 攻略対象は、佐原詩音を含め全部で4人です。
 「ちょっと少な目だな?」と感じるかもしれませんが、下手に大勢いてエンディングが“バット”やら“グッド”やら“トゥルー”なーんて幾つもあった日には、やる気は遥か遠い次元へと行ってしまうことでしょう(これでもう『センチ2』みたいに話がかったるいと最悪です)。
 なので、たまにはいいと思いますよ。
 で、残り三人のヒロインは、
 「C/ON」のドラム担当として、メンバーに加わった“霧生瑠歌”。
 詩音・「C/ON」のライバルとして立ちはだかるバンド「Kiss-a-Love」のヴォーカル“明神樹沙羅”(あけがみきさら)
 「Kiss-a-Love」のプロデューサーで、玲司と同じく元「Bloody Roses」メンバーでベースであった“橘亜理紗”の計四人が攻略対象です。
 とまぁ、えらく身内が集まっているのですが、プレイし終えた率直な感想は、「内輪の話でまとまってた分、話が読み応えがあったのだろうな」「選択肢もさほど多くはなかったから、デジタルノベルに近いな」という印象でした。
 どう考えても、ストーリー重視のゲームですな。

 そのストーリーの方向から突っ込んでみると、決定的に“バットエンド”と呼べるものが存在しません
 プレイするにあたっての大きな流れとして、
「選択肢を選んで誰とエンディングを迎えるか?」
「『C/ON』の成長していく様子」

の二点となります。が、全体的に後者の方の色合いがかなり強く、各ヒロインとのエンディングは「『C/ON』成長物語」を相互効果で盛り上げる物といったイメージがあります。
 玲司が詩音を見つけてから、エンディングまで「C/ON」の扱いが極端に変化することはありません。
 誰ともエンディングを迎えなくても、「C/ON」はメジャーへの階段を駆け上がっていきますし、中身も“ハッピー”とまでいきませんが“グッドエンド”と言っても全然OKです。
 また、メンバーが集まらなかったり、「C/ON」が途中で解散したり(物語上で解散の危機はありますが)といったノベルタイプにありがちの「話の途中にある強制バットエンド」も存在しません。
 まぁ、それは逆を言えば、
「全ての選択肢は、ヒロイン達とハッピーエンドを迎えるためにある」
 と言うことにつながります。
 全体的には「C/ON」サクセスストーリーなのですが、終盤であるにせよそれまでの「C/ON」一辺倒な展開をだいぶ巻き返しているので、結果的にはバランスよく物語りが進んでいたように感じます。
 ただやはり“ゲーム”と言うには遠く、“CG集”に近い物の色合いが強いのは少し悲しいです。
 
 ではヒロインごとに書いていきたいのですが、先ほども書いた通り前・中盤は「C/ON」サクセスストーリーという印象なので、まとめて書いちまいます。
 全十三章中九章くらいまででしょうかね、簡単に行きますと…
1:玲司、佐原詩音に出会ったことにより「C/ON」結成。
2:紆余曲折があるが、「C/ON」のメンバー補強完成。
3:「Kiss-a-Love」の動向が気になるのと、怪しい雑誌記者の出現。
4:サブキャラメインのお話もあります。

と、こんな感じですな。
 しかも、一周目にこの部分をしっかり見ていれば二周目以降は、
「選択肢を選んで、その結果さえ把握しておけば大丈夫!」という親切設計になっています。

 …このゲーム、お話はいいんですけど、一周目とそれ以降のプレイではかなりプレイ時間が違うので、そういう意味ではバランスが悪いんだよな。選択肢は、“引っ掛けなし”のいたってまともな内容なのにな。
 その中で、ヒロインごとには何が違うかといいいますと…。

「Kiss-a-Love」サイドのヒロイン
(橘亜理紗)
 元「Bloody Roses」のベース担当で、本ゲーム中では玲司のライバル(?)のような存在です。
 「Bloody Roses」解散後、亜理紗は「新生Bloody Roses」を作ろうとしたのですが、玲司がそれを断わってしまっため、事あるごとに突っかかってきます。
 そんな過去があるために「C/ON」を目の敵にしているのですが、結局は「可愛さあまって、憎さ百倍」といった程度の印象しか受けなかったです。
 気になるからちょっかいを出してくるのでしょうね。
 何ぶん、過去にわだかまりがあろうと、ヒロインになるくらいだからストーリー展開は固まりやすくはなりますね。
 あと、どうでもいいが亜理紗も玲司も推測される年齢の割には外見が若すぎると思う


(明神樹沙羅)
 天性の才能で歌う詩音と努力で培ってきた樹沙羅、ほかにもあるのですが、詩音とまったく正反対の存在です。
 それぞれをプロデュースしている方たちの影響もありますが、“会った瞬間に火花散ること間違いなし”といえる存在です。
 玲司が「C/ON」のプロデュースとプライベートを別にした結果(?)、樹沙羅の方にやってきます。
「詩音が嫌ならこっちに別な物がありますよ」てな勢いも感じますね。
 しかし、詩音と互角の実力を持っていながら、ちょっと目影が薄いのは、本人の性格か上のオバサンのせいか…「C/ON」中心に見ていくと、盛り上げ役で止まってしまっているのは惜しい存在です。
 樹沙羅メインのストーリーになっても悲しみを誘い盛り上げるタイプなので、多少華にかけると思います。
 んで、どうでもいいんだけど「C/ON」の劇中歌は詩音が歌っているのに、「Kiss-a-Love」の歌は樹沙羅ではない人が歌っているような気がするのは気のせいか?


「C/ON」サイドのヒロイン
(霧生瑠歌)
 以前に友人と二人でバンドを組んでいたが、友人は瑠歌の才能とのギャップに苦しみ、自殺未遂をしてしまった。それ以来、ステージに上がらなくなってしまったという娘です。その問題を解消して、メンバーに加わるのですが、線の細い娘に力強いドラムをやるというギャップを楽しむのがコンセプトみたいです。
 どうもよく分からない人が多いゲームの中では、まじめな性格をしています。
と、最初は見えたのですが、必要以上に頑張り屋で、やたらバイトをしている。それは実家の父親との折り合いが悪く、しかも結構なお金持ち。最後は婚約者まで現れて家に連れ戻されそうになるなど、他の人たちに負けないくらい問題が育っていきます。
 全体を通してもさほど目立つ事はないのですが、普段目立たない人に話が回ってくるとロクな事がないのかも知れません。

(佐原詩音)
 物語すべての始まりであり、天才的な歌唱力を持っている少女です。
何でか知らず、昔の記憶を失っているのですが、それはかなりネタバレ事項です。
 すべては、「野生の詩音が現れた」、「詩音ゲットだぜ!」から始まります。
性格は、束縛を嫌い自由を好む。一度決めたらそれに突っ走り、生きていくためには何でもやった(本人談)という、「ロックに対する漠然としたイメージが先行して出来た」感があるヒロインです。
 ーム中は違和感なかったけど、も少しアレンジはなかったのでしょうか?
 それにふと思った、キャラクターデザインしてる人、心のどこかで少々
「“変わり者、および過去に何かあって影がある人”=“天才”」
に結び付けてる印象を受けますね。
 その法則(?)でいくと、さすがメインヒロインだけありまして、他の追随を許さない過去がありました。
 「Bloody Roses」時代の話まで溯るその話は、劇中に玲司が過去の夢を見るのですが、そこから徐々に推測できる内容でしたので、スッキリと最後までいけると思います。
 メインヒロインだけあって、やっぱ扱いは特別でした。


 琴吹映美エンディングについて


 とまあ、各ヒロインはコンナモンです。
 が、ここで問題が発生します
 ヒロインの誰とも結ばれないエンディング…仮に「C/ON」エンドとしますと、物語の重要だと思われる部分がネタバレになってしまいます。
 詩音の時と同様ある程度の推測はつくのですが、やはりその答えが出てくるのと、わからないままで終わるのとでは差があります。
 しかもヒロインごとのエンディングでは、「C/ON」エンド、果ては全体にに関わるであろう重要人物が消えてしまいます。
 最初のプレイは、大体このエンディングに来ると思うのですが、そんなエンディングにこれを持ってきたのは、私としては失策と感じました。


(総評)
 主要メンバーは天才型の人なのですが、ロックの世界で上り詰めていくコンセプトと登場人物の設定を上手にあわせていると思います。
 狭い世界の話でも奇麗にまとまっていれば、良い物が出来ますからね。
全体の流れである「C/ON」の成長物語も、“某葉っぱ”の『漫画の集い』とは比べてはいけないくらいしっかり書かれていました。
 単純にプレー時間だけで判断するなら、損はしない内容だと思います。
気を付けるべき点は
“真っ先に「C/ON」エンドに行ってはいけない。それは最後に見るべし!”
ちゅー事です。

 あとは…、音楽を題材にしたゲーム特有サントラを出したのはいいが、
「何故、歌詞カードにはフルコーラスがありながら、ゲーム中と同じサイズしか入れやがらないんだ!」という文句が出てくるだけです、ハッハッハッ。

(エルトリア)

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