D+VINE[LUV] 
            〜ディヴァイン・ラブ〜
 
 
 どちらかと言うと、シナリオ重視のADVゲームで高い評価を受けていたアボガドパワーズが、構想と制作に2年以上を費やしたというRPG。
 果たして、その出来の程は?  
 
1.メーカー名:アボガドパワーズ
2.ジャンル:アクションRPG
3.ストーリー完成度:C(読めるんだよなー、展開が)
4.H度:B
5.オススメ度:S
6.攻略難易度:キーボード対応のジョイパッドを持っているか、テンキーでの操作がお手のものという人にはC。マウス操作だとBかな。
7.その他:アツイなあ。いやあ、本当にアツイよ。
 800種類もあるアイテムを集めるというのは(ウケケ)。
 
 
(ストーリー)
 主人公のハイドは、「旧世界の遺産」を求めて世界各地の遺跡を巡っている冒険者。
 パートナーのサクラとともにあてどもない旅を続けて、遺跡のある町アーヴィルへと流れてきた。
 早速、遺跡を探索し始めるハイド。
 しばらくの捜索の末、重苦しい雰囲気の扉に彼は到着する。
 いかにも曰くありげな扉。
 して、道中で手に入れたアミュレットが扉に反応して開き出す。
 しかし、ようやく「旧世界の遺産」を手に出来ると喜び勇んでいたハイドが邂逅したのは、「ユウラ」と名乗る謎の少女のみだった……
 
 
 発売されてから実に4ヶ月以上経ってようやく重い腰を上げた作品。
 ちょうどポケモンが一段落し、PSのウィザードリィの新作の隠し迷宮でヒドい目にあって「じゃあ、そろそろ積みゲーでも消化するかあ」という、ちょっとお気楽な気分で始めたのだが……そしたら面白いのなんのって!!
 俺っち個人としては、「丁寧に作り込まれた秀作」という言葉を贈りたい。
 決して斬新な試みがある訳ではなく、作りとしてはむしろオーソドックスと言っていいアクションRPGで、「一人でやるブレイズ&ブレイド+イース+コナミ一連のアクションゲームのアイテム集め」のいいトコロを選りすぐって持ってきたというイメージだ。
 
 何と言っても、アイテム収集癖のあるプレイヤーにはたまらない800種類もあるアイテム集めは、他に類を見ない徹底ぶりである。
 下はたまごの寿司やらパンなどの食べ物、上はとんでもない威力を秘めた武器やら防具など、ほとんどのものを迷宮で手に入れなくてはならない。
 町には武器・防具などを売っている店もあるが、高い上に大して役に立たないものばかりなので、迷宮で拾ったアイテムを売却してお金を稼ぐ所という意味合いが強い。
 欲を言うなら、能力値を上げる種なんかはここで売ってれば利用価値は上がったと思うんだけど。
 ウィザードリィシリーズのボルタック商店みたいに、売ったアイテムがまた購入出来るみたいなシステムは、800種類のアイテムがある以上、管理しきれないだろうから無理だろうし。
 アイテムにはそれぞれ、レア度が設定されており、レアアイテムが出たとき(綺麗なチャイムみたいな効果音が鳴る)など、うれしさもひとしおだ。
 特に、後半戦で「激レア」以上のアイテムが出ると、非常に役に立ってくれる。
 ところが、このゲームの面白い要素として、全ての消耗品以外のアイテムは必要能力値が設定されているというのがある。
 例えば、魔法防御の高いアクセサリーを装備したければ、INT(知力)やMEN(精神力)を高い数値で要求されたり、攻撃力の高い武器などは、大抵STR(筋力)やVIT(生命力)に大きい数値が必要になる。
 当然、これらの数値が満たされなければ装備する事は出来ないのだ。
 そして、この作品、レベルアップした時に3ポイント与えられるボーナスを、自分の好みでステータスに振り分ける、という形式をとっている。
 まかり間違って中途半端な育て方をしてしまうと、せっかく手に入れたいいアイテムが、文字通り宝の持ち腐れになってしまう危険性があるのだ。
 しかも、アイテム群には隠し能力がある場合があり、これらを町の錬金術師に鑑定してもらうといった要素もある。
 また鍛治屋に行けば、気に入ったアイテムを強化してもらう事も出来る。
 正直、よくもここまで……と思えるこだわりぶり。
 どうしても使いたい、というアイテムのためにレベルアップに励むという、なかなかストイックなプレイも出来ていい感じだ。
 ただあえて難点を言うと、この必要能力値って高すぎやしないかなあ。
 もうちょっと低め設定でも良かったと思うんだけど……「魔弾タスラム」っていう投擲武器のDEX(器用さ)に120要求された時は、どうしてやろうかと思ったもんな。
 もちろん、あくまでも平均的にステータスを上昇させて魔法戦士みたいなハイドを作ってもいいし、魔法重視のハイドを作ってもいい。
 平均的な育て方をすると、後半戦が確かにきついが、クリア出来ない程ではない。
 要するに、プレイヤーに対する懐が広いのだ。
 レアアイテム集めにしろ、キャラ育てにしろ、その魅力を損なう事なく、プレイヤーに選択の余地を多く与え、楽しんでもらおうとしている気合いをこの作品からは感じる。
 こういう感覚は、俺っちイチオシHゲームの「DALK」に通ずるものがある。
 また、敵の強さやレベルアップのタイミングなどバランスも申し分なく、スムーズに進むゲーム展開は秀逸だ。
 万が一危なくなっても、比較的低ステータスで憶えられる「フェイズトランス」の呪文を用意しておけば問題ない。
 あえて言うなら、STAGE-3がちょっと厳しいかな、と思うところか。
 ここは弓矢で進むと楽だぞ。
 
 もう一つ評価が高いのが、冒険の拠点となる町アーヴィルが、本当にいい雰囲気で描かれている事。
 広々とした町に、自然に配置された施設群。
 城壁の外には貧民街があり、公園の中に入れば鳥の囀りや小川のせせらぎのSEが入り、わいわいがやがやと喧噪が聞こえる方向に足を延ばせば、果物やらパンやら怪しい物品やらを売っている露天が並ぶ、青空市場……
 街角で戯れる子供達や、かわいい猫が平和そうに町を闊歩する。
 本当に、ファンタジーワールドの田舎町という雰囲気を良く出していると思う。
 こういう町の雰囲気を楽しめる作品というのは、コンシューマーを含めてすら本当に久しぶりだった。
 ただマニュアルを見てると、アーヴィルの事を「小さな町」と書いてるけど、ありゃ、十分に広いですぜ。
 最初のうちは、どういう構造か把握するだけでも一苦労だったもんな。
 
 クリア後のお楽しみとして、敵の強さが二倍や三倍になり、反面レアアイテムが出やすくなるモードが出現するので、やりこむのにも十分!
 こんなに長く遊べる作品は、本当に久しぶりだ。
 
 しかし、さすがに欠点がない訳ではない。
 まず、勘弁して欲しかったのが町の中での常時セーブ。
 このゲーム、ダンジョン内で死んでしまうと、装備品以外の持っていたアイテム全てと持ち金の半分を失って町へ強制送還される。
 もうお分かりだろうが、全滅すると「あ、今のなし! ロードしてやり直そう!」という事は出来ないのである。
 町についた瞬間にセーブされるから
 二倍モード以降になると、さすがに敵の強さがハンパじゃなくなるので、これでレアアイテム失った時のショックゆーたら、あーた…チキショー、MAXまで鍛えたラングランドと竜鱗の盾かえせー!!
 セーブ箇所は3ヶ所あるんだけど、データ自体は共有出来ないから、もうどうにもならない。
 ここら辺は、どうもスタッフ側からの分かり切った上でのあざとい意地悪という気がするので、もし次回作があるのなら直して欲しいポイントだ。
 
 次に、ジョイパッドに対応していない事。
 どうもマニュアルを見ていると、マウスでのプレイを大前提にしているし、出来る限りマウスでのプレイを推奨している。
 確かにマウスでもかなり快適なプレイは出来るのだが、たまたまキーボード対応のジョイパッドを持っていた俺っちに言わせれば、やはりパッドの方が圧倒的に使いやすかった。
 こういうアクションが絡むゲームというのは、操作性に関してはプレイヤーの好みによる選択にするべきだと俺っちは思うので、出来ればジョイパッドも使える仕様にした方が良かったと思う。
 
 そして、最後にストーリーとキャラの事。
 ここでどうしても比較対象に挙げざるをえないのが、アリスソフトの名作RPG達なのだ。
 やはりアリスに比べるとこなれていない、と言うかシナリオライターの力量の差がモロに出てしまう。

 まず、先がバレバレのストーリー展開。
 オーソドックスと言えばオーソドックスなのだが、ユウラという存在の秘密や、彼女が結局最後助からない展開など、古くは「イース」から使われてきた古典的なものであり、余りにも拍子抜けだ。
 みっちんじゃないけど、「女の子を一人不幸にして、感動を造る」というのは、ちょっと安直だとも思う。
 また、ユウラとの関連イベントが少ないのも、これに拍車をかけている。
 迷宮から救い出した後、デートのイベントを一回こなした後は誘拐から続くクライマックスに突入してしまうので、どうしても感情移入がしづらい。
 本来、壮大な物語のキーパーソンであるユウラが、余り活き活きと描かれていないのはマイナスだ。
 
 他にも、結局最後に結ばれる事になるサクラも、イマイチ活きているとは言い難い。
 幼なじみという設定に、あまりにも従順に従いすぎているという感じだ。
 どうにもトイレや着替えを覗き見してしまうイベント程度では、サクラというキャラを描ききっていない。
 それでも、最後は彼女と結ばれる結末しかない、というのはちょっとねえ。
 いっそ、マルチエンドにした方が良かったんちゃうかな?
 ユウラとサクラとす巻きちゃんぐらいで(え!? す巻きちゃん!?…笑)。
 例えば、アリスソフトのかつての名作「闘神都市U」では、ヒロイン葉月の描き方が非常に秀逸だった。
 町中で出会った時の私服姿を工夫したり、最後の意表を突く展開など、ヒロインとしての魅力を十分に描ききった上で、初めてベタベタなハッピーエンドを迎えても、感動出来たのである。
 
 あと、主人公ハイドが、あまりにも女にだらしなさ過ぎる
 コイツは普段は本当にイイ奴なんだが、Hシーンの時は、もう本当に例外中の例外。
 女好き、という設定があるにしても、これはもうちょっとどうにかならなかったのか?
 まあ、遊郭関係のイベントなんていうのは、完全なプレイヤー選択型なのでがたがた言うつもりは全然ないんだけど、未亡人のナリアを抱くわ、シヅキを襲うわで、どうにも下半身に節操がなさ過ぎる。
 大体、顔CGがある女キャラの大半は食っちゃうという鬼畜ぶり。
 魔法の薬「エリクサー」を作るための「処女の淫液」というアイテムを得るために、処女の女の子の股ぐらにバイブ突っ込むかね、フツー
 これも、結局ハイドの描き方の中途半端さが違和感の原因になっている。
 これが、ランスぐらいどうしようもない鬼畜ヤローなら、逆に笑って見ていられる。
 まあ、それでも最終的に愛しているのはシィル、という所にアリスの上手さを感じるのだが。
 …もっとも「鬼畜王ランス」では、その方向性も変わってきたらしいけどね。
 また、14人もの女の子とハーレム状態の「DALK」の主人公セイルは、徹底的な善人とされている。
 どんな時でも女の子に対する配慮を忘れないスーパーローフル野郎で、非常に納得のいくキャラだった。
 残念ながら、ハイドにはそこまでの思い切りや、細やかな描写はなかった様に思える。
 結局彼の女好きという設定は、安直にHシーンへ突入するための言い訳にしか思えないんだよな。
 いくらHゲームとはいえ、Hシーンを見せる方向性のみを追求しすぎてキャラを深く掘り下げなかったのが、この作品最大の弱点だろう。
 
 ついでに言えば、スレインって結局どういう男だったの?
 遺跡をいくつも荒らしている内に、精霊の力という強大さと人間の力の卑小さとのギャップに耐えられなくなった、という下りは分かるんだけど、それが何故、あんな大量殺戮を犯してまで遺跡に潜るのかの理由にはなっていない気がする。
 主人公と最終的にはライバル関係になるキャラクターなのだから、もうちょっと掘り下げがあってもいいと思ったのは俺っちだけかな?
 そういう素地もないまま、最後の場面で壊れていただいても、ねえ……
 
 どうにも、心理描写やキャラクターの描き方が今イチ甘いのが、本当に惜しい。
 巷に溢れる三流ヌキンポハメハメソフト、という訳ではないんだからさ。
 
 
(総評)
 どうも、最近のコンシューマ系雑誌のレビューを見ていて引っかかるのが「斬新さがない」という点だけで、点数を安易に落としているレビュアーが、やたらと多い事だ。
 確かに、斬新なアイデアを上手にゲームに盛り込んだ作品というのは、評価されるべきだろう。
 だが、例えシステムがオーソドックスであっても、プレイヤーに楽しんでもらうべく丁寧に作られた作品は、評価すべき。
 これは、俺っち自身の持論だ。
 そしてこの「D+VINE[LUV]」は、ストーリー関係にこそ難はあったものの、実に良く出来た傑作だと言っていい。
 前書きに構想2年と書いたけど、さすがにそのうたい文句は伊達じゃない。
 余談だがポケモンの作者・田尻智氏が、ある開発者にポケモンの事を「4年もかければ、誰でもいいモノ作れますよね」と嫌み半分で言われた時、氏はにこやかにこう反撃したそうだ。
そうですね。でも普通、誰も4年はかけませんよね」と。
 え時間がかかっても、少しでもいい作品をやってもらいたい。
 そういうクリエイターのプライドこそが、今のゲームという世界に最も求められている事なのではないか、と俺っちは思う。
 そしてその気持ちが作品に乗っていれば、プレイヤーは敏感に感じ取る。
 これからもアボガドパワーズには、大きな期待を寄せていようと思う。
 
 
(おまけ)
 簡単な攻略法…というよりアドバイスはこちら
 
 
(梨瀬成)

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