胸キュン! はぁとふるCafe
ヤキモチいっぱい! 義妹たちとのラブラブ同居生活


1.メーカー名:UNiSONSHIFT
2.ジャンル:ヤキモチラブコメADV
3.ストーリー完成度:D
4.H度:D
5.オススメ度:F (話のネタになら…)
6.攻略難易度:E
7.その他:女の嫉妬はオソロシイ事を実感出来まふ


(ストーリー)

 父親の再婚を期に家を出て、喫茶店に住み込みで働いていた香坂信也(変更可能)は、新しい珈琲豆を求め旅立ったマスターから店を任された。
 それから独りで切り盛りしていたが次第に客足も途絶え、だた開けているだけの状態が日々続いている。

 そんな信也の元に突然、義母の連れ子である双子の義妹達が押しかけてきた。
 仕事の都合で渡米しなければならない両親が、卒業間近の娘達を信也の元に残していったわけだ。

 こちらの意思に関係なく問答無用に押しつけられた形ではあったが、それまで変化のない生活を送ってきた信也は、可愛い義妹達と過ごす日々もまんざらではないと感じる様になっていた。

 しかしそんな時間も、あと3ヶ月余り…
 卒業すればふたりとも渡米し両親と暮らす事になっており、頻繁に逢うことさえ困難になってしまう。
 お互いの存在を必要だと感じ始めていた信也と義妹達の関係は、迫りくるタイムリミットを前にして微妙に変化しはじめていた。


 インストールしただけの状態でゲームを始めると、止まる・消える・壊れるとシャレにならないぐらいエラーが出る本作。
 オフィシャルホームページから修正バッチをダウンロードして、摘要する事が第1段階…必須条件といえるだろう。
 システム面はプレイ時点で2年前の作品である事を考慮しても、さして目新しさや斬新なアイデアが盛り込まれているとは感じられない。
 一応、画質のクオリティの切り替え機能や音関係の設定など、ローエンドマシンへの配慮はされているのだが、最低限の機能だと表現した方が適切だろう。

 そんな本作もセーブファイルの数はずば抜けていて、分岐点も少なく難易度が低めであるにも関わらず100箇所も保存が可能なのだ。
 おまけモードでイベントCGやHシーンの鑑賞は可能なのでシーン毎に記録を取る必要もないのだし、この数はどう見積もっても過剰だとしか思えなかった。


 物語はクリスマスのシーンから始まり、3月1日の卒業式まで双子の義妹と過ごしていくのだが、前置きも無くいきなりどちらが先にプレゼントを貰うかで争い始めたり、ヤキモチやいたり。
 信也が言う様に、年上の男性に対する憧れから慕ってくれる事に悪い気はしないのだろうが、それまで独り暮らしで静かな環境に馴染んでいた彼が、四六時中騒がしい義妹達に翻弄され戸惑う様が手に取るよう〜とはいかず、正直なところ少々面食らってしまった。

 そんな助走抜きにいきなりスパートしてきたシナリオの運びは、意外な事に「スタートダッシュで息切れか?」と思うぐらいまったりとしている。
 というのも、シナリオは閑古鳥鳴く喫茶店でぼーっと過ごす信也を中心に回っており、いくらハイテンションな義妹に振り回されても、それ以外の部分がだらけているのでは当然だろう。

 双子の姉・ちよりは、やや気後れする面があり、そのため初対面の相手は苦手としているのだが、しかし人見知りというわけではなく、うち解けてしまえば誰にも好かれてる性質なのだ。
 また家事全般に長けており一手に引き受けているが、それ自体が趣味であると見受けられるぐらい楽しんでいる。
 妹のチカは快活で積極性があり、「妹の立場」をフルに利用する狡猾さも身につけている。
 誰とでもすぐ馴染んでしまう特技を持つが、積極過ぎて敬遠されるのか、長続きする友達は限られる様だ。
 ちよりとは対照的に家事の才能は限りなくゼロに近く、そういう面倒な事は後回しにしてしまう一面がある。

 そんな彼女達の性格設定も上手く活用してシナリオに組み込まれているのだが、やはり一番の見所は『売り文句』にもある義妹のヤキモチだろう。
 ちよりとすごせばチカが嫉妬し、チカにつき合えばちよりがむくれる。
 そのうち胃に穴があくのではと思える様なプレッシャーと、甘美なプチ恋愛。
 まさに飴と鞭の狭間で、信也はそんな生活がかけがえのない物だと知ってゆくのだが…。



■ 香坂ちより ■

 常に賑やかな妹と比較するなら、のんびりとした所のあるマイペースな子だ。
 一見するとチカに主権を握られているように受け取れるが要所要所は押さえておいて、ワガママなチカを好きに踊らせておきながら、手綱だけはしっかり握っている様にも思える。

 香坂家の食を司りながらあまり強権を行使しないが、ヤキモチはチカに負けず劣らずであり、怒らせるととても恐い…
 家事全般を一手に引き受けているちよりに買い出し関係も依存しており、バーゲン・特売・特価品などの文句にめっぽう弱く、それをめざとく見つける姿は若くして主婦の領域に達している。
 趣味はブタグッズの収集だが、あらたなアイテムを手に入れた時は、果てしないブタグッズ談義で周囲の者を地獄へと誘うのだ。

 ちよりチカと決定的に違う点は、はじめから…おそらくは親の再婚で両者が出逢った時から、信也に対して仄かではあっても確かに恋心を抱いていた所だ。
 ふだんからほやーっとしているからそれらしく見えないのだが、自分に向けられる好意に関して思いっきり鈍感であるのも災いして、無意識のうちに何人もの男をふってきたのだろう。
 それだけ信也一筋だともいえるのだろうが、想いが通じ結ばれるも最大のライバルであるチカの目は鋭く、目を盗んでの逢瀬はなかなか難しい。
 その為【ちよりルート】では、わりとすっちゃらかーなチカの性格設定を悪用し(笑)、チカは補習授業を受けないと卒業出来ない状況にしてしまい、2月に入ってからの自主登校期間にちよりと信也、ふたりきりの時間を演出していた。

 卒業式当日に信也がちよりを選んだ事を知り、呆れ半分だがあっさりと身を引いたチカだったが、後半に彼女の出番を減らした弊害なのか、ちより贔屓な態度から次第に心が離れていった過程が描かれてないため、都合よく幕が引かれた感じさえした。


 こちらのルートでは信也に想いを抱いている亜矢は深く関わらず、代わりにちよりのクラスメイトである相沢シュンを起用している。
 亜矢の方については後述するが、信也目当てで店に通っていた亜矢と、卒業迄にちよりの心を掴みたいと思っていたシュンという立場の異なるふたりが、殆ど変わりのない事を口にしているのは、少々物足りなさを感じてしまう。
 特に女性である亜矢と男性であるシュンとでは、根本的に違う見解で批判をしても良かったと思うのだ。
 それに、もっと強く感情的な部分を織り交ぜても良かったのでは…とも思えたのだ。
 ただ「二人の交際」を批判する部分は同じなのだが対象者が異なるため、亜矢チカの思慮の足りなさを、シュンは信也の身勝手さを合わせて責める事となり、同じ内容の繰り返しにならなかった事が、せめてもの救いだった。

 それと亜矢だが、【ちよりルート】確定後は店に通う事すら止めてしまい、その姿を全く見なくなるが、これはもの凄く違和感がある。
 仮にだが、偶然目撃してした“信也と睦まじくしている相手”が義妹のちよりだと知らず、自分の恋が実らないと悟ったとか、そんな演出があったなら納得のいくものなのだが。


■ 香坂チカ ■

 勝ち気で我が儘、そして奔放な性格であり、姉を姉と思ってないクセに都合のいい時だけ「妹」を演じる要領のいい子。
 料理は破滅的腕前で、同じ原料から重力下では到底作れない様な物体を創造する…
 暇があれば遊び、家事関連はすべてちよりに依存しているのだが、それを自覚しているだけに信也のために少しでも腕を磨こうと努力するなど、微笑ましい姿も見せる。

 信也は身近な憧れの存在、それ以上でもなくそれ以下でもない。
 しかし誰かに取られるのは嫌、自分を見てくれないのも嫌。
 ひじょーに解りやすい娘だが、わがまま目一杯な恋心が愛情へと変わっていくのに、それほど時間を必要としなかった。
 チカの場合、自分を大切にしてくれる事以上に、「自分を認めてくれる」事を何時も欲していた。
 口にこそ出さないが、家事万能でおっとりとしたちよりに対し、少なからずコンプレックスを持っていたのだろう。
 わがままに振り回されながらも、チカの存在をしっかりと受け止めた信也に、絶対的な信頼と愛情を持った経緯は、違和感のないものだった。
 ただ、ローラーブレードでキックかまして笑っているような傍若無人な振る舞いと、信也と恋人関係になってから後のしおらしさとのギャップが凄すぎて、ちょっとひいてしまったが…

 このルートは終盤に【亜矢ルート】と分岐する。
 だがその為の条件として、亜矢が関わる行動選択をすべて押さえておく必要がある。
 早い話が、ちよりチカとの約束を反故にしても、亜矢と過ごす事を優先すればいいだけだが、暇つぶしに徘徊する先でも亜矢と逢えたりするから、結構見落としやすいのだ。

 亜矢に指摘され、すべてを承知の上で結ばれたはずのふたりが、お互いを思い遣るがゆえに悩み身を引こうとする話の流れは、気持ちのすれ違いばかりで少しヤキモキとさせられたものだが、結びとしては良かったと思う。
 だが、派生シナリオである【亜矢ルート】のために少し遠慮した感があり、クライマックスに今ひとつ思い切りが足りない感じがする。
 血を分けたライバル・ちよりに関しては、夜中にチカの喘ぎ声を耳にして二人の関係を知り、諦めがついたという結びになっており、それなりに無理がない幕引きになっていたと思う。


■ 三塚亜矢 ■

 おそらく唯一といえる常連さん。
 フタを開けてみれば、信也目当てだったというオチが付いたが、いざという時でさえ自分の感情を素直に表せない損な性分の子だ。
 おっとりした見た目通りに控えめな性格で、我が儘を言って相手を困らせる事を嫌う。
 そういった意味でもチカの天敵だった(笑)。

 普段は弱腰ですぐ相手に押し切られてしまうのに、譲れない事…大切だと信じている事は絶対に信念を曲げず折れたりしない、そんな頑固な部分も秘めていた。
 博愛的というより、好きな相手〜信也に対し無償の愛を貫ける、そんな考え方の持ち主であり、彼の為になるなら…それがどんな結末になろうとも自分は幸せだと信じている。

 信也とチカの関係を批判する事は、ひいては彼女自身の恋愛成就の確率を高めるものだが、しかし結論は急がず同じ女性として、「信也の事を本当に想っているのなら」というカードをチカに切った。
 もしシュンと同じ行動を取らせるなら、「私なら彼を幸せにできる」とでも結ぶのだろうが、性格的に無理っぽいし、むしろ亜矢なら「寄り添って支えてゆく」といった感じになるだろう。
 しかし、口数が少ない彼女はそこまでは云わず、チカ自身の考えに委ねたわけだ。

 信也を想うからこそ、彼に辛い未来を生きて欲しくないとチカが身を引き、信也も自分の心を押し殺して義妹の気持ちを尊重した。
 自分の浅はかな行動でチカを傷つけた事を、どうすれば償えるか悩む信也の“逃げ場を失った心”を受け入れ『許す』事で、結果的に彼の愛を勝ち取ったといえる。

 決して取り乱す事のないおっとりしたペースは、こんな辛い現実までやんわりとした雰囲気で包み、後味の悪さを残さずにいてくれた。
 チカが卒業式の日に義兄に寄り添っている亜矢の姿を見つけ、自分の初恋が終わった事を実感する結びは、本作最高の出来だったと評したい。


■ 姉妹妻 ■

 前半の選択を平等に振り分けてゆくと、やがて双子が連れ立って告白してくる。
 一度きりの約束で関係を結んだが、双子は気持ちに歯止めがきかなくなり、信也を取り合ういがみ合いの日々に戻る。
 これが様々なイベントの要素に繋がっているのだが、意外と暴走エロエロイベントに陥らず、それなりに結末を迎えているのだ。
 個別シーンが、他のルートの使い回しなのは、味気なかったが…

 そのままでは絶対に収拾つかない状況は、3人の関係を父親に知られる事で転機を迎える。
 戸籍上は兄妹、まして二人とも愛しているという答えを、父ならずとも世間がどう受け取るかなど語るまでもないだろう。
 それでも想いを譲らないと頑なに云う信也に対し、親子の縁を切り養子に出すと云う父の真意は何処にあったのか、計りかねるものがある。
 確かにこれなら信也と双子は義兄妹ではなくなるが、しかし重婚は許されない。
 後はどうするか、信也次第だから好きにしろという事なのだろうが、唯一双子の渡米の件を白紙にしている事から、父親なりに最低限気を遣った事が窺える。
 どんな苦難や悲しみが待ち受けていようとも〜と、身を寄せ合う3人だが、何も問題解決がなされていない結末だった…



(総評)

 オープニングのテーマ曲「ふたごのクリーミーカフェ」でいきなりコケそうになるぐらい、とてつもなくズレた歌詞でお出迎えされた本作だが、エンディングテーマ曲「promenade」は、オープニング曲からはとても想像できないほどしっとりとした曲であり、過ぎた日々を想い語る様な切ない歌詞が、お兄ちゃんべったりでハイテンションだったシナリオの終演を、程よくまとめ落ち着かせてくれている。

 さて本作のタイトルである「はぁとふるcafe」だが、残念な事にそれが活かせているとはいえない。
 本来のマスターが店を離れてからずっと閑古鳥が鳴いているその喫茶店は、確かに物語の中心的役割を担っている。
 しかし、殆どのイベントでは行動の起点でしかなく、いったい何が「はぁとふる」なのか全く解らない。

 マスターの隠しアイテムであるコスプレ制服を着込んだちよりチカが、時々接客を“手伝ってくれる日だけ”に大挙して押し寄せてくるヲ〇クの群れで飽和状態になるこの店だが、他では亜矢とシュンに関連するイベントぐらいで、カフェテリアとしての意味すら希薄だったりする。
 むしろ開けているだけ、光熱費だけで赤字になるのではないだろうか。
 世界の何処を彷徨っているのか知れないマスターが送金してくれる維持費があるから、そんな状況でも店を開けておく事には問題ないというが、普通は旅を続ける人の方が移動費・滞在費などで金銭を必要とするものだ。
 もしマスター自身が遊んでいても暮らせる程の資産を有していて、趣味で喫茶店を開いていただけなら納得も出来るのだがそういった類の情報もなく、彼に関しては怪しい謎だらけの人物像だけで終わってしまい半端な印象しか残ってない。


 さて、本作における売り所というのがヤキモチを妬く義妹…略して「やきいも」なのだが、これに関しては必要充分というか、勘弁してくださいと泣きが入るぐらいのものだった。
 そのヤキモチが信也に対する態度だけにとどまらず、ちよりチカの関係までもが険悪になっていく様はかなりリアルだった。
 ただ、消化イベントとして見るならくどすぎる感があり、中盤あたりで早々に決着を付けた方が、クライマックスへとスムーズに移行できたのではと思える。

 イベントの組み方としても、ちよりと日用品の買い出しに行ったとか、チカと駅前でぶらぶらしてたとか、あまりに日常的すぎて印象も薄く、お世辞にも魅力的なものであったとは言い難い。
 しかし、シナリオの読ませ方…テンポは悪くなく、軽快な感じで双子の恋物語を描いていたと思う。

 ただ先に述べた様に、中盤を待たずに物足りなさを感じてしまうのは、この双子に「ヤキモチ以外に何をさせたかったのか」を明確に示せなかった為ではないだろうか。
 ウリ所のヤキモチもエンディングまでそれに徹したわけでなく、義妹との恋愛にとことんこだわったシナリオだとも言いきれないのは残念でならない。

 特に自分たちの恋愛を決して成就されぬものだと早々に結論づけて、起こりうる様々な困難に立ち向かう努力を、何ひとつしなかった結果の騒動に過ぎない本作のシナリオは、生彩を欠き心に訴えかけるものが乏しい。
 しかも双子の両ルートが共にこれでは、シナリオが薄く見えて当然だ。
 たとえば片方のルートを、どうすれば二人が結婚できるか思い悩む様に、対を成すシナリオとして組むだけでも、随分違った作品に仕上がったのではないだろうか。


 妹属性向けの作品に新たな境地を見いだしたと言える本作。
 だが普通の恋愛物と違い、始めから“甘えられる事”を前提として描かれたシナリオは、ゲームだと解っているのに気恥ずかしさが付きまとう為、非常に相手を選ぶだろう。
 それなりに面白かったとは思うのだが、それはヤキモチの素が“姉妹で同じ人を好きになった”事に対してであり、もっとノリだけでなく話の方向性や目的に気を使って魅力ある物語を目指して欲しかったと感じる一品だった。

 2年を隔て制作された『第2弾』が本作を踏まえどのような作品に仕上がったのか、そちらについては「胸キュン!はぁとde恋シ・テ・ル」の評論をご覧いただきたい。



(あおきゆいな)



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